『メサイア』を知るための基礎知識|オラトリオとは?音楽的特徴を簡単解説

    ヘンデルシリーズ3つ目は、オラトリオ『メサイア』の解説です。
    前回の代表作シリーズで紹介しなかったので、
    一番有名なの出てないじゃん!!」と思った方もいるかもしれません。

    それはさておき・・・。
    「ハーレルヤ!、ハーレルヤ!」
    というメロディー、聴いたことありませんか?

    クラシック音楽を聴かない方でも、
    一度は聴いたことのある有名なメロディーだと思います。
    実はこれ、ヘンデルによって作曲された作品なんです。
    そして、このメロディーが収録されているのが、
    オラトリオ『メサイア』です。

    では、オラトリオ『メサイア』とはどのような作品なのでしょうか。
    今回もざーーっくり解説していますので、
    ぜひ最後まで読んでみてください。

    前回のおすすめ作品集についてはコチラから。

    出典:Amazon「The Best of Handel,vol.」

    オラトリオ『メサアイ』とは

    オラトリオ『メサアイ』についてざっくり解説します。
    歴史的なことがらも少しだけ出てくるかもしれませんが、
    難しいことは省きますので、ぜひ豆知識として参考にしてみてください。

    そもそも「メサイア」ってどんな意味?

    ここまで何度も「メサイア」と連呼してきましたが・・・。
    そもそも、メサイアとはどういう意味なのか知らない方も多いはず。

    なのでここでは、メサイアの意味について簡単に解説します。

    「メサイア」とは、ヘブライ語の「メシア」を英語読みしたものです。
    「神から選ばれた支配者」「悩める者の解放者」「聖油を注がれた者」を意味していて、
    「救世主」なんて訳されたりしています。
    映画「マトリックス」の主人公ネオみたいなやつです。

    キリスト教における救世主とは「イエス・キリスト」のことなので、
    オラトリオ『メサイア』はイエス・キリストを題材にした物語だと覚えておいてください。

    『メサイア』の楽曲構成とは?

    「メサイア」の意味が理解できたところで、
    本作の楽曲構成を見てみましょう。

    オラトリオ『メサイア』は序曲➕3部で構成されています。
    それぞれのテーマはこんな感じ☟

    メサイア
    • 序曲
    • 第1部・・・予言とキリストの誕生(第1曲〜第21曲)
    • 第2部・・・受難と贖罪(第22曲〜第44曲)
    • 第3部・・・復活と永遠の命(第45曲〜第53曲

    また、メサイアで使用される物語は『旧約聖書』『新約聖書』の両方を使用し、
    一つの物語として展開します。
    本作はヘンデルがイギリス滞在時に作曲したため、
    歌詞はすべて「英語」です。

    しかも、こんな風にざっくりと書いていますが、
    演奏時間は約2時間半に及ぶ超大作となっています。

    『メサイア』にまつわるエピソード

    音楽家人生において絶大な人気を誇り、また莫大な遺産を残したヘンデル。
    そんな彼にも大きな挫折の時期がありました。

    オペラ作曲家として人気を博したものの、
    次第にイギリスでのオペラ人気は下火に・・・。
    競合との争いもあり、ヘンデルは多額の負債を抱えてしまいます。
    また、52歳の時には卒中で倒れるなど、まさに踏んだり蹴ったりでした。

    しかしそんなヘンデルに光明をもたらしたのが、
    オラトリオの作曲です。
    オペラからオラトリオの作曲へ転身したヘンデルは、
    人気を取り戻し、再び絶大な人気を獲得したのでした。

    本作『メサイア』は、ヘンデルにとって数少ない宗教的オラトリオであり、
    なんと、わずか24日間で書き上げたと伝えられています。

    初演が行われたダブリンでは大成功を収め、
    町中が大騒ぎになったそうです。

    ヘンデル:オラトリオ《メサイア》 (英語版)(20世紀の巨匠シリーズ)

    ロンドン初演は不評だった??

    ダブリンでは大成功したものの、
    じつはロンドンでの初演はそれほど成功しなかったそうです。

    その理由は、宗教的な内容を娯楽として劇場で上演するのは「神への冒涜(ぼうとく)にあたる」からとのこと。
    しかもこの批判は数年を経てもおさまることはなく、ロンドンではなかなか認められない時期が続いたそうです。

    しかしヘンデルはこれにめげず、孤児院で慈善演奏会を開くなど『メサイア』の普及に努めます。

    そしてこれが功を奏し、やがてロンドン市民にも認められ、
    『メサイア』は高く評価されるようになったのでした。

    一方でこんな説もある

    ロンドンでの初演は成功しなかったと言われる一方で、
    こんな伝説も伝えられています。

    1743年の初演の際、ロンドン国王のジョージ2世も招待されていました。
    「ハレルヤ・コーラス」を聴いた国王は感動のあまり立ち上がり拍手を送ったと伝えられています。

    そして聴衆もそれにならい立ち上がって拍手を送り、現在でも「ハレルヤ・コーラス」の時には、スタンディング・オベーションが送られるようになったそうです。
    しかし、これが事実かどうかは疑わしいとのこと・・・。

    オラトリオとは??

    このブログでも何度も登場している「オラトリオ」。
    バッハシリーズで説明しましたが、ここでも改めて解説します。

    もともとは「祈祷所(きとうしょ)」という意味

    オラトリオとは、キリスト教における「祈祷所」(祈りや懺悔を捧げる場所)を意味しています。
    つまり本来は、教会や修道院に設置された「祈祷用の部屋」だったわけです。

    やがて祈祷所で音楽が奏でられるようになり、17世紀初め頃に劇音楽としてのオラトリオが誕生しました(ざっくりね)。

    オラトリオは、キリスト教的・道徳的内容を持つ物語であり、独唱・合唱・管弦楽で演奏されます。

    日本語では「聖譚(せいたん)曲」と訳されていますが、
    これは覚えなくてよいです。

    オラトリオの特徴は?

    なんとなくオペラと似ている感じがしますが、
    オペラとはすこし異なります。

    オペラのテーマは恋愛や悲劇、喜劇などさまざまですが、
    オラトリオの場合は宗教的(キリスト教的)であるのが一般的です。

    また、演技や舞台装置、衣装などがないのもオペラと異なる点といえるでしょう。
    初期のオラトリオでは演技付きのものもあったようですが、
    熱心な信者からの反対により、現在の形式に落ち着いたとされています。

    物語の「語り手」がいることもも大きな特徴です。

    三大オラトリオがある

    オラトリオはヘンデル以外にもさまざまな作曲家によって生み出されています。
    せっかくですので、3大オラトリオについても覚えておいてください。

    まず一つ目が、今回紹介しているヘンデルの『メサイア』

    そして2つ目がハイドンの『天地創造』
    じつはこの『天地創造』も、当初はヘンデルが作曲する予定だったと言われています。

    そして3つ目がメンデルスゾーンによる『エリア』です。
    ちょっと難易度が高いかもしれませんが、
    音楽史の豆知識としてぜひ覚えておいてください。

    メンデルスゾーンの『エリア』についてはコチラで解説しています👇

    『メサイア』を聴いてみよう

    ということで、最後に『メサイア』を聴いてみましょう。
    いくつか紹介しますので、ぜひ聴き比べてみてください。

    『メサイア』全編

    『メサイア』全編動画を紹介します。
    全体的に明快で穏やかなので、「作業用BGM」にぴったりかもしれません。

    ハレルヤ

    コチラが一番有名な「ハレルヤ」です。
    聴くだけでなんだか元気になる気がします。

    ハレルヤとは、ヘブライ語で「主を賛美よ」「主を讃えよ」の意味。

    23番 「彼は侮られて人に捨てられ」

    ハレルヤが特に有名ですが、
    ぜひこの作品も聴いてみてください。
    信仰心の厚いヘンデルは、この曲を作曲中に涙を流したと言われています。

    まとめ

    今回はヘンデルの最高傑作オラトリオ『メサイア』を紹介しました。
    超絶ざっくりですが、作品を知るきっかけにしていただければ嬉しいです。

    前回の代表作と合わせて聴いていただくと、
    「意外に知ってる作品あるな」と思われた方もいるかもしれません。
    この記事を機会に、ぜひヘンデルの美しい世界に触れてみてください。

    ヘンデルシリーズも次回でラストです。

    👉ヘンデルのCD一覧はこちら!!

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