この記事では、ロシアの大家リムスキー=コルサコフの代表曲を紹介します。
若かりし頃、海軍士官だったリムスキー=コルサコフ。
しかし、そんな彼は音楽への強い関心とバラキレフとの出会いに導かれ、
やがて「近代管弦楽法の父」と称されるほどの作曲家へと成長します。
交響曲をはじめ、協奏曲や室内楽、オペラなど数々の作品を世に送り出したリムスキー=コルサコフの作品にはどのようなものがあるのでしょうか。
今回はその中から独断と偏見により7曲を紹介します。
この記事を通じて、少しでも彼の作品に関心を持っていただければ幸いです。
また、毎度のことながら最高傑作に関しても、独断によるものです。
そのため、1つの参考としてお読みいただければと思います。
本文に入る前に「リムスキー=コルサコフって誰?」という方は、
こちらの記事を併せてお読みいただくと、少しだけ知識が深まりますよ!
12万冊の中から耳で学べる。スキマ時間を「学び時間」へ!
リムスキー=コルサコフの代表曲おすすめ7選!
色彩豊かな管弦楽法に定評のあるリムスキー=コルサコフ。
その作風はまさに「聴く映画館」です。
一度聴けば、多くの方が作品の世界に引き込まれることでしょう。
そこで以下では、リムスキー=コルサコフの代表曲を7つ紹介します。
リムスキー=コルサコフの代表曲その1、セルビア幻想曲
1867年、モスクワで開かれたスラヴ民俗誌学会議を記念して、
バラキレフの依頼により作曲された作品です。
リムスキー=コルサコフらしい異国情緒溢れる作品で、
セルビアの民俗性を題材にした作品として知られています。
同年にサンクトペテルブルクにて、依頼者バラキレフの指揮により初演が行われました。
演奏時間はおよそ7分となっており、
リムスキー=コルサコフの作品をコンパクトに知りたい方におすすめです。
なお、バラキレフはリストやベルリオーズにも作品提供を依頼したそうです。
代表曲その2、スペイン奇想曲
本作はリムスキー=コルサコフをもっとも代表する作品の1つ。
1887年に書かれた管弦楽作品で、同年に自身の指揮により初演を迎えました。
ちなみに「奇想曲」とはイタリア語の「カプリッチョ」を翻訳した言葉で、
「気まぐれ」や「きまま」という意味があります。
そのため、特定の形式を持たず作曲者の感性によって展開するのが特徴です。
リハーサルの頃から楽団員から好評だったようで、
作品は楽団員67名に献呈されています。
夢物語のなかにいるような、冒険譚のような美しいメロディが特徴です。
演奏時間はおよそ17分程度。
リムスキー=コルサコフの作品でも、ぜひ聴いていただきたいイチオシの作品です!
代表曲その3、オペラ「プスコフの娘」
オペラ作曲家としても知られるリムスキー=コルサコフ。
生涯で15曲のオペラを作曲し、そのいくつかは現代でも人気を獲得しています。
本作「プスコフの娘」はそんな彼の最初のオペラです。
1868年から1872年のおよそ4年間をかけて作曲され、
リブレット(台本)もリムスキー=コルサコフ本人によって執筆されています。
幾度かの改訂を経て、1895年に初演が行われ、
1896年の上演では伝説のオペラ歌手フョードル・シャリアピンがイヴァン雷帝を演じ大きな話題となりました。
全3幕からなる作品で、演奏時間はおよそ2時間40分です。
代表曲その4、オペラ「ムラダ」
1889年から1890年にかけて作曲されたオペラ・バレエ作品です。
本作は当初「ロシアの五人組」の共同作品として計画されましたが、
中止となったため、キュイ・リムスキー=コルサコフ、ムソルグスキー、ボロディンの4名により作曲が行われました。
古代スラヴ人の世界がテーマとなっており、
オリエントな舞台と衣装が物語を華やかに彩ります。
1892年に初演が行われ、作品にはワーグナーの『ニーベルンゲンの指環』の強い影響が見られます。
全4幕で構成され、演奏時間は約2時間30分です。
代表曲その5、オペラ「金鶏(きんけい)」
1906年から1907年にかけて作曲された、リムスキー=コルサコフの最後のオペラです。ロシアの文豪プーシキンの原作をもとに台本が執筆され、1909年に初演を迎えました。
しかし発表当初、当時の帝政ロシア体制を風刺する内容が含まれていたため、
変更を余儀なくされ、現在の形となりました。
その後1909年に初演が行われましたが、1908年に作曲者自身がこの世さってことから、上演を見ることが叶いませんでした。
組曲版にも編曲されており、「オペラはちょっと・・・」という方は組曲版を聴いてみるのも良いかもしれません。
エピローグを含む全3幕で構成され、上演時間はおよそ2時間です。
代表曲その6、交響組曲「シェエラザード」
最後はリムスキー=コルサコフ作品の中でも不動の人気を誇る、交響組曲「シェエラザード」です。
タイトルの通り、『千夜一夜物語(アラビアン・ナイト)』に登場するシェヘラザード(シェエラザード)の物語がモチーフとなっています。
1888年に作曲され、その年に初演を迎えました。
全に4楽章構成で、それぞれの楽章に物語を連想させるタイトルが付けられています。
第1楽章「海とシンドバッドの船、第2楽章「カランダール王子の物語」、第3楽章「若い王子と王女」、第4楽章「バグダッドの祭り。海。船は青銅の騎士のある岩で難破。終曲」
全編にわたって展開するドラマティックな管弦楽が印象的で、
リムスキー=コルサコフの才能が遺憾無く発揮されています。
「まずはこの曲から!」と太鼓判を押せる1曲です。
演奏時間はおよそ50分です。
代表曲その7、ロシアの復活祭
すでにこの世を去ったムソルグスキーとボロディンに捧げら得た演奏会用序曲です。
1888年7月に作曲を開始し、わずか1ヶ月で完成させています。
『オビホード』と呼ばれるロシア正教の聖歌集から着想を経ており、
キリストの復活がテーマとなっています。
リムスキー=コルサコフによる回顧によれば、
修道院の近くに住んでいた幼少期時代の印象がモチーフになっているとのことです。
1888年12月に作曲者自身の指揮により初演が行われ、1890年に楽譜出版もなされています。
この作品以降、リムスキー=コルサコフはオペラや声楽作品に力を注ぐことになったことから、転換期を代表する作品と言えるでしょう。
演奏時間はおよそ15分です。
リムスキー=コルサコフの作品の特徴や魅力について
ここまでリムスキー=コルサコフの代表曲を紹介してきました。
お聴きいただくと分かる通り、どれもドラマティックで映像的作風が特徴です。
以下では、もう少し作品や魅力について具体的に見てみましょう。
リムスキー=コルサコフの作品の特徴や魅力1. 鮮やかな管弦楽法:「シェエラザード」に見る色彩豊かな音の世界
冒頭で書いた通り、リムスキー=コルサコフの作品は、鮮やかな管弦楽法で知られています。
特に交響組曲「シェエラザード」では、各楽器の特性を活かした色彩豊かな音の世界が展開され、弦楽器のきらめきやハープの繊細な音色、木管楽器の温かみのある響きなど、多彩な音色が織りなす絵画的な音楽が魅力です。
この卓越した楽器法により、物語の情景や登場人物の感情が生き生きと描かれ、
音楽を通じて壮大な冒険の旅に出るような、擬似体験を感じる人もいるかももしれません。
特徴や魅力その2. 民族音楽の要素:「金鶏」に見るロシアの伝統音楽との融合
リムスキー=コルサコフは、ロシアの民族音楽を巧みに取り入れることで、独自の音楽語法を確立しました。
オペラ「金鶏」では、ロシアの民謡や舞曲のリズムが西洋の古典音楽と融合し、独特の魅力を放っています。
さらに、伝統的な旋律やハーモニーを現代的な手法で再解釈することで、親しみやすさと斬新さを兼ね備えた音楽を生み出すことに成功しました。
これにより、リムスキー=コルサコフの音楽は国際的に高く評価され、
後世の作曲家たちにも大きな影響を与えることとなったのでした。
特徴や魅力その3. 物語性豊かな音楽:オペラ「雪娘」に見る音楽による情景描写
リムスキー=コルサコフの作品の大きな魅力は、その豊かな物語性にあります。
オペラ「雪娘」では、ロシアの民話を題材に、自然の情景や登場人物の心情が見事に音楽化されています。
春の訪れを告げる鳥のさえずりや、雪解けの様子を表現する流れるような旋律など、音楽が物語の進行と密接に結びついているのがよく分かるでしょう。
そのため、聴衆は音楽を通じて物語の世界に引き込まれ、まるで舞台上の出来事を目の当たりにしているかのような臨場感を味わうことができます。
特徴や魅力その4. 技巧的な表現力:「熊蜂の飛行」に見る音楽的絵画
リムスキー=コルサコフの代表作『熊蜂の飛行』は、その技巧的な表現力で聴く人を魅了します。
オペラ「皇帝サルタン物語」の一部として作曲されたこの曲は、熊蜂の飛ぶ様子を音楽で見事に描写しています。
高速で動く弦楽器の音型や、木管楽器の短く鋭い音が、熊蜂のブンブンいう羽音や素早い動きを巧みに表現しています。わずか1分ほどの短い曲ですが、リムスキー=コルサコフの卓越した作曲技術と想像力が凝縮された、音楽による絵画とも言える作品です。
この曲の人気は衰えることなく、オーケストラの腕前を披露する定番曲として今も多くの演奏会で取り上げられています。
リムスキー=コルサコフの名前は知らなくても、
多くの方が一度は聴いたことがある作品だと思います。
ピアノや木琴、チェロ、オーケストラ版などさまざまにアレンジされています。
リムスキー=コルサコフの最高傑作について
毎度のことながら、筆者の独断と偏見による最高傑作作品の紹介です。
リムスキー=コルサコフの作品は印象深いものが多いので、今回も迷いました。
でも、全体の完成度として「これじゃないかな」と思っています。
その作品は、オペラ「サルタン皇帝」。
以下ではちょっとだけ解説します。
リムスキー=コルサコフの最高傑作、オペラ「サルタン皇帝」
リムスキー=コルサコフが1900年に作曲したオペラです。
プロローグと全4幕で構成され、前述のプーシキンによる原作がモチーフとなっています。
また、オペラ「プスコフの娘」と同様に台本も作曲者自身とベリスキーによって執筆されています。作曲と同年の11月3日にモスクワにて初演が行われ、
大きな成功を収めました。
舞台、衣装、音楽のどれをとっても完成度が高く、
全てが色鮮やか作風が大きな魅力です。
上述した「熊蜂の飛行」は、本作の間奏曲で使用される音楽で、
魔法で蜂に姿を変えた主人公グヴィドン王子が都へ飛んでいくシーンで使用されています。
プロローグと全4幕で構成されたオペラで、上演時間はおよそ2時間30分です。
本作もリムスキー=コルサコフ本人によって組曲版にアレンジされています。
物語の詳細については「サルタン皇帝」(wikipediaに飛びます)をご覧ください。
組曲版
本編の第1・2・4幕の序奏をまとめたもので、
なかでも第3曲「3つの組曲」は現在でもとくに人気の1曲です。
リムスキー=コルサコフの代表曲まとめ
今回は近代管弦楽法の父、リムスキー=コルサコフの代表曲や作品の魅力について紹介しました。
どの作品も表情豊かで、聴いていると心がワクワクする作品ばかりです。
これまであまり作品に触れてこなかった方も、
記事をきっかけにぜひリムスキー=コルサコフの作品に触れてみてはいかがでしょうか。
好きな音楽やラジオが聴き放題!
いつもで解約OK