フランツ・リスト「愛の夢 第3番」「ラ・カンパネラ」の解説。難易度は?初心者でも弾ける?(その1)。

    今回はリストの作品中もっとも有名な「愛の夢 第3番」と「ラ・カンパネラ」について解説します。

    どちらもメジャーな作品なので、誰でも一度は聴いたことがあるのではないでしょうか。

    前回の作品紹介は若干長すぎた感がありますので、今回はなるべく(なるべくね)コンパクトにまとめるつもりですので、ぜひ最後までお付き合いください。

    リストシリーズ、まだ全然読んでないよ〜」という方はぜひこちらから!!

    前回のリストのオススメシリーズはこちらです👇

    「愛の夢 第3番」について

    「愛の夢 第3番」について紹介します。ヴィルトォーゾとして知られるリストですが、「愛の夢 第3番」は優雅で愛情あふれる作品であると同時に、どこか切なさを感じさせる名曲です。

    「愛の夢 第3番」は1845年、ドイツの詩人フェルディナンド・フライリヒラートの「おお、愛しうる限り愛せ」という詩に音楽をつけた歌曲として発表されました。

    「第3番」ってことは「第1番、第2番もあるの?」と気がついた方、正解です!!

    1番・2番もルートヴィヒ・ウーラントという詩人の詩に音楽をつけた歌曲でした。

    ちなみにそれぞれのタイトルは、

    愛の夢 第1番・・・高貴な愛(1849年)
    愛の夢 第2番・・・私は死んだ(1849年)

    となっています。

    そしてこれら3つの作品をリストは1850年にピアノ版に編曲し、「3つの夜想曲(ノクターン)」としてまとめました。

    原曲の歌曲版はこんな感じです👇。

    この動画のように、当初はソプラノ歌手を想定して作曲されましたが、現在では男性が歌うこともあります。

    作品の背景に女性の影あり?

    「愛の夢」というタイトルからして、リストの何らかの実体験が盛り込まれているのでは?と思い調べてみました。

    するとやはり、この作品にはある女性との背景が含まれているようです。

    リストシリーズ1つ目の記事で書いていますが、1834年〜1844年ごろまでの10年間をリストはマリー・ダグー伯爵夫人と過ごしています。

    2人は3人の子をもうけ、そのうちの一人コジマはピアニストのハンス・フォン・ビューロー、そしてリヒャルト・ワーグナーの妻となりました。

    マリー・ダグー伯爵夫人と別れた翌年(1845年)に作曲されたのが「愛の夢 第3番」の原曲である、歌曲「おお、愛しうる限り愛せ」です。

    もしかしたら、伯爵夫人と別れた後もリストはどこか未練があったのかもしれませんね。

    ワーグナー

    「愛の夢」の誕生

    そして伯爵夫人との関係から3年が経った1847年、リスト(この時36歳)はウクライナ(キエフ)での演奏旅行中に出会ったカロリーネ・ヴィトゲンシュタイン公爵夫人と恋愛関係になります。

    二人は十数年にわたり生活を共にし、カロリーネはこの時期のリストに多大なインスピレーションを与えたと言われています。

    そんな中、リストは3つの歌曲を「愛の夢」としてピアノ版に編曲し、1850年、「3つの夜想曲」として出版する運びとなりました。

    この作品が愛に溢れているのは、カロリーネとの関係が順調だった証かもしれません。

    生涯独身だったリスト。
    この時ばかりは真剣に結婚を考えたようですが、宗教上の理由(カトリックは離婚を禁止しているため)や相続問題などから、2人の多くの奔走も虚しく、破局しています。

    さまざまな原因で結ばれなかった2人ですが、2人の関係は生涯に渡り継続し、リストが亡くなる1886年まで手紙のやり取りが続きました。

    リストの才能の原動力となったカロリーネは、リストの死の翌年(1887年)にこの世を去っています。リストの死の翌年に亡くなるなんて、なんだかロマンチックな感じがするのは筆者だけでしょうか・・・。

    「愛の夢 第3番」の難易度は?

    ピアノ学習者憧れの「愛の夢 第3番」の難易度はどれくらいでしょうか。

    ピアノピースを販売している全音をみてみると、AからFまである難易度の内、「愛の夢 第3番」は難易度Eとありました。

    これはバッハ「トッカータとフーガ」フォーレの「パヴァーヌ」ショパンの「幻想即興曲」などと同じ難易度です。

    テンポもゆったりとしていて、メロディーがわかりやすいので「簡単かな?」とちょっと思うかもしれませんが、実際に演奏してみると、なかなかの難曲です💧。

    それに加えて、ロマンティシズム満載の優美な演奏をしなければならないので、難易度はさらに上がります。

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    初心者でも弾ける??

    優しく愛で包み込むような「愛の夢 第3番」を弾けたらカッコいいって多くの人が思いますよね。

    弾けたら確かにカッコいいですが、初心者でも弾くことはできるのでしょうか??

    結論から言うと、「残念ながら難しい」というのが答えです。

    もちろん、人それぞれ個人差があるので、「絶対に無理か?」と聞かれたら「絶対とは言え無い」と答えますが、いきなりこの作品に取り組むよりも・・・。

    段階を追って基礎からゆっくりとマスターするのが1番の近道だと思います。

    ですので、毎日コツコツと練習しましょう。
    そうすれば多分7年くらいで弾けるんじゃ無いかな〜と思います。

    ちなみに初心者バージョンもあるので、こちらも参考にしてください!

    オトナの簡単ピアノ がんばらずに弾ける初心者のクラシック 

    補足

    「愛の夢」が最初は歌曲だったことは、上記でお話ししました。

    関心がある方がいらっしゃるかもしれないので、大事なところだけ歌詞を紹介します。

    O lieb,so lang du lieben kannst!
    O lieb,so lang du lieben magst!
    Die Stunde kommt,die Stunde kommt,
    Wo du an Gräbern stehst und klagst!

    おお 愛しなさい、君が愛せるだけ!
    おお 愛しなさい、君が愛したいだけ!
    その時は来る、その時は来る
    君が墓の前に立って歎く時が

    リスト「愛の夢 第3番」の聴き比べ

    多くのピアニスト(というかほとんどだけど)が「愛の夢」を演奏しているので、いくつか演奏を紹介します。同じ作品なのに、どうしてこんなに違うのか。どれも素晴らしい演奏です。

    フジコ・ヘミング版

    フジコ・ヘミングの演奏です。
    まるでメロディーで会話しているような演奏が素敵です!!

    反田恭平版

    昨年ショパンコンクールで見事入賞した反田さんの演奏。包み込むような優しさがあります。

    辻井伸行版

    辻井信之さんの演奏。音の一つ一つがキラキラと輝いています。

    エフゲーニ・キーシン版

    キーシン若い😀。ハツラツとして力強い演奏です🎹。

    今回のまとめ

    本当は一つの記事で「愛の夢 第3番」と「ラ・カンパネラ」を紹介しようと思ったけど、またまた長文になりそうなので、二つに分けて書くことにしました😀。

    なので、今回は「愛の夢 第3番」だけの解説にして、次回「ラ・カンパネラ」について解説します(今度は早めにアップします)。

    筆者はリストとモーツァルトが特に好きなので、なんだかいつの間にか力が入ってしまいます。

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