ピタゴラスってどんな人?その生涯やエピソード、死因は?宗教団体を設立していた??

    ピタゴラス(ピュタゴラスとも)は、紀元前570年ごろにギリシャで生まれた数学者・哲学者です。プレイウスの僭主レオンから「あなたは何者か?」と問われ「哲学者(ピロソポス)だ」と答えたことで、人類史上最初に「哲学者」という言葉を用いた人物とも言われています。
    中学の数学で勉強する「ピタゴラスの定理」(「三平方の定理」って習ったハズ)を証明した人物としてもその名が知られています。ピタゴラスの人生は謎に包まれていますが、数々の伝説が残されているとっても面白い人物ですので、今回はピタゴラスの人物像や思想、ビックリ仰天のエピソードについてサクッと紹介します。

    サク哲夫
    これを読んで得られること
    • ピタゴラスの生涯について少し知れる
    • ピタゴラスが「数」を重要と考えていたことを知れる
    • ピタゴラス周辺の哲学者たちについて知れる
    • ピタゴラスの伝説について知れる

    ピタゴラスの生涯を簡単に解説!!

    ピタゴラスとはどのような人生を歩んだのでしょうか。色々と人生を調べてみると、どうやら楽しいスイッチを開発していた人物ではなさそうです(笑)。

    若い頃から勉強熱心だった

    ピタゴラスは、紀元前6世紀に小アジアの島・サモスという場所に生まれました。しかし生年月日については詳しい時期はわかっておらず、紀元前570年頃生まれとか、紀元前582年生まれとする説など結構な幅があります。なので、大体そのくらいの時期と覚えておいてください(笑)

    そしてどの解説を見ても、サラっと生地が「サモス」と書いていますが、「それってどこ?」という疑問が出てくると思って調べてみました。

    サモスはエーゲ海の東、トルコ沿岸にあるギリシャの島です。サモス島は結構由緒のある島で、ギリシア神話の最高神ゼウス(ぜひ覚えてください)の妻ヘーラーが生まれた島とされています。神殿なんかも残っていて、サモス島の神殿遺跡は、1992年に世界遺産に登録されています。

    美しい街並みのサモス島 出典wikipedia

    ちなみに、アナクシメネスと同時期の人物であり、ピタゴラスもアルケーを追求していたこからミレトス学派にも学んでいたことが考えられます。アナクシメネスについてこちらで書いています!!↓

    若いころのピタゴラスについては詳細なことはわかっていませんが、宝石商の息子だったそうで、エジプトやフェニキアなどを訪ね、各地でさまざまな学問(幾何学や天文学などなど)を吸収したと言われています。放浪の旅からサモスに戻ったピタゴラスでしたが、当時サモス島を支配していた、ポリュクラテスの僭主政治(せんしゅ・せいじ)から逃れるためイタリア南部クロトンで活動を始めます。
    クロトンの地で20年ほど生活したのち、政治的動乱を逃れてメタポンティオンに移住しこの地で没しています。メタポンティオンは、現在のイタリアのタラントです(イタリアの地図で言うとくるぶしのちょっと下辺り)

    教団を作る

    クロトンに移住したピタゴラスは、自身が学んだことを伝えるためにピタゴラス教団を開きます。教団を設立した当初は人が集まらず苦戦したそうですが、徐々に人が集まようになり、組織は拡大していきました。ピタゴラス教団の基本的思想を見てみると、当時流行していた「オルフェウス教」の教義と類似点が多く、なんらかの影響を受けていたことが考えられています。

    ピタゴラスは当時から博学で有名で「サモス賢人」とか、熱心な弟子たちからは「神の声を取り継ぐ者」なんて呼ばれていました(今でいうところの「カリスマ」ですかね)。ピタゴラスと比較的近い時代の哲学者ヘラクレイトス(重要)はピタゴラスについて次のように述べています。

    ・・・全ての人間たちの中でもっとも研究に励んだ。そしてその種の書物を抜粋して、自前の智なるものを案出した。

    ヘラクレイトス 出典:廣川洋一著 ソクラテス以前の哲学者 p73 より引用

    また、ヘラクレイトスより2世紀後の哲学者エンペドクレス(重要)も、ピタゴラスについてこのように述べています。

    あの人々の間に、はかり進れぬ多大な智を弁(わきま)えるひとりの人物があった。まことに、その人は思慮の最大の富をわがものとし、わけても、ありとあらゆる賢い業に通じていた。

    エンペドクレス 出典:廣川洋一著 ソクラテス以前の哲学者 p73より引用

    他にも多くのことが伝説として残されていますが、それは後述します。
    とにかく、当時のピタゴラスはとてつもない影響力をもって人々に崇められていた(?)と言っても過言ではないようです。

    ピタゴラス教団とは?教団には厳しい戒律があった。

    教団を設立したピタゴラスでしたが、入学するには厳しい試験にパスしなければなりませんでした。試験に合格した学生(信者)はこれまた厳しい戒律が課せられ、そのなかで数学・哲学・音楽の研究を行いました。

    プク子

    ピタゴラス教団には面白い決まりがあったって聞いたことあるけど、例えばどんなものがあるのよ?

    サク哲夫

    ピタゴラス教団の戒律には例えばこんなものがあったよ!

    ・入団したものは全財産を寄付しなければならない。

    ・豆を食べてはならない

    ・パンをちぎって食べてはいけない。

    ・秤(=度)を踏み越えてはいけない。

    ・落ちた食べ物を拾ってはいけない。

    ・白い雄鶏を食べてはいけない(基本、動物とか魚ダメ)

    ・糸杉の柩(ひつぎ)を使ってはいけない。
    などなど

    他にもたくさんありますが、有名なところだと上記のものがありました。また、ピタゴラス教団は「秘密主義」であったため、そこで教えられたことは門外不出とされていました。

    こうした戒律のことをアクゥスマタとか、シュンボラって言いますが、これらの戒律のどこまでが本当にピタゴラスが説いたことなのか厳密にはわかっていないので、「こんな戒律があったのね」程度で大丈夫です👌。でもこのアクゥスマタの一つに以下のものがあって、これはピタゴラスの思想を知る上で重要なので、書いておきますね。

    デルポイの神託とは何か。テトラクテュスなり。それはすなわちハルモニアなり。このハルモニアのうちにセイレン達(魔女達)は住まう。

    思想や哲学について

    ピタゴラスの生い立ちと教団についてサクッと書いてみましたが、ここからはピタゴラスの思想についてうす〜〜く紹介します。上記最後のアクゥスマタも関係しているので、さらっと読んでみてください。

    ピタゴラスの哲学「テトラクテュス」って??

    主に数学の研究をしていたピタゴラス教団は、数の神秘を研究することにより、宇宙の真理の解明を試みました。そのなかでも彼らは「10」を完全な数字と捉えて神聖視し、それを図式化したものをテトラクテュスと呼び教団の紋章にもしていました。そのテトラテュクスがこちら👇

    テトラクテュス 出典:wikipediaより

    テトラクテュスとは1+2+3+4=10を表すもので、さらに最初の整数4つの和であることから、ピタゴラス教団では神聖なものと考えられていました。またテトラクテュスは、1:2(オクターブ)、2:3(5度)、3:4(4度)のように音階を構成していることから、ハルモニア(調和)の象徴としても崇められ、宇宙もこのハルモニアの調和によって成り立っていると考えました。

    宇宙の本質は「数」で解明できる!

    このように、全ては「数」によって成り立っていると考えたピタゴラス及び教団は、宇宙を含むあらゆるものの本質を「数」で説明します。残念ながらピタゴラス本人の著作が残っていないためピタゴラスの思想・哲学を直接知ることはできませんが、ピタゴラス派で学んだピロラオスという人物の断片を通じて、なんとな〜くピタゴラスの思想を知ることができます。

    知られる限りのものはすべて、数をもつ。と言うのも、数無くしては何一つ思惟されることも認識されることもできないからだ。

    ピロラオス(断片4)

    また断片5では、次のことが書かれています。

    じっさい、数は、2つの固有の種類、すなわち奇数と偶数をもち、また第3のものとして、この両者から混合されて作られた、奇遇数をもつ

    ピロラオス(断片5)

    こうした断片から(他にもあるけど)、ピタゴラスはこんなふうに考えたのではないかということが推察できます。音楽的数比のハルモニア(調和)を音楽的領域だけにとどめず、それが宇宙の根本原理であると考えたのがピタゴラス及びピタゴラス教団の大きな功績でした。

    ピタゴラスは魂の不死をとなえた

    テトラクテュス以外にもピタゴラスの思想を理解する上で重要なことがあるので、覚えておいてください。ピタゴラスは、魂の不死輪廻転生を信じていました。輪廻転生といえば仏教というイメージがあるかもしれませんが、古代ギリシアの哲学者の中にも同じようなことを考えていたことが興味深いですね。

    このエピソードとして有名なもに、哲学者クセノパネスの断片があります。あるとき、ピタゴラスが通りを通っていると子犬が叩かれているところに遭遇します。その時にピタゴラスは、

    やめよ、叩いてはならぬ。これは私の友人の魂だからだ、その鳴く声を聞いてそれとわかったのだ。

    クセノパネス 断片7

    と戒めたそうです。ピタゴラス及びピタゴラス教団は、人間の魂は肉体という墓場に埋められた神的存在であり、罰として人間や動物、植物に輪廻転生すると考えていました。そして、自己を浄めることで輪廻転生のサイクルから解放されることが今世の生きる目的と考えていたようです。

    ピタゴラスは、魂を「自我」とした点や、魂の不死を唱えた最初の哲学者でもありました。
    場所は異なっても、仏教の開祖である釈迦と同じ時代に同じような(あえて「ような」としました)ことを考えた人物がいたのはとても興味深いですね。

    ピタゴラスのエピソードや死因は?

    ピタゴラスの定理を証明したり、輪廻転生を唱えたり、まさに天才的人物だったピタゴラス。他にもとんでもエピソードが数多くのこされているので、その中から少しだけ紹介して今回は終わりにします(またそのうちリライトします)。

    ピタゴラス

    ピタゴラスのエピソード

    とはいっても今回参照するのは、3世紀ごろの哲学史家ディオゲネス・ラエルティオスがまとめた「ギリシャ哲学者列伝」からのものです。「3世紀頃なら時代も近いし、信憑性あるじゃん!!」と思ったそこのあなた。ピタゴラスが生きていた時代とラエルティオスが生きていた時代では、すでに800年くらい時間が経っているので、ラエルティオスの時代でもピタゴラスはすでに伝説的人物です(笑)。

    800年前ってことは日本だと鎌倉時代ですし、その時代の話ってもはや伝説ですよね??。
    話としては「牛若丸(義経)は天狗から剣術を教わった」とか、「弁慶は鬼の子」なんかと同じレベルかもしれません。でも話として面白いので、いくつかご紹介します。

    天体をコスモス(秩序)と名づけた

    ピタゴラスは天体を「コスモス」(秩序)とした最初の人物とされていて、「地球は丸い」と考えていたと言われています。しかし「コスモス」という言葉はピタゴラス以前からも使われていたようで、アリストテレスの弟子テオフラストスによれば最初に使ったのは、哲学者パルメニデスとされています。また、哲学者ゼノンによればヘシオドスだったという説もあります。よくみる「諸説あり」の一つなんでしょうね。

    ピタゴラス教団はめちゃくちゃ厳しい

    数学の試験を合格したものしか入団できなかったピタゴラス教団。教団に入ってからも結構厳しくて、最初の5年間は、ただただ先生の言うことを傾聴して勉強する。しかも5年後の審査に合格しないとピタゴラスに会うことすらできない・・・( ; ; )。この審査に合格して、初めてピタゴラスの家に通されたそうです。

    ピタゴラス教団での授業は完全数を異常に重視しため、生徒が無理数を発見した時には、無理数認める代償として、発見した生徒を死刑にしています(恐ろしい)。
    無理数の発見により、自分(達)の教義が揺らぐことを恐れたのでしょうね。

    金星について言及した

    現代では「宵の明星と明けの明星は同じ金星である」のは常識ですが、これを最初に言い当てたのはピタゴラスとされています。数学・哲学だけではなく、天文学にも通じていたピタゴラスの有名なエピソードですが、一体どうやって観察したのでしょうか・・・。

    冥界で過ごしていたらしい

    ラエルティオスのピタゴラスの章を読むと、ピタゴラスはハデス(冥界)で207年間生活していたらしいです(笑)。輪廻転生を唱えていたとはいえ・・・。しかも207年という数字はどこからでてきたのでしょうか(謎)。

    生活はベジタリアンで、質素な食べ物

    ピタゴラス教団は食生活にも厳しい決まりがあったそうです。

    食べ物は、肉、魚、卵また卵を産む動物の禁止。豆を食べることの禁止。神殿で秘儀を行う人が「禁止」といったものは「禁止」。

    じゃあピタゴラス本人はどんな食生活だったかというと、

    ハチミツだけだったり、蜂の巣やパンを一緒に食べたり、野菜を煮たものか生でそのまま食べていたらしいです。究極のベジタリアン。

    ピタゴラスの定理を発見が嬉しくて、神殿に百頭の牡牛をささげた

    中学の数学で必ず習う「ピタゴラスの定理」(三平方の定理)。これを発見したピタゴラスは嬉しさのあまり百頭の牡牛をささげたとされていますが、これは事実ではないとのこと。

    たしかに、魂の輪廻を説いたことや上述のクセノパネスの「犬の逸話」から考えると、動物を捧げるのは、ピタゴラスの思想と矛盾しますね。

    ピタゴラスの死因は?

    多い時には600人もの人が講義に集まり大盛況となったピタゴラス教団。しかし教団の後援者が政治闘争に巻き込まれたことで急速に影響力が弱まり、さらには試験に落ちてピタゴラスを恨んだ人物が、教団を襲撃してピタゴラスを殺害してしまいます。

    と一般的に書かれていますが、ラエルティオスの「列伝」によれば、他に4つくらい死亡原因が載っていて、どれが本当なのか正直わかりませんw。それだけ、伝説的な人物ってことなのでしょうね。おそらく80代まで生きたと考えられています。

    まとめ

    今回は少し長くなってしまいましたが、ピタゴラスについてご紹介しました。「全然サクッとじゃないじゃん!」って声が聞こえて来そうですが、楽しんでもらえたら幸です。2つに分けて書くのもありかな〜なんて思っていますので、またその辺は考えます。

    神社とか日本の神話系も面白いかな・・・。次回に続く。