この記事ではドビュッシーの「小組曲」を解説します。
「美しいピアノ曲に触れてみたい」「心安らぐメロディに癒やされたい」と感じている人には、ドビュッシーの作品がおすすめ。
フランスの作曲家クロード・ドビュッシーが残した数々の名曲の中でも、特に親しみやすい作品の一つが「小組曲」です。
ドビュッシーといえば、「月の光」や「アラベスク」などが有名ですよね。
でも「小組曲」もまた、彼の初期の才能がきらめく魅力的な作品です。
元々はピアノ連弾(1台のピアノを2人で弾く形式)のために書かれましたが、その美しい旋律と色彩豊かなハーモニーから、後にオーケストラや吹奏楽にも編曲され、様々な形で親しまれています。
この記事でわかること
この記事を読めば、「小組曲」の魅力を深く理解し、聴いたり弾いたりするのがもっと楽しくなるはずです。
ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
筆者は3歳からピアノを開始。紆余曲折を経て、かれこれ30年以上ピアノに触れています(音大には行ってません)。
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作曲家クロード・ドビュッシーと「小組曲」誕生の背景

まずは、「小組曲」を生み出した作曲家ドビュッシーと、この作品がどのようにして生まれたのかを見ていきましょう。
クロード・ドビュッシーとは?印象主義音楽の旗手
クロード・ドビュッシー(Claude Debussy, 1862-1918)は、19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したフランスの作曲家です。
絵画における「印象主義」からインスピレーションを受け、音楽の世界でも「印象主義」と呼ばれる新しいスタイルを確立しました。
ドビュッシーの音楽は、独特の和声(ハーモニー)や音階、自由なリズムを用いて表現するのが特徴です。
ピアノ曲では「ベルガマスク組曲」(「月の光」を含む)や「2つのアラベスク」、「前奏曲集」などが有名です。
管弦楽曲では「牧神の午後への前奏曲」や交響詩「海」などが知られています。
印象主義の作曲家には、モーリス・ラヴェルもいます。
とはいえ、ドビュッシー本人は「印象主義」と定義されるのを嫌っていたそうです。
「小組曲(Petite Suite)」作曲の経緯
ドビュッシーの小組曲は、彼がまだ20代後半だった1886年から1889年にかけて作曲されました。この時期、ドビュッシーはローマ大賞を受賞してイタリアに留学した後、パリに戻ってきたばかり。まだ独自の作風を完全に確立する前の、比較的初期の作品にあたります。
もともとは「ピアノ連弾(1台4手)」のために書かれた作品。
当時のフランスのサロン(社交場)では、家庭で気軽に楽しめるピアノ連弾曲が人気を集めており、「小組曲」もそうした需要に応える形で生まれたと考えられます。
親しみやすいメロディラインや分かりやすい構成は、プロの演奏家だけでなく、アマチュアの音楽愛好家が楽しむことも意識されていたのかもしれません。
また、この作品は、ドビュッシーが尊敬していたとされる作曲家ガブリエル・フォーレの影響も指摘されています。
特に、優雅で古典的な雰囲気を持つ第3曲「メヌエット」などは、フォーレの作風に通じる部分も感じられます。初期の作品でありながら、後のドビュッシーを特徴づける色彩豊かな和声や、情景を巧みに描写する才能の片鱗が随所に現れている、魅力的な作品です。
ドビュッシー「小組曲」全4曲を解説!ピアノ難易度と演奏のポイント
少し前置きが長くなりました。
ここから「小組曲」を構成する全4曲を、1曲ずつ詳しく見ていきましょう。
ピアノ連弾で演奏する場合の難易度や、表現のポイントなども解説します。
ピアノ連弾としての難易度は?
小組曲の全体的な難易度は中級程度かなと(実体験として)。
ピアノ学習者の方の目安としては、ソナチネアルバム後半、モーツァルトのソナタを数曲弾きこなせるレベル。ツェルニー30番後半から40番前半程度の技術が必要です。
ただし、曲によって求められる技術や表現は異なるので一概には言えませんが・・・。
また、プリモ(高音部担当)とセコンド(低音部担当)で難易度が若干異なる場合もあります。一般的に、プリモは美しい旋律を歌う場面が多く、セコンドはリズムやハーモニーの土台をしっかりと支える役割を担います。
ここでは、各曲の難易度を5段階(★☆☆☆☆:易しい ~ ★★★★★:難しい)で示し、演奏する上でポイントとなる点や、具体的な技術的課題についても触れていきます。(※難易度はあくまで目安です)
ドビュッシー「小組曲」:第1曲「小舟にて(En Bateau)」の解説
出典:YouTube
- 難易度:★★★☆☆
- 概要とイメージ: まるで穏やかな水面を小舟が進んでいくような、優しく美しい舟歌です。6/8拍子のゆったりとしたリズムが心地よい揺らぎを感じさせ、聴く人を夢見るような世界へと誘います。ドビュッシーならではの浮遊感のある和声が印象的です。
- 音楽的な特徴: プリモが奏でる甘美な旋律が中心となります。セコンドは主にアルペジオ(分散和音)で、水面のきらめきや舟の揺れを表現します。中間部では少し動きが出て、表情豊かに展開します。
ドビュッシー「小組曲」:第2曲「行列(Cortège)」の解説
出典:YouTube
- 難易度:★★★☆☆
- 概要とイメージ: タイトル通り、華やかで楽しげな「行列」を描写した曲です。トランペットのファンファーレのような勇ましい旋律で始まり、軽快なリズムに乗って進んでいきます。どこか異国情緒を感じさせる雰囲気も持っています。
- 音楽的な特徴: 歯切れの良いリズムと、明るく快活な旋律が特徴です。スタッカート(音を短く切る)が多く用いられ、行進のステップを表現しています。中間部では一転して、優雅で歌謡的な旋律が現れ、美しい対比を生み出しています。
ドビュッシー「小組曲」:第3曲「メヌエット(Menuet)」の解説
出典:YouTube
- 難易度:★★★★☆
- 概要とイメージ: バロック時代や古典派の時代に流行した宮廷舞踊「メヌエット」の形式を借りていますが、ドビュッシーらしい洗練された和声と洒落た雰囲気が加わった、優雅で少しノスタルジックな曲です。軽やかさの中に、どこか儚さも感じられます。
- 音楽的な特徴: 優雅な3拍子のリズムに乗って、古典的な雰囲気を持つ旋律が奏でられます。しかし、和声の付け方や転調(曲の途中で調が変わること)にはドビュッシーならではの工夫が見られ、単なる古典の模倣には留まりません。中間部では少し情熱的な表情も見せます。
ドビュッシー「小組曲」:第4曲「バレエ(Ballet)」の解説
出典:YouTube
- 難易度:★★★★☆
- 概要とイメージ: 組曲のフィナーレを飾るにふさわしい、快活でエネルギッシュな舞踏曲です。速いテンポで駆け抜けるような勢いがあり、聴いていると思わず体が動き出しそうになるような、楽しさに満ちた曲です。
- 音楽的な特徴: 2/4拍子の速いテンポで、リズミカルな旋律が次々と現れます。全体的に音域も広く、華やかなパッセージ(速い動きの旋律)が多く含まれています。中間部ではワルツ風の優雅な旋律も登場し、変化をつけています。
ピアノ連弾で楽しむ「小組曲」
ドビュッシーの小組曲は、元々ピアノ連弾のために書かれただけあって、二人で演奏することでその魅力が一層引き立ちます。
連弾ならではの魅力とアンサンブルのコツ
出典:YouTube
一人でピアノを弾くのとは違い、一台のピアノからより豊かで厚みのある響きを生み出せるのが連弾の魅力。
特に「小組曲」のように、プリモ(高音域)とセコンド(低音域)がそれぞれ異なる役割を持ち、対話するように音楽が進んでいく曲では、アンサンブルの楽しさを存分に味わうことができるでしょう。
二人で息を合わせ、一つの音楽を作り上げていく過程は、連弾ならではの醍醐味です。
連弾を成功させるコツは、何よりもパートナーの音をよく聴くことです。
お互いのテンポ感、呼吸、音量のバランス、表現の意図などを感じ取りながら演奏することが大切。
発表会や友人とのアンサンブルなど、様々な場面で演奏するのに適したレパートリーであり、聴衆にも喜ばれる人気の高い作品です。
ドビュッシー「小組曲」:オーケストラ版や吹奏楽版の魅力
ドビュッシーの小組曲の魅力は、ピアノ連弾だけに留まりません。
その美しい音楽は、多くの人々を魅了し、様々な編成へと編曲されてきました。
今回はオーケストラ版と吹奏楽版を紹介します。
ドビュッシー「小組曲」:オーケストラ版(アンリ・ビュッセル編曲)
出典:YouTube
ピアノ連弾版「小組曲」を発表後、ドビュッシーの友人であり、指揮者・作曲家でもあったアンリ・ビュッセル(Henri Büsser, 1872-1973)によって、オーケストラ版に編曲されました。
ドビュッシー自身も承認しており、今日ではピアノ版と並んで広く親しまれています。
オーケストラ版の最大の魅力は、何と言ってもその色彩豊かな響き。
ピアノでは表現しきれない各楽器の持つ独特の音色が、曲の情景描写をより鮮やかにしています。
ピアノ連弾版とオーケストラ版を聴き比べることで、同じメロディやハーモニーが、異なる楽器編成によってどのように違った表情を見せるのかを発見でき、作品への理解がさらに深まると思います。オーケストラのコンサートでも頻繁に取り上げられる人気レパートリーです。
ドビュッシー「小組曲」:吹奏楽版
出典:YouTube
オーケストラ版と同様に、「小組曲」は吹奏楽のためにも編曲され、こちらも人気の高いレパートリーとなっています。さまざまな編曲者による版が存在しますが、いずれも吹奏楽ならではの華やかさ、力強さ、そして多彩な音色のブレンドが魅力です。
特に「行列」や「バレエ」といったリズミカルで快活な曲は、吹奏楽の持つパワーと相性が良く、演奏効果の高いアレンジが多く見られます。
吹奏楽コンサートやコンクールの自由曲としても、演奏されることもあるので、ご存じの方も多いはずです。
ピアノ版やオーケストラ版とはまた違った、吹奏楽ならではのサウンドで「小組曲」の世界を楽しむことができます。
ドビュッシー「小組曲」:おすすめ楽譜
ここまで読んで、「小組曲」を実際に演奏してみたくなった、あるいはじっくり聴いてみたくなった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここでは、楽譜や音源を選ぶ際のヒントをご紹介します。
おすすめの楽譜と選び方のポイント
ドビュッシーの小組曲のピアノ連弾譜は、国内外の様々な出版社から出版されています。
国内版

全音楽譜出版社(全音)や春秋社などが、比較的安価で手に入りやすく、解説も日本語で書かれているため、学習者には使いやすいでしょう。運指(指使い)なども参考にしやすいです。
輸入版

デュラン版などが原典版として有名です。
作曲者の意図により近い形で楽譜を読みたい場合や、より専門的に研究したい場合に選ばれます。お値段ちょっと高めです・・・。
可能であれば、実際に楽器店で手に取って比較してみるのがおすすめです。
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ドビュッシー「小組曲」の解説・難易度紹介:まとめ
今回は、ドビュッシーの小組曲について、その魅力や背景、各曲の解説、難易度、そしてピアノ連弾版以外の楽しみ方まで、詳しくご紹介してきました。
改めて内容をまとめます。
全4曲はそれぞれ異なる個性を持っており、「小舟にて」の穏やかさ、「行列」の華やかさ、「メヌエット」の優雅さ、「バレエ」の快活さと、飽きることなく楽しむことができます。
ピアノ連弾としての難易度は中級程度ですが、きっと表現力を磨く上で多くの学びがあるはずです。
さらに、アンリ・ビュッセルによる色彩豊かなオーケストラ編曲版や、華やかな吹奏楽版も存在し、様々な形でこの美しい音楽に触れることができるのも大きな魅力でもあります。
この記事を通して、ドビュッシーの小組曲への興味が深まり、「聴いてみたい」「弾いてみたい」と思っていただけたら幸いです。