「動物の謝肉祭」「死の舞踏」(サン=サーンス)の魅力を簡単に解説!!楽曲編成や聴きどころは?

    本記事では「死の舞踏」「動物の謝肉祭」の魅力を解説しています。

    今回でサン=サーンスの記事は最後でラスト。

    前回の記事ではサン=サーンスのさまざまな作品を紹介しました。

    マイナーな作品もありましたが、皆さんの教養の一助になれば幸いです。

    前回の記事はコチラ

    出典:Amazon[サン=サーンスピアノ協奏曲全集]

    3つ目となる本記事では、サン=サーンス作品でもっとも有名な作品な交響詩「死の舞踏」と組曲「動物の謝肉祭」を紹介します。動画でも紹介しますので、参考にしてみてくださいね。

    交響詩「死の舞踏」について

    死の舞踏

    交響詩「死の舞踏」は1872年、サン=サーンスが38歳の時の作品です。当初はピアノ伴奏による歌曲として作曲され、その2年後の1874年に交響詩として編曲されました。

    サン=サーンスは生涯で4つの交響詩を作曲しましたが、この作品はその中でももっとも有名な作品です。作品の着想はフランスの詩人アンリ・カザリスの詩にインスピレーションを受けて作曲されたと言われています。

    1875年にパリのシャトレ座で初演されましたが、初演は成功とはならなかったようです。しかし演奏を重ねるうちに次第に人気が出始め好評となりました。

    死の舞踏とは?

    この作品名を初めて見た方の中には「死の舞踏」というタイトルに興味を持った方もいると思います。「死の舞踏」とは、中世末期の終末観を表現する、芸術上のモチーフ(主題)です。

    「死の舞踏」を題材にしたもっとも古い例は、1400年代初頭、パリ・イノサン聖堂の墓室壁画にそのモチーフが使われています。

    一般的なモチーフは、骸骨として描かれた「死者」と生者が手を繋ぎ輪になって踊る姿が描かれます。「死の舞踏」をテーマとして作品としては、サン=サーンスの作品の他にフランツ・リストのピアノと管弦楽のための曲が有名です。

    サン=サーンスはリストを損益していたので、もしかしたら何らかの関係があるのかもしれませんね。元々の起源は、疫病時の集団舞踊やお祓いが起源とする説もあります。

    詩の内容を音楽で表現したサン=サーンス

    上記にも書いたように、交響詩「死の舞踏」はアンリ・カザリス作の詩をベースに作曲されています。

    交響詩は「形式自由」なのが特徴ですが、「死の舞踏」とサン=サーンスの交響詩の中でもとりわけ描写的な作品として評価されています。

    例えば冒頭、ハープのD音が12回続く部分は、夜中の0時(12時)に死神が墓場に現れる様子を表現し、また骸骨が不気味にワルツを踊る様は、フルートで表されています。

    終盤のオーボエが奏でる旋律は、朝を告げる雄鶏の鳴き声を描写しています。シロフォンという楽器が、「骨と骨がぶつかってカチカチ音を立てる様」を表している点もこの作品の面白いところです。

    「死の舞踏」のイメージはこんな感じ👇

    出典:wikipediaより

    楽器や楽曲編成について

    オーケストラの規模としては標準的編成となっています。のちにサン=サーンス自身により2台ピアノ版と、ヴァイオリンとピアノ版に編曲されています。

    リストはこの曲をとても気に入ったようで、自身でも「死の舞踏」を作曲しているにもかかわらず、サン=サーンスの本作をピアノ版にアレンジしています。リスト編曲の「死の舞踏」も演奏機会の多い作品です。

    そしてリストが編曲した「死の舞踏」にさらに編曲をおこなった、大ピアニスト・ホロヴィッツ版も有名です。ちなみにリストのピアノバージョン👇。

    組曲「動物の謝肉祭」について

    組曲「動物の謝肉祭」全曲↑

    サン=サーンスの作品といえば?と聞かれたら、真っ先に「動物の謝肉祭」が挙げられるほど有名な作品です。14曲の小品で構成された組曲で、それぞれに動物のタイトルがつけられた楽しい作品です。

    全体を聴いたのある人は少ないかもしれませんが、「水族館」や「白鳥」などは誰しも一度は聴いたことのあるメロディーだと思います。

    それぞれのタイトルと楽曲を頭の中で想像するのも面白いかもしれません。

    「謝肉祭」というとあまりイメージが湧かないかもしれませんが、聞き慣れた言葉に翻訳すると「カーニバル」がそれに該当します。

    リオのカーニバルの「カーニバル」ですね。

    もともとは室内楽用として作曲されましたが、のちにオーケストラに編曲されました。

    今でこそサン=サーンスを代表する作品ですが、当初はプライベートの夜会用として作曲されたため、組曲中の「白鳥」以外、サン=サーンスの存命中は楽譜出版されませんでした。

    1886年3月9日のマルディグラの日に初演されています。

    ※マルディグラとはフランス語で「肥沃な火曜日」という意味で、「灰の水曜日」と呼ばれる謝肉祭最終日の前日を指します。

    「動物の謝肉祭」の楽曲構成や魅力は?

    14曲の作品から構成されており、それぞれユニークなタイトルが付けられています。

    この作品はさまざまな作曲家のパロディーとしても有名です。

    動物の謝肉祭、第1曲「序奏と獅子王の行進曲」

    堂々とした威厳のあるライオンの姿が、弦楽器のユニゾンで表現されています。組曲の開幕を知らせる1曲です

    第2曲「雌鶏と雄鶏」

    タイトルの通り、めんどりとおんどりの掛け合いが楽しい作品です。ちなみに「鶏」はフランスを象徴する鳥です。

    第3曲「らば」

    ピアノの素早い上下が早足で駆け回る姿を表現しています。日本語では便宜的に「らば」と訳されますが、実際のモチーフはアジアロバと考えらています。

    動物の謝肉祭、第4曲「亀」

    とてもゆっくりとしていて、「亀」のタイトルにピッタリだと思いますが、この曲、どこかで聴いたことがありませんか?。そう、この作品はモロにオッフェンバックの「天国と地獄」のパロディです。コチラと聴き比べてみてください!!(0:50秒から)

    第5曲「象」

    象の「のっそり」とした姿を巧みに描いた1曲です。ベルリオーズの「ファウストの劫罰」から「妖精のワルツ」やメンデルスゾーンの「夏の夜の夢」のメロディーが使用されています。

    第6曲「カンガルー」

    カンガルーが飛び跳ねる姿がピアノにより絶妙に表現されています。とても楽しい作品です。

    動物の謝肉祭、第7曲「水族館」

    水族館の水がキラキラと反射しているような、美しい作品です。特にチェレスタとピアノが美しく共演し、水族館で泳ぐ魚達を連想させます。

    第8曲「耳の長い登場人物」

    興味深いタイトルですが、この作品はサン=サーンスを敵対視していた評論家に対する皮肉が込められていると言われています。残念ながらそれを裏付ける証拠が無いため何とも言えませんが、さもありなんという話です。

    この曲の楽譜販売を許可しなかった理由は、こうした皮肉がバレるのを恐れていたからかもしれません。

    第9曲「森の奥のカッコウ」

    カッコウの声をクラリネットで表現した面白い作品です。静寂の森に響くカッコウの鳴き声が見事に表されています。

    第10曲「大きな鳥籠」

    静寂に響くカッコウの鳴き声から一転して、大きな鳥籠の中で忙しなく飛び回る鳥の様子が目に浮かびます。サン=サーンスの観察眼と音楽的感性が見事にマッチした1曲です。

    第11曲「ピアニスト」

    ピアニストがわざとらしく「チェルニー」を下手くそに演奏するユーモアあふれる一曲です。楽譜には「初心者の下手な演奏を真似するように」という指示があるそうですが、これはサン=サーンスによるものではなく、出版社の指示だそうです。

    第12曲「化石」

    サン=サーンス自身の「死の舞踏」やロッシーニの「セビリャの理髪師」、「きらきら星」、さらにはフランス民謡などが散りばめられています。

    自分の作品を「化石」と呼ぶところにサン=サーンスのユーモアが感じられます

    動物の謝肉祭、第13曲「白鳥」

    「動物の謝肉祭」の中でももっとも有名な作品です。優雅で抒情的なメロディーが特徴的です。チェオ独奏用の曲としても有名で、サン=サーンスが生存中、唯一出版を許可した作品としても知られています。バレエ「瀕死の白鳥」も使用されています。

    第14曲「終曲」

    ここまでに登場した複数の動物達のメロディが再登場します。さしずめエンドロールといったところでしょうか・・・。組曲を締めくくる華やかなフィナーレで謝肉祭が幕を閉じます。

    サン=サーンス:組曲「動物の謝肉祭」、他(SHM-CD)

    「死の舞踏」「動物の謝肉祭」の解説まとめ

    今回はサン=サーンスの交響詩「死の舞踏」と組曲「動物の謝肉祭」について解説しました。どちらもユーモアあふれる作品ですので、まだ聴いたことのない方は是非この記事を機会に作品に触れてみてください。今回でサン=サーンスの記事は一応終了ですが、楽しんでいただけましたか?次回もクラシック音楽に関する「わかりやすい」情報を紹介しますので、お楽しみに!!

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