この記事ではシベリウスのピアノ曲「樅の木」(もみの木)の難易度を解説します。
ピアノの発表会。
お子さんにとっても、ご家族にとっても、日頃の練習の成果を披露する大切な舞台ですよね。
しかし、数あるピアノ曲の中から「どの曲を選べばいいの?」と悩んでしまう方も多いのではないでしょうか。
そんな発表会の選曲でお悩みの方に、おすすめしたいのが、フィンランドの作曲家シベリウスによるピアノ曲「樅の木(もみのき)」です。
この記事では、そんなシベリウス作曲「樅の木」について、難易度を詳しく紹介していきます。
この記事を読むとわかること
これらがしっかりと理解でき、選曲や練習への不安が解消されるはずです。
ぜひ最後までお読みいただき、参考にしてくださいね!
筆者は3歳からピアノを開始。紆余曲折を経て、かれこれ30年近くピアノに触れています(音大には行っていません)。
北欧の情景が目に浮かぶ名曲、シベリウス「樅の木」とは?
出典:YouTube
まずは「樅の木」がどのような曲なのか、その背景について解説します。
ざっくり解説なので、サラッと読み飛ばしてくれてOKです。
作曲者ジャン・シベリウスについて
「樅の木」を作曲したジャン・シベリウス(1865-1957)は、フィンランドを代表する国民的な作曲家です。彼の作品は、フィンランドの雄大な自然や神話、叙事詩『カレワラ』などからインスピレーションを受けており、力強く、時に神秘的な雰囲気を湛えています。代表作には、交響詩「フィンランディア」やヴァイオリン協奏曲、数々の交響曲などがあります。
また、シベリウスの作品はフィンランドの独立にも多大な影響をもたらしました。
詳しい解説はこちらからどうぞ!
参考|ピティナ調査・研究
ピアノ組曲『樹の組曲』作品75
「樅の木」は、シベリウスが1914年に作曲したピアノのための組曲『樹の組曲(5つの小品)』作品75の第5番にあたる曲です。それぞれ異なる樹木を題材にしており、自然への深い愛情と畏敬の念が感じられます。それぞれのタイトルは以下の通りです。
この中でも「樅の木」は特に有名で、単独で演奏される機会が非常に多い作品です。
「樅の木」の魅力:静寂と情熱が織りなす音の世界
最大の魅力は、その美しい旋律と、静と動が織りなすドラマティックな構成にあります。
- 曲想
曲は、静かで神秘的なアルペジオ(分散和音)で始まります。まるで、雪がしんしんと降り積もる冬の森、あるいは夜空に凛と立つ一本の樅の木を思わせるような雰囲気です。中間部では、曲調が一転し、情熱的で力強い和音が響き渡ります。厳しい自然の中でたくましく生きる生命力や、内に秘めた情熱を感じさせる部分です。 - 特徴
右手のきらめくようなアルペジオ、左手の重厚で響き豊かな和音、そして心に残る美しいメロディラインが特徴的。北欧の澄んだ空気感や、冬の厳しさ、そしてその中にある美しさが見事に表現されています。 - 人気の理由
このように、聴く人の心に情景を思い起こさせ、感動を与える力が「樅の木」の人気の理由だと思います。また、後述するように、難易度的にもピアノ学習者がステップアップするのに適している点も、人気の理由と言えるでしょう。
「樅の木」(もみの木)の難易度は?レベルや技術的ポイントを徹底分析
出典:YouTube
ということで、「樅の木」の難易度について、詳しく見ていきましょう。
ひょっとすると「シベリウス 樅の木 難易度」と検索してこの記事にたどり着いた方も多いかもしれません。
全体的な難易度レベル:初級卒業~中級への架け橋
結論から言うと、シベリウスの「樅の木」の難易度は、ピアノ初級の終わりから中級レベルです(実体験として)。ピアノ教本で言えば、以下のようなレベル感が目安かなと。
解説の中には、バイエル修了後〜ブルグミュラー程度というのもありましたが、多分、そのレベルでは弾けないと思います。
他の有名な発表会曲と比較してみますね。
- 「エリーゼのために」(ベートーヴェン): 一般的に「エリーゼのために」よりは、「樅の木」の方が和音の響かせ方やペダリング、表現の幅広さといった点で難易度は少し上がります。
- 「人形の夢と目覚め」(オースティン): テクニック的には同程度かもしれませんが、「樅の木」の方がより深い表現力や音色のコントロールが求められます。
決して「簡単な曲」ではありませんが、基礎がしっかりできていれば、小学生でも十分に挑戦できるレベルです。
むしろ、初級から中級へとステップアップするための「架け橋」として、非常に適した難易度の曲と言えるでしょう。
シベリウス「樅の木」の難易度ポイント:ここが難しい!
出典:YouTube
演奏する上で、技術的にクリアすべきポイントがいくつかあります。
1つずつ解説します。
シベリウス「樅の木」の難易度ポイント:和音(コード)
- 正確な打鍵: 特に左手で、重厚な和音をしっかりと、かつ美しく響かせる必要があります。指をしっかり開いて、すべての音を均一に鳴らす練習が大切。
- 音のバランス: 和音の中でも、どの音を響かせたいのか(例えば、一番下のバスの音や、メロディを構成する音など)を意識して、指先のコントロールで音量を調整する必要があります。
- 手の大きさ: 手の小さいお子さんにとっては、指を広げて和音を押さえるのが少し大変な箇所もあります。無理のない範囲で、指のストレッチなども取り入れると良いでしょう。
オクターブが届かない場合は、先生に相談してみてください。
シベリウス「樅の木」の難易度ポイント:アルペジオ(分散和音)
- 滑らかさと粒立ち: 曲の冒頭や再現部に出てくる右手のアルペジオは、水が流れるように滑らかに、かつ一音一音の粒がはっきりと聞こえるように弾くのが理想です。
- 指の柔軟性: 指がスムーズに動くように、手首を柔らかく使う意識も大切です。
冒頭から難所ではありますが、見せ所でもあります。
シベリウス「樅の木」の難易度ポイント:ペダリング
- 響きのコントロール: 「樅の木」の美しい響きを作る上で、ペダル(ダンパーペダル)の使い方はとても重要。ペダルを踏みっぱなしにすると音が濁ってしまうため、適切なタイミングで踏み替えるよう心がけましょう。
- 繊細な操作: 音が濁らないように、前の音の響きが消える直前に次のペダルを踏む「踏み替え」のテクニックや、響きを微妙に調整する「ハーフペダル」なども必要になる場合があります。ペダリングは耳でよく響きを聴きながら調整することが重要で、難易度が高いと感じる学習者も多いポイントです。
表現上の難易度ポイント:音に情景を乗せる
技術的な課題に加えて、「樅の木」を魅力的に演奏するためには、表現面での難易度も意識する必要があります。
曲想の変化を描き分ける
神秘的な部分(A)と、情熱的で力強い中間部(B)、そして再び静けさが戻る再現部(A’)という、ABA’の形式を持っています。それぞれの場面の雰囲気の違いを、音色やタッチ、テンポ感などで描き分ける表現力が求められます。
音色のコントロール
同じメロディや和音でも、場面によって求められる音色は異なります。例えば、冒頭のアルペジオは透明感のあるきらめくような音色、中間部の和音は重厚で力強い音色、といったように、指先のタッチをコントロールして多彩な音色を引き出すことが大切です。
テンポ・ルバート(テンポの揺らし)
楽譜通りのテンポで弾くだけでなく、曲の流れや感情表現に合わせて、微妙にテンポを揺らす(ルバート)ことで、より表情豊かな演奏になります。ただし、やりすぎると不自然になるため、指導者の先生と相談しながら、センス良く取り入れることが重要です。
「樅の木」はテクニックだけでなく、表現力を身につける上でも非常に勉強になる曲です。
難易度は決して低くはありませんが、これらのポイントを一つずつクリアしていくことで、確かな実力アップにつながりますよ!
発表会に「樅の木」がおすすめな5つの理由
ここまで「樅の木」の難易度について詳しく見てきました。
以下では、この曲が特に小学生の発表会におすすめな理由を5つ紹介します。
- ステップアップに最適な「ちょうど良い」難易度
- 聴き映え抜群!ドラマティックな構成
- 適切な曲の長さ
- 総合的なピアノテクニックが学べる
- イメージ豊かに演奏できる曲想
理由1: ステップアップに最適な「ちょうど良い」難易度
前述の通り、「樅の木」の難易度は初級後半~中級レベルです。
これは、ブルグミュラーなどの初級教本を終えたお子さんが、次に挑戦する曲として非常に適しているレベルと言えます。
「簡単すぎず、難しすぎず」、努力目標として設定するのにぴったりです。
少し背伸びをして挑戦することで、達成感とともにピアノの技術や表現力を大きく伸ばすことができます。
理由2: 聴き映え抜群!ドラマティックな構成
「樅の木」は、静かな始まりから情熱的な中間部、そして再び静寂へ…という、非常にドラマティックな構成です。美しいアルペジオや重厚な和音は、ホールでの響きも良く、聴衆を惹きつけます。
お子さんが一生懸命練習した成果が、聴いている人にも感動として伝わりやすい、まさに「聴き映え」のする曲なのです。
理由3: 適切な曲の長さ
演奏時間は、テンポにもよりますが、およそ3分~4分程度です。
これは、小学生のお子さんの集中力が持続しやすく、発表会のプログラムとしても組み込みやすい、ちょうど良い長さと言えます。
長すぎず短すぎず、曲の世界観を十分に表現できる時間です。
理由4: 総合的なピアノテクニックが学べる
「樅の木」を練習する過程で以下のテクニックを学べます。
- 和音を美しく響かせるタッチ
- 滑らかなアルペジオ
- 繊細なペダリング
- 幅広い強弱表現
- 音色のコントロール
特に、ペダルの使い方を本格的に学ぶ良い機会になるはず。
これらの技術は、今後さらに難しい曲に挑戦していく上での大切な基礎となります。
理由5: イメージ豊かに演奏できる曲想
「樅の木」というタイトルや、曲の持つ雰囲気から、お子さん自身が様々な情景をイメージしやすい点も大きな魅力です。
- 「雪がキラキラ降っている感じかな?」
- 「夜の静かな森みたい」
- 「大きなクリスマスツリーを思い出す」
など、自由に想像力を働かせることができます。
自分のイメージを音にしていく楽しさを、この曲を通して体感できるはずです。
「樅の木」を美しく、感動的に弾くための練習方法とコツ
出典:YouTube
「樅の木」の難易度や魅力も分かったところで、いよいよ演奏を成功させるための具体的な練習方法とコツを見ていきましょう。
大きく分けてポイントは以下の3つです。
1. 譜読みの段階から丁寧に:設計図を理解する
2. 技術的な課題を克服する部分練習:難しい箇所を集中攻略
3. 表現力を深めるために:音に命を吹き込む
もう少し詳しく解説しますね。
1. 譜読みの段階から丁寧に:設計図を理解する
美しい演奏は、正確な譜読みから始まります。焦らず、じっくりと楽譜と向き合いましょう。
- 基本情報を確認: まず、調性(ホ長調 / E Major)、拍子(3/4拍子)、曲の形式(ABA’ – 静かな部分、情熱的な部分、再び静かな部分)を把握します。
- 記号をチェック: 指番号、ペダル記号(Ped. や *)、強弱記号(p, f, pp, ff, クレッシェンド、デクレッシェンドなど)、アーティキュレーション(スラー、スタッカートなど)をを正確に理解しましょう。
2. 技術的な課題を克服する部分練習:難しい箇所を集中攻略
いきなり全体を通そうとせず、難しい箇所や苦手な箇所を取り出して、集中的に練習することが上達への近道です。具体的には以下のことに注意しながら取り組んでみてください。
- ゆっくり確実に
- 響きを聴く
- ゆっくり→徐々に速く
- 苦手なパッセージの練習
- 片手ずつ
- リズムを変えて
よくあるのが、ミスしたら最初に戻るというもの。これだと効率的ではないので、苦手な箇所を重点的にやりましょう。
3. 表現力を深めるために:音に命を吹き込む
技術的な練習と並行して、表現力を磨くことも大切です。
- 「樅の木」というタイトルから、どんな情景を思い浮かべますか? 雪景色、静かな森、冬の夜空、クリスマスツリー… 自由にイメージを広げ、その情景を音で表現するにはどうすれば良いか考えてみましょう。
- ダイナミクス(強弱)を意識する:楽譜の強弱記号を、少し大げさなくらいに表現する練習をしてみましょう。ppとffの差を明確にすることで、演奏にメリハリが生まれます。
- 良い演奏を聴く:様々なピアニストの演奏を聴くことは、表現の引き出しを増やす上でとても参考になります。ただし、完全に真似をするのではなく、「この人のこの表現、素敵だな」と感じた部分をヒントに、自分なりの表現を見つけていくことが大切です。
とりあえず楽譜を見てみたい方は、IMSLPで見るのも良いと思います。著作権が切れた作品をダウンロードできますよ!ダウンロードはこちら👉シベリウス「樅の木」
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シベリウス「樅の木」(もみの木)の難易度解説:まとめ
今回は、シベリウス作曲のピアノ曲「樅の木」について、その魅力や気になる難易度、具体的な練習方法を解説してきました。
内容をまとめます。
- 難易度は初級後半~中級レベルで、ステップアップに最適
- 北欧の美しい情景が目に浮かぶような、聴き映えのする名曲
- 和音、アルペジオ、ペダリング、表現力など、総合的なピアノ技術が学べる
- 小学生でもイメージ豊かに演奏できる
技術的に難易度が高いと感じる部分もあるかもしれませんが、この記事でご紹介した練習のポイントを押さえ、一つ一つ丁寧に取り組めば、必ず美しい演奏にたどり着けます。
ぜひ、発表会の候補曲としても「樅の木」を検討してみてください!