ドビュッシー3本目は、もっとも有名な『月の光』を紹介します。
ほのかに降り注ぐ月明かりの印象や美しメロディーが特徴的で、
現在でも多くの人に愛される名曲ですよね。
また、ピアノ学習者の方にとっては「一度は弾いてみたい」作品ではないでしょうか。
でも演奏するにあたって気になるのが、
作品の難易度だと思います。
そこでこの記事では『月の光』の作品背景や魅力・難易度についてざっくりと解説します。
これからチャレンジしてみようかな、と考えている方にとってお役に立てば幸いです。
記事の後半では参考動画も載せていますので、
ぜひ最後まで読んでみてくださいね!
ドビュッシーの生涯や作品紹介については以前の記事で書いているので、
そちらもぜひ併せて参考にしてみてください!
『月の光』の魅力や聴きどころ
ドビュッシーのピアノ曲の中でも、もっとも人気が高いといっても過言ではない『月の光』。
普段クラシックに馴染みのない方でも、
1度は聴いたことがあると思います。
幻想的でありながら、憂いを漂わせたこの作品には、
どのような背景があるのでしょうか。
『ベルガマスク組曲』の1曲
『月の光』は1890年、ドビュッシーが28歳の頃に作曲されたピアノ作品です。
単独のピアノ曲としてではなく、
「ベルガマスク組曲」というピアノ曲集の3曲目として作曲されました。
組曲の構成はこんな感じです↓
作曲家ドビュッシーとしては比較的初期の作品であり、
本作には、グリーグやフォーレなどの影響が見られます。
タイトルの「ベルガマスクって?」と疑問に思った方もいると思います。
ベルガマスクとは「ベルガモの」や「ベルガモ舞曲」を意味し、
イタリアの一地方都市であるベルガモに由来しているそうです。
『月の光』の由来について
この作品のタイトルにも由来があります。
音楽家だけではなく、文学者や詩人などとも交流を深めたドビュッシー。
彼の周りには多くの優れた文学者がいました。
そんな中、本作は象徴派の詩人ポール・ヴェルレーヌの詩集『艶なる宴』に収められている、
「月の光」という詩にインスピレーションを受けて作曲されています。
発表当初は、「感傷的な散歩道」として発表されましたが、
のちに「月の光」のタイトルに変更されたのも、興味深いところです。
実は「月の光」は3曲ある!?
『月の光』というと、ドビュッシーのピアノ曲を連想しますが、
同タイトルの作品が3曲あるのをご存じでしょうか。
ドビュッシーはヴェルレーヌの「月の光」の詩を用いて、
歌曲も作曲しています。
それがコチラ↓。ヴェルレーヌの詩に音楽をつけたものです。
しかも、ピアノ版「月の光」よりも先に歌曲版「月の光」が作曲されました。
そしてもう1曲が、ドビュッシーとも関わりが深いフォーレの「月の光」です。
こちらもヴェルレーヌの詩をモチーフにしています。
どれも美しい作品ですので、聴き比べてみるのも面白いかもしれません。
『月の光』の難易度は?
ピアノ学習者の方や、親御さんにとって気になるのが、『月の光』の難易度ではないでしょうか。
以下では、『月の光』の難易度を解説しますので、
チャレンジする際の参考にしてみてください。
難易度について
いつものように全音ピアノピースの難易度を見てみると・・・。
難易度「C」に分類されています。
難易度「C」の他の作品を見てみると、
・ショパンの『子犬のワルツ』
・リムスキー=コルサコフの『熊蜂の飛行』
・サン=サーンスの『白鳥』
などの作品があります。
『子犬のワルツ』を基準にして想定すると、わかりやすいのではないでしょうか。
CDを聴いたり、楽譜を眺めてみて、
「これは弾けないな・・・」と感じる方は、『月の光』は少し早いかもしれません、
とはいえ、作品スタイルがまったく異なるので、
あくまでも参考程度としてとらえてください。
また、難易度の感じ方も演奏する人によりさまざまです。
簡単に感じる人もいれば、難しいと感じる人もいることでしょう。
とくに手の小さい方は、より難しさを感じるかもしれません。
『月の光』を演奏するレベルは?ピアノ初心者には難しい?
では実際どの程度のレベルであれば、チャレンジできるのでしょうか。
個人的な経験もありますが、おおむね、
・チェルニー30番・40番
・ソナチネアルバム中盤以降
・インベンション(バッハ)を数曲修了
これくらいのレベルを弾きこなせるようであれば、
チャレンジしてみるのも良いかもしれません。
つまり、中級程度のレベルが求められます。
さらに、これらを総合すると、
「まったくのピアノ初心者」の方や、
「バイエルやブルグミュラー修了」のレベルでは、難しいと思われます。
また、『月の光』は♭が5つある「変ニ長調」なので、
初心者の方は譜読みだけでも苦労することが予想されます。
冒頭部分は比較的演奏しやすいので、「弾けそうかな?」と思うかもしれません。
しかし、27小節目からの分散和音パートが複雑になるので、
ここで挫折してしまう人が多いようです。
その場合は、あせらず基礎演習を磨いてから再度チャレンジすることをおすすめします。
流れるように美しく演奏するには、ゆっくりと片手ずつ練習するのも大切です。
ハノンを使って指の動きを鍛えるのも良いでしょう。
ドビュッシーによる演奏アドバイアスがある
『月の光』の演奏方法について、
ドビュッシー自身がアドバイスを残してくれています。
実際にアドバイスを受けたピアニストのモーリス・デュメニルによれば、
「序盤の三連符が厳密な拍子にならないよう」指摘されたそうです。
「全体として柔軟なテンポ」が重要で、
「始める前に2つのペダルを踏むことで、倍音が重なり合った瞬間に振動するように」とアドバイスしたとのこと。
さらに中間部については、
「左手のアルペジオをハープを演奏するように流動的に弾くように」演奏するよう注意したと言われています。
『月の光』の魅力が伝わる演奏動画
ここまで、『月の光』について簡単に解説してきました。
といっても、説明だけでは限界があります・・・。
そこで、実際に演奏を見ていただき、習得の参考にしてみてください!
自分が弾くイメージができますし、イメージが固まると、実際に難易度が下がる場合もあります。
表現の勉強にもなると思いますので、ぜひ参考にしてみてください。
You tuberのCANACANA familyさんの演奏。お手本ですね。
アメリカのピアニスト、シモーヌ・ディナースタインさんの演奏。
手が大きくない方の参考になると思います。
『月の光』解説まとめ
今回はドビュッシーのピアノ曲『月の光』について解説しました。
ピアノ学習者の方なら、いつかは弾いてみたい憧れの作品ですよね。
初心者の方には難しいかもしれませんが、
あきらめずに少しずつ練習すれば、必ず弾きこなせる曲でもあります。
自分のペースで、楽しみながら『月の光』を練習してみてくださいね!
その他ドビュッシー関連記事はコチラからどうぞ。
・第1曲「前奏曲」
・第2曲「メヌエット」
・第3曲「月の光」
・第4曲「パスピエ」