今回はチャイコフスキーの人気曲『弦楽セレナード』を紹介します。
クラシック初心者の方でも、スッと心に入る名曲なので、ぜひ参考にしてください。
「あれ?どっかで聴いたことあるぞ?」という方は、おそらく30代以降の方でしょう(笑)。
大胆な冒頭と美しいメロディ。
そして、チャイコフスキー特有の「憂い」が魅力の『弦楽セレナード』。
最後の方ではおすすめ名盤も紹介しますので(主観ですが)、
表現の違いを楽しんでみるのも良いかもしれませんよ!
『弦楽セレナード』の解説や魅力について
今回もいつもながらざっくり解説ですので、簡単な豆知識として参考にしてくださいね!
とはいえ、知っているだけでも少しクラシック音楽が楽しくなると思います。
そもそも「セレナード」ってなに?
『弦楽セレナード』の解説の前に、
そもそも「セレナード」ってどういう意味なのでしょうか?
調べてみると、セレナードとは、「夜に恋人のために窓の下で演奏する作品」なんだとか・・・。
また、セレナードはラテン語で「穏やかな」という意味だそうです。
その歴史は古く、中世やルネッサンスの時代にまでさかのぼります。
当時は、歌い手がリュートやギターを弾きながら歌うのが一般的だったようです。
セレナードには「こうでなければいけない」という形式がなく、自由なスタイルなのが 特徴です。
ちなみに、リュートはこんな感じの楽器です。
出典:wikipedia
改めて『弦楽セレナード』とは
セレナードについてざっくり解説したところで、
本題のチャイコフスキーの作品に戻りましょう。
本作は1880年、チャイコフスキーが40歳の時に作曲した『弦楽オーケストラ』のための作品です。そのため、管楽器とや打楽器は登場しません。
ある種「悲劇的」とも思わせる冒頭部分は、一度聴いたら忘れられなくなること間違いなしです。
全体的にものすごくロマンティックな作品ですが、
それはチャイコフスキーが生涯にわたって敬愛した、モーツァルトに対するオマージュとも言われています。
本作を作曲した当時、チャイコフスキーの私生活は結婚の失敗などで散々な状態でしたが、そうした負の連鎖を断ち切るかのように、わずか1ヶ月で作品を完成させました。
全4楽章構成で、演奏時間はおよそ35分です。
チャイコフスキーの生涯についてはこちら
初演は大成功
「初演が大コケ」というのがチャイコフスキーあるある。
しかし、1881年10月18日にサンクトペテルブルクで行われた初演は大成功を収め、
会場からは満場一致で、「ワルツのアンコール」が求められたのだどか。
初演を指揮した、エドゥアルド・ナープラニークも初演の反応について、
「好評で、満場一致の要求でワルツをアンコールした」と述べています。
この作品は、モスクワ音楽院就任時代からの友人でチェロ奏者のコンスタンチン・カールロヴィチ・アルブレヒトに献呈されました。
楽曲編成や聴きどころは?
楽曲編成や聴きどころを簡単に紹介します。
それほど詳しいことを知らなくても、大丈夫。
難しいことはひとまず無しにして、「あ〜そうなんだ」という感じで頭の片隅に入れておいてください。
弦楽セレナード第1楽章 Pezzo in Forma di sonatina; Andante non troppo – Allegro Moderato
「ソナチネ形式の小品」のタイトルが付けられた楽章です。
この楽章についてチャイコフスキーは「モーツァルトへのオマージュで、彼の様式の模倣を意図しています」と書き記しました。
雄大なロシアの大地を思わせる大胆なメロディーが特徴です。
弦楽セレナード第2楽章 Waltz; Moderato (Tempo di valse)
ロンド形式で作曲されたワルツです。
ワルツは「ズン・チャッ・チャッ」でお馴染みの3拍子です。
チャイコフスキーのワルツといえば「花のワルツ」が有名ですが、
こちらのワルツも聴いたことがある方も多いと思います。
ワルツらしい軽快で華やかな雰囲気が漂ってきますね。
弦楽セレナード第3楽章 Elegie; Larghetto elegiaco
「エレジー」と題された第3楽章。
「エレジー」とは日本語で「哀歌(あいか)」や「悲歌」と訳されています。
つまり、「もの悲しさ」がテーマです。
聴いてみて、美しさのなかにある種の「もの悲しさ」を感じませんか?
チャイコフスキーらしい抒情的雰囲気と、明快な旋律が魅力の楽章です。
弦楽セレナード第4楽章 Finale (Tema russo); Andante – Allegro con spirito
「ロシアの主題によるフィナーレ」というタイトルが付けられた楽章です。
その名の通り、「なんと緑の牧場のことよ」のテーマや「緑のリンゴ畑にて」といったロシア民謡が作品に散りばめられています。
チャイコフスキーの持つロマン派的要素とロシアの伝統的民謡が見事に融合した楽章です。
フィナーレらしく、心がワクワクするような展開も魅力です。
「弦楽セレナード』のおすすめ名盤3選
チャイコフスキーのロシア愛が凝縮された『弦楽セレナード』。
現在でもコンサートのレパートリーに取り上げられ、これまで多くの名盤が録音されてきました。
その中から、著書の独断と偏見により、おすすめ名盤を3選紹介します。
おすすめ名盤その1、カラヤン指揮 ベルリンフィルハーモニー管弦楽団
おすすめ名盤その2、小澤征爾指揮 サイトウ・キネン・オーケストラ
こちらはCDの内容と異なりますが、小澤征爾さんの指揮とチャイコフスキーの音楽ってもの凄く相性が良い気がします。迫力といい、音の鳴らし方とか。
おすすめ名盤その3、ジョン・バルビローリ指揮 ロンドン交響楽団
こちらもCDの録音とは違いますが、バルビローリ指揮による演奏です。
繊細でソフトなイメージが強いですね。
「痛切さ」が身に染みるような演奏です。
『弦楽セレナード』の解説まとめ
筆者の独断と偏見により、今回は『弦楽セレナード』を解説しました。
「他にも名曲あるだろ!」という声が聞こえてきそうですが・・・。
その他の作品はこちらで解説していますので、よろしければ併せてお読みください。
いつものように簡単解説でしたが、豆知識や入門として読んでいただけたら幸いです。