「飛翔」(シューマン)の難易度を解説!中学生の発表会にもおすすめ!

    この記事ではシューマンの人気ピアノ曲「飛翔」の難易度を解説します。

    「発表会で、聴いている人の心をつかむような情熱的な曲を弾いてみたい!」
    「カッコいい曲だけど、難しそう…私にも弾けるかな?」

    そんな風に思っている方も多いのではないでしょうか。

    本作は、シューマン作曲「幻想小曲集 Op.12」の2曲目の作品。
    気になる「飛翔」の難易度はというと・・・。
    かなり高めです(実体験から)

    でも大丈夫!
    今回は「飛翔」の難易度をポイントをあげつつ、分かりやすく徹底解説します。

    この記事でわかること

    • 「飛翔」の全体的な難易度レベルは?
    • 具体的にどこが、なぜ難しいの?(技術的・表現的な難所)
    • 中学生の発表会におすすめする理由は?
    • 難易度の壁を乗り越えるための、ちょっと変わった練習のヒント

    この記事を読めば、「飛翔」の難易度を正しく理解し、挑戦すべきかどうかの判断材料になるだけでなく、実際に取り組む際の道しるべが見つかるはずです。

    各見出し下に参考動画もありますので、いろいろな演奏を聴いて、練習のヒントにしてみてください!

    筆者は3歳からピアノを開始。紆余曲折を経て、かれこれ30年ほどピアノに触れています(音大には行ってません)

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    まず知りたい!シューマン「飛翔」ってどんな曲?

    出典:YouTube/Tomomi Okumura様より

    本題に入る前に、ちょっとだけ解説を。
    この曲が持つ魅力と背景を少しだけ紹介しますね。

    作曲家シューマン: 19世紀ドイツ・ロマン派を代表する作曲家。文学にも造詣が深く、情熱的で詩的な作品を多く残しました。妻はピアニストのクララ・シューマンです。

    「幻想小曲集 Op.12」: シューマンが恋人クララへの想いを募らせていた時期に書かれた、全8曲からなるピアノ曲集。「飛翔」はその2曲目にあたります。各曲には「夕べに」「なぜ?」「気まぐれ」といった標題が付けられ、シューマンの内面にある様々な感情が映し出されています。

    「飛翔(Aufschwung)」の意味: ドイツ語で「上昇」「飛躍」「高揚」といった意味を持つ言葉です。その名の通り、冒頭から力強く駆け上がるような情熱的なエネルギーに満ちています。中間部では一転して穏やかで夢見るような旋律が現れ、再び冒頭の主題が戻ってきて華やかに終わります。聴いているだけで心が奮い立ち、空を駆けめぐる爽快感のある作品です。

    シューマンについてさらに詳しく知りたい方はこちらが参考になりますよ!

    なぜ中学生の発表会に「飛翔」がおすすめなの?

    「飛翔」は難易度が高い曲ですが、それでも中学生の発表会におすすめしたい理由があります。

    1. 圧倒的な「演奏効果」: 約3分程度の短い作品ながら、ドラマティックでインパクト抜群!
      冒頭の力強い和音で聴衆の心を一気につかみ、情熱的なメロディで魅了します。発表会で弾けば、大きな拍手をもらえること間違いなし!
    2. 豊かな表現力を育てられる: 「飛翔」には、情熱、憧れ、喜び、そして中間部の優しさや切なさなど、様々な感情が込められています。これらの感情を音で表現する経験は、テクニックだけでなく、音楽的な感性を大きく成長させてくれます。
    3. テクニックと表現のバランスが良い: 指を速く動かす技術はもちろん、曲の持つエネルギーや感情を音に乗せる表現力の両方が求められます。テクニック偏重にならず、総合的なピアノの実力をアピールできます。
    4. 達成感が半端ない!: 難曲に挑戦し、努力して弾きこなせた時の喜びと達成感は、何物にも代えがたい経験です。大きな自信となり、さらに難しい曲へ挑戦する意欲にもつながります。
    5. 個性を発揮できる選曲: 定番の有名曲も素敵ですが、「飛翔」を選ぶことで「おっ!」と思わせるような、一味違う選曲センスをアピールできるかもしれません。

    参考|ピティナ・ピアノ曲事典:シューマン:幻想小曲集 飛翔Op12-2

    「飛翔」の難易度を徹底分析!レベルはどのくらい?

    出典:YouTube

    ということで、少し遠回りしましたが、本題の難易度について詳しく見ていきましょう。
    以下3つの点から解説します。

    • 全体的な難易度レベル
    • 技術的な難易度:3つのポイント
    • 表現面の難易度:「飛翔」を「飛翔」たらしめるもの

    全体的な難易度レベル

    各種指標

    • 全音ピアノピース: 「D」に分類されています。一般に「中級」ですが、個人的には「中級上」くらいかなと
    • 音楽教室のグレード: ヤマハのピアノ演奏グレードでは6級~5級の自由曲として選ばれることがあります。カワイ音楽グレードでは上級レベルに位置づけられます。
    • 一般的な区分: 「中級の上」から「上級への入り口」レベルと言えるでしょう。

    必要なピアノ歴の目安:

    • あくまで目安ですが、ソナチネ・アルバムを修了し、ツェルニー30番後半~40番程度に進んでいるレベルが一つの目安になります。ブルグミュラー25の練習曲を終えた段階では、まだ少し早いかもしれません。

    「簡単ではないけれど、基礎がしっかりしていれば十分に挑戦可能。ただし、相応の練習時間と努力が必要な難易度」です。

    技術的な難易度:3つのポイント

    実際に弾いてみて感じた難しさのポイントは3つ。
    ざっくりと解説しますね。

    1. パワーと正確性が試される「和音連打」
    • 難易度:★★★★☆
    • 曲の開始を告げる、力強い和音の連続。ここで聴衆を引きつけられるかが勝負です。
    • なぜ難しい?: ①腕や手首の脱力ができていないと、音が硬くなったり、すぐに疲れて弾ききれなくなる。②速いテンポの中で、全ての音を均一かつ明瞭に鳴らす正確性も求められます。③特に手の小さい学習者にとっては、和音をしっかり掴むこと自体が難しい場合があります。
    1. 左手の俊敏性が鍵となる「広範囲な跳躍」
    • 難易度:★★★★★
    • 左手はバスの低い音から、アルペジオ(分散和音)で一気に高い音域まで跳躍する箇所が多く見られます。
    • なぜ難しい?: ①音域が非常に広いため、鍵盤上の距離感を正確に把握し、素早く移動する必要があります。ミスタッチのリスクが高い難所です。②左手は曲の土台となる和声とリズムを支える重要な役割を担っており、ここが不安定だと曲全体が崩れてしまいます。③跳躍後の音を、適切なタイミングと強さで打鍵するコントロールも必要です。
    1. 指の独立性が必須な「右手の速いパッセージ」
    • 難易度:★★★★☆
    • 右手のメロディには、スケール(音階)やアルペジオなど、指を滑らかに速く動かす必要のあるパッセージが多く含まれます。

    作品としては短めですが、さまざまな高度なテクニックが必要です。

    表現面の難易度:「飛翔」を「飛翔」たらしめるもの

    技術的な難易度をクリアしても、それだけでは「飛翔」の真の魅力は伝わりません。
    表現面でも高いレベルが要求されます。

    「飛翔」感の表現: タイトルが示す「空高く舞い上がる感覚」「情熱的なエネルギー」を、音の勢いや方向性、音色でどう表現するか。これが最大の課題であり、面白さでもあります。

    ダイナミクスの幅広さ: ピアニッシモ(とても弱く)からフォルティッシモ(とても強く)まで、幅広い強弱の表現が必要。いかに感情の波をドラマティックに描き出せるかがポイント。

    情熱と叙情の対比: 激しく情熱的な主題の部分と、中間部の歌うような優しくロマンティックな部分とのキャラクターの違いを、音色やタッチ、テンポ感で明確に表現し分ける必要があります。

    技術的な難易度に匹敵する、あるいはそれ以上に、この表現面の難易度を乗り越えることが、「飛翔」を感動的な演奏にするための鍵です。

    難易度の壁を乗り越える!「飛翔」練習のヒント

    出典:YouTube

    「こんなに難しそうじゃ、やっぱり無理かも…」と感じた人もいるかもしれません。
    でも大丈夫!
    効果的な練習で、必ず難易度の壁は乗り越えられます。
    ここでは、練習のヒント3つ紹介します。

    1:しっかりとイメージを持つ

    弾く前に、まず「飛翔」の世界を頭の中でイメージしてみましょう。

    どんな「飛翔」?: あなたにとって「飛翔」とはどんなイメージですか?力強く飛び立つ鳥?空を駆け巡る冒険?それとも心の中の情熱?具体的なイメージを持つことで、表現したい方向性が明確になります。

    場面を想像する: 曲のセクションごとに、物語の場面を想像してみましょう。冒頭は「いざ、離陸!」、中間部は「雲の上で見た美しい景色」、再現部は「夕日に向かって最後の飛翔!」など、自由にストーリーを描いてみてください。

    音を聴き込む: 名ピアニストたちの演奏をたくさん聴きましょう。「この人の演奏の、どこが『飛翔』っぽく聴こえるんだろう?」と分析することで、自分の目指す音が見えてきます。

    2:難所分解&ピンポイント攻略 

    難しいと感じる箇所は、いわば「飛翔」を邪魔する「重り」のようなもの。その重りを一つずつ外していきましょう。

    「重り」の正体を見極める: なぜそこが難しいのか?(例:左手の跳躍が間に合わない、右手の指が転ぶ、リズムが取れない)。原因を具体的に特定します。

    超スローモーション再生: 難しい箇所を、ありえないくらいゆっくり、一音一音確かめるように弾きます。正しい指使い、脱力、音の響きを体に覚え込ませるイメージです。

    リズム・ドリル: 複雑なリズムは、手拍子したり、歌ったり、片手だけでリズムを刻んだりして、体で覚えます。「タ・タ・ウン・タン」のように口に出してみるのも効果的。

    跳躍「着地」練習: 左手の跳躍が難しいなら、跳躍先の音だけを狙って弾く練習を繰り返します。鍵盤を見なくても正確に着地できるようになるまで、ゲーム感覚でOK!

    部分→結合: 完璧に弾けるようになった小さな「部品(数小節)」を、少しずつ繋ぎ合わせていきます。焦らず、確実に繋げていくことが大切です。

    3:サウンド・メイキング

    テクニックがある程度身についてきたら、今度は「音色」にこだわってみましょう。

    タッチの実験: 同じメロディでも、指のどの部分で、どんな深さ・速さで鍵盤を弾くかによって音色は無限に変わります。「力強い音」「キラキラした音」「歌うような音」など、イメージに合わせてタッチを探求してみましょう。

    ペダルの魔法: ペダルは響きを豊かにするだけでなく、音色を混ぜ合わせたり、余韻をコントロールしたりする魔法の道具です。踏む深さ、タイミング、離す速さを変えながら、濁らず、かつ曲の雰囲気に合ったペダリングを見つけ出しましょう。録音して客観的に聴くのがおすすめ

    呼吸とフレーズ: 音楽は言葉と同じ。どこで息継ぎ(ブレス)をし、どこまでが一つのフレーズ(文章)なのかを意識すると、音楽がより自然に流れるようになります。歌うように弾くことを心がけてみてください。

    「飛翔」はまだ難易度高いかも・・・他に中学生におすすめの発表会曲

    出典:YouTube

    ここまで「飛翔」の難易度解説を読んで、「今の自分にはまだ少し難しいかも…」と感じた方もいるかもしれません。そんな方のために、中級レベルで発表会映えする、他の素敵な曲もいくつかご紹介します。

    ショパン「ワルツ 第7番 嬰ハ短調 」

    出典:YouTube

    切なく美しいメロディと、華やかな中間部の対比が魅力的なワルツ。
    表現力を豊かに見せられます。

    ドビュッシー「アラベスク 第1番」

    出典:YouTube

    流れるようなアルペジオが美しく、幻想的な雰囲気を持つ人気の曲。
    指の滑らかな動きとペダリングがポイントです。

    ギロック「叙情小曲集」より「雨の日のふんすい」

    出典:YouTube

    キラキラとした音色が印象的で、情景が目に浮かぶような美しい小品。
    テクニック的にも中級レベルで取り組みやすいでしょう。

    飛翔とよく比べられる、メンデルスゾーンの「ロンド・カプリチオーソ」についてはこちらから。

    「飛翔」のおすすめ楽譜

    最後に、これから弾いてみたい方のために、おすすめ楽譜を紹介します。
    自分に合った楽譜を選んで練習してみてください。
    もちろん、先生に勧められた場合は、その楽譜を使ってくださいね!

    全音ピアノピース(飛翔だけ欲しい方向け)

    ピアノピース-169 飛翔/シューマン

    「1曲だけ欲しい」という方はこれ一択です。

    ヘンレ社版(幻想小曲集)

    シューマン: 幻想小曲集 Op.12/ヘンレ社/原典版

    定番で評価も高いですが、ちょいお値段高め。

    ヤマハ:ぷりんと楽譜(スマホ・タブレット対応)

    ダウンロードのほか、プリントアウトできます。
    月額料金がかかりますが、25万曲から選べるのは魅力。

    シューマン「飛翔」の難易度解説:まとめ

    シューマン「飛翔」は、難易度としては中級の上~上級への入り口レベルに位置し、力強い和音連打、広範囲な左手の跳躍、速いパッセージ、複雑なリズム、繊細なペダリングなど、技術的にも表現的にも高いレベルが要求される曲です。

    しかし、その難易度の高さゆえに、弾きこなせた時の達成感は格別であり、聴衆に強い印象を与えることができる、発表会にはぴったりの魅力的な作品でもあります。

    この記事で紹介した難易度の具体的なポイントや、練習のヒントを参考に、ぜひ「飛翔」に挑戦してみてください。

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