【無料楽譜あり】シャミナード「アラベスク1番」の難易度を実体験をもとに解説!弾き方のポイント3選!

    きらびやかで軽やかな旋律が魅力のシャミナード作曲「2つのアラベスク」第1番。

    一度聴いたら忘れられない優雅なこのアラベスクは、多くのピアノ学習者にとって憧れの一曲なはずです。

    でも一方で、

    • 「この曲、弾いてみたいけど自分には難しいかな?」
    • 「発表会で弾いたら聴き映えするかな?」

    そんな疑問や不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

    この記事では、自身の演奏体験を踏まえながら、シャミナード「アラベスク」の難易度を徹底的に解説します。

    記事の前半では、具体的な教則本レベルでの比較から、上手に演奏するための3つのポイントを解説し、記事の後半では無料楽譜の紹介をしています。

    ぜひ最後まで読んで、素敵な演奏の参考にしてください!

    筆者は3歳からピアノを開始。紆余曲折を経て、かれこれ30年以上ピアノに触れています。音大には行っておらず、なぜか哲学で修士号というナゾの人生です。

    女性作曲家の先駆け、セシル・シャミナードの生涯

    出典:YouTube

    いつものように、まずは作曲者について少しだけ解説を。セシル・シャミナード(Cécile Chaminade, 1857-1944)がどのような人物だったのかを見ていきましょう。

    シャミナードは、19世紀後半から20世紀前半にかけてフランスで活躍した、当時としては非常に珍しい女性作曲家・ピアニストです。

    裕福な家庭に生まれ、幼い頃から音楽の才能を発揮したものの、父親の反対によりパリ音楽院への入学は許されませんでした。

    しかし、彼女の才能を高く評価していた作曲家のジョルジュ・ビゼー(『カルメン』の作曲者)の計らいもあり、個人レッスンで高度な音楽教育を受け続けます。

    18歳でピアニストとしてデビューすると、その卓越した演奏技術と、何よりも彼女自身が作曲した魅力的で親しみやすい作品で、瞬く間にヨーロッパ中の人気者となりました。

    特に、サロン(客間)で演奏されるような、優雅でメロディアスなピアノ小品は彼女の真骨頂であり、楽譜は飛ぶように売れたと言われています。

    シャミナードは、女性が職業音楽家として生きることが困難だった時代に、自らの才能と努力で道を切り拓いた、まさに先駆者的な存在だったといえるでしょう。

    参考|ピティナ・ピアノ曲事典|シャミナード

    シャミナードの代表作「アラベスク1番」を徹底解説

    出典:YouTube

    それでは、いよいよシャミナードの「2つのアラベスク Op.61」について、詳しく見ていきましょう。一般的にシャミナードの「アラベスク」として知られているのは、この曲集の第1番です。

    楽曲の構成と「アラベスク」が持つ意味

    本作は、典型的な三部形式(A-B-A’)で構成されています。

    • A部(Allegro): ト短調で書かれた、きらびやかで軽快な主題。スタッカートを多用した右手の速いパッセージが特徴的で、まるで蝶が舞うような、あるいはきらめく噴水のような情景を思い起こさせます。
    • B部(中間部): ト長調に転調し、曲の雰囲気が一変。歌心あふれる叙情的なメロディーが、左手の幅広いアルペジオに乗って情熱的に歌い上げられます。ロマンティックで甘美な、シャミナードらしい魅力がとてもよく表れている部分です。
    • A’部(再現部): 再びト短調の主題が戻ってきますが、A部を完全に繰り返すのではなく、より華やかな装飾が加わり、輝かしいコーダ(終結部)へと向かっていきます。

    ちなみに、「アラベスク」とは、イスラム美術の「唐草模様」に由来する言葉です。音楽の世界では、蔓や植物が絡み合うように、複数の声部が装飾的に絡み合う楽曲のことを指します。シャミナードのこの曲も、右手の装飾的なパッセージが左手の和音やアルペジオと見事に絡み合い、優雅で美しい音楽のタペストリーを織りなしていますね!

    アラベスク模様:出典:Wikipedia

    他の「アラベスク」との違い

    アラベスク」と名の付くピアノ曲、他にも聞いたことがありますよね。
    例えば、ドビュッシーの「2つのアラベスク」は、印象派特有の浮遊感と透明感のある響きが特徴です。また、シューマンの「アラベスク」は、内省的でロマンティックな情緒にあふれています。

    これらと比較すると、シャミナードの「アラベスク」は、後期ロマン派のスタイルに根差した、より直接的で華やかな魅力を感じますね。

    ドビュッシーとシューマンのアラベスクについては、こちらの記事で書いています。

    シャミナード「アラベスク1番」の難易度を実体験をもとに解説!

    出典:YouTube

    ということで。

    ここからはこの記事の核心である、シャミナード「アラベスク」の難易度について、具体的かつ実践的に解説していきます。

    全体の難易度レベル:中級の上~上級への入り口

    結論から言うと、この曲の難易度は「中級の上から上級へのステップアップ」を目指すレベルに位置すると思います。

    「全音ピアノピース」では楽譜が見当たりませんが、実際にチャレンジしてみた感想としては「D(中級上)」くらいかなと思います。

    でも、Dランクの中でもやや難しめ、Eランク(上級下)に近いと感じる方も多いかもしれません。

    基本的なテクニックを一通り習得した中級者が、より高度な表現力や技術力を身につけるための「挑戦曲」として最適な一曲です。

    簡単な曲ではありませんが、ポイントを押さえて練習すれば、必ず弾きこなせるようになりますよ!

    教則本で例えるならこのレベル

    より具体的にイメージできるよう、一般的なピアノ教則本に置き換えてみました。
    難易度「D]以上の作品にチャレンジする場合は、大体以下のレベルかなと。

    • ツェルニー: 「30番練習曲」を終え、「40番練習曲」にスムーズに取り組めているレベルが目安。指の独立性や速いパッセージへの対応力が求められます。
    • ソナチネ・ソナタ: 「ソナチネアルバム1・2」を修了し、「ソナタアルバム1」に挑戦し始めたくらいのレベル感です。楽曲の構成を理解し、表現豊かに弾きこなす力が試されます。
    • インヴェンション: 「バッハ インヴェンション」を問題なく弾けるくらいの対位法的な読譜力も助けになりますよ!(苦手な人多いですけど)。

    他の作曲家の曲で言えば、ショパンの「ワルツ第1番《華麗なる大円舞曲》」や「ノクターン第2番 Op.9-2」がある程度弾ける方なら、挑戦する価値は十分にあると思います!

    技術的に乗り越えるべき3つの壁

    この曲を練習する上で、多くの学習者がつまずきやすい技術的なポイントは、主に以下の3つかなと。

    • 右手の速く細かいパッセージ
    • 左手の跳躍と幅広いアルペジオ
    • スタッカートとレガートの明確な弾き分け
    1. 右手の速く細かいパッセージ: A部に出てくる16分音符の連続は、指がもつれやすく、粒を揃えて軽やかに弾くのが難しいポイントです。脱力ができていないと、すぐに腕が疲れてしまいます。
    2. 左手の跳躍と幅広いアルペジオ: B部の中間部では、左手がバスの音から和音へと大きく跳躍したり、1オクターブ以上にわたるアルペジオを滑らかに弾いたりする必要があります。正確な打鍵と、響きのコントロールが求められます。
    3. スタッカートとレガートの明確な弾き分け: A部の軽快さを出すためのスタッカート奏法と、B部の歌心を表現するためのレガート奏法。対照的なタッチを明確に弾き分ける表現力が不可欠です。

    これらの壁を乗り越えることで、ピアノ技術は一段階レベルアップするはず!

    シャミナードの別の曲も参考にしてみてください!

    「アラベスク1番」の演奏ポイント3選

    出典:YouTube

    技術的な難所をクリアした上で、この曲をさらに魅力的に演奏するためのポイントを3つに絞って紹介します。

    • 指先が鍵盤で踊るような「軽やかさ」と「粒立ち」
    • 中間部の情熱的な「歌」と豊かな「響き」
    • 右手と左手の対話を聴く「バランス感覚」

    一つずつ見ていきましょう。

    「アラベスク1番」の演奏ポイント1:指先が鍵盤で踊るような「軽やかさ」と「粒立ち」

    この曲の第一印象を決めるのは、冒頭の軽やかな主題です。ここを美しく響かせるには、指先のタッチが重要になります。

    手首や腕の力を抜き、指先が独立して軽やかに動くことを意識しましょう。
    練習方法としては、まずメトロノームに合わせて非常にゆっくりとしたテンポで、一音一音の響きをよく聴きながら練習します。

    ハノンなどの基礎練習も、こうしたパッセージを弾く上での土台となりますよ!

    「アラベスク1番」の演奏ポイント2:中間部の情熱的な「歌」と豊かな「響き」

    中間部(B部)は、ロマンティックなセクション。

    ここでは、右手のメロディーをレガートでたっぷりと歌わせることが求められます。フレーズの大きな流れを意識し、息の長いメロディーラインを作りましょう。

    音が濁らないように注意しながら、豊かな響きでホールを満たすようなイメージで!

    メロディーと伴奏、そしてペダルが一体となった時に、聴く人の心を揺さぶる感動的な音楽が生まれるはずです!

    「アラベスク1番」の演奏ポイント3:右手と左手の対話を聴く「バランス感覚」

    右手と左手の役割が非常にはっきりと分かれている部分が多い曲です。

    A部では右手のきらびやかなパッセージが主役ですが、左手の和音がそれを的確に支えなければ軽薄に聞こえてしまいます。

    逆にB部では、右手の歌心あふれるメロディーを、左手のアルペジオが優しく包み込む必要があります。

    常に右手と左手の音量バランスに気を配り、どちらのパートが主役で、どちらが脇役なのかを意識して演奏することが大切です

    【無料楽譜あり】「アラベスク1番」の楽譜紹介

    出典:YouTube

    ここまで、「アラベスク1番」の難易度と演奏のポイントを解説してきました。

    最後に、楽譜の入手方法についてご紹介します。
    それほど楽譜が出ていませんが、まずは無料楽譜で様子をみるのも良いと思います!

    【無料】国際楽譜ライブラリープロジェクト(IMSLP)

    シャミナードの作品は、その多くが著作権保護期間を満了したパブリックドメインとなっており、無料で楽譜を手に入れることができます。最も有名で信頼性が高いのが、「国際楽譜ライブラリープロジェクト(IMSLP)」というウェブサイトです。

    楽譜を買う前の参考にしてみてはいかがでしょうか。

    シャミナード「アラベスク」の無料ダウンロードはこちら

    運指や解説が便利な楽譜

    無料で手に入るのは魅力的ですが、市販の楽譜にはプロのピアニストによる運指(指使い)や、演奏上のアドバイスが記載されている点がメリットです。

    特に、速いパッセージや難しい跳躍があるこの曲では、適切な運指が練習効率を大きく左右します。


    シャミナード「アラベスク1番」の難易度解説:まとめ

    この記事では、シャミナードの「アラベスク Op.61」について、具体的な練習のポイントまでを解説してきました。

    この曲は、技術的な挑戦と音楽的な表現の喜びを同時に味わうことができる、ピアノ中級者にとって最高のレパートリーの一つだと思います。

    最初は難しく感じるかもしれませんが、一つ一つの課題を丁寧にクリアしていくことで、必ずや聴き映えのする素晴らしい演奏にたどり着けるはずです!

    最後に、この記事の重要なポイントをまとめますね。

    • シャミナードの「アラベスク」は、後期ロマン派の優雅さと華やかさを併せ持つ魅力的なピアノ曲である。
    • 難易度は「中級の上~上級への入り口」レベル。全音ピアノピースではDランクに分類される。
    • 教則本では、ツェルニー40番やソナタアルバムに取り組むレベルの学習者に最適。
    • 技術的な課題は「右手の速いパッセージ」「左手の跳躍とアルペジオ」「タッチの弾き分け」の3点。
    • 演奏を格上げするポイントは「指先の軽やかさ」「中間部の歌い方」「左右のバランス感覚」。
    • 無料楽譜はIMSLPで合法的に入手可能。すぐに練習を始められる。
    • 市販の楽譜は、専門家による運指や解説が練習の助けになるため、初心者には特におすすめ。
    • ポイントを押さえて練習すれば、発表会やコンサートで大きな拍手をもらえる、聴き映え抜群の一曲になる。

    最新記事一覧