プーランク「エディット・ピアフを讃えて」の難易度を徹底解説!【無料楽譜あり】

    この記事ではプーランク作曲「エディット・ピアフを讃えて」のピアノ難易度を解説します。

    本作は、プーランクのピアノ曲の中でも、特に多くのピアニストを魅了し、そして同時に挑戦心を掻き立てる一曲。フランスが生んだ不世出の歌姫、エディット・ピアフへの深い敬意と愛情を込めて書かれました。

    この記事では、「エディット・ピアフを讃えて」の具体的な難易度に焦点を当て、なぜ多難易度が高い理由や、具体的な練習法やコツを詳しく解説します。

    「この曲の難易度が知りたい」「挑戦したいけど、どれくらい難易度が高いの?」といった疑問をお持ちのあなたに、きっと役立つ情報をお届けできるはずです。

    この記事でわかること

    • 作曲者フランシス・プーランクについて
    • エディット・ピアフとは?
    • エディット・ピアフを讃えて」のピアノ難易度
    • 難易度克服のための練習法とコツ
    • おすすめ楽譜

    各見出し下に演奏動画も紹介していますので、そちらも参考にしてください!

    筆者は3歳からピアノを開始。紆余曲折を経て、かれこれ30年以上ピアノに触れています(音大には行ってません)。

    作曲者フランシス・プーランクについて

    出典:YouTube:銀ちゃんねる様より

    フランシス・プーランク(Francis Poulenc, 1899-1963)は、20世紀フランスを代表する作曲家の一人です。エリック・サティの影響を受け、「フランス六人組」の一員として活躍しました。

    彼の音楽は、明快で親しみやすいメロディー、洗練されたハーモニー、そして洒脱なリズムが特徴です。

    プーランクは、難解さを避け、聴き手の心に直接語りかけるような、ユーモアと哀愁が同居する独自のスタイルを確立しました。

    ピアノ曲、歌曲、室内楽、オペラ、宗教音楽など幅広いジャンルで傑作を残し、「エディット・ピアフを讃えて」を含む「15の即興曲」は、彼のピアノ作品の中でも特に名作と言えるでしょう。ピアフへのオマージュであるこの曲にも、プーランクらしい叙情性と軽妙さが随所に表れています。

    この作品だけでなく、即興曲全体で聴いてみてください!

    フランス6人組について

    20世紀初期にフランスで活動した音楽家グループ。エリック・サティを中心に、若手音楽家が終結しました。メンバーには以下の人物がいます。

    • ルイ・デュレ(1888-1979)
    • アルテュール・オネゲル(1892-1955)ダリウス・ミヨー(1892-1974)
    • ジェルメーヌ・タイユフェール(1892-1963)
    • ジョルジュ・オーリック(1899-1963)
    • フランシス・プーランク(1899-1983)

    ピカソやジョルジュ・ブラックといった、気鋭の芸術家とのコラボ作品を発表するなど、新たな表現方法を発表しました。

    とはいえ、6人での共同作品は「6人組のアルバム」のみです。

    歌声が魂を揺さぶるエディット・ピアフとは?その魅力が楽曲の難易度にも影響?

    出典:YouTube

    「愛の讃歌」「ばら色の人生」など、数々の名曲を世に送り出したエディット・ピアフ(Édith Piaf, 1915-1963)。

    とくに「愛の讃歌」は絶対に一度は聴いたことがある名曲です。
    パリの貧困街で生まれ、路上で歌い始めた彼女の歌声は、力強く、哀愁に満ち、そしてどこまでも情熱的でした。即興的で自由なフレージング、感情の赴くままに揺れるテンポ(アガンム)、そして言葉の一つ一つに込められた深い感情表現は、聴衆を惹きつけて離しませんでした。

    ピアフとは彼女の愛称で、「小さなすずめ」を意味します。

    1963年にプーランクがこの世を去ると、同年10月に癌により死去。二人の友人だった詩人ジャン・コクトーは、ピアフの訃報を聞いたその日に、心臓発作でこの世を去りました。

    プーランク「エディット・ピアフを讃えて」はどんな曲?作品の概要

    「エディット・ピアフを讃えて」は、フランシス・プーランクが作曲した「15の即興曲 FP.176」の第15曲、終曲にあたります。1959年に作曲され、プーランクの晩年を飾る重要なピアノ作品の一つです。

    この曲は、ピアフの代表曲「愛の讃歌」のメロディーを直接用いているわけではありませんが、ピアフの歌声や雰囲気を彷彿とさせるような、哀愁と情熱、そして軽妙さが入り混じった独特の世界観を持っています。

    変奏曲形式に近い構成で、短いモチーフが様々な形で展開。
    プーランクらしい明快な響きの中に、どこか物悲しさや人間の機微が感じられるのは、まさにピアフという人物へのオマージュだからこそでしょう。

    技巧的なパッセージと叙情的なメロディーが対比され、聴き手を飽きさせない魅力に溢れています。

    ちなみに、即興曲12番は「シューベルトを讃えて」と題されています。

    プーランク「エディット・ピアフを讃えて」の難易度を徹底分析!

    出典:YouTube

    前置きが少し長くなりました。
    この曲の難易度について、具体的に見ていきましょう。
    結論から言うと、プーランク「エディット・ピアフを讃えて」は、ピアノ曲としてはかなり難易度が高い部類に入ります。

    念のため、全音ピアノピースを見てみると、難易度「E」(上級)に分類されていました。
    これは、例えばショパンの「幻想即興曲」や、ベートーヴェンの「テンペスト」、リスト「ため息」などとどうレベルです。

    全音の難易度分類には賛否両論ありますが、いずれにしても「簡単ではない(技術的に)」曲であることは確かです。

    個人的には、「D」の上級レベルという感じもしないでもないですが・・・。
    どんな点が難しいのか、次に解説します。

    技術的な難しさ:指と体のコントロールが試される

    1. 高速かつ不規則な右手パッセージ: この曲には、細かい音符が非常に速いテンポで連続するパッセージが頻繁に登場します。単に速く指を動かすだけでなく、音の粒を均一に保ち、かつプーランク特有の軽やかさや推進力を出す必要があります。特に、規則的なスケールやアルペジオとは異なり、予測しにくい音型や跳躍が含まれるため、指の独立性、正確性、そして持久力が徹底的に鍛えられます。
    2. 複雑なリズムと両手の連携: シンコペーションやポリリズム(異なるリズムが同時に進行する)が多用されており、楽譜通りに正確なリズムを刻むのが難しい箇所が多いのも特徴。さらに、右手と左手が全く異なるリズムや動きをすることが頻繁にあり、両手の独立性を保ちながらも、全体として一つの音楽の流れを作り出す高度な連携能力が不可欠です。
    3. 広い音域を使った跳躍とペダリング: 左手は特に、広い音域を素早く移動する跳躍が頻繁に登場します。正確な距離感を掴み、素早く次の音に移動する技術が必要です。また、プーランクの音楽ではペダリングが非常に重要ですが、この曲では響きを豊かにしつつも、速いパッセージや複雑な和音が濁らないようにコントロールするのが演奏の鍵。

    音楽的な難しさ:「ピアフらしさ」をどう表現するか

    1. 楽譜を超えた「歌心」の表現: この曲の最大の音楽的な難しさは、エディット・ピアフの歌声が持つ「歌心」や「間」をいかに表現するかという点にありのかなと。ピアフの歌を深く理解し、自由なテンポルバートやアガンムを自然に取り入れ、メロディーを「歌う」ように奏でるセンスが不可欠です。
    2. フランス音楽特有の色彩感とニュアンス: プーランクを含むフランスの作曲家は、独特のハーモニーや音色感を重視します。この曲も例外ではなく、響きの透明感や、特定の音を際立たせるタッチ、そして移り変わる和音の色彩を豊かに表現する能力が求められます。楽譜上の音符を正確に弾くだけでは、プーランクが意図した響きや雰囲気を出すことは難しく、繊細なタッチと耳の良さが必要です。
    3. 感情の機微と構成理解: 曲中には、哀愁、情熱、軽快さ、気まぐれさなど、様々な感情が目まぐるしく変化します。これらの感情の移り変わりを自然かつ説得力を持って表現するには、曲全体の構成を深く理解し、それぞれのセクションが持つ役割や感情的な意味合いを把握する必要も。単に部分的に感情を込めるのではなく、曲全体を通して一つの物語を語るような構成力を磨きましょう。

    「エディット・ピアフを讃えて」難易度克服のための練習法とコツ

    出典:YouTube:森本麻衣様より

    この作品を演奏するにあたり、どのような練習をすれば良いのでしょうか。
    ここでは、
    実践的な練習法とコツを3つの視点からご紹介します。
    といっても、他の作品に取り組む際にも同じことがいえますが・・・。
    ポイントを以下の3つに絞って紹介解説します。

    「歌う」意識を持った基礎練習
    「間」と「ニュアンス」を追求する部分練習:
    「物語」を語る構成練習

    「歌う」意識を持った基礎練習: 単調になりがちなスケールやアルペジオなどの基礎練習に、「歌う」意識を取り入れてみましょう。単に指を動かすだけでなく、一つ一つの音に表情をつけ、フレーズの始まりから終わりまでを意識して弾くこと。そうすることで、指のコントロールと同時に音楽的な表現力を養うことができます。特に、プーランクやピアフの音楽を聴きながら、そのフレージングを真似てみるのも効果的です。

    「間」と「ニュアンス」を追求する部分練習: 難しいパッセージを練習する際、単に速さや正確性だけでなく、「間」や「ニュアンス」を意識して練習することが重要です。楽譜に書かれていない微妙なテンポの揺れや、音色の変化などを試行錯誤しながら練習することで、ピアフの歌声が持つ即興性や表現力をピアノで再現するための感覚が磨かれます。

    「物語」を語る構成練習: 曲全体を通して、感情の移り変わりやセクションごとの役割を意識しながら練習しましょう。例えば、「ここはピアフの哀愁を表す部分」「ここは情熱的な叫び」のようにイメージを持ちながら弾くことで、曲全体の構成が明確になり、聴き手に伝わる演奏になります。

    楽譜の選び方と【無料楽譜】情報(難易度と関連付けて)

    出典:YouTube

    この難易度の高い楽曲に挑戦するためには、信頼できる楽譜を手に入れることが重要です。市販されている楽譜としては、全音ピアノピース版が最も一般的かもしれません。内容をよく確認して選ぶことをお勧めします。

    また、フランシス・プーランクは没後70年以上が経過しているため、多くの国で著作権が保護期間を満了し、パブリックドメインとなっています。そのため、IMSLP(国際楽譜ライブラリープロジェクト)のようなサイトで、合法的に無料楽譜が入手できる可能性があります。

    全音ピアノピース版

    エディットピアフを讃えて/プーランク 

    サラベール社版

    日本語ライセンス版 プーランク:ピアノ作品集第1巻 15の即興曲集(サラベール社)

    楽器購入をお考えの方は、こちらの記事をどうぞ。

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    無料楽譜:IMSLP(国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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    プーランク「エディット・ピアフを讃えて」:まとめ

    今回は、プーランク「エディット・ピアフを讃えて」のピアノ難易度について解説しました。
    本文の内容をあらためてまとめます。

    • この曲は、全音ピアノピースで難易度「E」に分類される、技術的にも音楽的にも非常に高度な楽曲です。
    • 高速パッセージ、複雑なリズム、広い音域の跳躍といった技術的な要素に加え、ピアフの歌声が持つ「歌心」や「間」、フランス音楽特有の色彩感といった音楽的な表現力が、この曲の主な難易度の要因となっています。
    • 難易度克服のためには、単なる指の練習だけでなく、「歌う」意識を持った基礎練習、「間」と「ニュアンス」を追求する部分練習、「物語」を語る構成練習といった、音楽的なアプローチを取り入れた練習が効果的です。
    • 楽譜は市販のものの他、合法的な無料楽譜が入手可能な場合もあります。

    難易度が高いからこそ、この曲を弾きこなせた時の達成感はひとしおです。
    プーランクが描いたピアフの世界をあなたのピアノで表現してみてください!

    最新記事一覧

    参考文献・参考URL

    ・PTNA|今月、この曲
    ・ピティナ・ピアノ曲事典|プーランク :15の即興曲 第15番 「エディット・ピアフを讃えて」 ハ短調

    ・ピティナ・ピアノ曲事典|プーランク
    ・静岡文化芸術大学|今月の作曲家「プーランク」