クロード・ドビュッシーが作曲した、ピアノ曲「夢(Rêverie)」。
夢の中を漂うような幻想的で美しいメロディーは、今もなお多くのピアノ愛好家に愛され続けています。
「いつか弾いてみたい」と憧れている方も多いのではないでしょうか。
しかし、その美しさとは裏腹に、こんな疑問も浮かびますよね。
この記事では、そんなドビュッシーの「夢(夢想)」の難易度について、具体的な教則本と比較しながら徹底解説します!
さらに、曲の持つ幻想的な雰囲気を最大限に引き出すための弾き方のコツや、記事の後半では無料で楽譜を手に入れる方法まで、詳しくご紹介します。
この記事を読めば、憧れの「夢」への具体的な道のりが分かり、美しい音色を奏でるためのヒントがきっと見つかりますよ!
筆者は3歳からピアノを開始。紆余曲折を経て、かれこれ30年以上ピアノに触れています。音大には行っておらず、なぜか哲学で修士号という謎の人生です。
「夢(夢想)」の難易度について
出典:YouTube
さっそく本題の難易度について詳しく見ていきましょう。
結論(実体験)から言うと、「夢(夢想)」の難易度は「ソナチネアルバム修了程度~」が目安かなと。でも、楽譜の見た目以上に、表現力が問われる作品だと思います。
目安となる教則本との比較
ピアノ学習者がよく使う教則本と比べてみましょう。
- ブルグミュラー25の練習曲:
修了レベルでは、技術的に厳しい部分が多くあります。特に、複雑なリズムや和音の響かせ方、ペダリングで苦戦するでしょう。3連ぷなんかが難しいかもです。 - ソナチネアルバム:
全曲を修了し、クーラウやクレメンティのソナタを音楽的に弾きこなせるレベルであれば、挑戦を始めるのに良いタイミングです。 - ツェルニー30番練習曲:
併用して取り組むと良いと思います。ツェルニーで指の基礎力を固めながら、「夢」で表現力を磨くという進め方が理想的です(筆者は嫌いでしたが・・・) - バッハ インヴェンション:
複数の声部を弾き分けるという点で、インヴェンションの経験は非常に役立ちます。
ここまでできるなら、安心レベル。
見た目以上に難しい!求められるテクニック
技術的には上記で十分かなと思いますが、表現の課題はまた別です。
この曲が「楽譜の見た目以上に難しい」と言われる理由。それは、単純な指の動き以上に、以下のような高度なテクニックが求められるからです。
- 繊細なタッチコントロール: 夢のように柔らかな音色から、情熱的な響きまで、多彩な音色を指先で作り分ける力。なんせ、タイトルが「夢(夢想)」ですから。
- 高度なペダリング: 音を響かせながらも、決して濁らせない絶妙なペダルの踏み替え技術。
- ポリリズム(複合リズム)の理解: 右手と左手で異なるリズム(例:3連符と8分音符)を同時に正確に弾き分ける能力。
- 多声部の弾き分け: メロディー、内声、バスなど、複数の声部の流れを聴き分け、バランス良く響かせる力。
これらの要素が、この曲の独特な浮遊感や色彩感を生み出しているのです。
技術的な難易度は高くありませんが、印象派の雰囲気がしっかり表現できるかがポイント。
ということで、弾き方のポイントを以下で紹介しますね。
「夢(夢想)」の弾き方のポイント3つ
出典:YouTube
本作が持つ幻想的な雰囲気を出すにはどうすれば良いのでしょうか。
今日から試せる3つのコツをご紹介します(筆者が感じた((習った))ポイントです)。
ピアノを習っている方は、先生と相談しながら練習してみてください!
一つずつ見てみましょう。
1. 音にヴェールをかける「弱音ペダル」を効果的に使う
ドビュッシーの音楽に欠かせないのが、一番左の弱音ペダル(ソフトペダル)です。このペダルを踏むと、音色がこもったようになり、一枚ヴェールをかけたような、幻想的で柔らかな響きになります。
曲の冒頭や、静かに夢の中へ沈んでいくような場面で効果的に使ってみましょう。
ただし、ずっと踏みっぱなしにするのではなく、曲が盛り上がる部分では外して音色に変化をつけることが大切です。
2. 「響きを聴く」ペダリング
右のダンパーペダルは、音を豊かに響かせますが、踏み方が雑だと音が濁ってしまいます。特にドビュッシーの音楽では、響きの透明感が命です。
コツは、**「次の和音を弾く直前に、前の響きを完全に消す」**こと。ペダルを「踏む」ことよりも、「上げる」タイミングを意識しましょう。自分の出す音をよく聴き、響きが濁っていないか耳で確認しながら、ミリ単位でペダルの深さを調整する練習が効果的です。
3. メロディー以外の「内側の声」に耳を澄ませる
この曲には、主旋律の裏で動いている「内声」と呼ばれるロディーが隠されています。この内声が、曲に深みと立体感を与えています。
練習する際は、右手や左手のメロディーだけを追うのではなく、和音の内側で動いている音の繋がりを探してみてください。その隠れたメロディーを意識して、少しだけ際立たせるように弾くと、ぐっと音楽が表情豊かになります。
作曲者クロード・ドビュッシーについて
出典:YouTube
ここまで、「夢(夢想)」の難易度と弾き方のポイントを紹介してきました。せっかくなので、ドビュッシーについて簡単に紹介しますね。
クロード・ドビュッシー(1862-1918)は、19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したフランスの作曲家です。「月の光」や「アラベスク第1番」など、数多くの有名なピアノ曲を残しました。
彼の音楽は、輪郭のはっきりしたメロディーよりも、光や水、風といった自然のゆらめきや、夢の中のような曖昧な雰囲気を音で表現したのが特徴で、「印象主義音楽」の創始者として知られています。
あわせてラヴェルの作品にも取り組むと、より印象派の音楽が楽しめますよ!
ドビュッシーについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
「夢(夢想)」の楽曲解説
「夢(Rêverie)」は、1890年頃、ドビュッシーがまだ20代後半の若き日に作曲されました。実は、ドビュッシー自身はこの曲をあまり気に入っておらず、出版社の求めに応じて仕方なく出版したという逸話も残っています。
しかし、聴く人の心を優しく包み込むような甘美なメロディーと、ゆったりとした時間の流れを感じさせる構成は、彼の初期の作品ながら、後の印象主義音楽へと繋がる才能のきらめきを十分に感じさせます。
曲は大きく3つの部分に分かれており、穏やかな主題が形を変えながら何度も現れ、まさに夢を見ているかのような心地よさを生み出しています。
「夢(夢想)」の楽譜紹介【無料楽譜あり】
「弾いてみたい!」と思ったら、まずは楽譜を手に入れましょう。無料楽譜をチェックして、難易度を確かめてみるのも良いと思いますよ!
無料で楽譜が手に入る!「IMSLP」
IMSLP(国際楽譜ライブラリープロジェクト)というウェブサイトを知っていますか?ここでは、著作権が切れた(パブリックドメイン)クラシック音楽の楽譜が、PDF形式で無料ダウンロードできます。
ドビュッシーの「夢」ももちろんダウンロード可能です。様々な出版社版の楽譜があるので、見比べてみるのも面白いでしょう。
「夢」の無料ダウンロードはこちらから!
注意点: 版が古いため、最新の校訂が反映されていなかったり、運指(指使い)が書かれていなかったりすることがあります。あくまで参考として利用するのが良いでしょう。
おすすめの市販楽譜
解説や運指(指番号)がしっかりしている市販の楽譜も、学習の助けになります。定番はこちらの2冊かなと(定番ですね)。
- ドビュッシー ピアノアルバム(全音楽譜出版社)
「月の光」や「アラベスク」など、ドビュッシーの有名曲が多数収録されており、コストパフォーマンスが高い一冊です。
- ドビュッシー 夢:全音ピアノピース
「1曲だけ欲しい!」と言う方は、これ一択です。
ドビュッシー「夢(夢想)」の難易度解説:まとめ
最後に、この記事の重要なポイントを振り返りましょう。
- 楽曲: ドビュッシーの初期の傑作で、夢の中を漂うような幻想的な雰囲気が魅力。
- 難易度: **ソナチネアルバム修了程度~**が目安。
- テクニック: 楽譜の見た目以上に、繊細なタッチ、ペダリング、リズム感、多声部の弾き分けなど高度な表現力が求められる。
- 弾き方のコツ: ①弱音ペダルの活用、②響きを聴くペダリング、③内声に耳を澄ませることが重要。
- 楽譜: 無料で手に入るIMSLPが便利。学習用には解説付きの市販楽譜もおすすめ。
ドビュッシーの「夢」は、ピアノでしか表現できない音の色彩感や、夢幻的な世界観を存分に味わえる素晴らしい曲です。技術的な課題はありますが、一つ一つクリアしていくことで、あなたの表現力は格段に向上するはずです。
ぜひこの記事を参考に、憧れの「夢」の世界に挑戦してみてくださいね!