この記事では、ロッシーニの最後にして最高傑作オペラ『ウィリアム・テル』を紹介します。
タイトルはなんとなく聴いたことがあっても、
どんな作品なのかはご存知ない方が多いかもしれません。
意外かもしれませんがオペラ『ウィリアム・テル』の中には、
日本人なら誰でも一度は聴いたことがある作品が含まれています。
この記事を読んでいただければ、「ウィリアム・テル」についてざっくりと知れますので、
ぜひ最後まで気軽にご一読ください。
なお、ロッシーニの生涯やエピソードについてはこちらの記事で紹介しています。
併せてお読みいただくことで、より教養が高まりますよ!
ロッシーニの最高傑作「ウィリアム・テル」について
現在でも高い人気を誇るロッシーニのオペラ「ウィリアム・テル」。
なかなか全編を通してみる機会はないと思いますが、
その歴史的背景や影響などを知ると、きっと観たくなること間違いなしです。
今回は細かいことや難しいことは抜きにして、
どうぞ気軽に読んでみてください。
ロッシーニと「ウィリアム・テル」
ジョアキーノ・ロッシーニ(1792-1868)は、イタリアが誇る天才作曲家です。
彼の最後のオペラ作品である『ウィリアム・テル』は、
多くの音楽評論家や愛好家から最高傑作と称されています。
1829年8月3日、パリの王立音楽アカデミー劇場で初演された本作は、
ロッシーニの創作の集大成であり、同時にロマン主義的グランド・オペラの幕開けを告げる記念碑的作品となりました。
リブレット(台本)がフランス語で書かれているため、
本来のタイトルはそれに倣って『ギヨーム・テル』が正しいですが、
日本では「ウィリアム・テル」と呼ぶのが一般的です。
壮大なスケールと自由への渇望
「ウィリアム・テル」は、フリードリヒ・シラーの戯曲『ヴィルヘルム・テル』を原作としています。
4幕構成のこのグランド・オペラは、自由を希求する民衆の闘いを壮大なスケールで描いおり、スイスの英雄ウィリアム・テルの物語を通じて、ロッシーニは人間の尊厳と自由への渇望を音楽で表現しました。
ちなみに、シラーはベートーヴェンの「第9」の歌詞でも有名ですね。
豊かな音楽性と革新的な要素
ロッシーニは、この作品の作曲に5ヶ月もの時間をかけました。
通常は速筆で知られる彼が、これほどの時間をかけたことからも、
この作品への思い入れがうかがえます。
また、「ウィリアム・テル」には、大合唱やバレエなどの多彩なスペクタクル要素が盛り込まれており、音楽的にも非常に豊かな内容が魅力です。
有名な序曲
「ウィリアム・テル」の序曲は、オペラ全体の人気以上に広く知られています。
特に第4部の「スイス軍隊の行進」は、多くの人々に親しまれているメロディです。
この序曲は「夜明け」「嵐」「静寂」そして「軍隊の行進」という4つの部分から構成され、
それぞれが切れ目なく次の楽節に移っていきます。
切れ目なく演奏することを「アタッカ」と言います。
特に「軍隊の更新」は運動会での定番曲であり、
同時にさまざまなメディアで使用されています。
「ウィリアム・テル」の歴史的意義
グランド・オペラの代表作
「ウィリアム・テル」は、パリ・オペラ座との契約によるグランド・オペラの代表作です。
そして本作は、オベールの『ポルティチの唖娘』(1828年)に続く、
グランド・オペラの第2作として位置づけられています。
ロマン主義オペラの先駆け「ウィリアム・テル」
興味深いことに、本質的には古典派であったロッシーニが、
この作品でロマン主義的な要素を取り入れました。
「ウィリアム・テル」の音楽に表された情景は十分にロマンティックであり、
皮肉にもフランスのグランド・オペラの典型を示す作品となったわけです。
世界各地での上演
「ウィリアム・テル」は、初演後、世界各地で上演されました。
1831年9月19日にはニューヨークで英語版が上演され、
1839年7月11日にはロンドンのハー・マジェスティーズ劇場でオリジナルのフランス語版が上演されました。
パリ・オペラ座では、1932年まで不可欠な演目であり続け、
1868年2月には500回の記念上演が行われています。
政治的影響と検閲
イタリアでは、「ウィリアム・テル」は政治的な理由で上演が制限されることがありました。
権力に抵抗する革命的な人物を賞賛しているという理由で、
イタリアの検閲官との摩擦が生じたのです。
一方、ウィーンでは1830年から1907年にかけて422回もの公演が行われ、大きな人気を博しました。
「ウィリアム・テル」の現代における評価と課題は?
技術的難度と上演の課題
「ウィリアム・テル」は、その音楽的な素晴らしさにもかかわらず、現在ではオペラ全編が上演されることは比較的少ないです。
テノールパートの高音や、約4時間に及ぶ長大な上演時間が、その理由として挙げられます。
上演される場合も、かなりの量をカットすることが多いのが現状です。
芸術的価値と影響力
しかし、「ウィリアム・テル」の芸術的価値は今なお高く評価されています。
その序曲は、映画『時計じかけのオレンジ』や『大英雄』などで使用され、
ショスタコーヴィチやヨハン・シュトラウス1世といった後世の作曲家たちにも影響を与えました。
また、ピアニストのフランツ・リストによるピアノ独奏用編曲版も有名です。
こちらがリストのピアノ版👇。よっぽど気に入っていたのですね。
ちなみに、激ムズに該当します。
ロッシーニの遺産として
「ウィリアム・テル」はロッシーニの創作活動の集大成であり、
オペラ史上に燦然と輝く傑作です。
その音楽的な豊かさ、革命的な題材、そして技巧的な難しさは、
今なお音楽家たちに挑戦と刺激を与え続けています。
ロッシーニがこの作品を最後に30年以上の引退生活に入ったことも、
「ウィリアム・テル」が彼の最高傑作であることを物語っているかもしれません。
オペラ愛好家だけでなく、音楽を愛するすべての人々にとって、「ウィリアム・テル」は聴き続けるべき永遠の名作と言えるでしょう。
「ウィリアム・テル」のピアノ版の難易度は?
ピアノ学習者の方の中には、「ウィリアム・テル序曲をピアノで!」という方もいらっしゃるかもしれません。
とはいえ、気になるのはその難易度。
せっかく楽譜を購入しても、現在の実力と程遠かったら残念ですよね。
結論から言うと、
ロッシーニ本人はピアノ版にアレンジしていないため、
オリジナルの楽譜はありません・・・(残念)。
でもその分、初心者にも優しいアレンジや上級者向けのアレンジなど、
さまざまあるようです。
さすがに、上で紹介したリストのアレンジを演奏できる人は少ないかもですが・・・。
連弾用の日本語版楽譜も出版されていますが、
レベルとしては「上級者向け」かなと思います。
上級者向けはちょっと・・・。
という方は、ヤマハのプリント楽譜で初級から中級版の楽譜が手に入るようです。
もしよろしければ、ご参考までに。👇 👇 👇
ロッシーニの最高傑作『ウィリアム・テル』まとめ
グランド・オペラ初期を代表する『ウィリアム・テル』について解説しました。
今回の記事を参考に「オペラも聴いてみよかな」と少しでも思っていただければ嬉しいです。
とはいえ、なかなかハードルが高いですよね。
なので、まずは「序曲」から聴いていただき、ロッシーニの作品に親しんでみてはいかがでしょうか。
5幕(または4幕)仕立てで、劇的な題材、歴史的な興味、多彩なスペクタクル要素、異国情緒が含まれているのがグランド・オペラの基本条件です。