ロベルト・シューマンのおすすめ代表作16選。作品の特徴もまとめ解説!

    出典:Amazon[子供の情景、謝肉祭、クライスレリアーナ]

    ロベルト・シューマンシリーズ2本目です。2本目は恒例の作品紹介をしていきます。正直、シューマンを含むロマン派の作曲家の作品は名曲揃いで、どれにしようか悩みました・・・。

    自分の好きな作品が入っていない!」という意見も聞こえて来そうですが、飽くまでも「筆者の主観」であることをお許し下さい。

    シューマンはピアノ曲から歌曲交響曲室内楽宗教曲など多岐に及ぶジャンルの作品を残しましたが、今回は各ジャンルから2〜4曲程度紹介していきます。

    ロベルト・シューマンのおすすめ代表作16選

    冒頭でもお伝えしたように、シューマンは様々なジャンルにおいて傑作を残しました。若き日のシューマンはピアニストを目指していましたが、右指の故障のため評論家・作曲家へ転身。

    いずれの分野においても、音楽史において重要な功績を残しました。とりわけ妻クララとの結婚後、シューマンの才能は円熟期を迎え、今日に受け継がれる傑作を数多く残しています。

    そんなシューマンの作品を、以下ジャンルごとに紹介していきます。

    シューマンの代表作、ピアノ曲編

    まずはピアノ曲から見てみましょう。シューマンはロマン派を作曲家ですが、その作風は、文学的な要素が多分に含まれています。形式にとらわれることのないシューマンのピアノ曲をご堪能下さい。

    おすすめ代表作その1、ピアノソナタ第1番

    マウリツィオ・ポリーニ演奏

    シューマンの抒情性が惜しみなく発揮された、初期の大ソナタです。シューマンらしいダイナミックな構成と自由な発想が存分に味わえます。1832年から1835年にかけて作曲。1836年に楽譜出版されました。シューマンはこの作品を通して「音楽と文学の融合」を目指したと考えられています。全4楽章構成で、演奏時間は30分程度です。第1楽章ではアンダルシア地方の舞曲「ファンタンゴ」のリズムが使用されています。

    おすすめ代表作その2、アベッグ変奏曲

    エフゲニー・キーシン演奏

    シューマンを代表するピアノ曲の1つです。筆者もその昔、演奏を試みましたが当時はあまり良さが分からず手をつけず・・・。今になって聴くと、「優雅だな」と思います。
    完成度の高い作品ですが、この曲を作曲当時のシューマンは弱冠20歳!!。恐ろしい限りです。
    タイトルの「アベッグ」とは、架空の伯爵令嬢パウリーネ・フォン・アベッグから命名されました。音形も「AーBーEーGーG」の進行が採用されています。

    おすすめ代表作その3、幻想曲ハ長調

    ウラジミール・ホロヴィッツ演奏

    1834年から1835年にかけて作曲されたシューマンの初期の傑作です。『ピアノソナタ第1番』の作曲時期と重なっており、この時期のシューマンの作曲意欲が非常に高かったことが窺えます。
    様々な作曲家が「幻想曲」という作品を残していますが、「幻想曲」とは、形式にとらわれず自由な発想で作曲された作品と覚えておけば大丈夫です。

    本作はベートーヴェン記念碑の寄付金を集める目的で作曲されました。作品の完成度に感激したフランツ・リストは作品の返礼としてシューマンに『ピアノソナタロ短調』を献呈しています。

    フランツ・リストについてはこちらも合わせてお読み下さい!!

    おすすめ代表作その4、謝肉祭

    ルービンシュタイン演奏

    シューマンのロマン主義的傾向が余すことなく自由に表現された大作です。作品には「4つの音符による面白い情景」の副題が添えられています。『謝肉祭』というと、以前紹介したサン=サーンスにも『動物の謝肉祭』という作品がありますので、ぜひ聴き比べてみて下さい!

    サン=サーンスについてはこちら👇

    シューマンによる『謝肉祭』は全20曲あり、演奏時間は約20分です。作品が目まぐるしく変化するのもこの作品の楽しみの一つと言えるでしょう。ちなみに妻クララは本作について「大衆の前で演奏するには向かない」となかなか辛辣な意見を述べたと言われています。

    おすすめ代表作その5パガニーニの奇想曲による練習曲

    パガニーニの主題による練習曲といえばフランツ・リストの『パガニーニによる大練習曲』がもっとも有名です。しかし、シューマンもパガニーニの演奏に魅了された人物の一人でした。

    パガニーニに強い影響を受けたシューマンは、パガニーニの『24の奇想曲』をもとに1832年、練習教習を作曲しています。

    実はフランツ・リストがパガニーニによる練習曲を作曲したのは、このシューマンの作品に触発されたためと言われています。演奏機会の多い作品ではありませんが、シューマンの練習曲も非常に技巧的な難曲です。ぜひ聴いてみて下さい!!

    リストの作品紹介はこの記事に書いています。

    おすすめ代表作その6フモレスケ

    1839年、シューマンがウィーン滞在中に作曲したピアノ曲です。7つの曲で構成されており、全体の演奏時間は25分から30分程度です。タイトルの「フモレスケ」とはドイツ語でユーモアを意味する「Humor」の派生から名付けられています。

    シューマンの代表曲、交響曲編

    シューマンは生涯で4つの交響曲を作曲しています。どの交響曲も名曲ですが、今回はそのなかから2つの交響曲を紹介します。

    おすすめ代表作その7、交響曲第一番変ロ長調「春」

    オットー・クレンペラー指揮

    1841年1月から2月にかけて作曲されたシューマン最初の交響曲です。シューマンはこの傑作をなんとわずか2ヶ月弱で完成させています。初演は友人メンデルスゾーンの指揮で演奏されました。

    全4楽章構成されており、ロマン派の作品らしく、すべての楽章に標題(タイトル)が付されています。演奏時間はおよそ30分です。詩人アドルフ・ベトガーの詩にインスピレーションを受けて作曲されたと言われています。それぞれの楽章の表題は以下の通りです。

    1楽章「春の始まり」
    2楽章「夕べ」
    3楽章「楽しい遊び」
    4楽章「たけなわの春」

    標題が付けられているので、作品のイメージが湧きやすいかと思います。

    おすすめ代表作その8、交響曲第3番「ライン」

    フルトヴェングラー指揮

    1850年に作曲されたシューマン晩年の作品です(といってもまだ40歳くらいですが)。1851年に初演され、初演時の指揮はシューマン自身が担当しました。デュッセルドルフ時代に書かれた傑作ですが、何度かオーケストレーションに変更が加えられています。

    シューマンの人生については前回の記事をぜひ!

    シューマンの死後にはグスタフ・マーラーによっても変更が加えられており、こちらの版が演奏されることもあります。「ライン」の副題はシューマンよるものではありませんが、ライン川やその街並みにインスピレーションを受けたことは間違い無いでしょう。

    シューマンの代表作、歌曲編

    妻クララと結婚する前までのシューマンは、おもにピアノ曲を中心に作曲していました。しかし、クララとの結婚後、シューマンの作風は次第に多岐にわたり、1840年は「歌曲の年」と称される程多くの歌曲を残しました。シューマンは1840年の1年間で、140曲以上もの歌曲を作曲しています。

    おすすめ代表曲その9、詩人の恋

    ディートリヒ。フィッシャー・ディースカウ

    1840年作曲の歌曲集です。シューマンが作曲した歌曲集の中でも、もっとも評価の高い作品として、現在も親しまれています。優しく語りかけるメロディーが、シューマンの歌曲の特徴と言えるでしょう。本作は詩人ハインリッヒ・ハイネの詩集にシューマンが音楽をつけた作品です。

    声楽の美しさにとどまらず、表現力豊かなピアノ伴奏にも注目しながら聴いてみてください!
    シューベルトとはまた違う、表現の自由さを楽しめると思います。

    『詩人の恋』は16曲から構成され、1番から6番までは「愛の喜び」。7番から14番は「失恋の悲しみ」、最後の2曲は「苦しみの振り返り」が表現されています。

    シューベルトとの比較も面白いです

    おすすめ代表作その10、リーダークライス

    こちらも1840年に作曲されたシューマンを代表する歌曲集です。上述の詩人ハイネの『歌の本』9編にシューマンが音楽をつけています。本先は声楽家ポーリーヌ・ガルシアに献呈されました。

    シューマンのロマン的抒情と優雅さが、全編にわたって柔らかく表現されています。
    また、同タイトルで、詩人アイフェンドルフの詩に音楽をつけた歌曲集も作曲されました。クララとの幸せな日々を過ごす、シューマンの心の昂りが伝わってくるようです。

    おすすめ代表作その11、女の愛と生涯

    ドイツロマン派の作家シャミッソーの詩にシューマンが音楽をつけた歌曲集です。シャミッソーという名前は、文学好きの方ならご存知かもしれません。『影をなくした男』の原作者ですね。

    ちなみにシャミッソーは作家であると同時に植物学者でもありました。
    それはさておき。この歌曲集は、シューベルトに代表される「リート歌曲」からさらに一歩踏み出し、新しいロマン派の歌曲を確立した作品として、音楽史上で重要な位置を占めています。

    現在でも歌曲のレパートリーとして頻繁にプログラムに上がる作品ですので、ぜひ作品に触れてみて下さい。

    シューマンの代表作、協奏曲編

    シューマンは協奏曲をほとんど残していませんが、彼が作曲した『ピアノ協奏曲』はシューマンを代表する作品といっても過言ではないでしょう。冒頭のダイナミックな導入部分は、一度は聴いたことのある人も多いと思います。

    おすすめ代表作その12、ピアノ協奏曲

    マルタ・アルゲリッチ演奏

    1845年に完成されたシューマン唯一のピアノ協奏曲。筆者も学生時代、ブラームスの『ピアノ協奏曲』と並びCDが擦り切れるんじゃないかと思うくらい聴いた傑作です。

    ドラマチックな冒頭を聴いただけで、圧倒され作品を聴き入ってしまいます。シューマンの、大雑把さが見え隠れする部分がなんともいえません。全3楽章構成で、第2・3楽章は休みなく演奏されるアタッカで演奏されます。演奏時間はおよそ30分です。1846年、妻クララのピアノ独創で初演されました。

    日本での初演は1927年です。

    youtube動画、2022年演奏なので最新です。しかも世界最高のピアニスト、マルタ・アルゲリッチの演奏。とても81歳の演奏とは思えません。

    おすすめ代表作その13、チェロ協奏曲

    アンドレアス・ブランテリド演奏

    シューマンの協奏曲でもう一つ有名な作品が『チェロ協奏曲』です。シューマンは右手の故障や眼病の影響でピアニストを諦めましたが、その代わりに「チェリスト」になることも考えていました。

    そういう意味において、チェロにも強い愛着があったのかもしれません。1850年に作曲された本作は、ロマン派を代表する『チェロ協奏曲』として、今日でも人気の作品です。

    全3楽章で構成されており、演奏時間はおよそ25分程度です。のちにロシア人作曲家ショスタコーヴィチにより新たにオーケストレーションも行われています。このチェロパートをヴァイオリン用にアレンジしたものが、もう一つの協奏曲『ヴァイオリン協奏曲』です。チェロの音色って安らぎますね。

    その他のシューマンの代表作

    数え上げると膨大な作品紹介になってしまうので、以下の3曲はジャンル問わずで紹介します。
    生涯の大半を精神的・肉体的苦痛と共に生きた作曲家とは思えないほどの多作ぶりです。
    では行ってみましょう!!

    おすすめ代表作その14、ヴァイオリンソナタ第1番

    シューマンは生涯で2曲のヴァイオリンソナタを作曲しています。どちらも名曲ですが、今回はヴァイオリンソナタ第1番の紹介。1850年に作曲された本作は、ヴァイオリニストのフェルディナンド・ダヴィドの委嘱により作曲されました。

    なんとシューマンはこの傑作をわずか4日で完成させています(ビックリ!!)。
    ダヴィドのヴァイオリンとクララのピアノで初演され、のちに一般公開となりました。

    15分程度の比較的短い作品ですが、晩年のシューマンの円熟味が存分に発揮された人気作です。

    おすすめ代表作その15、マンフレッド

    マレク・ヤノフスキ指揮

    多くのジャンルを作曲したシューマン。そんなシューマンは「劇付随音楽」というジャンルの音楽も作曲しています。「劇付随音楽」とは読んで字の如く、「演劇に添えられる音楽」という理解でオッケーです。

    オペラとはまた違っていて、あくまでも主体は「劇」で、音楽は劇を盛り上げるBGM的な役割と覚えておいて下さい!

    マンフレッド』もその一種で、もとはイギリスの詩人バイロンの戯曲にシューマンが音楽を書き下ろした作品です。1852年の初演は、ワイマールにてフランツ・リスト指揮により演奏されています。

    序曲と15曲の構成ですが、「序曲」が単独で演奏される機会が多い作品です。迫力満点で、まさに「物語が始まるぞ〜〜〜!」という感じの名曲です。

    おすすめ代表作その16、ピアノ四重奏曲

    violin:樫本大進

    シューマン「室内楽の年」とされる1842年に作曲された作品です。シューマンを代表する室内楽として人気があり、躍動感と静寂が混在する、陰陽のはっきりした作風が特徴でもあります。

    全4楽章構成で、演奏時間も30分と大曲ですが、シューマンは本作をわずか1ヶ月余りで完成させています。

    1840年から1842年のシューマンは、才能爆発の年だったのでしょう(もちろんクララの影響がありますが)。

    シューマンの自由な発想が満載の作品ですので、楽しめると思います。

    シューマンの作品の特徴について

    ここまでシューマンのおすすめ代表作を紹介しました。正直全部を聴くチャレンジャーな方は少ないと思いでしょうが・・・。気になる作品があれば、ぜひ聴いてみて下さい。

    モーツァルトやベートーヴェンといった古典派の作品とは違った、より「自由な表現」が楽しめるはずです。

    前回紹介したシューベルトの作品にも「ロマン派的傾向」が伺えますが、シューマンはさらにその解釈を拡大し、音楽に文学的要素を融合させ、音楽に新しい地平を切り拓きました。

    その意味において、シューマンはロマン派というジャンルを確立した人物であり、その後ブラームスグスタフ・マーラーなどの作曲家に引き継がれます。

    シューマンは短期集中型

    シューマンは一つのジャンルを集中して作曲する傾向があったことは、前回の記事で紹介しました。

    ピアニストを目指していたシューマンは、病気によりピアニストを断念しますが、それをバネに作曲家としての才能を花開させます。

    クララとの結婚前は、シューマンの作品の多くはピアノ曲に集中していました。しかし結婚後は作曲の分野を広げ、歌曲、交響曲、室内楽、そして宗教音楽へと展開していきます。

    とりわけ1840年から1842年にかけては興味深く、1840年は「歌曲の年」、1841年は「交響曲の年」、そして1842年は「室内楽の年」などと呼ばれています。

    まとめ

    シューマンシリーズ2回目は、おすすめ作品を簡単に紹介しました。古典派の作品とはまた違った味わいが楽しめるではないかと思います。

    ロマン派の音楽の良いところは、なんと言っても「聴きやすさ」にあると筆者は感じています。
    クラシックはあまり聴かないという方でも、心地よく聴けるのではないでしょうか。

    これがもう少し時代が経つと複雑になっていくのですが・・・。

    それについてもいつか書ければ良いなと思っていますが、いつになることやら(笑)。
    ということで、今回はここまでにします。

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