シベリウスの人気ピアノ曲「ロマンス Op.24-9」。
その美しい旋律を聴くと「自分でも弾いてみたい!」と思う人も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、この珠玉の小品の難易度、効果的な練習のコツ、そして無料楽譜情報まで、詳しく解説します。
記事の前半では「シベリウスについて」や「ロマンスの難易度」を解説し、記事の後半では「弾き方のポイント」や「無料楽譜」を解説しますので、ぜひ最後までご一読ください!
筆者は3歳からピアノを開始。いろいろあって、30年以上ピアノに触れています。音大には行っておらず、なぜか哲学で修士号を取得という謎の人生。
シベリウスってどんな作曲家?~ロマンス Op.24-9 を知る前に~
出典:YouTube:Misa Shitaka様より
本題に入る前に、シベリウスについて少しだけ解説しますね。
ジャン・シベリウス(1865-1957)はフィンランドを代表する、国民的英雄とも称される作曲家です。
シベリウスは、フィンランドの壮大な自然風景や神秘的な神話、叙事詩「カレワラ」などから深いインスピレーションを受け、透明感あふれる神秘的な作風が特徴です。
生涯を通じて100曲以上のピアノ曲も作曲しており、その中には「樹木の組曲 Op.75」や「花の組曲 Op.85」といった佳品も含まれます。
シベリウスのピアノ曲は、リストやラフマニノフのような超絶技巧を前面に出すスタイルとは異なり、むしろ彼独特の和声感覚や、北欧の澄んだ空気を感じさせるような抒情的なメロディラインが魅力と言えるでしょう。
「ロマンス Op.24-9」は、1894年から1903年にかけて作曲された「10のピアノ小品 Op.24」の中の1曲で、シベリウスの比較的初期の作品群に属します。
この時期の作品には、ロマンティックで親しみやすい旋律を持つものが多く、この「ロマンス」もその1つといえるでしょう。
シベリウスについての詳しい解説はコチラからどうぞ。
シベリウス「ロマンス Op.24-9」とはどんな曲?魅力と特徴を解説
出典:YouTube
本作の正式名は「10のピアノ小品 作品24 第9番 変ニ長調」です。
変ニ長調という調性は、ショパンの「雨だれの前奏曲」やリストの「愛の夢 第3番」など、ロマンティックで甘美な響きを持つ名曲に多く用いられており、この「ロマンス」の性格を非常によく表しています。
楽曲は、一般的にABA’(三部形式)として捉えられます。それぞれの部分が持つ雰囲気は以下の通りです。
A部分: 甘く、そしてどこか切なさを秘めた歌うような美しいメロディが印象的で。穏やかで夢見るような、あるいは遠い過去を懐かしむような雰囲気で始まります。
B部分: 中間部では曲想が一転し、やや情熱的になります。音域も上下に広がり、一時的に短調の響きが顔を覗かせたり、力強い和音が用いられたりすることで、内面の感情の高まりやドラマティックな展開が表現されます。
A’部分: 再び冒頭の美しいメロディが戻ってきますが、A部分と全く同じではなく、和声付けや装飾が少し変化し、夢から覚めるかのように余韻を残しながら、穏やかに曲を閉じます。
全体を通して、北欧の作曲家らしい透明感のある響きと、聴く人の心に深く染み入るような、まさに「ロマンス」という名にふさわしい美しい小品です。
シベリウス「ロマンス Op.24-9」のピアノ難易度は?レベルを徹底分析
出典:YouTube
ちょっと寄り道しました。。。
本題の難易度を。
結論から言うと、この「ロマンス」の難易度は、ピアノ中級の上から上級へのステップアップを目指すレベルと言えるかなと。
初心者向けの簡単な曲ではないものの、ピアノ愛好家でも十分に挑戦し、美しい演奏を目指せる射程圏内の曲です。
総合的な難易度評価:中級の上~上級へのステップアップに最適?
一般的なピアノ教則本の進度で言えば、以下のようなレベル感が目安となります。
具体的な目安は以下の通りです。
発表会やサロンコンサートなどで演奏するのにも適した長さ(約3~4分程度)と、聴き映えのする華やかさを持っています。
全音ピアノピースで出版されているシベリウス「ロマンス」は、今回の解説とは別の作品です。
技術的な難易度ポイント3つ
- 豊かな和音とアルペジオのコントロール: 左手は終始アルペジオが多く、これを滑らかに、かつ音楽的に響かせる技術が必要です。一音一音の粒立ちを揃え、メロディを邪魔しないデリケートな音量コントロールが求められます。
- 広い音域への正確な跳躍: 特に中間部やクライマックスにかけて、左右の手ともに1オクターブ以上の広い音域への跳躍が登場。ミスタッチを防ぎ、跳躍後の音を正確に、かつ音楽的に繋げる練習が必要です。
- オクターブ奏法の柔軟性: 曲の盛り上がる部分では、右手によるオクターブのメロディや、左手によるオクターブの和音が出てきます。手の小さい方には負担になる可能性もありますが、手首や肘を柔らかく使って、力みなく楽に豊かな音を出す工夫が求められます。
表現面の難易度ポイント3つ
- 美しいレガートと息の長いフレージング: この曲の命とも言えるのが、歌心あふれる美しいメロディラインです。指先だけでなく、手首、腕、そして体全体を使って音楽の流れを感じ、表現することが大切です。
- 幅広いダイナミクスの表現とコントロール: pp(ピアニッシモ)の囁くような繊細な響きから、ff(フォルティッシモ)の情熱的なクライマックスまで、ダイナミクスの幅が非常に広いです。
- テンポ・ルバートの自然なセンス: 「ロマンス」というタイトルにふさわしく、ある程度のテンポの揺れ(テンポ・ルバート)を用いることで、よりロマンティックで表情豊かな演奏になります。
シベリウス「ロマンス Op.24-9」の練習方法と演奏のコツ
出典:YouTube:Junko Ueno Garrett様より
ここまで「ロマンス Op.24-9」の難易度をざっくりと解説しました。
次に、練習方法を具体的に見ていきましょう。
ポイント1:美しい旋律線を際立たせる練習~右手・左手のバランス~
2:テクニカルなパッセージを克服する部分練習~ゆっくり正確に~
3:豊かな音楽表現を追求する~ペダリングとダイナミクス~
シベリウス「ロマンス Op.24-9」の楽譜紹介【無料楽譜も!】
最後に楽譜紹介をして、終わりにしますね。
ここでは、無料で入手できる楽譜から、学習に適した市販の楽譜まで、いくつかの選択肢をご紹介します。
無料でダウンロード可能!IMSLP(国際楽譜ライブラリープロジェクト)の活用法
IMSLPは、著作権が消滅したクラシック音楽の楽譜を、PDFなどの形式で無料でダウンロードできるサイトです。
シベリウスの「ロマンス Op.24-9」のダウンロードはコチラ!(シベリウス:10の小品 Op.24全曲です)
利用上の注意: IMSLPで提供されている楽譜は、パブリックドメイン(著作権保護期間満了)のものが中心で国やす。地域によって著作権の保護期間が異なる場合があるため、サイト内の利用規約や各楽譜の著作権情報を確認することをおすすめします。
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シベリウス「ロマンス Op.24-9」の難易度解説:まとめ
ここまで、シベリウスの珠玉のピアノ小品「ロマンス Op.24-9」の難易度、効果的な練習のポイント、そして様々な楽譜情報について詳しく解説してきました。
技術的にはピアノ中級の上から上級へのステップアップに位置づけられ、滑らかなアルペジオ、正確な跳躍、無理のないオクターブ奏法、そして何よりも繊細な音楽表現など、総合的なピアノの技術と音楽性が求められます。
今回の記事を参考に、ぜひあなたらしいシベリウスを響かせてみてください!