この記事ではアレクサンドル・ボロディンの代表曲を紹介しています。
ボロディンといえばオペラ『イーゴリ公』の作曲者として有名ですよね。
なかでも「ダッタン人の踊り」は、誰しも1度は聴いたことがある名曲です。
また、クラシック音楽の範疇を超え、ジャズ・アレンジやCM音楽にも使用されており、
現在もなお幅広い人々から愛されています。
とはいえ、ボロディンが生み出した作品はそれだけではありません。
本業の化学者として研究に従事した一方で、そのほかにも優れた名曲をいくつも残しています。
そこで今回は、ボロディンの名曲を紹介しつつ、
作品の特徴や魅力、そして最高傑作について簡単にします。
いつもながら、ざっくり解説&独断と偏見によるものですので、
お気軽に最後までお読みいただければ幸いです。
ボロディンの生涯についてはこちらの記事をご参照ください。
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ボロディンの代表曲おすすめ6選!
幼少期から音楽に関心を示したボロディン。
しかし、本格的に作曲を学び始めたのは、バラキレフに出会ってからのことでした。
やがて化学者となったボロディンは「日曜作曲家」と自称し、作品を手がけるようになります。
以下では、そんなボロディンの代表曲6曲を見てみましょう。
ボロディンの代表曲その1、交響曲第1番
1862年、ボロディンが29歳の頃に作曲を開始し、1867年に完成した最初の交響曲です。ボロディンの交響曲は2番がとくに有名ですが、作品の完成度や荘厳さという点において、こちらも優れた作品と言えるでしょう。
初演は1868年、作曲の師であるバラキレフの指揮により行われました。
その後、フランツ・リストによりヨーロッパに紹介され、
ボロディンの名が知られるきっかけにもなりました。
演奏時間はおよそ35分程度です。
ボロディンの代表曲その2、交響曲第2番
ボロディン2曲目の交響曲です。こちらは1869年に作曲が着手され、1877年に完成されました。冒頭の勇ましいオーケストレーションが印象的であり、ボロディン本人も本作について「勇者Epique」と称しています。
ボロディンの作品の中でも、比較的演奏頻度が高く、
現在でもさまざまなオーケストラによって演奏されています。
1877年に初演が行われ、大きな成功を収めました。
これ以降、ボロディンは『交響曲第3番』の作曲も開始したものの、
本人急死により未完となり、のちにグラズノフによって補筆・完成されました。
演奏時間はおよそ30分です。
ボロディンの代表曲その3、交響曲第3番
せっかくですので『交響曲第3番』も紹介。
前作からおよそ7年後の1884年に作曲が開始されたボロディン最後の交響曲です。
しかし、前述のとおり作者急死のため、未完成となりました。
1楽章と3楽章のスケッチと簡単なピアノ演奏の記憶をたよりに、
グラズノフによって補筆が行われています。
残念ながら、第2・4楽章に関する資料は残されていなかったとのこと。
グラズノフの補筆後、1887年にリムスキー=コルサコフの指揮によって初演が行われました。
演奏時間はおおむね20分程度です。
ボロディンの代表曲その4、弦楽四重奏曲1・2番
じつは、ボロディンは室内楽の名作曲家でもありました。
今回は1番と2番を紹介しますが、そのほかにも多くの優れた室内楽を残しています。
第1番が1879年に、そして1881年に第2番が完成されており、
とくに第2番は19世紀のロシア室内楽を代表する作品と称されています。
また第1番は、ベートーヴェンへの尊敬の念が作品に込められているとされ、
ベートーヴェンの『弦楽四重奏曲』の主題が全編にわたり用いられています。
ボロディンの代表曲その5、小組曲
7曲で構成されたピアノ作品集です。
『小組曲』と題されていますが、もとは組曲として構成されたものではなく、
ボロディンのピアノ曲からいくつか抜粋し、まとめられた作品集となっています。
各曲にはタイトルが付けられており、
ボロディンの人生の1ページが垣間見れる美しい作品集と言えるでしょう。
1885年にドイツ・ワイマールを訪れ、フランツ・リストの前で演奏した際には、
リストが大いに気に入ったというエピソードも残されています。
また、のちにグラズノフによって管弦楽版に編曲され、
オーケストラでも楽しむことができます。
二つを聴き比べてみるのも楽しいかもしれませんよ。
ボロディンの代表曲その6、交響詩『中央アジアの草原にて』
1880年、アレクサンドル2世の即位25周年を祝うために作曲された作品です。
ボロディンの作品中でも演奏頻度が高く、現在でもしばしばコンサートで演奏されています。
初演は1880年4月、リムスキー=コルサコフの指揮にて行われました。
作品ではロシア人と東洋人との交流が描かれており、
ロシア的主題と東洋的主題が交互に織りなす構造となっています。
ぜひその点に注意して聴いてみてください。
演奏時間はおよそ9分です。
余談ですが、初演の翌年1881年3月、アレクサンドル2世は反対派が投げた爆弾に巻き込まれこの世を去りました。
ボロディンの作品の特徴や魅力について
ここまでボロディンの代表曲を6曲(7曲)紹介しました。
どの作品も完成度が高く、とても「日曜音楽家」とは思えないほどの名作ばかりです。
優れた化学者だったボロディンですが、才能を音楽に全振りしていたら、
きっとさらに多くの名曲を残してくれたかもしれません。
以下では、そんなボロディンの作品の特徴や魅力を簡単い紹介します。
ボロディンの作品の特徴や魅力その1、民族色豊かな旋律が心を揺さぶる!
オペラ「イーゴリ公」のポロヴェツ人の踊りは、ボロディンの代表作です。
東洋的な雰囲気を持つ魅惑的な旋律が、聴く者を異国の世界へと誘います。
力強いリズムと華麗なオーケストレーションが、遊牧民の荒々しさと華やかさを見事に表現しており、まさにロシア音楽の特徴である民族的要素を巧みに取り入れた傑作といえるでしょう。
作品の特徴や魅力その2、壮大なスケールで描かれる英雄の物語
『交響曲第2番「英雄」』は、その名の通り壮大な物語を音で紡ぎ出します。
力強い第1楽章から始まり、叙情的な第3楽章、そして華やかな終楽章へと展開していきます。
ボロディンの才能が遺憾なく発揮された本作は、ロシアの英雄的精神を見事に表現。
聴衆を圧倒する音の洪水が、聴く者の心に深い感動を与えます。
作品の特徴や魅力その3、繊細な感情表現が光る室内楽の傑作
『弦楽四重奏曲第2番』は、ボロディンの繊細な感情表現が際立つ作品です。
特に第3楽章のノクターンは、美しい旋律ラインと温かみのある和声が、聴く者の心を優しく包み込みます。
この作品からは、化学者としての精緻な観察眼と音楽家としての豊かな感性が融合した、ボロディン独自の世界観を感じ取ることができるのではないでしょうか。
作品の特徴や魅力その4、古典と革新が融合した独自のスタイル
交響詩「中央アジアの草原にて」は、ボロディンの音楽スタイルが凝縮された一曲といえます。
西洋の古典的な音楽形式に、ロシアや中央アジアの民族音楽の要素を巧みに取り入れているのが特徴。
絹綢の道を行くラクダの隊商を描いた本作は、東洋的な旋律と西洋的な和声が見事に調和し、聴く者を幻想的な音の旅へと誘います。
ボロディンの最高傑作、オペラ「イーゴリ公」の解説
最高傑作としてあげるなら、やはりオペラ『イーゴリ公』ではないでしょうか。
なかでも作品中の「ダッタン人の踊り」はクラシック音楽きっての名曲です。
以下ではオペラ「イーゴリ公」について簡単に解説します。
オペラ「イーゴリ公」について
ボロディンの最高傑作オペラ『イーゴリ公』は、ロシアに伝わる叙事詩『イーゴリ遠征物語』をベースに作曲されました。
そして本作は、1185年、キエフ大公国の公イーゴリ・スヴャトスラヴィチが行った、
遊牧民族ポロヴェツ人に対する遠征物語をモチーフにしています。
ちなみに、日本語では「ポロヴェツ人」に「韃靼(だったん)」の文字を当てていますが、ダッタン人とはモンゴル系の部族の1つを意味するそうです。
ただし、本作に出てくるポロヴェツ人とは、
テュルク系(トルコ系)民族の遊牧民族であり、南ロシアが舞台となっています。
またポロヴェツ人を「ダッタン人」と訳しているのは、日本だけに限られているので、
これも併せて覚えておいてください。
オペラ全体は序幕付きの4幕構成で、
1890年にサンクトペテルブルクのマイリンスキー劇場にて初演が行われました。
オペラ全体の上演時間はおよそ3時間15分です。
完成を待たずにボロディンが他界
壮大な物語を描いたオペラ『イーゴリ公』ですが、
本作の完成を待たずに、1887年にボロディンがこの世を去ってしまいます。
そのため、残されたスケッチやスコアをもとに、リムスキー=コルサコフとグラズノフによって補筆と編曲が施されました。
リムスキー=コルサコフは序幕、1・2・4幕と第3幕の「ポロヴェツ人の行進」を、
そして第3幕の大部分をグラズノフが担当したそうです。
オペラ本編における「ダッタン人の踊り」はこちらを参照ください👇
管弦楽版はコンサートの定番曲となっています👇
ボロディンの代表曲まとめ
ということで、今回は化学者にして「日曜音楽家」のアレクサンドル・ボロディンの代表曲を解説しました。
ロシアの民族音楽的要素を巧みに取り入れたボロディンの作品には、
懐かしさや望郷の気持ちが込められています。
今回紹介した作品以外にも、良い作品がたくさんありますので、
この記事をきっかけにぜひボロディンの作品に触れてみてください!
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歴史的出来事、言い伝え、英雄伝を物語る韻文作品のこと。
日本で代表的な作品は『平家物語』なんかが挙げられます。
また、韻文作品とは、一定のリズムをもった文章で
たとえば、俳句とか和歌などが韻文作品の良い例ですね。