ラヴェル「水の戯れ」の難易度を簡単に解説!

ラヴェル
出典:アマゾン:ラヴェル:ピアノ作品全集

    この記事では、ラヴェルの代表曲「水の戯れ」の難易度について解説しています。

    ピアノから紡ぎ出される、キラキラとした水の輝き、しぶき、そして流れ…。
    モーリス・ラヴェル作曲の「水の戯れ」は、その美しい描写と革新的なピアノ書法で、多くのピアニストにとって憧れの作品となっています。

    しかし同時に、難易度激ムズの作品としても知られています。

    • 「いつかは弾いてみたいけれど、ラヴェルの水の戯れって、実際どれくらい難しいの?」
    • 「ピアノ中級レベルの自分でも、いつか挑戦できる可能性はある?」

    この記事では、そんな疑問を持つピアノ学習者の皆さまに向けて、ラヴェル「水の戯れ」の難易度について、具体的なレベル、難しいとされる理由、そして挑戦するためのヒントを分かりやすく解説していきます。

    参考動画や楽譜も紹介していますので、ぜひ最後まで読んでくださいね!

    筆者は3歳からピアノを開始。以来、30年ほどピアノを続けています(音大には行っていません)。

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    ラヴェル「水の戯れ」- 作品の基本情報

    出典:YouTube

    難易度解説に入る前に、まずは、この魅力的な作品の基本的な情報を見ていきましょう。
    ざっくりと以下の3つのポイントを解説しますね。

    作曲家モーリス・ラヴェルについて
    「水の戯れ」作曲の背景とインスピレーション
    印象主義音楽としての「ラヴェル 水の戯れ」の特徴

    1つずつ見ていきましょう。

    作曲家モーリス・ラヴェルについて

    モーリス・ラヴェル(1875-1937)は、クロード・ドビュッシーと並び称されるフランス近代音楽を代表する作曲家です。精緻な書法、洗練された和声、そして管弦楽法の巧みさで知られ、「ボレロ」や「亡き王女のためのパヴァーヌ」など、数多くの名作を残しました。
    「水の戯れ」は、彼の初期のピアノ作品であり、印象主義の始まりとも言える作品です。

    ラヴェルは編曲家としても活躍し、その精巧なアレンジスタイルから「スイスの時計師」と称されました。なかでも、ムソルグスキー「展覧会の絵」のオーケストラ版が特に有名ですね。

    ラヴェルについての詳しい解説はこちらから。

    ボレロ

    「水の戯れ」作曲の背景とインスピレーション

    「水の戯れ」は1901年に作曲され、ラヴェルが師事したガブリエル・フォーレに献呈されました。ラヴェル本人によると、リストの「エステ荘の噴水」に触発されたととのこと。
    通りで難しいわけだ・・・。

    1902年に「亡き王女のためのパヴァーヌ」と共に初演されています。

    楽譜の冒頭には、フランスの詩人アンリ・ド・レニエの詩の一節「水にくすぐられて笑う河の神」が引用されており、水が持つ生命感や躍動感を表現しようとしたラヴェルの意図がうかがえます。

    リスト「エステ荘の噴水」:出典YouTube

    印象主義音楽としての「水の戯れ」の特徴

    「水の戯れ」は、後のドビュッシーのピアノ作品に先駆けて、ピアノによる印象主義的な表現の可能性を大きく切り開いた画期的な作品とされています。

    高速で煌めくようなアルペジオ、グリッサンド(滑らせるように弾く奏法)、複雑な和声進行などを駆使し、光を受けて輝く水面の様子を描いた表現技法は、当時としては革新的技法であったと言えるでしょう。

    とはいえ、発表当時はサン=サーンスといった作曲家から酷評を受けたそうです。

    ラヴェル「水の戯れ」の難易度はどのくらい?

    出典:YouTube

    ということで、「水の戯れ」難易度解説といきましょう。
    結論から言うと、その難易度は「上級者向け」
    それもかなり高いレベルに位置づけられます。

    筆者はショパンのエチュードを数曲弾きますが、それでも及ばないです・・・。

    一般的なピアノ曲難易度評価における「水の戯れ」の位置づけ

    多くのピアノ曲難易度評価において、「水の戯れ」は最高ランクまたはそれに準ずるレベルに分類されています。

    • 全音ピアノピース: F(上級上)
    • ピティナ・ピアノ曲事典: 特級 (Grade Superior)
    • ヘンレ社(ドイツ): 9 (最高ランク)

    これらの評価からも、専門的な訓練を積んだ上級者向けの作品であることが分かります。
    なので、ピアノ中級レベルの方がすぐに取り組める難易度ではないかなと。

    全音ではFランク(上級上)となっていますが、その中でも結構幅があります。
    個人的にはFの中でも上位くらいに思っています。

    他の有名難曲との比較(ドビュッシー「水の反映」含む)

    他の有名な難曲と比較すると、その難易度のイメージが掴みやすいかもしれません。
    ショパンの「英雄ポロネーズ」やリストの「ラ・カンパネラ」などと同等か、それ以上の難易度と感じる人も多いかなと。

    特に、同じく「水」を描写した印象主義の傑作、ドビュッシーの「水の反映」(『映像』第1集より)と比較されることがよくあるようです。

    どちらも非常に高い難易度を誇る上級作品ですが、難しさの質に違いがある気がしています。
    たとえばこんな感じです。

    • ラヴェル「水の戯れ」: 指の独立性、高速なパッセージの明瞭さ、リズムの正確さ、技巧的な輝きが特に要求される傾向があります。構造的な緻密さが特徴。
    • ドビュッシー「水の反映」: 豊かな響き、繊細な音色のコントロール、絶妙なペダリング、雰囲気の表現がより重視される傾向があります。掴みどころのない浮遊感を出す難易度があります。

    どちらも最高レベルの技術と深い音楽理解が必要ですが、「水の戯れ」の難易度は、特にメカニカルな正確性と輝かしい技巧性に重点が置かれていると言えるかもしれません。

    ゆらぎの美しい作品ですが、ラヴェルは「テンポ、リズムも一定なのが望ましい」と述べていいます。

    なぜ難しい?ラヴェル「水の戯れ」の具体的な難所を徹底分析

    出典:YouTube

    「水の戯れ」が激ムズである理由を具体的に見てみましょう。
    筆者自身の体験から気がついたことをまとめました。

    技術的な難しさ

    • 高速で複雑なアルペジオとパッセージ: 曲全体を通して、指を大きく広げたり、素早く移動させたりする必要がある複雑なアルペジオが絶え間なく現れます。これらを均一かつ軽やかに、そして指定された速度で弾くには、高度な指の技術とコントロールが必要。
    • 精密なコントロールが要求される両手のコンビネーション: 左右の手がそれぞれ異なる複雑なリズムや動きをすることが多く、それらを正確に組み合わせる難易度が高いです。
      両手が鍵盤上で交差したり、狭い範囲で絡み合ったりします。
    • 特殊な奏法: 効果的に使われるグリッサンド(黒鍵を含むものもあり難しい)、繊細な同音連打(トレモロ)、正確な位置への跳躍などが随所に現れ、特別な練習が不可欠です。
    • 複雑なリズムと拍子の変化: 見かけ以上にリズムが複雑で、シンコペーション(リズムをずらすこと)や一時的な拍子の変更などが多く、リズム感を正確に保つのも難易度を上げる要因です。

    参照|岐阜大学|ソナタ形式としてのラヴェル<水の戯れ>より

    表現上の難しさ

    技術的な課題に加えて、豊かな表現も必須!!

    • 水のきらめきや流れを表現する繊細なタッチと音色の変化: ただ音符を並べるだけでなく、水が光を受けて輝く様子や、滑らかな流れ、激しいしぶきなどを、タッチのニュアンスや音色の変化で表現する必要も。
    • 幅広いダイナミクス(pppからffまで)の表現: ピアニッシッシモ(ppp、極めて弱く)からフォルティッシモ(ff、極めて強く)まで、幅広い音量の変化を滑らかに。特に弱い音でのコントロールは難易度が高いと思います。
    • 絶妙なペダリング技術: 響きを豊かにしつつも、決して音が濁らないように、ペダルの踏み替えのタイミングや深さが、曲の透明感や色彩感を大きく左右します。
    • 複数の声部(メロディ、伴奏、装飾)の弾き分け: 複雑な音の層の中から、主旋律、内声、装飾的なパッセージなどを明確に聴き手に届けられるように、各声部のバランスをコントロールする難易度があります。

    ピアノ中級者がラヴェル「水の戯れ」に挑戦するには?

    出典:YouTube

    「水の戯れ」がいかに激ムズ曲か、お分かりいただけたのではないでしょうか。
    では、ピアノ中級レベルの方がこの曲に挑戦することは不可能なのか考察します。

    正直なところ、一般的な中級レベルから、いきなり「水の戯れ」全曲に挑戦するのは無理です。
    それくらいの激ムズピアノ曲だと言っても言い過ぎではないと思います。

    挑戦に必要なスキルレベルの目安

    経験上、最低限でも以下のレベルの曲がなんなく弾けるのがマストです。
    とはいえ、冒頭でもお伝えした通り筆者は弾けません・・・。

    • ショパンのエチュードが数曲弾ける
    • バッハのシンフォニアやイタリア協奏曲など(複数の声部を弾き分ける能力)
    • ツェルニー40番練習曲やそれに準ずる技術練習の経験
    • ドビュッシーの「アラベスク」や「前奏曲集」の一部など、高度な印象派の作品に触れている経験

    もちろん、これはあくまで目安であり、指の独立性、脱力奏法、豊かな表現力、譜読みの速さなど、総合的なピアノ演奏能力が必要です。

    部分練習やステップアップの提案

    それでも「水の戯れ」の世界に触れてみたい、という場合は、いきなり全曲を目指すのではなく、以下のようなアプローチを検討してみてください。

    • 部分練習: 特に気に入った部分や、比較的取り組みやすそうな短いフレーズを抜き出して練習してみる。ただし、部分的に見ても難易度は高いです。
    • ラヴェルの他の作品から: まずはラヴェルの他の、より難易度の低い作品(例:「ソナチネ」の第1楽章など)に挑戦し、ラヴェルの語法に慣れる。
    • 基礎力の徹底: ショパンリストのエチュード、バッハの作品などを通して、指の技術、表現力、読譜力といったピアノ演奏の基礎を地道に、かつ着実に向上させることが、遠回りに見えて最も確実な道です。

    焦らず、超長期的な目標として「水の戯れ」を据え、日々の基礎練習を大切にすることが重要です。

    ラヴェル「水の戯れ」を弾くために – 効果的な練習方法と心構え

    出典:YouTube

    将来的に「水の戯れ」に挑戦する段階になった場合、以下の点を意識すると良いと思います。

    譜読み、部分練習、表現の追求

    • 丁寧な譜読み: 複雑な和音やリズムを正確に読み取ることから始めます。
      ゆっくり、片手ずつ確認しましょう。
    • 効果的な部分練習: 難しい箇所は数小節単位に区切り、テンポを落として完全に弾けるようになるまで繰り返します。リズム練習や、様々なアーティキュレーション(音の出し方)を試すのも有効です。
    • 表現の探求: 楽譜に書かれた指示(強弱、速度、表情など)を注意深く読み取り、作曲者の意図を考えます。優れたピアニストの演奏を参考にしつつ、自分なりの水のイメージを持って音色やタッチを工夫します。ペダリングの研究も不可欠です。

    長期的な視点

    「水の戯れ」の難易度を考えると、習得には非常に長い時間がかかります。
    プロのピアニストでさえ、レパートリーとして維持するには継続的な努力が必要です。
    焦らず、根気強く取り組む姿勢と、何よりもこの曲への愛情が大切かもしれません。

    ラヴェル「水の戯れ」のおすすめ楽譜

    学習や鑑賞の助けとなるおすすめ楽譜を紹介します。
    「いつか弾いてみたい!」という方はぜひ参考にしてください!

    全音版

    ラヴェル ピアノ作品全集 第1巻

    わかりやすい解説付きなので、迷ったらこの1冊。収録曲も豊富なので、段階的に取り組めます。

    全音ピアノピース

    水の戯れ/ラヴェル

    「とりあえず1曲だけ」という方はこれ1択です。

    ヘンレ版

    水の戯れ/ヘンレ社/原典版

    原典版として定評があり、見やすいレイアウトも特徴です。

    まとめ:ラヴェル「水の戯れ」の難易度を理解し、目標設定に活かそう

    この記事では、ラヴェル「水の戯れ」の難易度について詳しく解説してきました。

    • 「水の戯れ」は、各種難易度評価で最高ランクに位置づけられる上級者向けの難曲である。
    • その難易度は、高速なアルペジオ、複雑な両手の動き、特殊奏法といった技術的な要求と、繊細な音色、ダイナミクス、ペダリングといった表現上の要求の両面から来ている。
    • ドビュッシー「水の反映」と比較しても、同等レベルの難易度だが、難しさの質に違いがある。
    • ピアノ中級者が挑戦するには相当な準備が必要であり、長期的な目標として据えるのが現実的。
    • 挑戦するには、基礎技術の着実な向上が不可欠。

    いつかこの美しくも挑戦的な「水の戯れ」を自分の指で奏でる日を夢見て、日々の練習に励んでいただければ幸いです。