カプースチン「トッカティーナ」の難易度を超絶解説!作品の特徴は?

画像出典:アマゾン:ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番、カプースチン:8つの演奏会用練習曲(CD)

    この記事ではカプースチン「トッカティーナ」の難易度を解説します!

    ジャズとクラシックが奇跡的に融合した、一度聴いたら忘れられない独特な音楽を生み出したロシアの作曲家、ニコライ・カプースチン。

    彼の作品は、その魅力的なハーモニーとリズムで世界中のピアニストを魅了しています。
    近年、日本でもますます人気が高まっていますね!

    中でも「トッカティーナ」は、その華やかさと超絶技巧が要求される難易度から、多くのピアニストが挑戦する人気の高い作品です。

    この記事では、カプースチンの生涯と作品の特徴を掘り下げつつ、「トッカティーナ」の難易度を徹底的に解説します。

    さらに、演奏するための具体的なコツや、楽譜の紹介、そしてこの曲を学ぶことで得られるメリットについても詳しくご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

    筆者は3歳からピアノを開始。紆余曲折を経て、かれこれ30年以上ピアノに触れています。音大には行っておらず、哲学で修士号というナゾの人生です。

    カプースチンの生涯について

    出典:YouTubeCateen かてぃん様より:トッカティーナ

    難易度解説の前に・・・。
    いつものちょっとした寄り道を。カプースチンの生涯について紹介しますね。

    ニコライ・ギルシェヴィチ・カプースチンは、1937年11月17日にウクライナのゴルロフカで生まれました。幼少期からその音楽的才能は際立っており、モスクワ音楽院で伝説的なピアニスト、アレクサンドル・ゴリデンヴェイザーに師事し、クラシックの基礎を徹底的に学びました。

    当時のソビエト連邦では、ジャズは「退廃的な音楽」とされ、歓迎されない時代。

    しかし、カプースチンはそんな時代に屈することなく、自身の内なる音楽を追求し続けました。彼はジャズ・ピアニストとしても活動し、その卓越した即興演奏は多くの人々を魅了したといいます。

    そして、そのジャズへの深い愛情と、クラシックで培った作曲技法が見事に融合し、唯一無二の「ジャズ・クラシック」というジャンルを確立したのでした。

    2020年7月2日、82歳でこの世を去りましたが、彼の音楽は今もなお、世界中のピアニスト、そして音楽愛好家を魅了し続けています。

    カプースチンについては、こちらの記事で紹介していますので、ご一読ください。

    カプースチンの作品の特徴は?

    出典:YouTube

    カプースチンの音楽は、一度聴いたら忘れられない、本当に素敵な曲ばかり。そんな彼の作品が持つ、おもな特徴を見ていきましょう。

    クラシックとジャズの奇跡的な融合

    上述の通り、カプースチンの音楽は、クラシックの緻密な構造と、ジャズの自由奔放な精神が見事に融合しています。バッハのフーガのような対位法が突如としてスウィングのリズムに乗ったり、ショパンのようなロマンティックなメロディが複雑なジャズハーモニーで彩られたりします。

    超絶技巧とグルーヴの共存

    彼の作品は、ピアニストにとってまさに「指の限界への挑戦」となる超絶技巧が要求されます。目まぐるしいパッセージ、複雑な和音、そして左右の手がそれぞれ異なるリズムを刻むポリリズムの連続です。しかし、単なる技巧の披露に終わることはありません。まるで、クラシックの舞台で、最高のジャズバンドが即興演奏を繰り広げているかのような感覚を覚えるはず!

    リズムとハーモニーの宝庫

    カプースチンの音楽は、まさにリズムとハーモニーの万華鏡です。シンコペーション、ポリリズム、変拍子が縦横無尽に駆け巡り、聴き手を飽きさせません。そして、ジャズ特有のテンションコードや、洗練されたハーモニーが次々と現れ、聴く者に新鮮な驚きと感動を与えます。一聴すると複雑に聞こえるかもしれませんが、その根底には常に、心地よいノリと深い音楽性があるのが特徴です。

    トッカティーナとはどういう意味?

    さて、今回の主役である「トッカティーナ」ですが、そもそも「トッカティーナ」とは一体どのような意味なのでしょうか?

    「トッカティーナ(Toccatina)」は、イタリア語の「トッカータ(Toccata)」に、縮小辞「-ina」が付いた形です。「トッカータ」は「触れる」を意味する動詞「toccare」から派生しており、元々は鍵盤楽器の自由な形式による即興的な楽曲を指します。特に、速いパッセージや和音の連続など、演奏者の技巧を披露する要素が強いのが特徴です。

    そして、「-ina」が付くことで、「小さなトッカータ」や「愛らしいトッカータ」といったニュアンスが加わります。しかし、カプースチンの「トッカティーナ」は、「小さな」という言葉からは想像もつかないほど、その内容は濃密で、技巧的には全く「可愛らしい」というわけではありません。

    むしろ、そのタイトルとのギャップが、聴く者に強烈な印象を与えるのかもしれません。まさに、技巧とユーモアが同居するカプースチンらしいネーミングと言えるでし

    カプースチン「トッカティーナ」の難易度解説

    出典:YouTube

    ということで、本題です。
    カプースチンの「トッカティーナ」が、なぜこれほどまでに「超絶難易度」と評されるのか、その核心に迫っていきましょう。

    この曲は、作品番号36の第3曲として、「8つの演奏会用練習曲 作品40」の中の1曲として位置づけられています。演奏時間はおよそ2分程度と短いですが、その中に凝縮された情報量は非常に多く、高い技術が要求されます。

    まず、冒頭から怒涛の和音連打が襲いかかります。しかも、ただの和音ではありません。ジャズ特有のテンションコードが、まるで機関銃のように連発。指の瞬発力、そして正確な打鍵が求められます。

    次に、左右の手が異なるリズムを刻むポリリズムが頻繁に登場します。右手は軽快なジャズのリズムを刻みながら、左手は重厚なベースラインを奏でる、といった具合です。これが同時に、しかも高速で演奏されるため、非常に高い独立性と協調性が要求されます。独立した指の動きだけでなく、左右の脳の連携が試される部分です。

    そして、何よりも重要なのが「グルーヴ感」

    総合的に見て、「トッカティーナ」は、テクニック、リズム感、ハーモニーの理解、そしてジャズのノリという、ピアニストに求められる全ての要素が最高レベルで要求される楽曲と言えます。まさに、ピアニストの総合力を試される、極めてハードルの高い作品なのです。

    カプースチン「トッカティーナ」の演奏のコツ3つ

    出典:YouTube

    「トッカティーナ」に挑戦したいけれど、その難易度に不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。そんなあなたのために、この超絶技巧曲を攻略するための具体的なコツを5つご紹介します。

    1.徹底的なリズムトレーニングを!メトロノームは欠かせないパートナーです!

    この曲はリズムが命です!まずは楽譜通りにリズムを刻めるように、メトロノームを使って徹底的に練習しましょう。特にポリリズムの部分は、それぞれのパートをゆっくり、正確に練習し、徐々にテンポを上げていくのが鉄則です。最初は片手ずつ、次に両手でゆっくりと合わせ、最終的に目標のテンポでスムーズに演奏できるようになるまで、諦めずに反復練習を行ってください。

    2.ジャズの語法を体に染み込ませる!「聴く」も「弾く」もジャズ漬けに!

    カプースチンの音楽は、ジャズの語法なしには語れません。この曲を演奏する上で、ジャズ特有のシンコペーションやスウィング感を理解することは不可欠です。ジャズピアノの基礎的なボイシングやリズムパターンを学ぶのも良いでしょう。

    3.脱力と最小限の動きを極める!力みは禁物、軽やかさを追求しましょう!

    超絶技巧が要求される曲だからこそ、脱力が重要になります。力んで弾くと、すぐに疲れてしまい、速いパッセージは全く弾けません。指、手首、腕、そして肩まで、全身の力を抜き、必要最小限の動きで鍵盤を捉えることを意識しましょう。特に高速で連続する和音は、手首のスナップを効かせ、指の先で鍵盤を「掴む」ように弾くと、より軽やかに、そしてクリアなサウンドが出せるようになりますよ!

    カプースチン「トッカティーナ」を学ぶメリット

    「トッカティーナ」は非常に難易度の高い曲ですが、この曲に挑戦し、習得することで得られるメリットは計り知れません。

    • ジャズとクラシック双方の語法が身につく: カプースチンの音楽は、両ジャンルの要素が融合しているため、この曲を学ぶことで、クラシックの厳密な構造理解と、ジャズの自由なハーモニーやリズム感を同時に養うことができます。
    • リズム感が飛躍的に向上する: ポリリズムやシンコペーション、変拍子といった複雑なリズムパターンを正確に演奏する訓練は、あなたのリズム感を劇的に向上させるでしょう。
    • 高度なテクニックが習得できる: 連続する和音、高速なパッセージ、指の独立性など、この曲に要求される技術を習得することで、ピアニストとしての総合的なテクニックが飛躍的に向上します。
    • 音楽表現の幅が広がる: ジャズのグルーヴ感をクラシックの枠組みの中で表現する経験は、音楽表現の幅を大きく広げ、他の楽曲の演奏にも良い影響を与えるでしょう。

    カプースチン「トッカティーナ」の楽譜紹介

    「トッカティーナ」を演奏するなら、やはり信頼できる楽譜を手に入れることが大切です。ここでは、この素晴らしい作品に挑戦するための、おすすめの楽譜をご紹介します。

    カプースチンの作品は、主にドイツの【リンク】出版社から出版されていることが多いです。

    特に、「8つの演奏会用練習曲 作品40」の中に「トッカティーナ」は収められているため、この曲集を購入するのが最も効率的でしょう。楽譜は少し値が張るかもしれませんが、その価値は十分にあります。

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    インターネット上には、非公式な楽譜が出回っている場合もありますが、正確性や著作権の問題があるため、必ず正規の出版社から発行された楽譜をご購入いただくことをお勧めします。カプースチンの息吹を正確に感じ取るためにも、質の良い楽譜を手元に置くことが大切です。

    他のカプースチン作品も聴いてみよう!

    出典:YouTube:プレリュード
    出典:YouTube:ソナチネ
    出典:YouTube:ピアノ協奏曲第2番

    「トッカティーナ」を聴いてカプースチンの音楽に魅了された方は、ぜひ他の作品にも触れてみてください。彼の作品はどれも個性的で、新たな発見があるはずです。

    • ピアノソナタ第2番: 彼の代表的なソナタの一つで、ジャズの要素が色濃く反映されています。
    • 8つの演奏会用練習曲 作品40(トッカティーナを含む): この曲集には、様々な技巧が凝縮された練習曲が収められており、カプースチンのピアニスティックな魅力が存分に味わえます。

    これらの作品も、YouTubeなどで検索してぜひ聴いてみてください。カプースチンの奥深い音楽世界に、きっと引き込まれること間違いなしです!

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    カプースチン「トッカティーナ」に関するQ&A

    ここでは、カプースチン「トッカティーナ」に関してよくある質問にお答えします。

    カプースチンはなぜジャズとクラシックを融合させたのですか?

    カプースチンは幼少期からクラシック音楽の教育を受けましたが、同時にジャズ音楽にも深く魅了されていました。当時のソビエト連邦ではジャズはあまり歓迎されていませんでしたが、彼は自身の内なる音楽的探求心に従い、両ジャンルの要素を融合させることで、独自の音楽スタイルを確立しました。彼にとっては、ジャズの自由な精神とクラシックの形式美を組み合わせることが、最も自然な表現方法だったのです。

    「トッカティーナ」は何歳くらいから弾けますか?

    「トッカティーナ」は非常に高度なテクニックと音楽性が要求されるため、一般的にはピアノ学習者の中級後半から上級レベルの曲とされています。具体的な年齢というよりは、指の独立性、リズム感、和音の把握、そしてジャズの語法に対する理解がある程度身についていることが前提となります。

    この曲以外に、カプースチンでおすすめの入門曲はありますか?

    「トッカティーナ」は難易度が高いですが、カプースチンには比較的取り組みやすい作品もあります。例えば、「組曲「A Little Bit of Jazz」作品2」や、「ピアノソナタ第1番 作品4」の一部など、ジャズの要素を楽しみながら基礎的なテクニックを磨ける曲も存在します。まずは小品から始めて、徐々に彼の世界に慣れていくのも良いでしょう。

    カプースチン「トッカティーナ」の難易度解説|まとめ

    カプースチンが創り出した「トッカティーナ」は、単なる超絶技巧曲ではありません。そこには、クラシックへの敬意と、ジャズへの揺るぎない愛情が詰まっています。

    この曲に挑戦することは、ピアニストとしての技術だけでなく、音楽的な感性をも高める素晴らしい経験となるはずです!

    記事内容のポイント

    • ニコライ・カプースチンは、クラシックとジャズを融合させた唯一無二の作曲家です。
    • 彼の作品は、高度な技巧と強烈なグルーヴ感、そして予測不能な展開が魅力。
    • 「トッカティーナ」は「小さなトッカータ」を意味しますが、その内容は非常に濃密で超絶技巧が要求されます
    • 演奏のコツとしては、徹底的なリズム練習、ジャズの語法の習得、全身の脱力、指の独立性の強化、そして何よりも音楽を楽しむ心が重要です。
    • 「トッカティーナ」を学ぶことで、ジャズとクラシック双方の語法、リズム感、高度なテクニック、音楽表現の幅、そして達成感が得られます。

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