前回に引き続き、ビゼーの紹介です。今回はビゼーのおすすめ代表曲を解説します。
劇付随音楽『アルルの女』やオペラ『カルメン』ばかりが取り上げらるビゼーですが、
実は交響曲や交響詩なども代表曲の1つです。
そのほか、作品の特徴や魅力をざっくりと簡単に解説しますので、
ぜひ参考にしてください。
オペラ『カルメン』については次回の記事で紹介するので、
今回は割愛しています。
また、ビゼーの生涯についてまだ読んでいないという方は、
こちらも併せて読んでいただくと、より理解が深まります。
ビゼーのおすすめ代表曲5選
ビゼーといえば、オペラの最高峰『カルメン』の作者として有名ですよね。
『カルメン』については次回に解説するとして、
今回はそれ以外の作品を紹介したいと思います。
意外にもさまざまなジャンルの作品を作曲しているので、
ビゼーの違った側面が味わえると思いますよ!
ビゼーの代表曲その1、交響曲第1番
1曲目はビゼー初期の代表作『交響曲第1番』。
本作は1855年、ビゼーがパリ国立高等音楽院在籍中に書かれた作品です。
このときビゼー17歳。
17歳でこの完成度とは驚かされますね。
完成度の高い作品ですが、19世紀半ばのフランスではオペラ以外の作品は評価が高くなかったため、生前は一度も演奏されることがありませんでした。
この作品が初演されたのは、20世紀に入ってからのこと。
作品が完成してから80年後の1935年、名指揮者フェリックス・ワインガルトナー指揮により初演されました。
若々しいビゼーの才能が溢れた名曲です。
作品は全4楽章構成で、30分程度と比較的短い作品ですので、
オペラ以外ではまずはこの作品から聴いてみるとよいかもしれません。
ビゼーの代表曲その2、ローマ(組曲「ローマ」)
作曲家への登竜門的コンテスト「ローマ賞」で見事グランプリに輝いたビゼー。
その後ビゼーは、ヨーロッパを周り音楽の研鑽を重ねます。
なかでもビゼーにとってお気に入りだったのがイタリア。
本作はそんなイタリア留学での経験をモチーフに作曲されました。
最終稿に至るまでにおよそ10年の歳月がかかったものの、
生前に完全な作品にはなりませんでした。
そのため、現在では「組曲」として演奏されることが多く、
組曲「ローマ」あるいは交響曲「ローマ」の愛称で親しまれています。
作曲当初は4つの楽章で構想されていたようで、
それぞれの楽章に「ローマ」「ヴェネツィア」「フィレンツェ」「ナポリ」のタイトルが付けられていたようです。
グスタフ・マーラーは本作を高く評価しており、
ウィーンでの初演を指揮しています。
代表曲その3、子供の遊び
ビゼーのピアノ連弾曲です。のちに管弦楽曲版にもアレンジされ、
小組曲『子供の遊び』でも演奏されています。
「ビゼーのピアノ曲?」と驚かれた方もいるかもしれません。
しかし、じつはビゼーは卓越したピアノ名手で、
その腕前はフランツ・リストも賞賛したほどでした。
本作は1871年にピアノ連弾のために作曲され、
そのうちの5曲が管弦楽版に編曲されています。
ピアノ連弾では20分ほどの作品ですが、
管弦楽版は10分ほどの小組曲で構成されています。
両方を聴き比べると、より作品の面白みが味わえるのではないでしょうか。
代表曲その4、序曲「祖国」
こちらもビゼーの希少な管弦楽作品です。
当初はオペラ『ドン・ロドリーグ』のために作曲されましたが、
初演直前にオペラ座が火事で消失したため、公演そのものが取りやめとなり、
そのまま放置されていた作品でした。
なんかビゼーってツイてない・・・。
しかしその後、ビゼーが演奏会用序曲にアレンジし、1874年に初演が行われました。
ちなみに演奏会用序曲とは、序曲のみで構成された作品で、それに続くオペラのような物語は展開されない作品のことを言います。
普仏戦争をモチーフにしているため、
愛国心と勇ましさが力強く表現されています。
オペラ自体は残念な結果となりましたが、
本作に対する聴衆の評価は高く、成功を収めたそうです。
代表曲その5、オペラ・コミック「ジャミレ」
19世紀のエジプト・カイロを舞台にした1幕からなるオペラ・コミックです。
1872年にパリのオペラ・コミック座で初演が行われました。
しかし残念ながら人気が出なかったことから、
わずか10回の公演で打ち切られてしまったそうです。
その後も再演されることはなく、
1938年になり、ようやく再注目され始めます。
発表当初は不人気であったものの、
リヒャルト・シュトラウスやグスタフ・マーラーは本作を高く評価しており、
ビゼーの隠れた名曲として知られています。
演奏時間は60分程度です。
代表曲その6、アルルの女
ビゼーのおすすめ代表曲のラストは、劇付随音楽『アルルの女』です。
『カルメン』の次に有名とも言える代表曲で、
とくに「メヌエット」と「ファランドール」は1度は聴いたことがあるかと思います。
本作はフランスの作家アルフォンス・ドーデーの小説『アルルの女』に基づく作品です。『カルメン』と同様、初演は良い評価を得られませんでしたが、
初演から6年後の再演では大成功を収めています。
しかし残念なことに、ビゼーはこの時すでに他界しており、
大成功を目にすることはできませんでした。
全27曲で構成されていますが、
のちに第一組曲、第二組曲に編曲され現在も演奏会のレパートリーとして人気の作品です。
元気が出ない時に「ファランドール」聴くとテンション爆上がりです!
ビゼーの作品の特徴や魅力を簡単に
ピアノ曲や管弦楽曲、組曲と意外にも名曲を作曲しているビゼー。
そんな彼の作品にはどのような特徴があるのでしょうか。
難しいことは述べず、ざっくりと簡単に解説します!
ビゼーの作品の特徴や魅力その1、感情の激しさとドラマの表現
ビゼーは作品において感情の激しさとドラマの表現に優れています。特にオペラ「カルメン」では、愛と死の情熱的なテーマが見事に融合し、独自の音楽的表現で深みを加えています。
『カルメン』のついては別記事にて解説しているので、
そちらを参考にしてください。
『カルメン』で繰り広げられる愛憎劇は、人間が持つ普遍のテーマだと思います。
ビゼーの作品の特徴や魅力その2、異国情緒と民族的な要素の取り入れた
ビゼーは異国情緒と民族的な要素を作品に取り入れることで知られています。
上記の『カルメン』ではスペイン音楽の要素が際立ち、聴衆に異国の雰囲気を鮮やかに伝えます。これが彼の作品に独自の魅力をもたらしています。
ちなみに、ビゼーは一度もスペインを訪れたことがないそうです(えっ??)。
ビゼーの作品の特徴や魅力その3、独創的なオーケストレーション
ビゼーの音楽は独創的なオーケストレーション技法に富んでいます。
管弦楽組曲『アルルの女』では、楽器の巧妙な組み合わせと効果的な編曲が、南仏の風景や情緒を繊細に描写しています。
ビゼーが活躍した時代は、まさにロマン派の時代でした。
作品には標題(タイトル)が付けられ、
音楽に物語性を持たせ始めたのも、この時代からです(ざっくりです)。
そして時代の流れを敏感に感じ取ったビゼーは、
自身の作品にも取り入れ、見事なオーケストレーションに発展させました。
ビゼーの作品の特徴や魅力その4、幅広いジャンルでの活躍と作曲家としての柔軟性
ビゼーはオペラだけでなく、今回紹介したような交響曲や室内楽、ピアノ曲など、
幅広いジャンルで作曲活動を展開しました。
そして、その柔軟性こそが彼の音楽に多様性と深みを生み出し、
時代を超えても多くのファンを惹きつける要因なのかもしれません。
生前は大きな評価を得られなかったビゼーですが、
それは時代を先取りしすぎていたからかもしれませんね。
ビゼーの代表曲まとめ
今回はビゼーの代表曲や作品の特徴を紹介しました。
成功に恵まれず、短い人生を送ったビゼー。
しかし彼が残した作品は、現在も多くのファンから愛されています。
『カルメン』の他にも優れた名曲を残していますので、
この記事を参考にビゼーの奥深さに触れてみてください!