ラヴェル記事2つ目は、おすすめ代表曲の紹介です。
いつもながら、作品の魅力や特徴もざっくり解説していますでので、
ぜひ参考にしてみてください。
伝統にあらがったドビュッシーと、伝統を踏まえたラヴェルとの作品の違いを知るのも、
面白いかもしれません。
作品を堪能する前に、ドビュッシーの作品を確認しておきたい方はコチラ。
ラヴェルの生涯についてはコチラをぜひ参考にしてください。
ラヴェルのおすすめ代表曲7選
人生の早くから大きな評価を受けたラヴェル。
ラヴェルの作品は、技法や表現において、20世紀初頭のクラシック音楽に大きな影響を与えました。
なかでも、今回紹介する作品はラヴェルを代表するものばかりですので、
ぜひこの記事を機会に教養の一部としてお役立てください。
ラヴェルの代表曲その1、『水の戯(たわむ)れ』
1901年、ラヴェルがパリ音楽院時代に作曲したピアノ曲です。
25歳か26歳でこの感性と完成度、純粋に天才だと思います。
「水の戯れ」のタイトルの通り、キラキラとした水の様子が見事に表現されています。
1902年に国民音楽協会にて初演が行われました。
しかし、初演時の評価はあまり良いものではなかったようで、
カミーユ・サン=サーンスは、「まったくの不協和音」と手厳しい評価を述べたと言われています。
ちなみに、「水の戯れ」とは日本語の意訳で、本来は「噴水」を意味しているそうです。
作品は、ラヴェルの作曲の先生だったガブリエル・フォーレに献呈されました。
サン=サーンスはこんな人↓
ガブリエル・フォーレはこんな人↓
ラヴェルの代表曲その2、組曲「鏡」
『水の戯れ』から4年後の1905年に作曲された、全5曲からなるピアノ組曲です。
1900年代はラヴェルにとって多作な時期であり、
本作は初期ラヴェルを代表する作品と言えるでしょう。
1906年に初演が行われ、印象主義的手法のほか、スペインの民族音楽的リズムが絶妙に表現されています。
組曲ですが、独立して演奏されることも多い人気曲です。
5曲のタイトルは以下の通り。
1、蛾
2、悲しげな鳥たち
3、海原の小舟
4、道化師の朝の歌
5、鐘の谷
この中の「海原の小舟」と「道化師の朝の歌」は管弦楽にも編曲されています。
代表曲その3、組曲「夜のガスパール」
こちらもピアノ独奏のための組曲です。
フランスの詩人ルイ・ベルトランの詩にインスピレーションを受けて作曲されました。
1908年に作曲され、1909年に初演が行われています。
ピアノ・ソナタ形式を受け継ぎながらも、ラヴェル独特の手法が用いられており、
初期の最高傑作とも称されています。
組曲の構成は次のとおり。
1、オンディーヌ
2、絞首台(こうしゅだい)
3、スカルボ
第1曲『オンディーヌ』が『水の戯れ』『海原の小舟』に並ぶ「水3部作」とされるほか、
『スカルボ』は最も難しいピアノ曲としても有名です。
一説には、バラキレフ作曲のピアノの難曲『イスラメイ』を超えるために作曲されたと言われています。
ちなみに、動画の亀井さんについてはコチラから↓
代表曲その4、『左手のためのピアノ協奏曲』
ラヴェル最初のピアノ協奏曲です。
タイトルのとおり左手だけで演奏される珍しいピアノ協奏曲ですが、
これは第1次世界大戦で右手を失ったピアニスト・パウル・ヴィトゲンシュタインの依頼によるためです。
ラヴェルはこの作品を完成させるにあたり、
サン=サーンスの『左手による6つの練習曲』や、
チェルニーの『左手の学校』といった作品を参考にしました。
1929年に作曲が開始され、1931年に初演が行われましたが、
あまりの難しさに、ヴィトゲンシュタイン自身が弾きこなせなかったという伝説が残されています。
また、この事件がきっかけとなり、2人の仲は険悪になったそうです。
代表曲その5、『展覧会の絵』管弦楽版
「スイスの時計職人」「オーケストレーションの魔術師」と称されたラヴェルは、
編曲でも優れた才能を発揮しました。
とりわけ有名なのが、ムソルグスキー作曲のピアノ組曲『展覧会の絵』のアレンジです。
というより、ラヴェルのアレンジ版の方が現代では有名かもしれません。
1922年、指揮者クーセヴィツキーの委嘱を受けたラヴェル。
一説によると、ラヴェルがこの仕事を快諾した理由は、報酬が良かったことに加え、ムソルグスキーの和音を高く評価していたからだと考えられています。
日本でも、バラエティ番組「なにこれ珍百景」で使用されていることから、
耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
依頼を受けた同年に初演され、ムソルグスキーの名が世界的に知られるきっかけにもなりました。
代表曲その6、『スペイン狂詩曲』
ラヴェルが作曲した最初の管弦楽曲であり、代表曲でもあります。
現代ではラヴェルの人気作品として広く愛されていますが、
発表当時の評価はイマイチだったそうです。
全4曲で構成されていますが、全体でも15分程度のコンパクトな作品なため、
ラヴェルの管弦楽曲を初めて聴く方におすすめです。
4曲の構成は次の通りです。
1、夜への前奏曲
2、マラゲーニャ
3、ハバネラ
4、祭り
どの作品も、ラヴェルの豊かな表現力が存分に発揮されています。
子育てのスキマ時間に本を聴いて楽しむ – audiobook.jp代表曲その7、バレエ『ダフニスとクロエ』
ラヴェルを代表するバレエ曲です。
ロシアの大物プロデューサーとして名を馳せた、セルゲイ・ディアギレフの依頼により作曲され、1912年に初演を迎えました。
初演は大きな成功を収め、翌年1913年、本作からの抜粋により、
『ダフニスとクロエ 第2組曲』として管弦楽版にアレンジされています。
この組曲は、そのオーケストレーションの巧みさから、クラシック音楽にとって重要な位置を占める作品でもあります。
子どもから大人、高齢者の方も大歓迎!【椿音楽教室】モーリス・ラヴェルの作品の特徴や魅力は?
ここまで、筆者の独断によるラヴェルの代表曲を紹介しました。
もちろん、他にもたくさんの優れた作品がありますが、
全部を紹介しきれないので、ご容赦ください。
ここからは、ラヴェルの作品の特徴や魅力を簡単に紹介します。
ラヴェルの作品の特徴や魅力その1、「オーケストレーションの天才」
彼の作品の最も顕著な特徴であり大きな魅力の一つに、色彩豊かな管弦楽法が挙げられます。
ラヴェルは、その優れたオーケストレーションにより、「オーケストレーションの魔術師」や「スイスの時計職人」と称されました。
なかでも、最も有名で特筆すべきなのが、誰しも1度は聴いたことがあるであろう「ボレロ」です。
この作品は、シンプルなメロディ繰り返されるだけのように思えますが、管弦楽法によって徐々に厚みを増し、華やかに展開していく構造を持っています。
ラヴェルは、さまざまな楽器を用いて音楽的なカラフルさを引き立て、オーケストラ全体がダイナミックに参加するこの作品は、管弦楽法の巧妙さと彼の創造性を示す上でもっとも優れた作品と言えるでしょう。
代表曲で取り上げた『展覧会の絵』もラヴェルのオーケストレーションの魅力が存分に発揮された作品です。
特徴や魅力その2、「印象派の確立」
ラヴェルは印象派の表現理念に深く共感し、その影響を作品に反映させました(ドビュッシーもそうですが)。
ピアノ作品『水の戯れ』は、水の流れや波の動きを音楽で表現する試みです。ピアノのアルペジオやトリル、華麗な音色変化を通じて、水の流れの美しさや変化に捧げられています。
また、ピアノ組曲『夜のガスパール』の「オンドイン」は、水の精霊の物語を音楽で描写し、印象派の繊細さと詩的な表現を魅せています。
視覚的な変化を音楽で表現する「印象派音楽」の完成に、ラヴェルは大きな貢献を果たしました。
特徴や魅力その3、「古きを活かし、新しきを創る」
ドビュッシーが既存の伝統を乗り越えた一方、ラヴェルは伝統を活かしながら印象派音楽を生み出しました。
ラヴェルが新古典主義の要素を取り入れたのも、クラシック音楽の伝統に敬意を持っていたためです。
そしてその代表的の一つが『左手のためのピアノ協奏曲第1番ト長調』であり、この協奏曲には、バロック音楽の様式を思わせるリズミカルな要素と、ラヴェル特有のモダンなハーモニーが見事に組み合わさっています。
クラシック音楽の伝統を受け継ぎつつ、民族音楽的要素をふんだんに取り入れて作品に活かした点が、ラヴェルの作品の大きな特徴であり、また魅力でもあると言えるでしょう。
ラヴェルの代表作まとめ
今回はラヴェルのおすすめ代表作と作品の特徴や魅力について解説しました。
ドビュッシーと同様、印象派に属するラヴェルの作品は、
聴く人に新たな音楽体験をもたらしてくれます。
作品としては、とりわけ『ボレロ』が有名ですが、
その他にも優れた作品がたくさんありますので、
この記事をきっかけにラヴェルの他の作品にもぜひ触れてみてください!