この記事ではは、ヘンデル(ハルヴォルセン編曲)「パッサカリア」のピアノ難易度を解説します。
ドラマティックな展開に魅了され、「いつか弾いてみたい!」と憧れている方も多いのではないでしょうか?
しかし同時に、「どれくらい難しいのだろう?」と、パッサカリアのピアノ難易度が気になる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、そんなヘンデル(ハルヴォルセン編曲)の「パッサカリア」について、ピアノ演奏における難易度を具体的な技術レベルや課題を交えながら徹底解説します。
この記事でわかること
各見出し下の演奏動画もぜひ参考にしてください!
筆者は3歳からピアノを開始。紆余曲折を経て、かれこれ30年近くピアノに触れています(音大には行ってません)。
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ヘンデルの「パッサカリア」とは?
出典:YouTube/ヘンデル – 「パッサカリア」 – チェンバロのための組曲第7番 HWV 432
まず、この有名な「パッサカリア」がどのような曲なのか、その成り立ちから見ていきましょう。
パッサカリアの原曲について
俗に言う「ヘンデルのパッサカリア」の元となったのは、バロック時代の巨匠ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルが作曲した「ハープシコード組曲 第7番 ト短調 HWV 432」の終曲(第6曲)です。
原曲はチェンバロ(ハープシコード)のために書かれた、バロック音楽特有の荘厳さと気品を持つパッサカリア形式の楽曲。
上の動画がモチーフになったと言われています。
パッサカリアとは、スペイン起源の舞曲形式で、低音部で同じ旋律(執拗低音)が繰り返される中、上声部が次々と変奏されていくのが特徴です。
有名なピアノ版はハルヴォルセン編曲
ということで、現在ピアノで広く演奏されている「パッサカリア」は、ヘンデルの原曲そのものではありません。
じゃあ誰の作品?ってなりますよね。
答えは、ノルウェーの後期ロマン派の作曲家ヨハン・ハルヴォルセンが、ヘンデルの主題を用いてヴァイオリンとヴィオラ(またはチェロ)のための二重奏曲として編曲したもの。
このハルヴォルセンによる編曲が非常に劇的で技巧的であったため人気を博し、さらに多くの編曲者によってピアノ独奏用や連弾用に編曲されました。
そのため、この記事では特に広く演奏されているピアノ独奏版のパッサカリアのピアノ難易度について主に解説していきます。ハルヴォルセン編曲版は、原曲のバロック的な骨格に、ロマン派的な情熱、超絶技巧、ダイナミクスの幅広さが加えられ、非常に華やかで聴き映えのする作品となっています。
ちなみに、ヨハン・ハルヴォルセンはグリーグの姪の夫です。
パッサカリアのピアノ難易度は?
出典:YouTube
結論
ピアノ独奏版のパッサカリアは「初級上〜中級」レベルかなと。
ちなみに、このレベルは一番有名なピアノ版のレベルです。
具体的な教材レベルで言うと、以下のようなレベル感を目安とすると良いでしょう。
もちろん、これはあくまで目安。
技術要素(速いパッセージ、オクターブ奏法など)の得意不得意によって、体感的な難易度は変わってきます。
他の有名曲と比較すると、ベートーヴェンのピアノソナタ「悲愴」の第1楽章やドビュッシーの「月の光」、ショパンの「雨だれの前奏曲」などが、総合的な難易度として近いレベル感と言えるかもしれません。
ただし、曲によって要求される技術は異なりますし、楽譜のレベルによっても異なります。
実体験として、パッサカリアのピアノ難易度は決して高くない印象です。
「パッサカリア」の難易度解説:音楽的・表現上のポイント
ヴァイオリンとチェロバージョン:出典:YouTube
ヴァイオリンとチェロバージョンは、ピアノ・ソロ版とかなり違いますね(参考まで)
技術的な難しさに加え、音楽的な表現においてもパッサカリアならではの課題があります。
ポイントは以下の3つ。
バロック様式とロマンティックな編曲の融合
原曲はヘンデルによるバロック時代の作品ですが、ハルヴォルセンによる編曲はロマン派の語法が色濃く反映されています。バロック音楽特有の様式感(厳格なリズム、対位法的な構造など)を保ちつつ、編曲によって加えられた情熱的な表現やダイナミックな展開をどのように融合させ、説得力のある演奏にするかが音楽的な課題となります。
変奏ごとのキャラクターの描き分け
パッサカリアは主題とそれに続く多数の変奏で構成されています。
それぞれの変奏は、技巧的なもの、歌謡的なもの、力強いもの、軽快なものなど、異なる性格(キャラクター)を持っています。こうした違いをとらえ、音色やタッチ、テンポ感などを変化させて表現豊かに弾き分けることが重要。
通奏低音(バスライン)の重要性
パッサカリア形式は繰り返される低音の主題(執拗低音、バスライン)がとくに大切。
このバスラインは曲全体の土台であり、常に意識して響かせる必要があります。他の声部がどれだけ華やかに展開しても、このバスラインがしっかりと存在感を示すことで、曲の構造が明確になり、説得力が増しますよ。
パッサカリアはどんなレベルの人におすすめ?
出典:YouTube
これまでの解説を踏まえると、パッサカリアは以下のようなレベルの方におすすめです。
- ツェルニー30番を終え、40番練習曲などに取り組んでいる方。
- バッハのインヴェンション・シンフォニア、平均律クラヴィーア曲集などを学習し、ポリフォニックな音楽への理解と演奏経験がある方。
- ベートーヴェンの比較的簡単なソナタ、ショパンのワルツやノクターンなどのレパートリーを経験している方。
- 速いパッセージ、オクターブ奏法、和音奏法、左右の手の独立といった技術的な課題に意欲的に取り組める方。
- 技術だけでなく、音楽的な表現力を深めたいと考えている方。
パッサカリアのピアノ難易度は高くはありませんが、まったくの初心者の方はかなりの練習が必要かなと。
パッサカリアの効果的な練習方法
出典:YouTube/クラシック・アラモード様より
難易度の高いパッサカリアを攻略するためには、効果的な練習が欠かせません。
以下の5つのヒントを参考に、根気強く取り組んでみてください。
ゆっくり正確に練習する
何よりもまず、ゆっくりとしたテンポで練習しましょう。
一つ一つの音、リズム、指使い、アーティキュレーション、強弱などを正確に確認しながら練習することが重要。急がば回れ。この地道な作業が、最終的な完成度を左右します。
最初からムリに弾こうとすると、クセがついてしまうので、最初はゆっくりと。
部分練習・セクション練習
曲全体を通して練習するだけでなく、自分が苦手な箇所、技術的に難しいパッセージごとに区切って集中的に反復練習を行いましょう。難しい部分を克服することで、全体の流れもスムーズになります。
よくありがちなのが、「ミスしたら最初にもどる」というやり方。弾けるところは置いといて、苦手なところを重点的に!
片手ずつ練習する
特に左右で異なる動きをする箇所や、ポリフォニックな箇所では、まず片手ずつ完璧に弾けるように練習しましょう。それぞれのパートの役割、メロディライン、リズム、アーティキュレーションを完全に把握してから両手で合わせることで、混乱を防ぎ、効率的に学習を進められますよ!
リズム練習・変奏練習
速いパッセージで指がもつれたり、リズムが崩れたりする場合は、リズムを変えて練習する(付点リズム、逆付点リズムなど)のが効果的です。こうすることで、指の動きが整理され、均一な打鍵や正確なリズム感が身につきます。
メトロノームを使うのもおすすめです。スマホのメトロノーム・アプリでもOK。
楽譜動画や模範演奏を参考にする
自分だけで楽譜と向き合うだけでなく、プロのピアニストによる模範演奏を聴いたり、楽譜付きの演奏動画を観たりすることも役立ちます。指使い、ペダリング、間の取り方、表現のニュアンスなど、多くのヒントを得られるはずです。
この記事でもいくつか挿入しているので、ぜひ見て練習してください!
パッサカリアの楽譜紹介
さまざまな版がありますが、こちらの楽譜では簡単バージョン〜難しいバージョンまで楽しめます。英語なので見にくいかもですが、興味のある方はぜひ。

ヘンデル「パッサカリア」のピアノ難易度:まとめ
今回は、ヘンデル=ハルヴォルセン編曲の「パッサカリア」について、そのピアノ難易度を中心に、技術的・音楽的な課題、練習方法、おすすめの資料などを解説しました。
結論として、パッサカリアのピアノ難易度は「初級上〜中級」レベルです。
しかし、幅広い表現力など、総合的なピアノ技術が要求される楽曲でもあります。
この記事でご紹介した練習方法やヒントを参考に、ご自身のレベルに合わせて段階的に練習を進めていけば、必ず憧れのパッサカリアを演奏できるようになるはずです。
パッサカリアのピアノ難易度を理解した上で、ぜひこのドラマティックで美しい名曲の演奏にチャレンジしてみてください!