この記事ではロシアの作曲家ミリイ・バラキレフのおすすめ代表曲を紹介します。
バラキレフは「ロシア五人組」の中心人物として活躍した人物で、
作曲家・指揮者・教育者などの幅広い分野において、
のちのロシア音楽に多大な影響を及ぼしました。
また、ミハイル・グリンカの国民楽派を引き継ぎ、
ロシア民謡を取り入れたスタイルを確立したことも大きな功績と言えるでしょう。
今回はバラキレフの作品の中から7曲を選んで紹介します。
また、文の後半では「もっとも難しいピアノ曲」と言われる『イスラメイ』についても解説していますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
なお、バラキレフの生涯についてはコチラの記事👇
で解説していますので、そちらも併せてお読みいただくと、より理解が深まりますよ!
バラキレフのおすすめ代表曲7選
さっそく作品を見てみましょう。
バラキレフは多作な作曲家とは言えないものの、
幅広いジャンルで作品を残しています。
今回は、その中から「今すぐに聴ける」作品をピックアップしています。
バラキレフのおすすめ代表曲1:交響曲第1番 (バラキレフ)
1864年に作曲が開始された、バラキレフ最初の交響曲です。
その後、1866年に作曲が中断されたものの、1893年に再び作曲を始め、
1897年12月に完成を迎えました。
1898年4月23日、サンクトペテルブルクで初演が行われ、
感情豊かなメロディと力強いオーケストラの表現により成功を収めています。
バラキレフのロマン派音楽の影響が垣間見える作品です。
バラキレフのおすすめ代表曲2:交響曲第2番 (バラキレフ)
本作は、1908年に完成した2つ目の交響曲です。
バラキレフ晩年の作品であるため、成熟した音楽スタイルが楽しめます。
1909年4月23日に初演され、リャプノフの指揮により大成功を収めました。
本作には、バラキレフの深い感情やドラマティックな展開が十分に表現されており、
聴く人を引き込む魅力に溢れています。
演奏時間は約35分です。
バラキレフのおすすめ代表曲3:タマーラ (バラキレフ)
本作は、1872年から1882年にかけて作曲された作品で、バラキレフによる東洋的なテーマの取り入れが際立つ作品です。
バラキレフはこの作品を通じて、ロシア民謡と異国の音楽の融合を試みました。
1883年3月7日にサンクトペテルブルクで初演され、聴衆からも高い評価を受けています。
本作はフランツ・リストに献呈されており、リストへのリスペクトがうかがえる作品としても興味深い作品です。
バラキレフのおすすめ代表曲4:ルーシ
「ルーシ」は1890年頃に完成した作品で、演奏時間は約15分です。
本作は、ロシア建国1000年を祝うために作曲され、内容も歴史的なテーマが込められています。
もともとは『3つのロシアの主題による序曲第2番』として初演されましたが、その後改訂され、最終的には音画『千年』として発表されました。この作品でも、バラキレフはロシア民謡や伝説を取り入れ、見事に壮大な世界観を作り上げることに成功しています。
バラキレフのおすすめ代表曲5:3つのロシアの主題による序曲第1番
1858年に完成したバラキレフを代表する序曲の1つです。
1881年に改訂され、続編とともに『ルーシ』として再編成されました。
この曲は、バラキレフの音楽的なアイデンティティを示す重要な作品でもあります。
4曲目の『ルーシ』と合わせて聴いてみてください。
バラキレフのおすすめ代表曲6:ひばり(グリンカ=バラキレフ)
「ひばり」は、グリンカの美しい歌曲をバラキレフがアレンジした作品。
演奏時間は約5分30秒です。
バラキレフは、グリンカのメロディをピアノ用に変え、華やかな装飾を加えました。
この曲は、コンサートでアンコールとしてもよく演奏され、現在もなお聴衆に愛され続けています。美しいひばりが飛翔する姿が、哀愁漂うメロディーでロマンチックに表現されています。
バラキレフのおすすめ代表曲7:トッカータ 嬰ハ短調
「トッカータ 嬰ハ短調」は1902年に発表された作品で、演奏時間は約4分20秒です。
この曲には、バラキレフの独特なスタイルが色濃く反映されています。演奏には高い技術が求められ、ピアニストにとって挑戦的な作品となっています。
リズミカルでダイナミックな部分が多く、聴く人を惹きつける魅力満載です。
バラキレフの真骨頂は、やはりピアノ曲にあるのではないかと思います。
バラキレフの音楽的特徴
ロシア国民楽派を確立した、バラキレフの作品の特徴を簡単に見てみましょう。
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民謡の取り入れ
バラキレフは、ロシア民謡を取り入れた作品を多く作曲し、
ロシア音楽の独自性を西洋音楽に組み込みました。
なかでも、民謡のリズムやメロディを巧みに取り入れた作風は、
ロシアのみならず、ヨーロッパ諸国の国民学派にも影響を与えています。
国民楽派については、以下の記事も参考なりますよ!
主な作品
東洋風幻想曲『イスラメイ』は、オリエンタルな雰囲気に満ちており、彼の代表作の一つでもあります。
この作品は、異国情緒あふれるメロディとリズムが特徴で、
バラキレフの独自のスタイルを示しており、彼の真骨頂とも言える作品です。
また、オーケストラ版にもアレンジされており、管弦楽でもその魅力が味わえます。
「ロシアのテーマによる序曲」は、 ロシア民謡を基にした作品であり、ある意味でバラキレフの音楽的アイデンティティを示す作品と言えるでしょう。
世界一難しいピアノ曲?東洋風幻想曲『イスラメイ』とは?
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イスラメイの起源と背景
東洋風幻想曲『イスラメイ』は、1869年に作曲されたバラキレフをもっとも代表する作品であり、1860年代後半に訪れたコーカサス地方の伝統音楽にインスピレーションを受けて作曲されました。
「イスラメイ」とは、もともとカバルディノ地方(現在のカバルダ・バルカル共和国)やアディゲ地方(現在のアディゲ共和国)で行われる伝統的な民俗舞曲(レズギンカ)で、8分の6拍子風のリズムと速いテンポが特徴です。
バラキレフの『イスラメイ』は、まさにこの伝統的な踊りの精神と技巧を、
クラシック音楽の世界に昇華させた傑作と言えるでしょう。
作品の特徴と音楽的構造
バラキレフは作曲に何年も時間がかかることで有名でしたが、
本作に限っては、わずか1か月完成させています。
その理由については詳しくはわかりませんが、
本作に対するバラキレフの意欲が強かったことが伺えます。
『イスラメイ』は3部分構成です。
民族音楽との深い結びつき
『イスラメイ』は、コーカサス地方の伝統的な民俗音楽からインスピレーションを受けて作曲されました。作品のテーマは、バラキレフ自身が、ある王子から聞いた『イスラメイ』という踊りの旋律に魅了されたことがきっかけだったそうです。
また、最近の音楽学的研究により、
作品中で使用される旋律の元ネタが解明されています。
・最初のテーマ:カバルディノ・バルカリア地方の『レズギンカ』
・2番目のテーマ:タタール人の愛の歌
・コーダ:伝統的なロシアの曲トロパクのスタイル
高度な技巧性と影響力
『イスラメイ』といえば、なんといっても驚くべき超絶技巧で有名。
とてつもない難曲ですが、得意とするピアニストも結構いるようです。
例えば、以下のピアニストはコンサートのプログラムやアンコールに取り入れています。
・ニコライ・ルビンシュテイン(初演者)
・フランツ・リスト
・ジェルジュ・シフラ
・ボリス・ベレゾフスキー
・ミハイル・プレトニョフ
・イーヴォ・ポゴレリッチ
・エフゲーニ・キーシン
・ラン・ラン
など。
もちろん、ルビンシュテインやリストの演奏は残っていませんが、
現代のピアニストの演奏は動画等で見れるので、
聴き比べてみるのも良いかもしれません👇🎹
本作は、作曲者バラキレフ自身も、
「弾きこなせないパッセージ」があると言っていたそうですよ!
シューベルトにも同じようなエピソードがあったような・・・。
音楽界への影響
『イスラメイ』はピアノ音楽に長く続く影響を与えました。
例えば、モーリス・ラヴェルは『夜のガスパール』を作曲する際、
バラキレフの『イスラメイ』よりも「より難しい」作品を目指しました。
また、他の著名な作曲家たちもこの作品から影響を受けています:
ボロディンのオペラ『イーゴリ公』やリムスキー=コルサコフの『シェヘラザード』でも引用されています。
ちなみにこちらがラヴェル作『夜のガスパール』👇
イスラメイのオーケストラ版
『イスラメイ』は2度、オーケストラ用に編曲されており、
1961年2月26日には、ユージン・オーマンディとフィラデルフィア管弦楽団がカゼッラの編曲を立体音響で録音しました。
音楽史を書籍で知る
さらに詳しい音楽史を知りたい方には、やはり書籍で読むのがおすすめ。
クラシック音楽を聴き始めたばかりの方はもちろん、
知識を深めたい方にも書籍は最適です。
さまざまな作品が出版されていますので、
ご自身の興味に合ったものを選んでみてください。
バラキレフの代表曲:まとめ
今回はロシアを代表する作曲家バラキレフの作品を7曲、
そしてピアノ曲『イスラメイ』についてざっくりと解説しました。
「世界一難しいピアノ曲」と聞くと、なんだか興味が湧いた方もいらっしゃるかもしれません。
この記事をきっかけに、皆さんの新たなクラシック音楽への扉が開かれれば幸いです。
1. アレグロ・アジタート:主題の導入
2. トランクィッロ – アンダンティーノ・エスプレッシーヴォ:新しい主題
3. アレグロ・ヴィーヴォ – プレスト・フリオーゾ:主題への回帰