さて、2記事目はシューベルトのおすすめ代表曲を13曲紹介します。
何せ生涯で1000曲近い作品を作曲しているので、どの作品を紹介しようか迷いますが、今回は一般的に有名なものに絞ってみようと思います。
この記事で紹介された作品を知っているだけでも、「おっ、なかなかクラシックを知ってるな!」と思われること間違いなしです(多分ですよ)。
前回アップしたシューベルトの人生についてはコチラからどうぞ。
シューベルトのおすすめ代表曲その①<交響曲編>
今回はいつにも増して作品数が多くなりそうなので、交響曲・室内楽・ピアノ曲・歌曲からそれぞれ数曲ずつ紹介します。どれも名作ばかりなので、ぜひ聴いてみてください!
交響曲第4番 『悲劇的』
シューベルトは多作である一方で、未完成の作品も多いことで知られています。交響曲もその例外ではなく、いくつかの作品は未完成のまま今日に至ります。
しかしこの4番は完全に完成させており、<悲劇的>というタイトルもシューベルト自身が命名しました。
1816年に作曲された交響曲ですが、シューベルトこの時若干19歳!!
それを考えると、いかにシューベルトが早熟の天才だったかということがわかります。
全4楽章構成で、演奏時間はおよそ30分程度です。「悲劇的」というタイトルは、尊敬するベートーヴェンへのオマージュとして名付けられたそうです。
交響曲第8番 『ザ・グレート』
こちらもシューベルトの交響曲の中でも、演奏機会が多く人気のある作品です。
1825年から1826年にかけて作曲されました。シューベルト20代最後の曲で、シューベルトとしては晩年の作品です。
シューベルトがこの世を去ってから10年後の1838年に初演されています。
ちょっと🤏ややこしいのですが、20世紀初頭までは「第7番」、シューベルトの作品番号を示すドイチェ番号が付けられてからは「第8番」、未完成交響曲を含めると「第9番」と表記されるこがあります。
現在では「第8番」として定着しているので、「第8番」と覚えておくと良いでしょう。
「ザ・グレート」というちょっとイカツイ副題が付けられていますが、
これは交響曲第6番が「小ハ長調」と呼ばれるのに対して、
第8番が「大ハ長調」と称されることに由来します。
演奏時間が60分を超えるという、当時としては異例の作品ですが、
これについてロベルト・シューマンは「素晴らしい長さ!!(天使的長さ)」と称賛したそうです。
おすすめ代表曲その②<弦楽四重奏曲編>
シューベルトは室内楽曲も多数残しており、今回はその中から2曲を紹介します。
弦楽四重奏曲第13番『ロザムンデ』
生前あまり楽譜出版に恵まれなかったシューベルトですが、この弦楽四重奏曲はその中でも唯一生前中に出版された作品として知られています。
またその完成度も極めて高く、古典主義的作風とロマン主義を彷彿とさせる感性が渾然一体となった、シューベルト屈指の名曲です。
作品は全4楽章からなり、第2楽章の主題が劇付随音楽「ロザムンデ」からの引用であるため、このタイトルが付けられました。
初演は成功を収め、演奏終了後、再び第3楽章が演奏されたというエピソードが残っています。
弦楽四重奏曲第14番『死と乙女』
1824年に作曲された作品です。
「死と乙女」だなんて、なんとも魅力的なタイトル。
こちらも上記の「ロザムンデ」と作品の由来が似ていますが、シューベルトの同名の歌曲「死と乙女」の主題が採用されているため、このタイトルが付けられました。
冒頭からとてもダイナミックな展開で、聴く人を作品に引き込みます。
全ての楽章が単調で作曲されており、これはシューベルトの苦悩(経済的・身体的)を表しているそうです。
グスタフ・マーラーがのちに弦楽合奏用に編曲したことでも知られています。
おすすめ代表曲その③<ピアノ曲編>
膨大なシューベルトの作品の中にはもちろんピアノ曲もあります🎹。シューベルトのピアノソナタは、ふんわりと光り輝くようなイメージです(個人的感想です)。未完成のもの多いですが、生涯で21曲のピアノソナタを作曲しています。
ピアノソナタ15番『レリーク』
1825年に作曲されたピアノソナタ。
シューベルト生前中は出版されず、1839年にロベルト・シューマンが楽譜を発見したことで世に出るきっかけとなりました。
全4楽章の構成予定でしたが、2楽章までしか完成しておらず未完の作品です。
しかし未完ながらもその構想は大きく、演奏時間はおよそ30分を要します。
タイトルの『レリーク』とは「遺作」の意味ですが、これは本作がシューベルト最後の作品であると誤認されたことが由来です。
おすすめ代表曲、ピアノソナタ17番『ガシュタイナー』
こちらも『レリーク』同様1825年に作曲されたピアノソナタです。
こちらは楽譜出版されており、タイトルは作曲された地であるガート・ガスタインから命名されました。
全4楽章の構成で、演奏時間は40分に及びます。
この辺は敬愛していたベートーヴェンの影響かもしれません。
特に第2楽章の歌曲のような美しいメロディーは圧巻です。
ぜひ聴いてみてください!
おすすめ代表曲、ピアノソナタ18番『幻想』
ものすごく個人的な感想で恐縮ですが、以前CDでブレンデル演奏のこの作品を聴いて、猛烈に感動した思い出があります。
冒頭のフレーズの「光が舞い上がるような情景」がこのソナタの美しさ全てを物語っているようです。
1826年に作曲され、楽譜初版版に「幻想曲」と記載されていたため、現在でも『幻想』の愛称で親しまれています。
演奏時間は30分程度。作品全体を通して、ベートーヴェンの『熱情ソナタ』を想起させます。
いや〜、このソナタほんとに好きです🎹
おすすめ代表曲、楽興の時
6曲からなるピアノ曲集で、1823年から1828年にかけて作曲されました。
日本ではとりわけ3番が有名なので、一度は聴いたことのある方も多いと思います。
6曲どれをとっても美しい作品ですので、ぜひこれを機会に全ての作品を聴いてみてください!!
ということで、全曲動画も紹介します👇
第2曲の「シチリアーノ」の雰囲気が特に良い感じです。演奏者のグルダは、世界最高のピアニストの一人、マルタ・アルゲリッチの師匠。
4つの即興曲
1827年に作曲されたシューベルト最晩年の作品です。
ピアノを習ったことのある方なら、『即興曲2番』に挑戦された方もいらっしゃるかもしれません。
「即興曲」のタイトル通り、自由な形式で表情豊かなメロディーが特徴です。
1番と2番は作曲年に出版されましたが、3番と4番はシューベルトの死後、
1857年に出版されています。2番が最も有名👇。筆者も子供の頃に発表会で弾いた記憶が・・・。
おすすめ代表曲その④<歌曲編>
歌曲王と称されるシューベルトですから、もちろん歌曲の紹介も忘れていません。今回は特に有名な4つの作品を紹介します。
野ばら
シューベルトの歌曲は数あれど、この作品ほど多くの人に愛されている歌曲は少ないでしょう。
『魔王』などと並ぶ、初期の傑作であり、文豪ゲーテの詩にインスピレーションを受けて作曲されました。
極めて明快なメロディーながら、リート歌曲の真髄とも言える作品です。
シューベルトの他に、ベートーヴェンやブラームスも曲を付けたことでも有名ですが、なかでもヴェルナーによる『野ばら』が日本では親しまれています。それがコチラです👇
子守唄
この作品がシューベルトの作品だと初めて知った方も多いのではないでしょうか。
「ね〜むれ〜♫、ね〜むれ〜♪」で有名なあの子守唄です。
そして、世界でもっとも知られる子守唄と言っても過言ではないでしょう。
作品にはドイツ語の歌詞が付されていますが、作者不明だそうです。
シューベルトが19歳の時の作品。
アヴェ・マリア
1825年に作曲されたシューベルト晩年の傑作です。
この作品も知らない人はいないのではないかと思います。
一般に「シューベルトのアヴェ・マリア」として知られ、癒しのメロディーとして今もなお愛される名作です。
もとはスコットランドの詩人、ウォルター・スコットの叙事詩『湖上の美人』のドイツ語詩にシューベルトがメロディをつけた歌曲集の1曲です。
『エレンの歌第3番』として覚えておくと一目置かれるかもしれません。余談ですが、「アヴェ・マリア」とは「めだたし、マリア様」という意味です。
鱒(ます)
1817年、シューベルト20歳の頃の作品です。
シューベルト歌曲の中でも屈指の名曲。
「なかなか鱒を釣り上げることができない漁師が、痺れを切らして策を弄する様」を歌った歌曲ですが、実は「男性が女性をたぶらかすことに対する注意を促す」意味合いがあるそうです。
まさかこの名曲に、そんな深い暗示が込められているとは・・・。
シューベルトらしい、軽快な作風が特徴で、のちに『ピアノ五重奏曲』に編曲されています。
シューベルトの作品の特徴や魅力は?
ここまでシューベルトの代表作(個人の趣味も含まれる)を紹介してきました。
では、シューベルトの作品の特徴とはどのようなところにあるのでしょうか。
ここでは簡単にその特徴について解説します。
「歌曲王」と呼ばれるゆえん
シューベルトは生涯でおよそ1000曲もの作品を作曲しました。
そのジャンルはピアノ曲・室内楽・交響曲・歌曲・オペラ・宗教音楽と多岐にわたります。
中かでも歌曲の数は群を抜いていて、その数およそ600曲!!!
全作品の6割を歌曲が占めています。今回紹介した作品以外にも『魔王』『美しき水車小屋の娘』『夜と夢』『冬の旅』などの作品は今もなお演奏機会の多い作品です。
ロマン派の先駆け的存在
シューベルトの作品を聴くと、モーツァルトやベートーヴェンのような古典派的印象は薄れ、
より自由で情緒的なロマン派的作品が多いことに気が付きます。
しかし交響曲やピアノソナタを聴いてみると、
ベートーヴェンを意識したであろう作品が多く、その作曲法も古典派の流れを汲むものでした。
ロマン主義とは個人的・主観的な情緒性が作品に反映されていることがその特徴として挙げられます。
しかし伝統的作曲法に情緒性を加えたという点において、
シューベルトはロマン主義の先駆けと言えるでしょう。
そしてシューベルトに見られるロマン主義の萌芽は、
のちのシューマンやメンデルスゾーン、ブラームスといったロマン派の作曲家たちに大きな影響を与えました。
作品番号「D」について
少しマニアックな話になりますが 、シューベルトの作品番号には「D」が付けられています。
なんだか漫画『ワンピース』のようでカッコいいですが・・・。
この「D」とは、シューベルト作品を年代順に整理したオーストリアの音楽学者、
オットー・エーリヒ・ドイチュにちなんで付けられたもので、ドイチュ番号と呼ばれています。
シューベルト自身も作品番号を書いていますが、
作曲年代がわからないものが多いため、
現在ではドイチュ番号が使用されるのが一般的です。
シューベルトのおすすめ代表曲まとめ
ということで、今回はシューベルトのおすすめ作品を紹介しました。
作品数が多い上に、個人的にも好きな作曲家なので今回も長文すみません・・・。
ですが、読んでいただければ必ずちょっとした教養になると思いますので、ご自身が気になったところだけでも読んでいただければ幸いです。
いや〜シューベルトって本当に天才ですね。