この記事では「フィンランディア」と「クレルヴォ交響曲」を解説しています。
前回・前々回の記事は読んでいただけました?シベリウスの生涯やおすすめ曲について「ザックリ」と解説していますので、まだ読まれていない方はぜひそちらもお読みください。
前回の記事はこちらから!!
ということで、シベリウスシリーズ最後となる今回は、シベリウスをもっとも代表する「クレルヴオ交響曲」と「フィンランディア」を紹介します。
とくに「フィンランディア」はクラシック史上に残る名曲なので、これを機会にぜひ覚えておいてください。
交響詩「フィンランディア」とは
シベリウスをもっとも代表する作品「フィンランディア」について解説します。
フィンランドでは「第2の国歌」としてフィンランド国民に大切にされている作品です。
帝政ロシアによる圧政の中で作曲された「フィンランディア」
交響詩「フィンランディア」は、1899年、シベリウスが34歳の頃に作曲された作品です。
シベリウスの作品としては「交響曲第2番」と並び、もっとも人気のある作品といえるでしょう。
「フィンランディア」が作曲された当時、フィンランドは帝政ロシアによる圧政に苦しめられていた時代でした。
そんな社会情勢のなか、フィンランドではロシアからの独立運動の機運が高まり、そうしたフィンランド国民の独立精神を鼓舞する役割を果たしたのが「フィンランディア」です。
しかし「フィンランディア」があまりにもフィンランド国民の愛国心を奮い立たせたため、それを恐れたロシア帝国は、一時期演奏を禁止したほどでした。
フィンランドがロシアから独立を果たしたのは、作品発表から17年が過ぎた1917年ですが、この作品がフィンランド国民の背中を後押ししたことは間違いないでしょう。
フィンランディアは最初は劇付随音楽だった
現在では交響詩として単独で演奏される作品ですが、発表当初は劇付随音楽の1つでした。
当時、ロシアの圧政に反発した青年フィンランド党は、党の新聞のために「新聞の日」の祝賀会を計画します。
その祝賀会で発表された「歴史的情景」という劇の伴奏曲をシベリウスが作曲し、その最後の1曲が「フィンランドは目覚める」という作品だったのです。劇では叙事詩『カレワラ』からのフィンランドの様々な歴史的場面が描かれています。発表された作品は次の通り。
1、前奏曲
2、ワイナミョイネンの歌
3、ヘンリク司教によってフィン人が洗礼を受ける
4、ヨハン公の宮廷からの一場面
5、30年戦争におけるフィン人
6、憤怒
7、フィンランドは目覚める
初演の指揮はシベリウス自身が担当し、大盛況のうちに幕を閉じたと言われています。
そしてシベリウスは1900年に「フィンランドは目覚める」の改訂版を作り、作品名も「フィンランディア」に変更されました。
フィンランディアの構成
全体の演奏時間は7〜8分程度の短い交響詩ですが、作品は2つの序奏を持つ3部形式となっています。
序奏A→序奏B→形式A・B・A
序奏Aは金管楽器による重いメロディで始まり、ロシアの圧政に苦しめられるフィンランドの人々の苦悩を表現しています。
この「苦悩のモチーフ」はとてもインパクトが強く、印象的な始まりです。
序奏B、ティンパニのトレモロと金管楽器よる「闘争の呼びかけ」のモチーフが始まります。
形式A・B・A部分、曲調は一変して快活なものに。ロシアとの戦いに勝利する輝かしい未来が表現されています。中間部は「フィンランディア讃歌」と名付けられた美しい合唱が入ることも。
フィンランディア讃歌の歌詞(対訳)
調べてみたらフィンランディア讃歌の対訳もあったので載せておきます。
おお、スオミ
フィンランディア讃歌歌詞1
あなたの日は近づいている
夜の脅威は既に消え去り
そして輝いた朝にヒバリは歌う
それはまるで天空の音楽のよう
夜の支配に朝の光が既に勝ち
あなたの夜明けが来る 祖国よ
おお立てスオミよ 高く上げよ
フィンランディア讃歌歌詞2
偉大な歴史の花で飾られた頭を
おお立てスオミよ あなたは世界に示した
支配(隷属)を追い出し
弾圧に屈しなかった
朝がはじまる 祖国よ
クレルヴォ交響曲について
クレルヴォ交響曲はシベリウス初期を代表する合唱付き交響曲です。こちらの作品でもシベリウスの強い愛国心が表現されています。
愛国的題材をもとに作曲
クレルヴォ交響曲は、1982年、シベリウスが27歳で作曲した交響曲です。
現在では「クレルヴォ交響曲」の呼称が一般的ですが、シベリウスは交響曲として作曲した意識はなく、題名に「独唱者と合唱、管弦楽のための交響詩」と添えられていることから考えて、交響詩「クレルヴォ」が正式名称に近いでしょう。
しかし「楽章構成になっている」ことから、便宜的に「交響曲」と呼ばれています。
交響詩とは民族的なテーマや伝説、詩などを題材にした形式自由な作品のことです。
この作品は、シベリウスがオーストリア留学中に聴いたロベルト・カヤヌスの「アイノ交響曲」に感銘を受けて作曲されました。
シベリウスが「アイノ交響曲」のどこに感銘を受けたかというと、作品「愛国的」だったからです。
フィンランド国民の愛国心を奮い立たせる作品を作曲したいと考えていたシベリウスは、すぐさま作曲に取り掛かります。
そしてフィンランドの叙事詩『カレワラ』を題材とした管弦楽曲に取り組み、のちに「クレルヴォ交響曲」として完成しました。
当初は、50のテーマを作曲予定でしたが、知人のアドバイスにより、作品を絞り込み、『カレワラ』第35章から36章の「クレルヴォの物語」が採用されました。
楽曲構成
1892年、シベリウス自身の指揮により初演され大成功を収めました。
演奏時間は交響詩としては比較的長い70分〜80分程度です。第3楽章には男女独唱と男性合唱が含まれます。
各楽章のテーマと形式は以下通りです。
第1楽章・・・導入部、自由なソナタ形式
第2楽章・・・「クレルヴォの青春」管弦楽のみのロンド形式、A-B-A-B-Aの構造
第3楽章・・・「クレルヴォとその妹」男女独唱と男性合唱が含まれており、クレルヴォの恋と妹の死が表現 されています
第4楽章・・・「クレルヴォの出征」スケルツォを用いた激しい音楽的展開です
第5楽章・・・「クレルヴォの死」クレルヴォの死が歌われます。歌詞は『カレワラ』第36章から転用されています。
楽器構成について
一般的なオーケストレーションにソプラノ・バリトン独唱と男性合唱が追加されています。
- フルート(2)
- オーボエ(3)
- クラリネット(2)
- ファゴット(2)
- ホルン(4)
- トランペット(3)
- トロンボーン(3)
- テューバ
- ティンパニ
- トライアングル
- シンバル
- 弦五部
まとめ
いかがでしたか?今回はフィンランド国民にとっての第2の愛国歌「フィンランディア」と「クレルヴォ交響曲」を紹介しました。前回から少し間が空いてしまいましたが、ぼちぼち着々とひしひしと(?)書いていきたいと思います。
シベリウス編第1回にも書いたかもしれませんが、
とりあえず「シベリウスって作曲家がいたのね〜」と思っていただければ十分です!
僕も知らない作品が山のようにあるので、書いているこちらも勉強になっています。
さてさて、次の作曲家は誰にしようか・・・。