ブルックナーの最高傑作『交響曲第9番』の魅力や作品の特徴を簡単に解説!聴き比べも紹介

ブルックナー

    この記事ではブルックナーの最高傑作の1つ『交響曲第9番』を解説します。

    少しとっつきにくいイメージのあるブルックナー。
    でもこの記事では、あくまでもザックリ解説していますので、
    お気軽にお読みいただき、豆知識としてご活用ください。

    なお本ブログでは、ブルックナーの生涯やおすすめ代表作についても紹介しています。

    「そもそもブルックナーってどんな人?」という方は、
    先にそちらからお読みいただくと、より理解が深まるかもしれません。

    こちらこちらです。

    ブルックナー
    ブルックナー
    アントン・ブルックナー : 交響曲全集

    ブルックナーの最高傑作『交響曲第9番』とは

    オルガン

    その人生の大半をオルガニスト・音楽教師として過ごしたブルックナー。
    彼が作曲家として大きな評価を受けたのは、60歳近くになってからのことでした。

    そんなブルックナーの音楽家としての生涯を一言で表すと、
    まさに「勉強の虫」。

    多くの音楽家に師事しながらひたすら音楽の勉強に明け暮れ、
    人生をかけて大建築を彷彿とさせる交響曲を生み出しました。

    最後の交響曲

    『交響曲第7番』が成功したことで、ようやく作曲家としての地位を確立したブルックナー。

    しかし彼の作品は当時では「演奏不可能」と評されることもあり、
    現在のような確固たる人気は獲得できなかったようです。

    本作『交響曲第9番』はブルックナーが作曲した最後の交響曲で、
    1887年8月に作曲が開始されました。
    作曲はブルックナーがこの世を去る1896年まで続けられましたが、
    結局存命中は完成されることなく、最後の第4楽章は未完のまま残されています。

    「9年もかけて完成しなかったの?」
    と思われる方もいるかもしれませんが、
    その間『交響曲第8番』の大幅な改訂や、病状の悪化などにより、思うように作曲が進まず、最終的に未完の大曲という形となりました。

    そのため、現在でもコンサートで演奏される際には、
    第3楽章までで終了することがほとんどです。

    ただしブルックナー本人は、
    未完だった場合には最終楽章として『テ・デウム』を演奏するように指示していたと言われています。

    初演は20世紀初頭

    本作はブルックナーの死後からおよそ7年が経過した1903年2月、
    フェルディナント・レーヴェの指揮により初演が行われました。

    しかし、初演で使用された楽譜はレーヴェによる改訂版が用いられ、
    ブルックナーのオリジナル版が演奏されたのは、1930年代になってからのことでした。

    日本でも比較的早くから初演されており、
    日本初演は1936年に東京音楽学校(現東京藝大)の第78回定期演奏会で演奏されています。

    ブルックナー:交響曲第9番(1988年ライヴ)&第8番(1987年ライヴ)(期間生産限定盤)

    ブルックナー『交響曲第9番』の魅力や特徴は?

    宇宙

    『交響曲第9番』の魅力や特徴について簡単に紹介します。

    ちょっと難しい単語も出てきますが、
    ドヤ顔で覚えておけばバッチリです(冗談です)。

    『交響曲第9番』の魅力と特徴その1、複雑な対位法

    ブルックナーの交響曲第9番は、複雑な対位法の使用が特徴的です。

    対位法とは、複数の旋律が同時に演奏される音楽の技法で、
    ブルックナーはこれを巧みに用いています。
    これにより、深い音楽的対話が生まれ、聴衆を引き込む力強い効果を生み出しています。

    ブルックナーの作品はどれも長大なスケールで描かれるものばかりですが、
    そのなかでも、本作はもっとも精神性が高く、宇宙的壮大さを連想させる作品と言えるでしょう。

    魅力と特徴その2、豊かな管弦楽法

    交響曲第9番では、ブルックナー特有の厳かで壮大な管弦楽法が際立っているのも魅力の1つ。

    重厚で荘厳な管弦楽の響きが、聴衆に圧倒的な迫力と感動を与えます。
    特にブルックナーの交響曲は、管弦楽法の巧みな使用が見どころの1つとなっています。

    初めて聴く方にとっては実に退屈かもしれません。
    しかし、聴いているとジワジワとブルックナーの世界観が広がっていく感覚が味わえます。

    最初から作品と向き合うというよりは、
    読書をしたり、リラックスしたりしているときのBGMとして聴いてみると良いかもしれません。

    ある日ふと「すごい作品だ!」と思える時がきっときます。
    そんな気づきを与えてくれるのも本作の魅力です。

    魅力と特徴その3、深淵な感情表現

    交響曲第9番はブルックナーが没する前に未完成の状態で残されたため、その神秘性と未完の美学が注目されています。

    この未完の遺作としての特異性が、作品にさらなる深みと謎めいた魅力を与えているのでしょう。
    本作の第1楽章には「荘重(そうちょう)に、神秘的に」という指示が書かれており、
    主題が徐々に重なり合う構造は、ブルックナーの深い精神性の現れともいえるでしょう。

    基本的には3楽章までの演奏で幕を閉じますが、
    第4楽章として演奏されることがある「テ・デウム」の導入も、
    本作の深淵さを引き立たせる要因かもしれません。

    ブルックナー『交響曲第9番』の楽曲編成

    上述の通り、本作『交響曲第9番』は全4楽章の構成で作曲されています。
    しかし残念ながら、4楽章の完成を待たずにブルックナーがこの世を去ったため、
    コンサートでは3楽章までで終了するのが一般的です。

    とはいえ、全体的なスケールの大きさや、
    ブルックナーの精神性の深さは最高潮に達しており、
    ロマン派音楽の1つの頂点的作品と言えるでしょう。

    同じく最高傑作と称される『交響曲第8番』と聴き比べてみるのも面白いかもしれません。

    各楽章にはブルックナーによる指示が書かれています。
    それぞれを簡単に見てみましょう。

    楽曲構成

    第1楽章・・・荘重にして、神秘的に。主題と展開部が融合したソナタ形式。ブルックナー主題が用いられている。ニ短調、2分の2拍子

    第2楽章・・・軽く、軽快に。表情豊かなオーケストレーションに加え、ニ短調と嬰ハ短調の対比が魅力的。3拍子。

    第3楽章・・・遅く荘重に。4つの部分から構成されている。4分の4拍子。宗教的な荘厳さと神秘性への憧れが光のように降り注ぐ。ブルックナー本人が「生への告別」と称したコラールも聴きどころ。

    フィナーレ(第4楽章)・・・未完成。しかし「未完であれば代わりとして『テ・デウム』を」という遺言を遺しており、『テ・デウム』が演奏される場合もあり。

    ブルックナー『交響曲第9番』の聴き比べ

    最後に本作の聴き比べを紹介します。
    といっても、あまりたくさん紹介してもよくわからなくなってしまうので、
    今回は3名の指揮者による演奏を紹介します。

    もちろん、筆者の独断と偏見です。

    聴き比べその1、ギュンター・ヴァント指揮

    1人目はブルックナーの指揮では右に出るものはいないギュンター・ヴァントの演奏。
    重厚感・荘厳さ・深淵さの表現では、これ以上に優れた演奏はない(かもしれません)。

    最初に聴くなら、ヴァントの指揮が良いでしょう(録音も新しいので)。

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    その2、カラヤン指揮

    2人目はカラヤン指揮の演奏です。
    オーケストラの響かせ方や豪華さは、カラヤンならではだと思います。
    ギュンター・ヴァントとは違い、動きのある演奏が特徴ですね。

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    その3、オイゲン・ヨッフム指揮

    最後はブルックナーの演奏で定評のあるオイゲン・ヨッフム指揮です。
    精緻な指揮ぶりと、強弱がハッキリとした明快な演奏が印象的。
    ヨッフムはブルックナーの『交響曲第5番』においても優れた名盤を残しています。

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    第4楽章に用いられる『テ・デウム』

    未完となった第4楽章の代わりとして演奏される『テ・デウム』も紹介します。
    ブルックナーはベートーヴェンを猛烈に意識していたため『第9』に倣って、本作を指定したのかもしれません。

    ベートーヴェンについてはこちらから↓

    ベートーヴェンの肖像

    ブルックナー『交響曲第9番』まとめ

    ようやくブルックナーシリーズ終了です。
    それにしても長かったな・・・。
    ブルックナーの作品は長大なものが多く、
    敬遠する人も多いかもしれません。

    しかし彼の作品は「聴けば聴くほど」その魅力に惹き込まれていきます。
    このシリーズをきっかけに、ぜひブルックナーの作品を聴いてみてください。

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