ジョージ・ガーシュウィン「ラプソディー・イン・ブルー」「パリのアメリカ人」を解説!作品の魅力や楽曲編成も併せて紹介します。

    前回に引き続き、ジョージ・ガーシュウィンの作品について紹介します。

    数多くの名曲を残したガーシュウィン。

    なかでも今回紹介する「ラプソディー・イン・ブルー」と「パリのアメリカ人」はガーシュウィンをもっとも代表する作品として現在でも演奏機会の多い作品です。

    漫画「のだめカンタービレ」の主人公のだめがマングースの着ぐるみを着て演奏した作品なので、聞いたことがある人も多いかもしれません。

    作品が生まれた背景もとても興味深いので、
    是非最後まで読んでくださいね!。

    出典:Amazonガーシュイン[ベスト・オブ・ベスト]

    ガーシュウィン作曲、ラプソディー・イン・ブルーの解説

    まず1曲目は「ラプソディー・イン・ブルー」の紹介。

    「ラプソディー」とは日本語で「狂詩曲」を意味し、
    形式自由で民族的・叙情的雰囲気な表現が特徴です。

    フランツ・リストの「ハンガリー狂詩曲」やラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」など、多くの作曲家が作品を遺しています。

    ラプソディー・イン・ブルーは1924年、
    ポール・ホワイトマンの依頼で作曲された管弦楽とピアノ独奏のための作品です。

    のちに2台のピアノ用やピアノ独奏用などにアレンジされ、
    現在はさまざまな形式で親しまれています。

    もともとは「アメリカン・ラプソディー」というタイトルだったそうですが、
    兄アイラの提案で「ラプソディー・イン・ブルー」に変更されました。

    演奏時間はおよそ20分程度です。

    日本では1955年、近衛秀麿の指揮により日比谷公会堂にて初演されています。

    レナード・バーンスタインの指揮・演奏

    作曲の経緯や背景

    1919年に発表した「スワニー」で一躍トップスターとなったガーシュウィン。

    そんなガーシュウィンと兄アイラは、
    1924年1月3日の新聞で奇妙な記事を見つけます。

    その記事には「ホワイトマンがガーシュウィンに曲を発注した」と書かれおり、
    さらに「現在作曲中のジョージ・ガーシュウィンのジャズ・コンチェルトが含まれる」と具体的な作風まで指定されていました。

    しかしガーシュウィン兄弟は全く身に覚えのない話だったため、
    翌日あわててホワイトマンに電話で抗議します。

    するとホワイトマンは「現代音楽の実験」というコンサートを開く予定で、
    「もう新聞記事も出てしまったので作品を作ってくれ」とガーシュウィンに懇願しました。

    新聞記事に出てしまったこともあり、
    引くに引けなくなったガーシュウィンは依頼を承諾。
    作曲に取り掛かります。

    新聞記事での発表は、多忙だったガーシュウィンを呼び込むための、
    ホワイトマンによる作戦だったわけです。

    アメリカ音楽の現状を審査するために開かれた「現代音楽の実験」には、
    ラフマニノフヤッシャ・ハイフェッツストコフスキーといった世界的音楽家が審査員として招かれました。

    わずか2週間で完成させる

    急な依頼を受けたガーシュウィンでしたが、次から次へとアイディアが湧き、ホワイトマンへの講義の電話からおよそ3日後の1月7日には作品の構想がほぼ完成していたそうです。

    この辺がガーシュウィンの天才さですが、
    当時のガーシュウィンは管弦楽法の知識が未熟だったため、
    はじめは2台のピアノのための作品として作曲。

    それをホワイトマン楽団でオーケストレーションを担当していたファーディ・グローフェが編曲し、作品が完成しました(グローフェは組曲「グランド・キャニオン」の作曲者として知られ、中学の音楽の授業で聴いた方も多いかもしれません)。

    1924年2月12日、「現代音楽の実験」コンサートで初演されたラプソディー・イン・ブルーは大成功。

    作品を聴いた評論家は、ジャズとクラシックを融合させたこの作品を「シンフォニック・ジャズ」と評しました。

    ラプソディー・イン・ブルーの楽曲編成について

    ラプソディー・イン・ブルーはピアノ独奏、ピアノと管弦楽曲版、オーケストラ版など、
    さまざまなアレンジがなされています。

    たとえばピアノ独奏だとこんな感じです👇

    ジャズ・トリオとの共演バージョンなんかもあります👇。個人的にはこのマーカス・ロバーツトリオの演奏が好きです(マーカス・ロバーツも盲目です)

    初演時>の編成は次のお通りです。()内は楽器数です。

    ・ソロピアノ(1)・トランペット(2)・トロンボーン(2)
    ・ホルン(2)・チューバ(1)・バンジョー(1)
    ・サックス(1)・クラリネット(1)・ファゴット(1)
    ・オーボエ(1)・チェレスタ(1)・ピアノ(1)
    ・パーカッション(1)・バイオリン(8)

    グローフェ版>大分編成が大きくなっています。

    ・ソロピアノ(1)・トランペット(3)
    ・トロンボーン(3)・ホルン(3)・チューバ(1)
    ・バンジョー(1)・サックス(3)・クラリネット(2)
    ・バス・クラリネット(2)・ファゴット(2)
    ・オーボエ(2)・フルート(2)・ティンパニー(1)
    ・シンバル(1)・トライアングル(1)・大太鼓(1)
    ・小太鼓(1)・ベル(1)・弦楽(5)

    ガーシュウィン ラプソディー・イン・ブルー (zen-on piano library) 

    ガーシュウィン作曲、パリのアメリカ人の解説

    ラプソディー・イン・ブルーと並ぶガーシュウィンの傑作と言えば「パリのアメリカ人」です。

    この作品は1928年、ニューヨーク・フィルの委嘱により作曲されました。

    1920年代、多忙を極めたガーシュウィンが静養のために訪れたパリでの経験をもとに作曲した交響詩であり、フランス紀行文的な作品でもあります。

    交響詩とは絵画的・風景画的題材をモチーフにした管弦楽曲の一種で、
    作品に「標題」がつくのが一般的です。

    旅行の目的は静養だけではなく、
    「管弦楽法の理解を深める」目的もあったそうで、
    パリ滞在中に憧れのモーリス・ラヴェルを訪ね、作曲の指導を願い出ます。

    その時のエピソードなどについてはこちら👇に詳しく書いています。

    ラプソディー・イン・ブルーは編曲をグローフェに任せましたが、
    「パリのアメリカ人」は全てガーシュウィン自ら作曲しています。

    作中には車のクラクションの音が入り都会的な雰囲気を演出していますが、
    ニューヨークの初演の際に使われたクラクションは、
    ガーシュウィンが実際にフランスから持ち帰ったものを使用したそうです。

    ミュージカル「巴里のアメリカ人」も大ヒット

    「巴里のアメリカ人」と言えば、ミュージカル映画を思い出す方も多いのではないでしょうか。

    ジーン・ケリーとレスリー・キャロンの主演で1951年に映画化され、
    第24回アカデミー賞8部門にノミネート。
    作品賞や美術賞をはじめ、最多6部門を受賞するという快挙を成し遂げています。

    映画全編にガーシュウィンの音楽が用いられ、
    クライマックスで「パリのアメリカ人」が流れる中、
    18分に及ぶダンスが名シーンとして知られています。

    2005年にはバレエ版が上演され、
    日本でも劇団四季のミュージカルとして人気の高い作品です

    楽曲編成について

    一般的なオーケストレーションですが、
    チェレスタやサックスなどが用いられるのが特徴です。

    全体として「急・緩・急」の3部構成となっており、
    各部が続けて演奏されます。

    楽器編成は以下の通り。

    ・ピッコロ ・フルート (2)・オーボエ(2)・コーラングレ・クラリネット(2)
    ・バスクラリネット・ファゴット(2)・サキソフォン(3)

    ・ホルン(4)・トランペット(3)・トロンボーン(3)・チューバ

    ・ティンパニ ・グロッケンシュピール ・シロフォン ・スネアドラム ・トムトム(2)
    ・バスドラム ・トライアングル ・シンバル ・ウッドブロック ・チェレスタ ・クラクション

    ・弦楽5部

    ガーシュウィンのまとめ

    少し間が空いてしまいましたが、3回に渡ってジョージ・ガーシュウィンを紹介しました。

    前回のフォーレよりは身近に感じられる作曲家だと思います。
    どの作品も名作揃いなので、是非ゆっくりとガーシュウィンの作品に触れてみてください。

    ジャズアレンジなども併せて聴くと、
    音楽の楽しみがより一層深くなると思いますよ!!

    それではまた次回。次回は誰にしようか・・・。

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