ショパン「幻想即興曲」の難易度解説!何歳で弾ける?同じレベルの曲は?

    ショパンの代表作の一つである『幻想即興曲』。その美しい旋律と情熱的な展開に憧れ、いつか弾いてみたいと思う方も多いのではないでしょうか。

    一方で、

    「難易度が高いのでは?」
    「自分にも弾けるのだろうか?」

    といった不安の声もよく聞かれます。

    この記事では、ショパン『幻想即興曲』の難易度解説のほか、挑戦できる年齢やピアノ経験の目安、マスターするまでの期間、そして幻想即興曲と同じくらいのレベルの作品例やおすすめ楽譜まで、詳しく紹介します!

    この記事でわかること

    • フレデリック・ショパンについて(ざっくり)
    • 「幻想即興曲」の構成
    • 「幻想即興曲」の難易度
    • 弾きこなすための練習方法
    • 幻想即興曲は何歳から弾ける?
    • おすすめ楽譜紹介(無料楽譜含む)

    各見出し下には、すばらしい演奏動画も紹介しますので、ぜひ参考にしてください!

    筆者は3歳からピアノを開始。紆余曲折を経て、かれこれ30年ほどピアノに触れています。
    幻想即興曲に初めてチャレンジしようとしたのは、8歳か9歳くらいの頃だったと記憶しています。

    Table of Contents

    フレデリック・ショパンについて ~「幻想即興曲」誕生の背景~

    出典:YouTubeCANACANA family様より

    難易度解説の前に、ちょっとだけ寄り道を・・・。ざっくりとショパンについて解説しますね。

    ショパンの人物像と音楽スタイル

    「ピアノの詩人」と称されるフレデリック・ショパン(1810-1849)は、ロマン派音楽を代表する作曲家の一人。ポーランドに生まれ、フランスで活躍したショパンは、その生涯のほとんどをピアノ音楽の作曲に捧げました。

    ショパンの音楽は、繊細で美しい旋律、高度なピアノ技巧、そして故郷ポーランドの民族音楽(マズルカやポロネーズなど)の要素を取り入れた独創的なスタイルが特徴です。

    彼の作品は、聴く人の心に深く語りかけるような叙情性と、華やかで技巧的な側面を併せ持ち、今日でも多くのピアニストや音楽愛好家に愛され続けています。

    2025年は待望のショパンコンクールイヤー。楽しみですね!

    ショパン関連記事は、この記事最後にまとめて紹介しています。

    「幻想即興曲」嬰ハ短調 作品66について

    ショパンの「幻想即興曲」嬰ハ短調 作品66は、彼の死後、1855年に友人であるユリアン・フォンタナによって出版された遺作です。作曲されたのは1834年頃とされていますが、ショパン自身は生前この曲の出版を望んでいなかったと言われています

    作品名にある「幻想」という言葉は、自由な形式や楽想の移り変わりを、「即興曲」という言葉は、あたかもその場で即興的に演奏しているかのような自由で奔放な雰囲気をそれぞれ表わしています。

    実は、ショパンによる自筆譜が発見されたのは、20世紀中頃の1962年のこと。ピアニストのアルトゥール・ルービンシュタインによって発見されました。意外に最近です。

    ショパンの名曲解説はこちらの記事をどうぞ。

    ショパン全集

    ショパン「幻想即興曲」とはどんな曲?構成と魅力を徹底分析

    出典:YouTube

    もうちょっと、もうちょっとだけ寄り道を・・・。
    作品の構造だけ簡単に解説しますね!
    ざっくりなのですぐ終わります!

    楽曲構成(A-B-A’-Coda形式)と各部分の特徴

    「幻想即興曲」は、大きく分けて3つの部分とコーダから成る複合三部形式(A-B-A’-Coda)で構成されています

    第1部
    冒頭から聴く者を一気に引き込む、情熱的で切迫感に満ちたメロディー。右手の16分音符による急速なパッセージと、左手の6連符のアルペジオが特徴的。

    中間部
    第1部の激しさとは対照的に、甘く美しい旋律が歌われるロマンティックな部分。この旋律は非常に有名で、演奏者の表現力がダイレクトに試される部分。

    第3部
    第1部の主題が再現され、さらに技巧的に展開されます。Presto(急速に)という指示通り、より華やかで輝かしいパッセージが登場し、クライマックスに向けて音楽を盛り上げます。

    コーダ
    激しい第3部の後、静かに曲を閉じる部分。左手のアルペジオに乗せて中間部の美しい旋律が穏やかに回想され、まるで夢から覚めるかのように、ピアニッシモ(きわめて弱く)で消え入るように終わります。

    ショパン「幻想即興曲」の難易度はどれくらい?

    出典:YouTube(ドラマティックなPVだな・・・)

    ピアノ曲の難易度段階における位置づけ

    ということで、回り道をしてしまいました。難易度について。

    結論!ショパンの「幻想即興曲」は、一般的に上級レベルに位置しています
    ピアノの難易度表記では、例えば全音楽譜出版社の難易度段階(A:初級~F:上級上)を参考にすると、幻想即興曲はE(上級)に分類されています。

    参考までに、取り組んでいる教材との距離感の目安を紹介しておきます(あくあでも筆者の感覚ですよ!)。

    • バイエル終了レベル: 基礎の基礎であり、幻想即興曲は遥か先の目標。
    • ブルグミュラー25の練習曲: 初級後半~中級初期レベル。まだまだまだ多くの技術的課題があり。
    • ソナチネアルバム: 中級レベル。ソナチネアルバムを修了し、さらに古典派ソナタ(モーツァルトやベートーヴェン初期など)に進む段階で、ようやく幻想即興曲のようなロマン派の技巧的な作品への挑戦が見えてくるレベル。
    • ソナタアルバム: 中級後半~上級レベル。ソナタアルバム(ベートーヴェンの中期ソナタなど)をある程度弾きこなせる実力があれば、幻想即興曲に挑戦

    音楽教室の進度においても、専門的なコースや上級者向けのコースで扱われる曲と言えるでしょう。

    筆者の体験ダン・ダ・ダン(余談です)

    筆者は3歳からピアノを開始。5歳でバイエル終了。ブルグミュラーも1年くらいで終わり。
    8歳くらいでこの作品を聴き、猛烈に憧れて楽譜購入!
    と思いきや、お店に売っていませんでした。お店の人に「ボクが演奏するの?」と尋ねられたのを今でもよく覚えています。結局、チャレンジしたのは14歳くらいでした。

    幻想即興曲を美しく弾きこなすための練習方法と3つのポイント

    出典:YouTube

    難易度の目安がわかったところで、憧れの「幻想即興曲」を美しく弾きこなすためには、計画的かつ効果的な練習が不可欠。以下では3つのポイントを紹介します。

    1. 徹底した基礎練習
    2. 最難関!ポリリズム(4対3)の攻略法
    3. 片手練習と「超」ゆっくり練習で完成度を高める

    1. 徹底した基礎練習の重要性

    幻想即興曲のような難曲に挑戦する上で、盤石な基礎技術は何よりも重要です。

    スケール、アルペジオ、カデンツ、ハノンなどの指の基礎訓練:これらを毎日欠かさず行うことで、指の独立性、強化、均一性、俊敏性を養います。特に、幻想即興曲で多用される嬰ハ短調や変ニ長調のスケールやアルペジオは入念に練習しましょう。

    可能であれば、準備運動として、ハノンを1時間くらいできるとよいですね。

    2. 最難関!ポリリズム(4対3)の攻略法

    幻想即興曲最大の壁とも言えるポリリズム(右手16分音符4つに対し左手3連符2つ)の攻略には、段階的かつ丁寧なアプローチが必要です。

    片手ずつ、それぞれの正しいリズムとフレージングを確立する: まずは右手だけ、左手だけで、それぞれのパートを完璧なリズムと音楽的なフレージングで弾けるようにしましょう!

    非常にゆっくりとしたテンポで、拍の最小公倍数を意識しながら両手を合わせる練習: 右手の16分音符4つと左手の3連符2つの最小公倍数は12です。つまり、右手の16分音符1つを「3」の長さ、左手の3連符の8分音符1つを「2」の長さとしてとらえ、数えながら、タイミングを把握してみてください。

    3. 片手練習と「超」ゆっくり練習で完成度を高める

    複雑なパッセージや技巧的な部分を確実にマスターするためには、片手練習と超ゆっくり練習が非常に効果的です。

    右手、左手それぞれを完全にマスターするまで練習する: 両手で合わせる前に、各々のパートを音楽的に表現豊かに、かつミスなく弾ける状態を目指します。これにより、両手で合わせた際の負担が軽減され、より音楽的な側面に集中できるようになるはずです。

    難しいパッセージは細かく区切って部分練習を繰り返し、徐々につなげていく: 通し練習ばかりではなく、特に難しい箇所や苦手な箇所を数小節単位で取り出し、集中的に反復練習します。

    幻想即興曲は何歳から弾ける?年齢よりも大切なピアノ経験

    出典:YouTube

    「幻想即興曲を弾けるようになるのは何歳からですか?」という質問をよく見かけます。
    でも残念ながら、年齢で一概に「何歳になったら弾ける」という明確な基準はないです・・・。

    重要なのは、それまでのピアノ学習の期間、日々の練習量、進度、そして音楽的な理解度といった、個人のピアノ経験かなと。

    でも一応、これまた「目安」を以下に書いておきますね。

    挑戦できる可能性のある年齢と経験の目安

    小学生高学年~中学生

    この年齢で幻想即興曲に挑戦できるのは、ごく一部の非常に才能があり、かつ熱心にピアノに取り組んでいる生徒に限られるでしょう。幼少期から質の高いレッスンを受け、毎日長時間の練習をこなし、ピアノコンクールなどで優秀な成績を収めているようなケース。まあ、あんまりいないかな・・・。

    高校生以上・大人

    音楽大学を目指して専門的にピアノを学んでいる学生や、趣味であっても長年にわたり真剣にピアノ学習を継続し、ソナタアルバムレベル以上のレパートリーを数多く持っている方であれば、挑戦できる可能性大。

    大人の場合、子供の頃にピアノを習っていて再開した方なども、過去の経験や現在の練習状況によって挑戦できるでしょう。

    幻想即興曲を弾くのに何年かかる?【ピアノレベル別の目安】

    出典:YouTube

    「幻想即興曲」を習得するまでにかかる期間は、個人のピアノレベルや練習時間、練習の質によって大きく大きく(2回)異なります。なので、一般的な目安として、レベル別に見ていきましょう。

    完全初心者の方

    ピアノを全く弾いたことがない、あるいは楽譜も読めないという状態からスタートする場合、基本的な音楽理論といったピアノの基礎を徹底的に学ぶ必要があります。少なくとも7年~10年以上は見ておく必要があるでしょう。

    ピアノ経験5年以上(ブルグミュラー、ソナチネ前半程度)の中級者の方

    ある程度のピアノ経験があっても、「幻想即興曲」はまだまだ高い壁。
    目安としては、2年~4年程度の期間が必要となることが多いでしょう(楽観視して)。
    日々の基礎練習を怠らず、一つ一つの課題に丁寧に取り組むことが重要です。

    ソナタアルバムなどが弾ける中級~上級者の方

    ベートーヴェンのソナタ(「悲愴」「月光」など)や、ショパンのワルツ、ノクターンなど、ある程度の難易度の曲をレパートリーに持っている中級~上級者の方であれば、半年~1年程度で一通り形になることも期待できます。この辺になって、ようやく「弾けるレベル」かなと。

    ピアノ再開組(ブランクあり)の方

    プラスして、ブランクのある方。
    過去の最高到達レベルとブランクの期間によって大きく左右されます。
    上記のように、過去にソナタレベルを弾いていた経験のある方であれば、基礎練習をしっかりと行い、指の動きがスムーズに戻ってくれば、1年~3年程度で「幻想即興曲」に挑戦できる可能性が出てくるんじゃないかと思います。

    いずれのレベルにおいても、質の高いレッスンを受け、毎日コンスタントに練習時間を確保することが、習得期間を短縮するための鍵となります。

    幻想即興曲と同じレベルの曲を紹介!:次の目標にも

    ホロヴィッツpf:出典:YouTube

    ここでは、技巧レベルだけでなく、音楽的な表現の成熟度も考慮した作品例をいくつかご紹介します。なお、今回は全音ピアノピースより、同レベルの難易度「E」から選んでいます(賛否は置いておきます)。リンクタップでアマゾンに飛びます。

    ショパンの作品から

    軍隊ポロネーズ
    子守唄(Op57)
    雨だれの前奏曲(これはEじゃないと思うけど)

    他の作曲家の作品から

    ドビュッシー

    人形へのセレナード沈める寺

    リスト

    愛の夢 第3番ラ・カンパネラ(絶対違うと思う)

    メンデルスゾーン

    ロンド・カプリチオーソ

    シューマン

    予言の鳥(これも絶対違うと思う)

    あくまでもホンの一例です。なんとな〜くの目安にしてみてください!

    幻想即興曲のおすすめ楽譜を紹介!無料楽譜の注意点も

    解説動画:出典:YouTubeCANACANA family様より

    最後に、定番とされる楽譜出版社や、無料楽譜の活用法と注意点を解説して終わりますね。

    楽譜選びのポイント
    各版には、運指の提案、強弱やアーティキュレーションの解釈、解説の有無、そして価格帯などに違いがあります。ご自身の学習段階、目的(コンクール用、趣味での演奏など)などを考慮して、最適な楽譜を選びましょう。

    全音楽譜出版社(全音ピアノライブラリー)

    日本で最も広く普及しており、入手しやすい楽譜の一つです。

    パデレフスキ版(PWM Edition)

    詳細な校訂と、伝統的な解釈に基づいた運指やペダリングが特徴。

    ヘンレ版(G. Henle Verlag)

    ドイツの楽譜出版社で、「原典版(Urtext Edition)」として国際的に高い評価を得ています。

    幻想即興曲:無料楽譜(IMSLPなど)の活用と注意点

    近年では、インターネット上で無料で楽譜を入手できる機会も増えています。
    IMSLP(国際楽譜ライブラリープロジェクト)

    著作権保護期間が満了した楽譜(パブリックドメイン)を数多く所蔵しており、PDF形式などで無料でダウンロードできるウェブサイトです。ダウンロードはこちらから。

    利用時の注意点版の多様性: IMSLPには様々な時代の、様々な校訂者による楽譜が混在しています。どの版を基にしているのか、信頼できる版なのかを自分で見極める必要があります。

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    ここまでお読みいただき「楽器を習ってみたい!」「新しい楽器を探してる!」という方もいると思います。そんな方のために、おすすめ音楽教室&楽器店を紹介しました。
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    少しでも関心のある方は、ぜひご一読ください!

    ショパン「幻想即興曲」の難易度解説:まとめ

    この記事では、ショパンの「幻想即興曲」について、その背景から楽曲分析、難易度、練習方法、そしておすすめの楽譜に至るまで、詳しく解説してきました。最後に、この記事のポイントをまとめます。

    • 幻想即興曲はショパンの死後に出版された、ロマンティックで技巧的な人気曲です。
    • 楽曲はA-B-A’-Coda形式で、情熱的で激しい部分と甘美で歌心あふれる旋律が対照的に配置されています。
    • 幻想即興曲の難易度はピアノ曲全体の中でも上級レベルに位置し、ソナタアルバム修了程度以上の技術と音楽性が求められます。
    • 幻想即興曲最大の技術的難関は、右手と左手の異なるリズムを正確に合わせるポリリズム(一般的に「4対3」と認識される)です。
    • 「何歳から弾けるか」という明確な基準はなく、年齢よりも個人のピアノ経験、技術レベル(目安としてソナタレベル以上)、そして音楽的成熟度が重要です。
    • 幻想即興曲の習得にかかる期間は個人のレベルや練習量により大きく異なり、中級~上級者で半年~数年、初心者の場合はさらに長期的な計画が必要です。
    • 「幻想即興曲」と同程度の難易度の作品として、リストの「愛の夢 第3番」などがあり、次の目標としても適しています。
    • 楽譜は、全音楽譜出版社、春秋社版、パデレフスキ版、ヘンレ版、ウィーン原典版などが定番として知られています。無料楽譜(IMSLPなど)も活用できますが、版の信頼性や印刷の質には注意が必要。

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