ヴィヴァルディ「調和の霊感」を解説!おすすめ名盤も紹介!

調和の霊感

    今回はヴィヴァルディ「調和の霊感」について紹介します。

    バロック音楽の金字塔「調和の霊感」は、ヴィヴァルディの最初の協奏曲集として1711年に出版された傑作です。

    4つのヴァイオリン、2つのヴィオラ、チェロ、通奏低音による壮大な編成で、全12曲で構成されています。発表当時、ヨーロッパ中で大きな反響を呼び、ヴィヴァルディ独自の創造性が遺憾なく発揮された本作は、後の作曲家たちにも多大な影響を与えました。

    ヴィヴァルディといえば「四季」ばかりが取り上げられますが、この記事を機会にぜひ「調和の霊感」についても知っていただければ幸いです。

    もちろん、いつものようにざっくり解説なので、気軽に最後までご一読ください。
    記事後半では演奏動画や名盤、楽譜も紹介しています。

    画像出典:アマゾン:ヴィヴァルディ:協奏曲集 調和の霊感(イタリア合奏団)

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    ヴィヴァルディ「調和の霊感」について

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    「調和の霊感」は、ヴィヴァルディが慈善院の女子生徒たちのために作曲した作品の中から厳選して編纂した曲集です。

    従来のイタリアの出版社ではなく、ヨーロッパ各地に販路を持つアムステルダムのエティエンヌ・ロジェ社から出版されたことで、ヴィヴァルディの音楽は国際的な広がりを見せることになりました。

    作曲年代は?

    「調和の霊感」は1711年にアムステルダムで出版されましたが、収録された協奏曲の一部はそれ以前に作曲されていました。

    この作品は、ヴィヴァルディにとって初めて印刷された協奏曲集で、それ以前の作品1「12のトリオ・ソナタ」や作品2「12のヴァイオリン・ソナタ」とは異なり、協奏曲という形式に挑戦した記念碑的な作品と言えるでしょう。

    なので、時代背景的には「四季」が収録されている「和声と創意の試み」よりも前ということになります。

    楽曲の特徴

    この協奏曲集は12曲で構成されていて、ヴィヴァルディは各曲の並びに工夫を凝らしました。
    たとえば、長調(明るい感じの調子)と短調(少し暗めの調子)を交互に配置することでメリハリをつけ、聴衆を飽きなせないような手法が用いられています。

    全体の演奏形態の特徴は以下の通りです。

    1. 4本のヴァイオリンが主役の曲(4曲)
    2. 2本のヴァイオリンが主役の曲(4曲)
    3. 1本のヴァイオリンが主役の曲(4曲)

    こうすることで、ヴィヴァルディは音楽の掛け合いのような効果を狙ったわけです。
    また、当時としては革新的だった手法として次のものがあります。

    • オーケストラ全体が同じメロディーを演奏する「ユニゾン」という手法を効果的に使用
    • ソロ楽器とオーケストラの対比がはっきりしていて、メリハリがある
    • テンポの速い楽章と遅い楽章を交互に配置し、変化をつけている

    初めて聴く方は、まず第1番(4本のヴァイオリンの協奏曲)から聴き始めるのがおすすめです。多くのヴァイオリンが織りなす、華やかな音の重なりを楽しめると思います。

    ヴィヴァルディの手法は、後のバッハやテレマンといった作曲家たちにも大きな影響を与えました。

    献呈先はトスカーナ大公子フェルディナンド・デ・メディチ

    本作品は、芸術パトロンで知られるメディチ家の一員、トスカーナ大公子フェルディナンド・デ・メディチに献呈されました。

    当時のイタリアを代表する芸術保護者への献呈は、ヴィヴァルディの作曲家としての地位を確立する重要な要素となりました。

    パトロン・・・芸術家や慈善団体などを支援・援助する人々のこと。

    メディチ家・・・14世紀から18世紀にかけてフィレンツェを支配した有力な銀行家一族。芸術のパトロンとしても知られ、レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロなど、ルネサンス期の多くの芸術家を支援しました。

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    楽曲編成は?

    「調和の霊感」は、4つのヴァイオリン、2つのヴィオラ、チェロ、通奏低音という8つのパートで構成されています。

    特徴的なのは、3曲ごとに独奏楽器の編成が変化すること。
    4つのヴァイオリンによる協奏曲、2つのヴァイオリンによる協奏曲、そして独奏ヴァイオリンによる協奏曲が、それぞれ4曲ずつ収録されています。

    コレッリの影響を受けて作曲された

    ヴィヴァルディは、コレッリコンチェルト・グロッソの形式を踏襲しながらも、独自の発展を遂げました。

    特に、2つのヴァイオリンとチェロによるコンチェルティーノと弦楽オーケストラの対比は、ローマの伝統的なコンチェルト・グロッソの影響を強く受けています。

    アルカンジェロ・コレッリ(1653-1713)・・・バロック時代のイタリアの作曲家兼ヴァイオリニスト。ヴィヴァルディやバッハ、ヘンデルなどの作曲家に影響を与えた。

    コンチェルト・グロッソ・・・バロック時代のの音楽形式の1種。楽器ソロとオーケストラが2つに分かれ、交互に演奏していく形式のこと。

    「和声と創意の試み」との違い

    ヴィヴァルディ「和声と創意の試み」より「春」
    出典:YouTube

    「調和の霊感」と「和声と創意の試み」は、ともにヴィヴァルディの代表的な協奏曲集ですが、作曲された時期や性格に大きな違いがあります。

    「和声と創意の試み」は、より成熟した時期に書かれ、伝統的な作曲技法と創造的想像力の調和を追求した作品として知られています。

    こちらも全12曲で構成され、1番から4番までが有名な「四季」です。
    以下では「和声と創意の試み」について簡単に紹介します。

    「調和の霊感との共通点」:協奏曲集&3楽章構成

    両作品は12曲からなる協奏曲集という形式を共有しています。
    また、急-緩-急の3楽章構成を基本としていますが、「調和の霊感」は初期の作品であるため、新旧の様式が混在しているのが特徴です。

    一方、「和声と創意の試み」では、より洗練された形で3楽章形式が確立されています。

    有名な「四季」が収録されている

    「和声と創意の試み」(作品8)の最大の特徴は、冒頭4曲に「四季」が収録されていることです。「春」「夏」「秋」「冬」それぞれに詩的なソネットが付され、自然の情景を音楽で描写する標題音楽としても革新的な作品となっています。

    ソネット・・・14行で書かれたヨーロッパの詩の形式。イタリア風、イギリス風などさまざまなソネットがある。

    「調和と霊感」の後に作曲された

    「和声と創意の試み」は1725年に出版され、「調和の霊感」(1711年)から約14年後の作品です。この間にヴィヴァルディの作曲技法は更なる発展を遂げ、伝統的な和声法と創造的な音楽表現の融合という新たな境地に達していました。「四季」を含む収録曲の多くは1718年から1723年にかけて作曲されました。

    ちなみに、ヴィヴァルディは生涯で450曲以上の協奏曲を作曲しています。

     ヴィヴァルディ「調和の霊感」のおすすめ名盤 

    「調和の霊感」は、バロック音楽の名手たちによって数多く録音されてきました。
    時代とともに演奏解釈も変化し、古楽器による歴史的演奏から現代楽器による現代的解釈まで、様々なアプローチで演奏されています。

    イタリア合奏団

    今回のサムネにも使用した演奏です。
    本場イタリア合奏団による、重厚な演奏が楽しめます。

    イ・ムジチ合奏団

    世界的にも知られるイ・ムジチ合奏団の演奏です。
    「四季」「調和の霊感」の両方を収録。

    クラウディオ・シモーネ指揮

    深みのある、哀愁漂う演奏です。

    ヴィヴァルディ「調和の霊感」の演奏動画 と楽譜を紹介!

    YouTubeなどの動画配信プラットフォームでは、世界各国の優れたアンサンブルによる「調和の霊感」の演奏を楽しむことができます。

    それぞれの演奏団体の個性的な解釈を聴くことで、作品の魅力をより深く味わうことができるはずです。

    「調和の霊感」:第6番

    出典:YouTube

    第8番

    出典:YouTube

    第9番

    出典:YouTube

    第12番

    出典:YouTube

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    「調和の霊感」の楽譜1:第1~6番 (Kleine Partitur) 

    楽譜2:第7番〜12番(Kleine Partitur) 

    ヴィヴァルディ「調和の霊感」解説:まとめ

    • ヴィヴァルディ初の出版された協奏曲集として、バロック音楽史上重要な位置を占める作品
    • 4つのヴァイオリン、2つのヴァイオリン、独奏ヴァイオリンによる変化に富んだ編成
    • コレッリの影響を受けながらも、独自の音楽語法を確立
    • オランダの出版社から出版されたことで、ヨーロッパ全土に影響を与えた
    • 長調と短調を効果的に配置した巧みな曲集構成
    • テレマンやバッハなど、後世の作曲家たちにも大きな影響を与えた
    • ピエタ慈善院の演奏家たちのために書かれた作品から厳選された珠玉の曲集
    • 伝統的な様式と革新的な表現が融合した画期的な作品