この記事では、シベリウス作曲のピアノ曲「カプリス」の難易度について解説します。
フィンランドが生んだ偉大な作曲家、ジャン・シベリウス。
彼の作品といえば、ヴァイオリン協奏曲や交響詩「フィンランディア」などが有名ですが、ピアノ曲でも魅力的な作品が数多く残しています。
中でも《10の小品 Op.24》の第3曲「カプリス」は、その技巧的な華やかさと音楽的な深さから、演奏機会も多い一曲です。
しかし、この「カプリス」、実際に弾こうと思ったり、演奏を聴いて「これってどれくらい難しいんだろう?」と感じたりする方も多いのではないでしょうか。
この記事でわかること
この記事では、シベリウス「カプリス」の難易度について、具体的な技術的要素や音楽的な側面から徹底的に解説します。「カプリス」の難易度を詳しく知りたい方は、ぜひ最後までお読みください。
筆者は3歳からピアノを開始。紆余曲折を経て、かれこれ30年以上ピアノを触っています(音大には行ってません)。
シベリウス「カプリス」とはどんな曲?作品の基本情報
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シベリウスの「カプリス」Op.24-3は、1904年に出版された《10の小品 Op.24》に含まれる一曲。この作品集は、シベリウスのピアノソナタ ヘ長調 Op.12と同時期に作曲されており、作曲家が円熟期に向かう過程で書かれた重要なピアノ作品と言えます。
「カプリス(Caprice)」とは、イタリア語やフランス語で「気まぐれ」「奇想曲」といった意味を持つ音楽用語です。パガニーニの「24の奇想曲」なんかも有名ですよね。
形式にとらわれず、自由な発想で書かれた技巧的な小品を指すことが多いです。
シベリウスの「カプリス」も目まぐるしく変化する楽想、大胆な転調、そして高度な演奏技巧が要求される、まさに「奇想曲」作品と言えるでしょう。
曲は非常にエネルギッシュで、ドラマチックな展開を見せます。シベリウスらしい北欧の自然を思わせる雄大さや、内省的な叙情性も垣間見え、単なる技巧的な練習曲にとどまらない、音楽的な深さを持った作品です。
「シベリウスの作品についてもっと知りたい!」方はこちらをご一読ください。
シベリウス「カプリス」の難易度は?
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結論から言うと、シベリウス「カプリス」の難易度は中級上といったところでしょうか。
ソナチネが終わり、モーツァルトやベートーヴェンなどのピアノソナタを数曲、ショパンのワルツ集を練習している方向けです(もちろんバッハもですが)。
「ものすごい難曲」ではありませんが、さまざまなテクニックが曲全体にわたって要求される作品かなと思います。
速いパッセージ、広範な跳躍、複雑なリズム、重音、オクターブ、そして繊細なダイナミクスとペダリング。これらの要素が組み合わさることで、演奏のハードルが格段に上がっています。
同じシベリウスのピアノ曲と比較すると、例えば《樹の組曲 Op.75》のような比較的平易な作品に比べると、明らかに「カプリス」の難易度は上です。
この曲に挑戦するには、単に指が速く動くだけでなく、しっかりとした基礎的なテクニックに加え、音楽的な構成力を理解し、表現する能力が求められます。
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「カプリス」の演奏に必要な技術的なポイントを解説
シベリウス「カプリス」の難易度を高ているポイントは見てみましょう。
実体験も混じってますが、以下のポイントがあげられます。
速いパッセージと細かい音符
曲の冒頭から、両手による非常に速い16分音符や32分音符のパッセージが連続して登場します。これらのパッセージを、つぶを揃え、正確なリズムと適切な音量で演奏するには、高度な指の訓練が必要です。特に、速いテンポの中で、指の独立性と均一性が強く求められます。
複雑なリズムとポリリズム
単純なリズムだけでなく、付点音符と細かい音符の組み合わせや、左右の手で異なるリズムを演奏するポリリズム的な箇所も登場します。こうした複雑なリズムを正確に把握し、崩さずに演奏するには、高いリズム感と両手の独立したコントロール能力が必要です。
重音とオクターブ
和音やオクターブの連続も多く見られます。特に速いテンポでの重音やオクターブの連続は、腕や手首の柔軟性と強さ、そして正確な打鍵が求められます。力任せに弾くとすぐに疲れてしまい、音楽の流れが損なわれるため、効率的な体の使い方を見つけるのも大事。
オクターブが届かない場合は、先生に相談して、弾き方を工夫してみてください。
幅広いダイナミクスと音色の変化
ピアニッシモからフォルティッシモまで、幅広いダイナミクスの変化が指示されています。
そのため、単に音量を大きくしたり小さくしたりするだけでなく、様々な音色を使い分けながら音楽表現を目指しましょう。技術的な側面だけでなく、音楽的な感性も問われる部分なので、じっくりと作品に向き合う必要があります。
両手の独立性
左右の手が全く異なる動きをしたり、異なる音楽的な役割を担ったりする箇所が多いのも本作の特徴。両手がそれぞれ独立して、指示されたリズム、ダイナミクス、音色で演奏する能力は、カプリスを克服するために不可欠かなと。
「カプリス」の難易度をクリアするヒント
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結構な難易度ですが、演奏効果も高く、なによりも作品が素晴らしいです。
なので「挑戦してみたい!」という方のために、これだけはやっておきたい練習方法をいくつか紹介します。
「カプリス」の難易度をクリアするヒント①:部分練習の徹底
全体を通して漫然と練習するのではなく、難易度の高い箇所(速いパッセージ、跳躍、複雑なリズムなど)を特定し、集中的に部分練習を行いましょう。苦手な部分を克服することが、全体の完成度を高める鍵となります。
「カプリス」の難易度をクリアするヒント②:ゆっくりとしたテンポからの練習
最初から指示された速いテンポで弾こうとせず、まずはゆっくりとしたテンポで正確に弾く練習から始めましょう。一つ一つの音、リズム、指使いを確認しながら、確実に弾けるテンポを徐々に上げていくことが重要です。メトロノームを効果的に活用しましょう。
カッコよく弾けるようになるためにも、まずはゆっくりと!
「カプリス」の難易度をクリアするヒント③:手のフォームと脱力
「カプリス」のような技巧的な曲では、無理な力の入れ方は禁物です。
効率的な手のフォームを意識し、常にリラックスした状態で演奏できるよう心がけましょう。
腕や肩に力が入っていると、腱鞘炎などの原因にもなりかねません。
細かい連打が多い曲なので、ムキになってしまいがち。力が入りすぎると、次の展開に指がついていけない原因にもなります。
「カプリス」の難易度をクリアするヒント④:音源を聴くことの重要性
様々なピアニストによる「カプリス」の演奏を聴きましょう。
プロの演奏から、テンポ感、ダイナミクスの使い方、音色、ペダリングなど、多くのことを学ぶことができます。
楽譜だけでは分からない音楽的なニュアンスを掴むのに役立ちます。
この記事でも、演奏家の演奏を載せています。
みなさんそれぞれ違うので、参考のためにご覧ください!
シベリウス「カプリス」は難曲ですが、これらのヒントを参考に、根気強く練習を重ねることで、必ず乗り越えることができるはずです。
カプリスの楽譜紹介
どんな作品を演奏するのも同じですが、自分に合った楽譜で練習することも大切です。
ここでは、参考として「カプリス」の楽譜を紹介します。
もちろん、先生に指定されたものがあれば、そちらを使用してくださいね!
ピアノのための10の小品 Op.24/ブライトコップ & ヘルテル社

ダウンロード形式の楽譜も意外に便利
「目当ての作品だけが欲しい」という方は、ダウンロードで探すのもおすすめです。
一度ダウンロードしてしまえば、タブレットで見れますし、プリンターやコンビニでもプリントアウトできます。
おすすめは、大手楽器メーカーのYAMAHAが提供している「ヤマハのぷりんと楽譜」。
定額制ではありますが、月額1,000円以下で25万曲の中から選べるのはコスパ良すぎかなと。
レベル別の楽譜もあるので、自分の成長に合わせた楽譜を購入できますよ!
シベリウス「カプリス」の難易度解説:まとめ
この記事では、シベリウスのピアノ曲「カプリス」Op.24-3の難易度について解説しました。改めて内容をまとめます。
- シベリウス「カプリス」の難易度は非常に高く、上級者の中でも特に高度な技術を持つ方向けの作品です。
- 速いパッセージ、広範な跳躍、複雑なリズム、重音、オクターブなど、複合的な高度な技術が演奏の難易度を高めています。
- 単なる技術だけでなく、シベリウスらしい音楽的な深さや表現力も要求されます。
- 挑戦するには、部分練習、ゆっくりとしたテンポからの練習、効果的な脱力、音源研究、そして可能であれば指導者について学ぶことが有効です。
- 難曲ですが、挑戦する価値のある魅力的な作品であり、克服することで大きな成長に繋がるでしょう。
「カプリスの難易度」を知り、この記事を読んで興味を持たれた方は、ぜひこの魅力的な作品に挑戦してみてください。時間はちょっとかかるかもしれませんが、一つ一つの壁を乗り越える過程は、きっとあなたのピアノ演奏における大きな成長に繋がるはずです!