コレッリとはどんな人物?生涯やエピソード、代表曲を簡単に解説!

    この記事では、アルカンジェロ・コレッリについて、ざっくりと解説します!

    バロック音楽と聞くと、ヴィヴァルディの『四季』やバッハの壮大なオルガン曲を思い浮かべる方が多いかもしれません。

    しかし、彼らが活躍する少し前、バロック音楽の「様式」そのものを確立し、後世の作曲家たちに計り知れない影響を与えた巨匠がいました。

    それが、イタリアの作曲家・ヴァイオリニスト、アルカンジェロ・コレッリ(以下コレッリ)です。

    彼は、いわばバロック音楽の「設計図」を描いた人物。

    この記事では、音楽の建築家ともいえるコレッリの生涯、その偉大な功績がわかるエピソード、記事の後半では、美しい代表曲を分かりやすくご紹介します。

    ぜひ最後まで読んで、新しい知識として参考にしてくださいね!

    筆者は3歳からピアノを開始。いろいろありながらも、かれこれ30年以上ピアノに触れています。音大には行っておらず、なぜか哲学で修士号というナゾの人生です。

    >>画像出典:アマゾン:CORELLI COMPLETE EDITION

    アルカンジェロ・コレッリとは?バロック音楽の設計者

    まずは、コレッリがどのような人物だったのか、そのプロフィールから見ていきましょう。

    項目内容
    フルネームアルカンジェロ・コレッリ
    生没年1653年 – 1713年
    出身イタリア・フュジニャーノ
    功績「合奏協奏曲」「トリオ・ソナタ」の様式確立
    代表作ヴァイオリン・ソナタ『ラ・フォリア』、合奏協奏曲『クリスマス協奏曲』

    コレッリの功績

    彼が生きた時代は、ヴァイオリンという楽器が改良され、表現力が飛躍的に向上した時期でした。コレッリは、その新しい楽器の可能性を最大限に引き出すための演奏技術(ポジション移動、重音奏法、様々な弓の使い方など)を体系化し、自らの作品でその魅力を示しました。

    コレッリの生涯と人物像

    生涯について、もう少し深ぼってみましょう。時代的に見ても、まさにバロック音楽の中心人物だったことがわかります。

    幼少期と学び(1653〜1675年)

    アルカンジェロ・コレッリは1653年、イタリア・フュジニャーノの裕福な家庭に生まれました。幼い頃から音楽の才能に恵まれ、10代前半でボローニャへ移り、本格的にヴァイオリンと作曲を学びます。13歳でボローニャの名門音楽家団体「アッカデミア・フィラルモニカ」に入会するなど、早くからその実力が認められていました。

    当時のボローニャはイタリア音楽の重要拠点の一つ。そこに集まる多くの音楽家と交流しながら、コレッリはトリオ・ソナタや教会ソナタの書法を磨いていきます。彼の音楽に見られる均整の取れた構造と明快な旋律は、この時期の訓練の成果と言えるでしょう。

    コレッリは、スカルラッティより7歳、ヴィヴァルディより25歳、ヘンデルより32歳年上です。

    ローマ時代と全盛期(1675〜1700年)

    その後、20代後半にローマへ拠点を移し、音楽家として本格的な活動を開始。ローマは当時、宗教と芸術が融合する文化の中心地であり、コレッリは枢機卿パンフィーリや後の教皇クレメンス11世など、有力なパトロンから保護を受け、ローマ宮廷で音楽監督や指揮者を務めました。

    彼が率いた弦楽合奏団は、その演奏の緻密さと表現力でヨーロッパ中から注目され、特にトリオ・ソナタと合奏協奏曲では、ジャンルの形式美とバランス感覚を極めた傑作を次々に発表。作品はイタリアにとどまらず、フランス、ドイツ、イギリスの作曲家たちにまで大きな影響を与えました。

    とくに、1680年代初頭から過ごしたドイツでは大きな名声を獲得しており、「トリオ・ソナタ集」などの、傑作を生み出した時期でもあります。

    晩年と死後の評価(1700〜1713年)

    晩年のコレッリは演奏活動を控え、作曲と教育に力を注ぎました。門下からは、のちに国際的に活躍する作曲家フランチェスコ・ジェミニアーニやピエトロ・ロカテッリなどが育ち、彼のスタイルを継承し、ヨーロッパ中に広めていきました。

    1700年に出版した「ヴァイオリン・ソナタ集」は、ヨーロッパ各国の宮廷で評判となり、重版を重ねるほどのベスト・セラーになったそうです。

    出版された作品は、わずか作品番号6までと少ないものの、どれも徹底した推敲の末に生まれた名作揃いです。1713年、59歳でローマで亡くなり、特別な敬意のもとパンテオンに埋葬されました。これは当時としても異例のことであり、彼がいかに音楽界で尊敬されていたかを物語っています。

    バロック音楽の常識を作った!コレッリのエピソード5選

    彼の仕事がなければ、バロック音楽は全く違う形になっていたかもしれません。

    ここでは、明日話せるコレッリのエピソードを5つ紹介します。

    コレッリのエピソード① 「合奏協奏曲(コンチェルト・グロッソ)」の形式を完成させる

    バロック時代を象徴するジャンルの一つが「合奏協奏曲」です。これは、少人数の独奏楽器グループ(コンチェルティーノ)と、弦楽合奏全体(リピエーノ)が、交互に演奏したり、掛け合ったりしながら音楽を進めていく形式。コレッリはこの形式を完成させ、その後のヴィヴァルディやバッハ、ヘンデルなどが作る協奏曲のモデルとなりました。

    コレッリのエピソード② 「トリオ・ソナタ」を芸術の域へ

    2つの高音楽器(主にヴァイオリン)と、チェロやチェンバロなどの通奏低音で演奏される「トリオ・ソナタ」は、当時最も人気のある室内楽ジャンルでした。コレッリは、このジャンルで数多くの傑作を生み出し、その優雅で均整の取れた書法は、トリオ・ソナタの一つの完成形と見なされています。

    コレッリのエピソード③ ヨーロッパ中に影響を与えた名教師

    ローマで多くの弟子を育てたコレッリ。それだけでなく、彼の出版された楽譜はヨーロッパ中の音楽家にとって最高の「教科書」でした。ヴィヴァルディやヘンデル、フランスのクープラン、そしてドイツのバッハといった、次世代のバロックの巨匠たちが、こぞってコレッリの様式を研究し、自らの音楽の基礎としています。

    コレッリのエピソード④ 完璧主義者、わずか6つの作品集

    多作な作曲家が多いバロック時代において、コレッリが生涯に出版した作品集は、番号にしてわずか「作品6」までしかありません。これは、彼が一つ一つの作品を徹底的に推敲し、完璧だと納得できる形でしか世に出さなかった、職人気質な完璧主義者であったことを物語っています。

    コレッリのエピソード⑤ ローマの音楽界のトップスター

    当時の音楽の中心地であったローマにおいて、コレッリは枢機卿などの有力なパトロンから絶大な信頼を得て、音楽家として最高の地位と名声を手にしました。彼は温厚で誠実な人柄でも知られ、多くの人々から尊敬を集める、まさにローマ楽壇のトップスターだったようです。

    バロック時代についてざっくりと知りたい方は、こちらの記事がおすすめです。

    【初心者向け】様式美の極致!コレッリの代表曲3選

    では最後に、これだけは聴いておきたい!コレッリの作品を紹介します。

    バロック音楽の持つ、明快で調和の取れた美しさが楽しめますよ!

    コレッリの代表曲①:ヴァイオリン・ソナタ 作品5 第12番『ラ・フォリア』

    コレッリの作品の中で、最も有名で情熱的な一曲。彼はこの主題を用いて、ヴァイオリンの技巧を存分に発揮させた23もの変奏を書き上げました。次々と展開される華麗なパッセージは、聴く者を飽きさせません。

    「フォリア」とは、15世紀頃からヨーロッパに伝わる舞曲の定型的なメロディとコード進行のことです。

    出典:YouTube:高松あり様より

    代表曲②:合奏協奏曲 作品6 第8番『クリスマス協奏曲』

    「クリスマスの夜のために作られた」と記された、彼の合奏協奏曲の代表作。楽章の間に切れ目がなく、全体として穏やかで敬虔な雰囲気に満ちていますが、特に有名なのが終楽章の「パストラーレ(牧歌)」。キリストの降誕を祝いにやってきた羊飼いたちが吹く笛の音を模した、優しく美しい旋律は、聴く人の心を温かい光で満たしてくれます。

    バロック音楽ってやっぱり落ち着きますね。

    出典:YouTube

    代表曲③:トリオ・ソナタ 作品3 第2番

    2つのヴァイオリンが、まるで双子の姉妹のように優雅に歌い、追いかけ合い、そして寸分の狂いもなく美しく調和する…。コレッリのトリオ・ソナタの様式美と、アンサンブルの楽しさが凝縮されたような一曲です。彼の音楽の持つ、明晰で気品あふれる魅力を知るには最適な作品と言えるでしょう。

    出典:YouTube

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    コレッリの生涯解説:まとめ

    今回は、バロック音楽の様々な「かたち」を作り上げた、偉大な建築家のような作曲家コレッリを紹介しました。彼の音楽には、現代人が忘れがちな、調和と均整の取れた美しさに満ちています。

    この記事のポイント

    • コレッリは、バロック音楽の重要ジャンル**「合奏協奏曲」「トリオ・ソナタ」を完成**させた。
    • ヴァイオリンの演奏技術を体系化し**「近代ヴァイオリン奏法の父」**とも呼ばれる。
    • 彼の楽譜は、ヴィヴァルディやバッハなど後世の作曲家の教科書となった。
    • 代表作は『ラ・フォリア』と**『クリスマス協奏曲』**。

    まずは『クリスマス協奏曲』の穏やかなパストラーレから、コレッリの構築した清らかで美しい音楽の世界に浸ってみてはいかがでしょうか。

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