今回はエリック・サティの代表作を紹介します。
エピソードからも分かるように、なかなかの曲者だったサティですが、
その作風や発想は20世紀の西洋音楽、さらには私たちの日常生活に大きな変化をもたらしました。
「ジムノペディ」や「グノシエンヌ」などの代表作で知られるサティの作品には他にどのようなものがあるのでしょうか。
今回は、サティの作品の特徴を交えながら、
おすすめ作品を7つをお楽しみください。
前回のサティの生涯についてはこちらから!
サティの作品の特徴や魅力とは?
「異端児」、「変わり者」と称されたサティの作品の特徴はどのような点にあるのでしょうか?
その1、意外にもさまざまなジャンルの作品を作曲
上記でも触れたように、サティの作品といえば「ジムノペディ」などのような、
静寂と深淵さを感じさせる作品を想像しますが、
実はピアノ曲だけではなく舞台作品、宗教曲、歌曲なども多数作曲しています。
とりわけ20世紀に入ってらのサティは作家ジャン・コクトーやパブロ・ピカソらとバレエ音楽「パラード」を制作するなど、多岐にわたるジャンルで活躍しています。
その2、作曲方法を根底から覆す
サティ作品の特徴と言えば「放棄された調性」にあります。
それまでの西洋音楽は、長調や短調による、「統一感のある」調性音楽が主流でした。しかしサティはこの伝統を乗り越えるために革新的なアイディアを生み出します。
例えば、8〜9世紀ごろから16世紀まで主流だった「教会旋法」を復活させ、
自身の作品に取り入れたことがサティの大きな功績と言われています。
そしてサティの教会旋法の採用は、ドビュッシーやラヴェルにも大きな影響を与えており、
もしサティがいなければ、彼らの色彩豊かな作品(の一部)は生まれなかったかもしれません。
その3、記譜法も自由に
作曲方法と関連する話ですが、サティは楽譜の書き方にも革新的アイディアを用いました。
サティが楽譜から排除したものとして、次のものが挙げられます。
・拍子記号
・小節選
・縦線
・終止線
こうした記号が排除された代わりに、楽譜内ではサティによる「私的メッセージ」が添えられ、作品の持つイメージを表現することが求められます。
サティの記譜法はその後のストラヴィンスキーやメシアンなどに繋がる、現代音楽の先駆けとなりました。アメリカの作曲家ジョン・ケージの「4分33秒」はまさにサティの影響の集大成かもしれません。
その4、イージーミュージック・BGMの発案者
前回の記事で書いたように、サティはいわゆる「BGM」の発案者でもありました。
音楽的伝統だけではなく、聴衆の態度のあり方にも大きな変化をもたらしたサティ。
サティは「家具の音楽」により「音楽を聴衆の無意識下に置く」という試みを行いました。
現代でこそ当たり前ですが、「異端児」と呼ばれたサティは、
実は未来的・先見的な存在でもあったのかもしれません。
なかでも有名なのが「ジムノペディ」ですね🎵
初心者の方でも比較的弾きやすい作品です!
サティのおすすめ代表作7選
サティのおすすめ作品を紹介します。タイトルのユニークにサティーの感性がうかがえます。
星たちの息子
1891年に作曲された、劇付随音楽です。薔薇十字団に入信していた頃の作品で、「ヴェクサシオン」を除いたサティの作品で最長の作品です。全3幕で構成されています。
第1幕「天職」
第2幕「秘法伝授」
第3幕「呪文」
各幕には前奏曲が添えられています。サティの幻想性が漂う作品です。
サティの代表作2、天国への英雄的な門への前奏曲
1894年に作曲され、1912年に出版された前奏曲です。
悪魔主義の作家ジュール・ボワの依頼により作曲されました。
演奏時間は4分程度の短い曲ですが、曲中に「迷信的に」「誠心誠意音を立てずに」「うぬぼれずに」などの精神的・内面的な指示が書かれています。
サティの代表作3、<犬のための>ぶよぶよとした前奏曲
サティを代表する作品の1つです。1912年に作曲され、同年「<犬のための>ぶよぶよとした本当の前奏曲」も発表しています。
全体として4曲で構成されており、
それぞれのタイトルは次のとおりです。
第1曲「内奥の声」
第2曲「犬儒派的牧歌」
第3曲「犬の歌」
第4曲「友情をもって」
拍子や小節線、縦線が無いことが動画でも分かると思います。
タイトルの由来は諸説あるようですが、詳しくはわかっていません。
サティの代表作4、自動記述法
1913年に作曲されたピアノ曲です。タイトルの「自動記述法」にもあるように、
自動記述で作曲したのかもしれません。
「自動記述法」は文学などでも流行した分野で、
フランスの作家アポリネールなどが有名です。
全3曲からなり、演奏時間はおよそ5分です。
第1曲「船について」
第2曲「ランプについて」
第3曲「ヘルメットについて」
サティの代表作5、干からびた胎児(胎児の干物)
ユニークなタイトルで知られるサティの作品の中でも、
とりわけユニークな作品として知られています。
1913年に作曲され、全3曲の構成となっています。
第1曲「なまこの胎児」・・・「歯の痛いナイチンゲールのように」という指示が有名
第2曲「甲殻類の胎児」・・・ショパンの「葬送行進曲」のパロディです
第3曲「柄眼類(へいがんるい)の胎児」・・・最後は完全終止の和音が18回繰り返されます。※柄眼類とはカタツムリなどの生き物のことです。
サティの代表作6、官僚的なソナチネ
1917年に作曲したピアノ作品です。
ソナチネで有名なクレメンティの「ソナチネハ長調」のパロディとして作曲されました。
全3楽章で、各章が区切れなく演奏されます。
役所に勤務する役人の朝から夕方の物語が表現されています。
サティの代表作7、グノシエンヌ
1889年から1891年、1897年にかけて作曲された作品です。
サティ作品のなかでももっとも有名な作品の一つです。
憂鬱で物憂げなメロディーは、一度は聴いたことがある方も多いと思います。
グノシエンヌは6番まであり、
タイトルは古代ギリシアのクレタ島に存在した古都グノーシスに由来します。
1番〜3番は、のちにフランスの作曲家プーランクによってオーケストラに編曲されました。
サティの代表作まとめ
今回はエリック・サティの作風やおすすめ作品を紹介しました。
「クラシック音楽にこんな作品あるの?」と思われた方もいるのではないでしょうか。
どの作品もサティの個性が溢れていますので、
お時間のある時に聴いてみてはいかがでしょうか。
きっと、癒しの時間を過ごせると思いますよ!!