この記事では音楽に革命をもたらしたシェーンベルクのおすすめ代表曲を9曲紹介します。
現代音楽の地平を切り拓いたシェーンベルクですが、
「よくわからない」
「聴きづらい」
といった感想を持つ方が多いのではないでしょうか。
しかし彼の音楽を深掘りしてみると、
繊細な音楽体系や緻密な計算に基づいた芸術作品であることがわかります。
そこで本記事では、シェーンベルクを代表する作品を9曲紹介し、
作品の面白さや深淵さを見ていきましょう。
なお、選曲にあたってはいつもの通り筆者の独断と偏見ですが、
そこは温かくご了承いただければ幸いです。
また後半では、現代音楽で語られる「無調」「12音技法」、そして「新ウィーン楽派」についても、わかりやす・くざっくりと解説しますので、
そちらも併せてご一読くだされば幸いです。
シェーンベルクの生涯やエピソードについてはコチラから!
シェーンベルクのおすすめ代表曲9選
現代音楽というと「突拍子もない」というイメージが強いかもしれません。
でもシェーンベルクはロマン派音楽の影響を強く受けており、
初期作品ではマーラーやワーグナーなどの後期ロマン派の影響がみてとれます。
作曲家における時代ごとの変遷(変化)を知ると、
クラシック音楽をより楽しくきけるはずです。
以下ではシェーンベルクのおすすめ9曲を見てみましょう。
シェーンベルクのおすすめ代表曲1:室内交響曲第1番
管楽器と弦楽器の革新的なバランス
1906年に作曲された「室内交響曲第1番」は、
15人の奏者というユニークな編成が注目を集めました。
とくに管楽器の数を弦楽器よりも多く設定した大胆な試みが本作の特徴です。
この曲は一見単一楽章に見えますが、実は従来のソナタ形式を基盤としながら、
楽章ごとの構造を内包しています。
本作はマーラーが初演に賛辞を送ったことで、
シェーンベルクの名声がさらに高まりました。
この作品は、伝統と革新の絶妙な融合が魅力の1曲です。
シェーンベルクのおすすめ代表曲2:5つの管弦楽曲
新たな音の可能性を切り開いた挑戦作
「5つの管弦楽曲」(1909年)は、タイトル通り5つの短い楽章で構成され、それぞれが独自のテーマを持っています。
とくに第3曲「色彩」は、音の色合いを重視した画期的な試みとして、後の音響作曲の基礎を築きました。
本作は無調の時代を代表する作品であり、微細な音響効果と動的なリズムが聴く者を魅了します。ホルストやベルクなど、後世の作曲家にも大きな影響を与えた名作です。
シェーンベルクのおすすめ代表曲3:管弦楽のための変奏曲
十二音技法を本格的に取り入れたマスターピース
1926年から1928年にかけて作曲された「管弦楽のための変奏曲」は、十二音技法を活用したシェーンベルクの代表作の一つ。
520小節という壮大なスケールで、序奏、9つの変奏、そして終曲へと展開する緻密な構成が魅力です。
この作品は、ベルリンでの初演時に物議を醸しましたが、
今ではシェーンベルクの作曲技法の成熟を示す象徴的な作品と評価されています。
シェーンベルクのおすすめ代表曲4:浄められた夜
詩情と調性感が織りなす幻想的な世界
シェーンベルク初期の傑作「浄められた夜」(1899年)は、リヒャルト・デーメルの詩にインスパイアされて書かれた弦楽六重奏曲です。
本作では、ロマン派の感情豊かな表現と、シェーンベルク特有の革新性が調和しています。
後に弦楽合奏版が発表され、より多くの演奏機会を得るようになりました。
物語性のある旋律と、複雑ながらも情熱的な音楽は聴く者の心を揺さぶります。
シェーンベルクのおすすめ代表曲5:ヴァイオリン協奏曲
高い技術を要求する挑戦的な一曲
1934年から1936年にかけて作曲されたヴァイオリン協奏曲は、シェーンベルクのアメリカ時代を代表する作品です。
十二音技法を駆使したこの曲は、ソリストに極めて高い技術と解釈力を要求します。
初演は1936年にルイス・クラスナーによって行われましたが、当初は「演奏が難しすぎる」と批判されました。
しかし、その構成美と表現力の高さが再評価され、
現在では多くのヴァイオリニストが挑む名曲となっています。
まさに20世紀が生み出したヴァイオリン協奏曲の傑作と言えるでしょう。
シェーンベルクのおすすめ代表曲6:月に憑かれたピエロ
語りと音楽の新たな融合
「月に憑かれたピエロ」(1912年)は、シュプレヒシュティンメ(語りと歌の中間表現)を取り入れた独創的な作品です。
アルベール・ジローの詩を元に、21の短い楽曲で構成され、不穏で幻想的な雰囲気が全体を支配します。
この作品は声楽と器楽の境界を曖昧にし、20世紀音楽の新しい表現の可能性を示しました。
初演時には驚きをもって迎えられましたが、現在では現代音楽の名作として広く知られています。
初めて聴く方はかなり驚くかもしれません。
筆者も大学時代の授業で聴いて、衝撃を受けました。
日本語字幕付きはコチラです👇👇
シェーンベルクのおすすめ代表曲7:弦楽四重奏曲第1番
循環形式の革新と情熱的な旋律
1905年に完成したこの弦楽四重奏曲第1番は、従来の形式に新たな生命を吹き込んだ作品です。とくに、楽章間のモチーフを関連付ける循環形式に注目してみてください。
初演では前衛的すぎるとして批判されましたが、マーラーが擁護するなど、
音楽的な価値が徐々に認められるようになりました。
壮大なスケールと情熱的な表現が際立つ作品です。
マーラーはシェーンベルクの良き理解者でもありました。
シェーンベルクのおすすめ代表曲8:ペレアスとメリザンド
交響詩で描く心理的ドラマ
1905年に完成した唯一の交響詩「ペレアスとメリザンド」は、メーテルランクの同名戯曲を音楽で表現したものです。
後期ロマン派の影響を受けながらも、独自の和声法と構造が際立っています。
愛と苦悩をテーマにした劇的な展開が特徴で、オーケストラの色彩豊かな響きがその内容を鮮やかに描き出します。
ドビュッシーやフォーレの「ペレアスとメリザンド」と聞き比べてみるのも面白いのではないでしょうか。
シェーンベルクのおすすめ代表曲9:グレの歌
オペラを超える壮大なカンタータ
シェーンベルクの初期を代表する「グレの歌」(1900年~1903年)は、
ワーグナーの影響を受けつつ、独自の音楽世界を築いた大作。
この曲は詩的な内容を音楽的に展開し、ソリスト、合唱、そしてオーケストラが一体となって壮大な物語を紡ぎます。豊かな和声と大胆な転調が聴く者を圧倒する一曲です。
ワーグナー作品に傾倒していたシェーンベルクのロマン派作品の集大成とも言える作品です。
シェーンベルクの作品の特徴:無調音楽、十二音技法について
ここまで、シェーンベルクの作品を紹介しました。
とはいえまだまだ、ホンの一部です。
「こんな作品があるんだな」という感じでとらえていただければ幸いです。
さて、シェーンベルクといえば音楽史上では「十二音技法の完成者」として知られています。
しかし、肝心の「十二音技法」はかなり難しいため、
よくわからない方が多いと思います(筆者もその一人)です。
そこで以下では、「無調音楽」の解説を踏まえつつ、
十二音技法について、簡単に解説します。
音楽の基本:調性とは
解説の前に、まずは音楽の基本構造である「調性」についてご紹介します。
ホントにざっくり解説です。
調性とは、音楽における音の階層的な体系で、特定の音(主音という)を中心に他の音が配置される仕組みです。
長調や短調がその代表例で、
例えばハ長調では、ハ(C・ド音)音が中心となり、他の音はその周りに配置されます。楽曲の 始まりと 終わりが同じ調で統一され、音楽に安定感と方向性を与えてきました。
リスナーに馴染みやすく、感情的な表現を豊かにする音楽文法として、何世紀にもわたり使用され続けています。
ハ長調の音階は、ドから始まり、レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ドと続く音階です。
この音階にはシャープ(♯)やフラット(♭)はつきません。
また、ハ短調といった場合は、同じくハ音(C・ド音)から始まりますが、
「シ」、「ミ」、「ラ」にフラット(♭)が付く音階となります。
同様に二音(D・レ音)から始まればニ長調・ニ短調といった具合に起点を中心とした音楽が展開されます。
以下の動画では視覚的に解説してくれています。
19世紀末から20世紀にかけて調性に新たな試みがなされる
このように、クラシック音楽は調性をもとにして「一定のルールに基づいて」発展しました。
しかーし!
時代が進むにつれ「もっと他に表現方法はないかな?」という人間の探求心が現れ始めます。
ドビュッシーやラヴェルといったフランス印象派の音楽もその1つですが、
それ以上に「そもそも調性そのものを考え直してみよう!」という動きが起こったわけです。
そしてやがて「無調音楽」という実験的な作品生み出されることになります(もちろん、チョーざっくりです)。
「無調音楽」とは?
では「無調音楽」とはどのような作品なのでしょうか。
こちらも簡単に説明するとこんな感じ👇👇。
それまでの調性をもとにした音楽とは異なり、
無調は、特定の調性(長調や短調)に縛られない音楽表現方法。
つまり、上記「ハ長調」や「イ長調」といった伝統的な和音進行や調性中心を避け、
調和的な音楽を生み出すのではなく、音の自由な関係性を追求した作品を一般に「無調音楽」と言います。。
この試みは当時から非常に斬新なものでしたが、
音楽的な重心点(つまり調性)を持たないため、
聴き手に不安定で予測不可能な印象を与えることとなりました。
とはいえ、シェーンベルクや弟子のアルバン・ベルク、ヴェーベルンなどは無調音楽において優れた作品を残しています。
たとえば、ヴェーベルンによるピアノ曲などが面白いです。
無調音楽から十二音技法へ
お聴きいただければ分かる通り、
無調音楽はそれまでの伝統的なクラシック音楽を根底からひっくり返すものでした。
当然、当時の聴衆からは反発を受けたことは言うまでもありません。
しかしシェーンベルクはさらに実験と考察を重ね、
無調音楽の先に「十二音技法」という技法を探求し始めます。
といのも、無調音楽は調性にしばられないため、「自由」であるものの、
ランダムに作曲し続けていると「調性っぽさ」が出てしまう欠点があったわけです。
そこに注目したシェーンベルクは「だったら完全に理論化してみよう」と思い立ち、
よりシステマティックに体系化した「十二音技法」を考案しました。
そんな、十二音技法には以下のようなルールがあります。
- 12の音をすべて使用する
- どの音も同じ回数だけ使用する
- 音の順序を厳密に決められた「音列」に従う
- 音列は逆行、反行、転回などの変形が可能
5曲目に紹介した『ヴァイオリン協奏曲』はこれら厳密なルールに従って作曲された作品です。
音楽理論を詳しく知りたい方へ
厳密に解説すると、かなり込み入ってしまいますので、
今回はざっくり解説にします。
詳しい解説はいつか別記事で公開する予定です。
とはいえ「調性の基本について知っておきたい」という方のために、
いくつか参考図書を紹介しておきます。
動画で勉強するのももちろんOKですが、
より詳しく、じっくり知りたい方にはやはり書籍がおすすめです。
参考図書をいくつか紹介します(リンクはAmazonです)。
アルノルト・シェーンベルク作品ならAmazonで聴くのが断然オススメ
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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シェーンベルクのおすすめ代表曲:まとめ
今回はシェーンベルクのおすすめ代表作や作品の特徴について紹介しました。
ちょっとだけ難しい話でしたが、ざっくりとでも知っていただければ幸いです。
現代音楽ははっきりと「好き・嫌い(苦手)」が分かれます。
とはいえ、音楽史上においては革新的な展開でもありました。
この記事をきっかけに、少しでもクラシック音楽に関心を持っていただければ幸いです。