伝統的音楽からの解放を目指したドビュッシーの代表曲を紹介します。
主にピアノ曲を紹介しますが、彼の繊細でキラキラとした色調は、
交響詩やオペラにも生かされました。
作品の特徴や魅力も解説していますので、
ぜひ最後まで読んでいただき、参考にしてくださいね。
ドビュッシーの生涯についてはコチラ
ドビュッシーの代表曲7選
ローマ賞を受賞したドビュッシー。
ピアニストの道を諦めた彼は、作曲家の道を志します。
さまざまな分野で名曲を残していますが、
今回はその中から、ピアノ曲4曲、管弦楽曲、交響詩、オペラを解説します。
いつも通りざっくり解説ですので、
気楽にお楽しみください。
「『月の光』と『アラベスク』入ってないじゃん!」と思われる方もいるかもしれません。
この2曲は別記事で解説していますのでそちらを参考にしていただければと思います。
ドビュッシーの代表曲その1、『亜麻色の髪の乙女』
ドビュッシーのピアノ曲でも、もっとも有名な作品の1つです。
普段クラシック音楽を聴いたことがない方でも、
一度は聴いたことがあると思います。
本作は1910年から1913年にかけて作曲されたピアノ曲集『前奏曲』の中の1曲。
『前奏曲』は第1巻と第2巻の各12曲で構成されています。
古代ギリシャやイタリア、スペインなどのヨーロッパ各国の芸術文化に触発されて作曲されたそうです。
ドビュッシーの後期の傑作ピアノ曲集と言えるでしょう。
本作『亜麻色の髪の乙女』は第1巻の8曲目に収録されています。
ドビュッシーの代表曲その2、『喜びの島』
2曲目は『喜びの島』です。
1904年に作曲されたピアノ独奏用曲で、画家のジャン・アントワーヌ・ヴァトーの作品、『シテール島への巡礼』にインスピレーションを受けて作曲されました↓
聴いていただくとわかると思いますが、
装飾音符や独特のリズムがドビュッシーらしさを際立たせています。
ドビュッシーのキラキラ感を体験するには、うってつけの作品ではないでしょうか。
クラシックの固定概念が覆るかもしれませんよ!
1905年にパリの国民音楽教会にて初演が行われ、のちに管弦楽曲にも編曲されています。管弦楽版はコチラを参照してみてください。
ドビュッシーの代表曲その3、『版画』
1903年に完成したこれまたドビュッシーを代表するピアノ曲集です。
ドビュッシーが「印象主義(印象派)」を確立した作品集とも言われています。
インドネシアのガムランやスペインなどの民族音楽、フランスの民謡などがモチーフとなっています。
全3曲で構成されており、それぞれ、
・塔(パゴタ)(インドネシアのガムラン的要素)
・グラナダの夕べ(スペインの民族音楽)
・雨の庭(フランスの民謡)
のタイトルで知られています。
3曲のどれも曲調が異なり世界観が全くことなるため、
ドビュッシーの才能を存分に楽しめます。
ドビュッシーの代表曲その4、『水の反映』
ドビュッシーが作曲したピアノ曲集・管弦楽曲『映像』の中の1曲です。
ドビュッシーの「水」の表現が余すことなく表現されています。
音で光を表現する印象派を代表する作品といっても過言ではないでしょう。
また、観ていただいてお分かりのように、
超絶技巧が必要とされる難曲です。
1905年頃に作曲されたそうですが、
この時期のドビュッシーはプライベートで波乱を経験した時期と重なります。
そんな時期に、よくこれほどの作品を作曲できたなというのが著者の印象です。
ラヴェルの代表曲『水の戯れ』と比較すると、両者の違いがわかり面白いかもしれません。
ドビュッシーの代表曲その5、『牧神の午後への前奏曲』
本作は作曲家ドビュッシーの出世作とされる管弦楽曲です。
冒頭の物憂げな雰囲気からして、「新しい音楽の幕開け」を感じさせてくれます。
1892年に作曲が着手され、1894年に完成しました。
さまざまな詩人に影響を受けたドビュッシーですが、
この作品も同様に、『牧神の午後』という詩人マラルメの詩にインスピレーションを受けています。
タイトルの「牧神」とはギリシャ神話に登場する「パン神」のこと(食べるパン🍞じゃないです)。
冒頭のフルートの音色は、「パンの笛の音」を表現しているそうですよ。
1894年の初演は大成功を収め、2日のアンコールが行われました。
日本でも比較的早く初演が行われ、
ドビュッシーの死後2年がたった1920年に山田耕作の指揮により初演されています。
ドビュッシーの代表曲その6、交響詩「海」
こちらもドビュッシーを代表する管弦楽曲です。
1905年に完成した交響詩「海」は、標題がついた3つの楽章で構成されています。
1、海上の夜明けから真昼まで(00:49〜)
2、波の戯れ(09:55〜)
3、風と海との対話(16:39〜)
()内は動画の時間です。
全編にわたり、刻一刻と変化する海の様子が描かれているのが最大の特徴と言えるでしょう。
標題をイメージしながら聴いてみると、より表現が楽しめるのではないでしょうか。
また、1905年に出版された『海』の楽譜表紙には、
葛飾北斎の浮世絵「神奈川沖浪裏』が使われていることでも有名です。
なんでも、ドビュッシーは自宅に浮世絵を飾るほどの浮世絵ファンだったそうですよ。
ちなみに「神奈川沖浪裏」はこれ↓。観たことがある人も多いかもしれません。
代表曲その7、オペラ「ペレアスとメリザンド」
ドビュッシーが完成させた唯一のオペラです。
1893年に作曲が開始され、途中中断を経たのち、
1902年に全ての作曲が完成しました。
完成までには、およを10年の歳月を要しています。
作品の台本は、詩人モーリス・メーテルリンクの同タイトルの戯曲が採用されています(メーテルリンクは有名な『青い鳥』の作者です)。
全5幕で構成された本作は、20世紀初頭を代表するオペラであり、
ドビュッシーの新しい試みが詰まった1曲でもあります。
のちに組曲にも編成され、現在でもコンサートで演奏される名曲です。
道ならぬ恋を題材にした『ペリアスとメリザンド』は多くの作曲家に影響を与えたことでも知られており、
なども同タイトルで作品を残しています。
ドビュッシーの作品の魅力や特徴は?
特徴と魅力その1、音楽で印象主義を表現する
ドビュッシーが「印象主義(印象派)」と言われているのは、お話しました。
しかし、「そもそも印象主義って?」と思われた方も多いでしょう。
印象主義とは、実は「絵画における表現方法の1つ」です。
そして、印象主義の大きなテーマに「対象の見え方」つまり「光」があります。
皆さんも想像がつくと思いますが、光の加減や影により物の見え方って変わりますよね?
そうした一瞬一瞬の物の見え方の違いを表現しようとしたのが、「印象主義」の絵画なんです。
モネがその生涯でおよそ250枚もの「睡蓮」を描いたのは、そのような哲学によります。
<睡蓮>引用wikipedia
他にも、印象主義の代表者としては、マネ、ドガ、ルノワール、ピサロという人たちがいるので、ぜひ観てみてください。
物の見え方を重要視した印象主義の手法を、音楽で表現しようとしたのが、
ドビュッシーやラヴェルです。
ドビュッシーの代表作『月の光』を聴くと柔らかい月の光の感じがつたわりませんか?
特徴と魅力その2、異国の文化を作品に反映させる
ドビュッシーが生きた19世紀後半から20世紀初頭にかけては、音楽史における大きな転換点でした。
ベートヴェンによる古典派の完成とロマン派への移行。
そしてワーグナーやブラームスによりロマン派は頂点に達し、
マーラーやR・シュトラウスによってロマン派は終了を迎えます。
そのような時代のなかで、ドビュッシーが目指したのは伝統にとらわれない新しい音楽への試みでした。
上述の印象主義の手法を取り入れ、さらに民族音楽を作品に取り入れたのもドビュッシーの特徴と言えるでしょう。
今回紹介したピアノ曲集「版画」はまさにこの例です。
ガムランの異国情緒が、ドビュッシーの感性と見事に融合しています。
民族音楽の取り入れは、のちのファリャやメシアンといった作曲家に大きな影響を与えました。
特徴と魅力その3、クラシック以外にも影響を与える
ドビュッシーの音楽は、ジャズやロック、ポップスなどのさまざまなジャンルに影響を及ぼしました。
とくにジャズへの影響が強く、ガーシュウィンをはじめ、デューク・エリントン、バド・パウエル、マイルス・デイヴィス、ビル・エヴァンス、ハービー・ハンコックといったジャズの巨匠たちも影響をうけています。
なかでもジャズの帝王マイルス・デイヴィスの代表作「So what」は、
ドビュッシーの前奏曲の1曲から着想を得たと言われています。
まとめ
ドビュッシーの代表曲と作品の特徴や魅力を紹介しました。
この記事が、ドビュッシー作品への興味に繋がれば幸いです。
これまで当ブログで紹介した作曲家の作品と聴き比べてみるのも、面白いかもしれません。