この記事では、北欧のショパンと称されるエドヴァルド・グリーグの代表曲を紹介します。
グリーグといえば『ピアノ協奏曲』や劇付属音楽『ペール・ギュント』が有名です。
しかし、彼が残した名曲ってたくさんあって、
今回は上記2曲を含めた代表曲を見てみましょう。
グリーグの作品はロマン派を基調としながらも、
北欧の民俗音楽を取り入れています。
そのため、聴く人によっては、
どこか「懐かしさ」を感じる方もいるかもしれません。
今回はグリーグの作品7曲と、独断と偏見による「最高傑作」を併せて解説していますので、
ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
もちろん、いつもながらのざっくり解説ですので、気軽にお読みいただければ幸いです。
グリーグの生涯について知りたいという方はコチラ、もしくは👇から。
グリーグの代表曲おすすめ7選
ノルウェーを代表する作曲家エドヴァルド・グリーグの作品にはどのようなものがあるのでしょうか。
「名前聞いたことない」なんて方も多いと思いますが、
作品を聴けば「この曲の作者か!」と思われること間違いなしです。
グリーグの生み出したメロディーは、聴く人の心を穏やかにし、
ひとときの安らぎを与えてくれることでしょう。
グリーグの代表曲その①、抒情小曲集
1曲目、というか1つ目は『抒情(じょじょう)小曲集』です。
ピアノを習われている方なら、聴いたこと、あるいは実際に演奏された方も多いかと思います。
グリーグを代表するピアノ曲集で、1867年から1903年にかけて作曲されました。
タイトルの通り、短い小曲で構成された珠玉の作品集です。
全10集からなっており、1冊につき概ね6〜8曲が収録されています。
作品の美しさはもちろん、作曲された時期ごとにグリーグ内面の変化も楽しめる作品集となっています。
なお、こちらの作品のいくつかが抜粋され、
のちに管弦楽曲『抒情組曲』へ編曲されました。
グリーグの代表曲その②、ヴァイオリン・ソナタ第3番
グリーグは生涯で3曲のヴァイオリン・ソナタを作曲しました。
本作はそのうちの最後の作品であり、もっとも人気の高い作品として現在もしたしまれています。『抒情小曲集』とは違った、グリーグのダイナミックさが楽しめる名曲です。
1886年から1887年にかけて作曲されており、ヴァイオリニストのテレジーナ・トゥリアのために作曲されたと言われています。
1887年の12月にライプツィヒにて初演が行われ、大きな成功を収めています。
全3楽章構成で、演奏時間はおよそ25分です。
音楽的な完成度という意味で、グリーグ屈指の名曲と言えるでしょう。
グリーグの代表曲その③、ノルウェー舞曲
『ノルウェー舞曲』はグリーグが1881年に作曲した、ピアノ連弾のための作品です。タイトルの通り、本作はノルウェーの民謡『ノルウェー山地の民謡』を素材としています。
この頃から、グリーグはノルウェーの民謡収集に関心を抱き始め、
のちの作品作りの大きな転換点となりました。
本作は全4曲で構成され、1887年にはグリーグ自身によりピアノ独奏版にも改訂されています。また、1882年と1888年にそれぞれ、ロベール・アンリックとハンス・ジッドにより管弦楽版にも改変されました。
現在では、連弾版・管弦楽版のどちらもコンサート・プログラムとして親しまれています。管弦楽版です👇
代表曲その④、交響的舞曲
1896年にピアノ連弾用に作曲され、こちらはグリーグ自身により管弦楽版に編曲された作品です。
『4つの交響的舞曲』あるいは『交響的舞曲集』の曲名でも知られ、
グリーグの成熟した民俗音楽への理解が楽しめる作品となっています。
「長い作品はちょっと苦手だな」という方は、
こちらから聴いてみると良いかもしれません、
演奏時間は全体で25分程度です。
4作いずれとも、ノルウェーの大地や歴史を感じさせてくれるフレーズが印象的な作品となっています。
代表曲その⑤、抒情組曲
その①で紹介した『抒情小曲集』から4曲を選出して、管弦楽版とした組曲です。
1895年、ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団の指揮者アントン・ザイドルが管弦楽版に編曲し、ザイドルの死後、グリーグによって更なる改訂が行われました。
ちなみに、本作の編曲にあたり、ザイドルはグリーグに無許可で編曲を行ったそうです。それにも関わらず、出来栄えに関心したグリーグが「自分も改訂してみたい」と申し出たのは、グリーグの人柄の良さの表れでしょうか・・・。
演奏時間は全体で15分程度となっています。
代表曲その⑥、ホルベルク組曲
グリーグの室内楽の中でも屈指の名曲として知られる作品です。
現在でも演奏機会が非常に多く、世界中のクラシック・ファンから愛されています。
もとは1884年にピアノ曲として作曲されましたが、
翌1885年にグリーグ自身が管弦楽版へ改訂し、現在ではこちらの方でよく知られています。
また『ホルベアの時代から』が原題ですが、
ドイツ語読みで『ホルベルク組曲』と呼ばれることが一般てきです。
ちなみにホルベアとは「デンマーク文学の父」と呼ばれる、
ルズヴィ・ホルベア(1684〜1754年)の事を指すそうです。
日本でいうと、夏目漱石的な人かなと・・・(ちょっと時代違うか)。
本作は、そのホルベア生誕200周年を記念する記念祝典のために作曲されたました。
代表曲その⑦、ピアノ協奏曲
「グリーグの作品といえばコレ!」というくらいメジャーな作品です。
普段クラシックを聴かない方でも、破壊力抜群の冒頭部分は聴いたことがあると思います。
グリーグの作品としてだけでなく、あらゆる「ピアノ協奏曲」の中でも、
屈指の作品として世界中で親しまれています。
また本作はグリーグ唯一のピアノ協奏曲であり、1868年、25歳の時に作曲された初期を代表する傑作です。
フランツ・リストが初見で全て弾きこなしたというエピソードもあまりにも有名ですね。
どことなく、シューマンの『ピアノ協奏曲』の面影を感じますが、
それもそのはず、本作はシューマンの作品に影響を受けているとのこと。
ちなみに、シューマンの『ピアノ協奏曲』はこれです👇
聴き比べてみてどうでしょうか・・・。
冒頭部分、なんとな〜く似てませんか?
ちなみに、上記のフランツ・リストは、本作の第3楽章について「これが本当の北欧だ!」と絶賛したと伝えられています。
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グリーグの最高傑作『ペール・ギュント』の有名曲
ということで、ここまでグリーグの代表曲7選を紹介しました。
最高傑作について『ピアノ協奏曲』か『ペール・ギュント』で迷いました。
でも「認知度」に焦点をあてると『ペール・ギュント』かなと思います。
「いやいや、ペール・ギュントなんて作品知らないよ」という方も大丈夫。
絶対に聴いたことあります!
劇付随音楽『ペール・ギュント』とは
まずは『ペール・ギュント』についてざっくりと解説です。
本作は、ノルウェーの文豪ヘンリック・イプセンの同タイトルの戯曲『ペール・ギュント』のために作曲された、劇付随音楽です。
とはいえ、オペラにもいろいろ種類があるので、
絶対とは言えませんが・・・。
『ペール・ギュント』は、全5幕からなる物語。
自由奔放な主人公ペール・ギュントが旅に出て、年老いて帰ってくるまでの波乱万丈の物語です。作中、ペール・ギュントはギャンブルで大儲けしたり、精神病院に入って王様のふりをしたりと、さまざまな人生を経験します。
やがて生家に戻ったペール・ギュント。
そこでペールは「自分の人生が特別だったこと」を証明しようと、最後の悪あがきをします。
しかしそこで彼が行き着いた人生の終着地点とは・・・。
一度はイプセンの依頼を断ったグリーグ
『ペール・ギュント』に音楽をつけて、より舞台向きな作品にしようと考えたイプセン。そんなイプセンの思惑に白羽の矢が立ったのが、
売れっ子作曲家として人気を獲得していたグリーグでした。
ところがグリーグは「物語のスケールが大きく舞台には向かない」として、
一度はイプセンの申し出を断ります。
しかしそれでも引かなかったイプセン。グリーグに多額な報酬を提示し、なんとか頼み込みます。
すると、報酬とノルウェーの民俗的テーマに興味を持ったグリーグは、
ついに依頼に承諾し、『ペール・ギュント』の音楽制作に踏み切ります。
そして1875年に作品が完成。
イプセンとグリーグによる共作は大成功を収めたのでした。
グリーグは本作のために27曲を作曲し、
初演から数年かけて何度も改訂を行なったそうです。
ペール・ギュント組曲が有名
本作は1891年に第1組曲、1892年に第2組曲に編曲されています。
いずれも4曲ずつの構成で、第1組曲の「朝」と「山の魔王の宮殿にて」は、グリーグ作品のなかでも、もっとも有名な作品です。
それがコチラ👇「朝」
それと「山の魔王の宮殿にて」がコチラ👇
グリーグ作品の特徴や魅力について
最後にグリーグの作品の特徴や魅力を簡単に3つ紹介します。
こちらもざっくりとなので、気軽に読み流していただければ嬉しいです。
グリーグの作品の特徴や魅力その①、北欧の自然と民族性の表現
グリーグの音楽といえば、ノルウェーの壮大な自然と豊かな民族性の見事な表現です。
上記の『ペール・ギュント組曲』の「朝」では、静かに夜明けを迎えるフィヨルドの風景が美しく描かれており、聴く人の心に鮮やかなイメージを喚起させますよね。
また、ノルウェーの民謡や舞踊のリズム、旋律を巧みに取り入れることで、独自の音楽語法を確立しましたのもグリーグならでは。
これにより、彼の音楽は郷愁を誘うと同時に、新鮮さと独創性を兼ね備えることに成功しました。
グリーグの作品の特徴や魅力その②、繊細な感情表現と親しみやすさ
グリーグの音楽の大きな魅力は、その繊細な感情表現と親しみやすさにあります。
とくに『抒情小曲集』などのピアノ作品などが顕著です。短い曲の中に喜び、悲しみ、郷愁といった多様な感情が凝縮されており、聴く人の心に直接訴えかけます。
複雑な構造や技巧は少ないものの、それが返って素直な旋律と豊かな和声により、幅広い聴衆の心を捉えることに成功しているといえるでしょう。
この親しみやすさが、グリーグの音楽が今日でも世界中で愛され続けている理由の一つなのかもしれませんね。
グリーグの作品の特徴や魅力その③、ロマン派と近代音楽の架け橋
グリーグの音楽は、19世紀のロマン派の伝統を踏まえつつも、20世紀の近代音楽につながる要素も含んでいます。
和声や調性の扱いに独自の工夫が見られ、時に大胆な響きを生み出しているのも特徴の1つ。
たとえば『ピアノ協奏曲』では、ロマン派的な華やかさと叙情性に加え、北欧的な響きや斬新な和声進行が見られます。
この独自性により、グリーグは19世紀と20世紀の音楽をつなぐ重要な架け橋としての役割を果たしています。リストが「これが本当の北欧だ!」と絶賛したのも頷けます。
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グリーグの代表曲まとめ
今回も結構な分量になってしまいましたが、
これでグリーグの作品紹介はひとまず終わりです。
他にもまだまだ紹介したい作品がありますので、
それはまた別の機会に記事にしたいと思います。
グリーグについてもっと知りたいという方は、
こちら👇もあわせてご一読くださいね。
また、今回出てきたフランツ・リストについてはコチラです👇
最後に、楽器を弾いてみたい!という方や、再スタートしたいとお考えの方に向けて、
なっとくいくまで【無料体験】ができる音楽スクールの記事を書いてみました。
こちらもぜひご一読ください👇
劇付随音楽とは、めちゃくちゃ簡単に説明すると、
演劇を盛り上げるために劇中で流れる音楽のこと。
セリフを音楽に載せて物語を進めるオペラとは大きく異なります。