前回の『愛の夢』の解説に続き、今回は『ラ・カンパネラ』の紹介です。
これまでのリスト・シリーズをまだお読みでない方は、こちらからぜひ!!👇
ということで、今回はリストの作品中でもっとも有名な(多分)、「ラ・カンパネラ」を紹介します。
筆者も10代の頃に練習したので、なんとも懐かしい限りです。
「ラ・カンパネラ」の解説
数多くあるリストの作品の中でもっとも人気があり、ポピュラーな曲「ラ・カンパネラ」。
作品について色々調べてみると、興味深いことが浮かび上がってきました。
そもそも「ラ・カンパネラ」とは?
「ラ・カンパネラ」の印象的なテーマは、実はリストが生み出したものではなく、ニコロ・パガニーニ(1782〜1840)のヴァイオリン協奏曲第2番第3楽章のテーマをピアノ曲に編曲したものです(パガニーニについてもいつか書きます)。
「ラ・カンパネラ(Campanella)」とはイタリア語で「鐘」を意味します。
ピアノ版の前にまずはパガニーニのヴァイオリン協奏曲を聴いてみてください👇
もちろん、こちらも名作ですよ🎻。
当時超人気者だったパガニーニは、後世の作曲家にも取り上げられ、リストの他にブラームス、ラフマニノフなんかが独自の編曲を残しています。
話をもとに戻して・・・。20歳の頃に聴いたパガニーニの演奏にめちゃくちゃ感銘を受けたリストは、「僕はピアノのパガニーニなる!!」と宣言し、それまで以上に猛練習を始めます。
つまり、リストはパガニーニに憧れていたわけですね。
そして血の滲むような努力の末、ピアノのヴィルトォーゾとなったリストは、憧れのパガニーニの作品を用いてピアノ曲を作曲します。
それが『パガニーニの「ラ・カンパネラ」の主題による華麗なる大幻想曲』です。
「あれ?タイトル違くない?」とお気づきの方。正解!!。
じつは、今現在聞いている「ラ・カンパネラ」は最初から今の形ではなく、何度か改訂が行われた結果なんです・・・。
実はラ・カンパネラには4つのバージョンがある
👆に書いたように、パガニーニのテーマを使用した「ラ・カンパネラ」は4つのバージョンがあり、ここでは1つずつ簡単に紹介します🎹。
1つ目『パガニーニの「ラ・カンパネラ」の主題による華麗なる大幻想曲』
そして、1831年から1832年にかけて最初に作曲したのが『パガニーニの「ラ・カンパネラ」の主題による華麗なる大幻想曲』。
この作品の面白いとことは、「わざと難しく見えるように作曲されている」ところだそうです。
例えば、手をクロスする必要のないところでクロスしたり、即興でしか弾けないような構造になっていたり・・・。
演奏家(ある意味では演出家でもある)としてのリストの魅力が全開です!
こちらがその作品。
3:40〜テーマが出てきます。
2つ目「パガニーニによる超絶練習曲第3番」
次に発表したのが、1838年に出版された「パガニーニによる超絶技巧練習曲」の中の第3番です(こちらは単体の「超絶技巧練習曲」とは異なりますのでご注意ください)。
全6曲で構成されていて、練習曲とコンサート用を兼ね備えたような作品です。
原曲があまりに難しすぎて、大ピアニストのウラディーミル・ホロヴィッツでさえ、「演奏不可能である」と言ったとか・・・。
その証拠に、作品が作曲されてから今日まで、この作品を録音したのはピアニストの中でもわずか数人だそうです。その作品がこちら👇(楽譜付き)。
現在の「ラ・カンパネラ」に近いですが、難易度が比ではありません💦(現在のも難しいですが)。
3つ目『パガニーニの「ラ・カンパネラ」と「ヴェニスの謝肉祭」の主題による大幻想曲』
3つ目は1845年に作曲されたこちらです。現在ではほとんど演奏されることはないので、珍しいと思いますが、1:50〜からテーマが出てきます。
「ラ・カンパネラ」のテーマと「ヴェニスの謝肉祭」のテーマが交互に出てくるという興味深い作品ですが、これまた難しすぎる。そして長い😅。
ここで出てくる「ヴェニスの謝肉祭」とは、ニコロ・パガニーニが作曲したヴァイオリン用の変奏曲です(どんだけ尊敬してるのか・・・)。
さすがに動画ないかな〜と思いましたが、そこはyoutube。動画発見しました。
4つ目「パガニーニによる大練習曲」
ようやく現在耳にする「ラ・カンパネラ」の登場。
といってもこれは、2つ目で紹介した「パガニーニによる超絶技巧練習曲」を簡単にした練習曲として発表されました。
リストにしてみれば、
「え??あれ難しかった???じゃあ、も少し簡単にして、誰でも弾けるようにしとく」ってレベルなんだと思う(想像です)。
でも、改訂の際にはタイトルの「鐘」の印象を強調したり、全体的にスタイリッシュに(見栄え良く)するなど、さまざまな工夫を凝らしていて、前作よりも完成度は高いと言われています。
個人的な感想ですが、オクターブや半音階など、ピアノテクニックをコンパクトに練習できるな=と思っています🎹。誰の演奏を紹介しようか迷いますが、やはり辻井さんのかな〜。
演奏を聴いていると、思わずブログを書く手が止まってしまう🥹。
「ラ・カンパネラ」の難易度は?
ここまで「ラ・カンパネラ」について各バージョンを紹介しながら解説してきました。
4つのバージョンがあるというのは、新たな発見だったのではと思います。
では、ピアノ学習者にとって憧れの1曲とも言える「ラ・カンパネラ」の難易度はどの程度なのでしょうか。
全音の難易度「E」は正しい??
ピアノピースを出版している全音で見てみると、「ラ・カンパネラ」は難易度E(上級)となっています。
しかしこれについて、個人的には「う〜〜〜ん」😓と疑問に感じる点が多々あります。
技術面・表現力・体力を総合すると「F」ランク(上級上)が妥当な気がするのは筆者だけでしょうか・・・。
といっても、人によって「得手不得手がある」のでなんとも言え無いですが。
さらに、この曲を弾きこなすには手の大きさも関係してくるし。
例えば、ショパンの「エチュード,OP12No1」と「ラ・カンパネラ」を比べると、明らかにショパンのエチュードの方が難易度が高い(個人の感想です)。
でもだからと言って、「ラ・カンパネラ」が簡単かというとそうでもない・・・。
色々と話が飛びましたが、筆者としての結論は「上級上の技術が求められる」ということにしておきます!!
ピアノ初心者でも弾ける?
難易度は大体わかったとして、ピアノ初心者でも「ラ・カンパネラ」を弾きこなすことができるのでしょうか?
飽くまで筆者個人の体験ですが、筆者がピアノを習い始めて「ラ・カンパネラ」に挑戦しようかな〜と思うのに、大体12年くらいかかりました(途中何度か辞めているので)。
おまけにあまり練習熱心な生徒ではなかったので、なかなか進まず・・・。
それでも10年くらいコツコツと練習を続ければ、必ずしも弾けない曲でもないと思います。
かなり才能がある生徒さんなら、「小学生でも弾ける」かもしれません(一般に稀だと思いますが)。
しかし、こんな例もあるので諦めてはいけません。練習し続ければ、いつかきっと弾ける日がくるし、動画のような奇跡が起こることだってあり得ます。👇(有名なやつ)
ちなみに、やさしいアレンジバージョンもあるので見てみてください!残り1点です(2024年5月)。
演奏の注意点は?
オクターヴや跳躍、半音階、連続音の指変えなど高い技術が必要とされる「ラ・カンパネラ」。では具体的にどのような点に注意して演奏すればよいのでしょうか。
跳躍の正確さを重視する
「ラ・カンパネラ」は曲全体として、「跳躍の多い」作品です。
冒頭の「鐘の音」から大きく跳躍するので、ゆっくりと正確に練習し、鍵盤感覚を鍛えましょう。そうすることでミスタッチが減り、「鐘」の美しい音色を再現できるようになりますよ!!
曲中は「跳躍+16分音符」の組み合わせなど、段々と難易度がありますので、無理せず正確に打鍵できるように注意しましょう。
音の強弱をしっかりと
この作品は高難度な技術で構成されているので、どうしても指と腕に力が入りがちになってしまいます。
腕や指に力が入りすぎると、作品全体としての表情が固くなるだけでなく、「ただ音が大きいだけ」の演奏になってしまうことも。
それではなんとなくカッコがつかないので、腕の緊張をできるだけ抑え、軽やかに弾けるようになるまで繰り返し部分練習するよう心がけてください。
あくまでも、「表情豊かな演奏」を目指しましょう。
補足
パガニーニの主題を作品にした他の作曲家の作品も併せて紹介します。
せっかくですので、これらの作品も聴いてみてください。作者の個性が出ていてとても興味深いです♫。
パガニーニ、大人気です🎻😀
ラフマニノフ「パガニーニの主題による狂詩曲」
全編ではありませんが、コンパクトに編集されています。最初のカンパネラの主題と、3:40〜からのメロディがとても有名です。
ブラームス「パガニーニの主題による変奏曲」
見てもらえたらわかる通り、「鬼👹ムズ」です🎹。
最初に出てくるテーマがさまざま変わるので、聴いていて飽きないと思います。
ロマン派の大家、ブラームスらしい奥ゆかしい仕上がり。
まとめ
ということで4回にわたるリストシリーズ、いかがでしたか?
少しでもリストの生涯や作品に興味を持っていただければ幸いです。またまた長くなってしまいましたが、これはきっとリストに対する個人的な思い入れの大きさだな。
次回は、フランツ繋がりであの人を書く予定ですので、お楽しみに!!(カフカではありません)。
参考までに作品だけ簡単に。
・ブラームス「パガニーニの主題による変奏曲」(激ムズです)
・ラフマニノフ「パガニーニの主題による狂詩曲」(鬼ムズです)