ベートーヴェンのピアノソナタ第17番《テンペスト》は、その劇的な展開と美しい旋律で多くのピアノ愛好家を魅了しています。「いつかは弾いてみたい」と憧れる方も多いでしょう。
一方で、気になるのはその難易度や初心者が弾けるようになるまでの期間です。
この記事では、《テンペスト》の難易度を詳しく解説し、初心者が目指す際の目安期間、練習のコツを幅広く紹介します。
でもまあ、先にざっくりと結論を言うと、テンペストの難易度は一般的に中級上〜上級レベルです。
とはいえ、以下で詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください!
各見出し下に素晴らしい演奏動画を紹介するほか、記事の後半では参考動画や楽譜も紹介しています。
筆者は3歳からピアノを開始。紆余曲折を経てかれこれ30年くらいピアノに触れています。テンペストは高校生(16か17歳くらいで演奏しました)。
「テンペスト」の難易度は?【結論】
出典:YouTube:バレンボイム
ベートーヴェンのピアノソナタ第17番《テンペスト》は、中級上〜上級レベルかなと。
実体験として、超に絶難しいわけではないというのが感想です(あくまでも技術面ですよ)。
とはいえ、もちろん表現の追求は一生モノではることは間違いありません。
具体的なテクニックとしては、以下のものが参照になります。
高度なテクニックだけでなく、表現力や構成理解も求められるため、ピアノ歴が浅い方にとっては大きなかなりの挑戦といえるでしょう。
ベートーヴェンと「テンペスト」の背景
出典:YouTube
本作は正式には、ベートーヴェン作曲「ピアノソナタ第17番 ニ短調 Op.31-2」と呼ばれます。
《テンペスト(嵐)》という愛称は後世のものですが、曲の劇的な雰囲気をよく表しています。
作曲されたのは1802年、ベートーヴェンが病を苦に、死の覚悟をした「ハイリゲンシュタットの遺書」を書くなど、心身ともに追い込まれた時期です。
ある意味でこの曲は、絶望の中から生きる力を見出そうとするベートーヴェンの、魂の証でもあるといえるかもしれません。
当時のベートーヴェンが、いかに「死に向かっていたか」を示す言葉として、遺書の最後の一文を紹介します。
私は敢然と汝(死)を迎えよう。――ではさようなら、私が死んでも、私をすっかりは忘れないでくれ。生きている間私はお前たちのことをたびたび考え、またお前たちを幸福にしたいと考えて来たのだから、死んだのちも忘れないでくれとお前たちに願う資格が私にはある。この願いを叶えてくれ。
出典:青空文庫:ハイリゲンシュタットの遺書より
ベートーヴェンの生涯についての解説は、コチラの記事に書いています。
参考|ピティナ・ピアノ曲事典:ベートーヴェン :ピアノ・ソナタ 第17番「テンペスト」 ニ短調 Op.31-2
各楽章の難易度と楽曲解説
出典:YouTube:CANACANA femily様より
ここでは、各楽章に分けて難易度を解説します。
ポイントを抑えることで、マスターのスピードが上がるはずです。
全体の構造は、急-緩-急の3楽章構成で、各楽章が対照的ながらも深いつながりを持っています。いずれの楽章においても、技術的・音楽的な面のおいて演奏者に高い要求がもとめられます。
それぞれ紹介します。
第1楽章:Largo – Allegro(ソナタ形式)
ソナタ形式。緩徐な冒頭から一転、嵐のようなアレグロへ。
劇的な対比が特徴です。ベートーヴェンの内面の嵐を描写するような激しい音楽が展開します。ダイナミクスの変化や緊迫感を意識して。
- 特徴:緩やかな導入から嵐のようなアレグロへと一転。
- 難易度ポイント:高速の分散和音、トレモロ風パッセージ、広い音域とダイナミクス。
- 表現のコツ:対比を意識し、緊迫感のある流れを作ること。
出典:YouTube
自身の過酷な運命が、急速におしかけるてくる、そんな印象を受けます。
第2楽章:Adagio
自由な形式。静かで内省的な雰囲気を持つ緩徐楽章です。美しい旋律をピアニッシモで滑らかに歌わせる高い音楽性が求められます。深い精神性が感じられる楽章であり、感情移入が重要。
- 特徴:自由な形式で、深く内省的な美しさを持つ緩徐楽章。
- 難易度ポイント:滑らかなレガート、多声部の弾き分け、繊細なタッチ。
- 表現のコツ:フレーズ感と音色に注意し、精神性を音に乗せて。
出典:YouTube
束の間の安堵。平静と安らぎを見つけ、光へと歩み出す
3楽章:Allegretto(ロンド形式)
ロンド形式。終始速いテンポで駆け抜ける情熱的な楽章です。
正確な指の動き、持久力、均一なタッチが必要です。ベートーヴェンの強い意志やエネルギーを表すようで、フィナーレにふさわしい楽章となっています。
- 特徴:全体を駆け抜けるようなエネルギッシュな終楽章。
- 難易度ポイント:高速パッセージ、持久力、均一なタッチ。
- 表現のコツ:「疾走感」を大切に、情熱的で明快な演奏を目指す。
出典:YouTube
そして新たな人生が幕を開ける。しかし、厳しさと困難は変わらない。だからこそ、芸術だけが、音楽こそが生きる目的を与えてくれた。
初心者が「テンペスト」を弾けるようになるまでの期間
出典:YouTube:グレン・グールド
ここまで、ベートーヴェン「テンペスト」の難易度を解説しました。
リサーチしていると、「初心者でも弾けるのか?」や「初心者が弾けるようになるには何年かかる?」といった疑問がチラホラありました。
なので、ここからはそんな疑問に答えていきます。
ピアノ経験年数別の目安
筆者の実体験も含め、簡単ではありますが目安を紹介しますね。
ちょっと「希望的観測が強め」の目安ですが・・・。
あくまでも、真剣にやれば到達できるんじゃないか、という感じです。
レベル | 目安年数 | 解説 |
---|---|---|
全くの初心者 | 5〜10年 | 毎日の練習と基礎習得が必須。 |
ソナチネ修了レベル | 2〜5年 | 中級から上級へのステップとして挑戦可能。 |
始めるタイミングが早ければ早いほど、この表に近づくと思います。大人になってから始めた場合はプラス2〜3年という印象。
習得に影響する5つの要因
以下のことを意識すると、習得が早くなると思います。
一つずつ、意識して取り組んでみてください。
- 日々の練習時間と練習の質
- 個人の音楽的資質や手の柔軟性
- 指導者の有無
- これまでの基礎の習得状況
- 目標とする完成度(演奏会レベルか趣味か)
独学で・・。という方もいらっしゃいますが、筆者としては「レッスンに通った方が学が多い」と思っています。
音楽教室はどこが良いの?という方は、コチラの記事が参考になりますよ!
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「テンペスト」を目指すロードマップ【初心者向け】
出典:YouTube
テンペスト習得までのロードマップのイメージです。
とはいえ、どんな作品にチャレンジするのも、基本は同じだと思って良いでしょう。
どれもさらっと書いていますが、実際は年単位の努力が必要です・・・。
- 基礎の徹底
脱力、正しいフォーム、スケール練習。 - 併用教材で実力アップ
- ブルグミュラー25
- ツェルニー30〜40番
- ソナチネアルバム
- バッハのインベンション
- ベートーヴェンの他のソナタに挑戦
例:第20番 ト長調 Op.49-2など比較的易しい曲から慣れていく。 - 「テンペスト」の部分練習から始める
譜読みしやすい部分を中心に、段階的に全体へ広げる。 - 継続的な練習とモチベーション管理
小さな目標を積み重ねていくことが成功のカギ。
ショパンのワルツ集や、ドビュッシーの弾きやすい作品などに取り組むのも勉強になりますよ!
「テンペスト」演奏上のコツと練習法
出典:YouTube: ピアニストの福間洸太朗さんが、演奏のポイントを詳しく解説してくれています。
表現のポイント
- 第1楽章:対比とドラマ性を明確に。
- 第2楽章:内省的な雰囲気を壊さないタッチで。
- 第3楽章:疾走感とアーティキュレーションを意識。
練習のヒント
- 部分練習や片手練習で効率的に攻略。
- スローテンポからの反復練習。
- リズム変奏で指の独立性を強化。
- 常に脱力と自然な身体の使い方を意識。
よくあるつまずきと対策
練習に役立つポイントも紹介します。
どんな作品にも言えることですが、まずは超ゆ〜っくりと練習するのが大事!!
はやる気持ちをおさえつつ、じっくりと取り組んむことで、結局は近道になります。
課題 | 対策 |
---|---|
指が回らない | スケール・アルペジオ練習に戻る |
テンポが安定しない | メトロノームを活用 |
音が固い・響かない | 脱力+手首・腕の使い方を見直す |
表現が単調になる | 曲の背景を理解し、フレーズ感を意識 |
ペダルが濁る | ペダルのタイミングと耳の使い方を鍛える |
おすすめ楽譜3選|「テンペスト」演奏に向けて
楽譜を選ぶ際のポイントは主に以下の3つです。
- 校訂版: 原典版か、演奏指示が丁寧な演奏校訂版かを選びます。初心者は演奏校訂版が分かりやすいでしょう。
- 解説: 曲の背景や演奏上のヒントが充実しているか確認。
- 見やすさ: 運指、ペダル指示、レイアウトなど、自分にとって見やすいものを。
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初心者〜中級者の方には、演奏指示や解説のある校訂版が特におすすめ。
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ベートーベン「テンペスト」難易度解説:まとめ
《テンペスト》は確かに難易度の高い楽曲ですが、長期的な目標として計画的に練習を重ねれば、必ず到達できる曲です。
ピアノの練習を継続する中で、音楽的な感性も自然に育っていきます。
あなたの「いつか」は、思っているより早く訪れるかもしれません。
ピアノ学習者の方はもちろん、初心者の方でも、じっくりと練習を重ねて、素敵な演奏を目指してください!
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