今回はシューマンの代表曲「トロイメライ」が収録されている『子供の情景』について紹介します。
シューマンの作品を知らなくても、「トロイメライ」は聴いた事がある人は多いと思います。
『子供の情景』は小曲集のため、シューマン作品に触れるきっかけとして最適な作品集です。この記事を機会に、ぜひシューマンの作品に触れてみてください!
前回のちょっと長めの作品紹介記事はこちらです。
サクッとは読むには長いので、気になった作品だけ見てみてください。
『子供の情景』の解説
それぞれの作品解説の前に、『子供の情景』の全体像について少し解説します。どの作品もシューマンの豊かな抒情性と表現力に溢れています。
『子供の情景』を作曲していた頃のシューマン
『子供の情景』は1838年に作曲された、シューマンが20代の頃の作品です。かなり短い期間で作曲されたようで、同年2月12日から3月17日までのおよそ1ヶ月で完成されました。
この頃には「梅毒」の影響が出ていることを考えると、シューマンの才能ってすごい・・・。
1830年代のシューマンはピアニストの道を断念し、評論家や作曲家として活動し始めた時代でした。
また、プライベートではピアノ講師のフリードリヒ・ヴィークの娘クララ・ヴィークと恋愛関係となり、泥沼の婚姻劇を展開していた時期でもあります。このことについてはこちらを参考にしてください👇
最終的にフリードリヒ・ヴィークとは裁判沙汰にまで発展し、その結果、ようやくシューマンとクララの結婚が認められた波乱の時期でもありました。
子供のための作品集ではない?
『子供の情景』というタイトルを聞くと、「子供のための練習曲かな?」と思われるかもしれません。
しかし、シューマン本人によると、本作は「子供のための作品」ではなく、「子供心を描いた、大人のための作品」を意図して作曲したとのこと。
確かにそれぞれの作品タイトルを見ると、『おねだり』や『木馬の騎士』、『眠りに入る子供』など「大人の視点で描かれた」作品が多いことがわかります。
シューマンの意図を考慮に入れて聴いてみると、また違った聴きかたができるのが、この作品集の面白さでもあります。
本作は30曲の小品のなかから12曲を選別し、『子供の情景』のタイトルが付けられ、のちに1曲が追加され完成しました。
また、シューマンの作品に『子供のためのアルバム』がありますが、こちらは「練習曲」として作曲されています。
フランツ・リストも感動した名曲集
『子供の情景』に対して、大きな賛辞を送った人物の一人に、フランツ・リストがいます。このブログでもたびたび登場している、「ピアノの魔術師」のあの方です。
『子供の情景』に対して強い感銘を受けたリストは、シューマンに対して次のような賛辞を送っています。
「この曲のおかげで私は生涯最大の喜びを味わうことができた」
引用:wikipedia
また、週に2、3回は娘にせがまれて演奏していたそうで、そのことについて、
「この曲は娘を夢中にさせますし、またそれ以上に私もこの曲に夢中なのです。というわけで私は、しばしば第1曲を20回も弾かされて、ちっとも先に進みません。」
引用:wikipedia
という微笑ましい言葉を送っています。
リストについては過去記事で書いています👇
作品紹介
一般的には7曲目の『トロイメライ』の解説が多いですが、ここでは13曲全て紹介してみたいと思います。といっても一つ一つ詳しく解説するとまたまた膨大になってしまうので、ごく簡単に。13曲ありますが、全体の演奏時間は20分程度です。
子供の情景その1、見知らぬ国とその人々について
初めて訪れた国に対して、子供が抱く期待やちょっとした不安が描かれています。ト長調、4分の3拍子。筆者がこの作品集で最初に取り組んだ作品だったような・・・。
子供の情景その2、不思議なお話
不思議な物語を聴いた子供のワクワクする気持ちが伝わってきます。一瞬の心情を捉えるシューマンの観察力と想像力が素晴らしい。短い作品ですがリズムを取るのが結構難しい曲です。ニ長調、4分の3拍子。
子供の情景その3、鬼ごっこ
鋭いスタッカートが多用された、スピード感あふれた作品です。鬼ごっこというより「追いかけっこ」に近いイメージでしょうか・・・。「遊びに夢中になっている子供を表現している」とのこと。ロ短調、4分の2拍子。
子供の情景その4、おねだり(ねだる子供)
「ねえねえ」と大人に甘えるような、優しいメロディーが特徴的です。この曲も「子供の一瞬の愛らしさ」を捉えていますね。ニ短調、4分の2拍子
子供の情景その5、十分に幸せ(満足)
喜びにあふれた子供の情景が目に浮かびます。一体どんな嬉しいことがあったのでしょうか。
ニ長調、4分の2拍子
子供の情景その6、重大な出来事
大人にとっては日常的なことでも、子供にとっては大きな発見も多々あるはず。見たことのない虫を見つけたり、綺麗な空を見上げたり。イ長調、4分の3拍子
子供の情景その7、トロイメライ
『子供の情景』の中で、というよりはシューマンの作品で最も有名な作品ですね。きっと誰しも一度は聴いたことがあると思います。「トロイメライ」とは「夢見心地」という意味です。
あなたは子供の頃、どんな夢を見ていましたか?
ハ長調、4分の4拍子。ピアノ版の他に、ヴァイオリン版やチェロ版など、
様々な楽器でも演奏されています。
子供の情景その8、暖炉のそばで(暖炉で)
暖炉の周りではしゃぐ子供たちを表現しているのでしょうか。温かみのある作品です。ハ長調、4分の2拍子
子供の情景その9、木馬の騎士
『子供の情景』の中では難易度高めの作品です(あくまでも技術的な面で)。木馬の騎士がぴょんぴょん跳ねながら走っているのかな?ハ長調、4分の3拍子
子供の情景その10、むきになって
「むきになって」と訳されていますが、原題の直訳は「真面目すぎるくらい」だそうです。
子供の真剣な様を描いているのかもしれません。深刻そうな子供の表情や気持ちを捉えたのでしょうね。嬰ト単調、8分の2拍子
子供の情景その11、怖がらせ
怖いイメージの作品ではないことから、きっと「びっくりさせる」という子供のいたずら心を表現しているのでしょう。ホ短調、4分の2拍子
子供の情景その12、眠りに入る子供
スヤスヤと幸せそうに眠る子供の表情を、温かく見守る気持ちが表れています。メロディーメーカーとして知られるシューマンの美しいメロディーが堪能できます。ホ短調、4分の2拍子
子供の情景その13、詩人は語る(詩人のお話)
タイトルの「詩人」とは、シューマンのことを指します。遠い未来を見つめるシューマン自身の眼差しを感じます。ト長調、4分の4拍子。
難易度は?
全13曲について紹介しました。ピアノを学習していらっしゃる方にとっては、『子供の情景』の難易度も気になるところではないでしょうか?
それぞれの作品を聴いて、「意外に難しくなさそうだな」と思われた方も多いと思います。
結論から言うと、技術的にはそれほど難しくないと言えます。
ソナチネをミスなく弾きこなすレベルであれば、小学生でも弾くことは可能でしょう。
しかし、この作品は多くの大ピアニストも録音していることからも分かる通り、重要なのは「作品に対する深い理解と表現力」にあります。世界観をどれだけ自分なりに解釈し、音に反映させることができるか、と言うことが重要です。
そういう意味では、「難易度は非常に高い」といえるのではないでしょうか。
もし演奏する機会があれば、それぞれの作品を丁寧に、そして根気よく取り組むことをオススメします。
まとめ
と言うことで、シューマンシリーズはこれにて最後です。
今回のシリーズは意外と早く書けたな(自分)。
ロマン派の作曲家は作品数も多く表現も多彩なので、
しばらくはロマン派に絞って書いてみようかなと思っています。
それでは、次回の投稿もお楽しみに!!
クラシック音楽を聴き始めた方のために
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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