【無料楽譜あり】「レントより遅く」の難易度を超絶解説!弾き方のコツも紹介!

    ドビュッシーの「レントより遅く」は、その甘く切ないメロディと、気だるくもおしゃれな雰囲気で、多くのピアノ愛好家を魅了し続ける珠玉の名曲です。

    一度は弾いてみたいと憧れを抱く方も多いのではないでしょうか。

    しかし、いざ楽譜を前にすると、「この独特の雰囲気はどうやって出すの?」「装飾音符やリズムが難しそう…」と感じてしまうかもしれません。

    この記事では、そんな方のために、以下の内容を分かりやすく解説していきます。

    • 「レントより遅く」の具体的な難易度(10段階評価付き)
    • 曲の背景と魅力
    • 美しく響かせるための演奏のコツ3選
    • 練習に役立つおすすめの楽譜や音源(無料楽譜情報も!)

    この記事を読めば、憧れの「レントより遅く」を、ただ音を並べるだけでなく、聴く人の心に響く音楽として奏でるためのヒントがきっと見つかるはずです!

    記事の一番最後には、ドビュッシーの関連記事も豊富に紹介しています。

    そちらもあわせてご参考ください。

    筆者は3歳からピアノを開始。紆余曲折を経て、かれこれ30年以上ピアノに触れています。音大には行っておらず、なぜか哲学で修士号というナゾの人生です。

    ドビュッシー「レントより遅く」とは?

    出典:YouTube

    まずは、この「レントより遅く」という不思議なタイトルの曲が、どのような経緯で生まれ、どんな魅力を持つのかを見ていきましょう。

    背景を知ることは、演奏表現を深める第一歩ですよ!

    タイトルの由来はロマのヴァイオリニストへの皮肉?

    この曲は1910年、ドビュッシーが48歳の頃に作曲されました。

    タイトルはフランス語で “La plus que Lente” 。

    直訳すると「レントよりもっと遅く」となります。

    「レント」とは、音楽用語で「ゆるやかに」という意味。そ

    れよりも「もっと遅い」とは、なんとも不思議なタイトルですよね。

    一説には、当時パリのカフェで流行していたジプシー(ロマ)のヴァイオリニストが、感傷的な曲を大げさなほどゆっくり演奏していたのを、ドビュッシーが少し皮肉を込めて模倣した、と言われています。

    しかし、そこは天才ドビュッシー。

    出来上がった音楽は単なるパロディではなく、世紀末のパリの退廃的で洗練された空気感、そして大人の憂いが見事に表現されていま。

    形式としては「ヴァルス・レント(遅いワルツ)」であり、優雅な3拍子のリズムが全編を支配しています。

    参考|ピティナ・ピアノ曲事典|レントより遅く(ワルツ) 変ト長調

    甘美で切ないメロディと洗練されたハーモニー

    この曲の最大の魅力は、一度聴いたら忘れられない甘美なメロディラインと、それを彩るドビュッシーならではの絶妙なハーモニーにあります。

    もしかしたら、普段クラシック音楽を聴かない方でも、どこかで聴いたことがあるかもしれません。

    • 冒頭の有名な旋律: 少し気だるげに始まり、次第に熱を帯びていく息の長いメロディ。
    • 色彩豊かな和声: 長調でも短調でもない、浮遊感のある独特の響き。
    • 中間部の高揚: 甘い追憶に浸るような、情熱的で美しい展開。

    これらの要素が絡み合い、一本のフランス映画を観ているかのような、物語性豊かな音楽世界を創り出していると言えるでしょう。

    いわゆり、エスプリがきいている作品ですね。

    ドビュッシーの生涯については、こちらの記事で書いています。

    「レントより遅く」の演奏時間は4〜5分くらい

    本作は、小規模のピアノ曲です。

    そのため、演奏時間も短く、大体4〜5分程度で演奏されることが多いようです。

    タイトルにつられて、あんまり遅く弾きすぎると「間延びした印象」になるので、注意ですね!

    「レントより遅く」の難易度は?星マークで徹底評価!

    出典:YouTube

    ということで。

    「レントより遅く」はどのくらい難しいのでしょうか。

    総合的な難易度と、その内訳を技術面・表現面から詳しく見ていきましょう。

    個人的な経験も踏まえてですが、評価の基準はこんな感じです。

    • ★1〜3つ👉初級〜初級上
    • ★4〜6つ👉中級〜中級上
    • ★7つ上級(最盛期の筆者はこの辺)
    • ★8つ上級中
    • ★9つ上級上
    • ★10激ムズ〜極めて特殊な才能でないと弾けないレベル

    「レントより遅く」の総合難易度:★★★★☆☆☆☆☆☆ (4/10)

    これを踏まえた上で、難易度を表してみましょう。

    結論として、「レントより遅く」の難易度は「星4つ」です(いや、5くらいかな)

    これは、ピアノ中級者がステップアップを目指すのに最適なレベル。

    ショパンのワルツやノクターンなどをある程度弾きこなせる方であれば、十分に挑戦できるでしょう。

    とはいえ、星の数だけでは測れない「難しさ」がこの曲には潜んでいます。

    技術的なハードルよりも、むしろ表現の繊細さかなと

    「レントより遅く」:技術的な難易度

    テクニック面では、以下の3点が主な課題となります。

    1. リズムの正確性: 3連符や5連符、装飾音符などが頻繁に登場します。これらを正確なリズムで、かつ音楽の流れを止めずに滑らかに弾くには、丁寧な譜読みと練習が必要。
    2. 左手のアルペジオ: 左手は終始、分散和音(アルペジオ)で右手のメロディを支えます。この伴奏が硬くなったり、音が大きすぎたりすると、途端に曲の持つ優雅さが失われてしまいます。脱力して、さざ波のように軽やかに弾く技術が求められます。
    3. 繊細なペダリング: ドビュッシーの音楽において、ペダルは生命線です。響きを豊かにしつつも、決して和音を濁らせてはいけません。特に、この曲では響きが溶け合うような効果を狙うため、踏み替えのタイミングが非常にシビアになります。

    「レントより遅く」:表現的な難易度

    この曲の本質的な難しさは、むしろこっちです。

    1. テンポ・ルバートのセンス: “Lent”(ゆるやかに)と指示されていますが、ただゆっくり弾けば良いわけではないです。メロディの歌い方に応じて、テンポを自然に揺らす(ルバートする)センスが不可欠。この「揺れ」がわざとらしくなると、途端に陳腐な演奏になってしまいます。
    2. 音色のコントロール: 楽譜にはpp(ピアニッシモ)やp(ピアノ)が多く出てきます。特に消え入るようなppの美しさは、この曲の肝です。弱い音でも芯があり、響きを失わないタッチをコントロールする能力が問われます。
    3. フランス音楽特有の「粋(エスプリ)」: 甘く切ない曲ですが、どこか客観的で、一歩引いたようなクールさ、洗練された「粋」な雰囲気を出すことが、ドビュッシーをかっこよく演奏する秘訣です!

    「レントより遅く」を弾くための3つのコツ

    出典:YouTube

    では、これらの難しさを乗り越えるために、どんな点を意識すれば良いのでしょうか。

    具体的な3つのコツを紹介します(昔レッスンで教わったことをまとめますね)。

    「レントより遅く」を弾くためのコツ1:右手のメロディを「オペラ歌手」のように歌わせる

    この曲の主役は、もちろん右手のメロディ。

    このメロディを、まるで熟練の歌手が歌うように、息長く、表情豊かに演奏することがとても大切です。以下のような練習法がおすすめですよ!

    • 練習法:右手だけで何度も弾く
      まずは左手を完全に無視して、右手だけでメロディを徹底的に練習しましょう。フレーズの始まりから終わりまで、どこで息継ぎ(フレージング)をするのか、どこが一番の盛り上がり(頂点)なのかを考えます。そして、その頂点に向かって少しクレッシェンドし、通り過ぎたらディミヌエンドする、という「フレーズの山」を意識して弾いてみてください。
    • タッチの工夫:指先だけでなく腕全体で
      美しいレガート(滑らかな演奏)のためには、指先だけで弾くのではなく、手首の柔軟な動きや、腕の重みを乗せる感覚が大切です。鍵盤の上を指が滑るように、次の音へ重さをスムーズに移動させていくイメージを持つと良いでしょう。

    「レントより遅く」を弾くためのコツ2:左手のアルペジオを「ヴェール」で包むように

    左手の伴奏は、主役であるメロディを優しく包み込む「ヴェール」のような存在です。
    決して自己主張はなるべくひかえめに。

    • 練習法:「メロディの10分の1」の音量を意識
      練習の段階で、極端なくらい左手を弱く弾く練習をします。「右手のメロディの10分の1くらいの音量で」と自分に言い聞かせながら弾いてみましょう。そうすることで、メロディを聴き、それに寄り添う耳が育ちます。
    • 脱力が鍵
      左手のアルペジオを軽やかに弾くためには、手首や腕の脱力が不可欠です。手首を固定せず、回転運動を使うように弾くと、音が転がりやすくなります。

    「レントより遅く」を弾くためのコツ3:ペダルは「香水」のように、ほのかに香らせる

    ドビュッシーのペダリングは、ベタっと踏み続けるのではなく、響きと響きをブレンドさせ、色彩を混ぜ合わせる絵の具のパレットのような役割を果たします。

    • 基本は「ハーフペダル」
      ペダルを床まで完全に踏み込むのではなく、半分くらいの深さでコントロールする「ハーフペダル」を基本と考えましょう。こうすると、前の響きを完全に消さずに、次の和音を重ねることができ、独特の浮遊感が生まれますよ!
    • 耳で聴いて踏み替える
      楽譜のペダル記号はあくまで目安です。最終的には自分の耳を信じ、「響きが濁ってきたな」と感じた瞬間に、素早く踏み替える判断力が求められます。録音して客観的に聴き返すのも非常に効果的な練習法です。

    ピアノの先生と相談できる方は、相談しながら練習してみてください!

    「レントより遅く」の楽譜情報【無料楽譜あり】

    出典:YouTube:公式チャンネルより

    最後に、「レントより遅く」の楽譜情報を紹介して終わりにします。

    動画は高松亜衣さんによる、ヴァイオリンバージョンです。

    おすすめの楽譜

    海外版なら、ヘンレ社がおすすめです。とくに作曲者の意図を深く知りたい方にぴったりです。

    >>アマゾン:ドビュッシー: レントより遅く(ワルツ)/原典版/Heinemanne編/Theopold運指/ヘンレ社/ピアノ・ソロ

    日本の出版社からも、解説の丁寧な版が多数出ていますので、楽器店で比較してみるのも良いと思いますよ!

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    著作権が切れた楽譜を無料でダウンロードできるため、「La plus que Lente」と検索すれば、すぐに楽譜を手に入れることができます。ただ、わりと最近亡くなった人(ハチャトゥリアンとか)のはありません(著作権は死後70年続くので)。

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    レントより遅くの難易度解説:まとめ

    今回は、ドビュッシーの「レントより遅く」の難易度と、美しく弾くためのコツについて解説しました。

    • 難易度は星4つ(★★★★☆☆☆☆☆☆)。中級者が表現力を磨くのに最適な一曲。
    • 技術的な難しさ以上に、テンポの揺らし方や音色のコントロールといった表現面のセンスが問われる。
    • ①メロディを歌わせる、②伴奏を抑制する、③ペダルを繊細に使う、という3つのコツが演奏の鍵。

    この曲は、テクニックをひけらかすタイプの曲ではありません。むしろ、ピアニストの内面的な成熟度や音楽的なセンスが如実に表れる、奥の深い作品です。

    この記事で紹介したコツを参考に、ぜひあなただけの「レントより遅く」を奏でてみてください。その甘く切ないメロディは、きっとあなたにとって、そして演奏を聴く人にとって、忘れられない時間をもたらしてくれるはずです!

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