ショパンの代表作として名高い「英雄ポロネーズ」。
その華やかで勇壮なメロディは、多くのピアノ愛好家の心をつかんで離しません。
「いつかは自分も弾いてみたい!」と憧れをもつ一方で、
といった不安や疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、英雄ポロネーズの楽曲の魅力から、気になる難易度、習得にかかる期間の目安を解説します。
記事の前半では「楽曲解説」や「難易度」、「何年かかるか」を解説し、記事の後半では、「弾き方のポイント」や「楽譜紹介」を解説します。無料楽譜のダウンロードもありますので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください!
各見出し下には、素晴らしい演奏動画もあります。練習のお役にたてれば幸いです。
筆者は3歳からピアノを開始。紆余曲折を経て、かれこれ30年以上ピアノに触れています。音大には行っておらず、なぜか哲学で修士号を取得の謎の人生を歩んでいます。
英雄ボロネーズとは?楽曲解説
出典:YouTube
本題に入る前に、ちょっとだけ寄り道を。本作について解説しますね。
フレデリック・ショパンが作曲した「ポロネーズ第6番 変イ長調 作品53」は、通称「英雄ポロネーズ」として広く知られる名曲。この曲は、ショパンのピアノ作品の中でも特に人気が高く、彼の愛国心や英雄的な気概が込められた傑作とされています。
作曲背景とショパンの想い
この曲が作曲されたのは1842年。当時のポーランドはロシアによる支配下にあり、ショパンは祖国を離れパリで活動していました。英雄ポロネーズには、祖国ポーランドの栄光と独立への強い願い、そして故郷への熱い想いが込められていると言われています。
ショパンの生涯についてはこちらの記事で書いています。
曲全体を通して感じられる力強さや高揚感は、まさに英雄の姿を彷彿とさせますね。
参考|Classic Library|『英雄ポロネーズ』解説:ショパンの力作とホロヴィッツの名演
楽曲構成と特徴
英雄ポロネーズは、大きく分けて3つの部分から構成されています。
- 序奏と第1主題
堂々とした華やかな序奏で始まります。その後、有名なメロディ(第1主題)が登場。左手のオクターブによる重厚な伴奏も特徴的で、英雄的な雰囲気を高めています。 - 中間部:
曲調は一時的に静まり、より内省的で美しい旋律が奏でられます。
ここでは、ショパンらしい繊細な感情表現が求められます。技術的な難易度もさることながら、音楽的な深みを表現する上で非常に重要なセクションです(めっちゃ疲れる部分) - 第1主題の再現とコーダ:
再び冒頭の英雄的な主題が戻ってきますが、ここではさらに華やかさと力強さを増して展開。圧倒的な迫力と輝かしさを持ったコーダで、壮大に曲を締めくくります。
英雄ポロネーズの難易度は?ピアノ経験者が語るリアルなレベル
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英雄ポロネーズは、その華やかさとは裏腹に、ピアニストにとって非常に高い技術と音楽性が要求される難曲の一つ。ここでは、その難易度について具体的に見ていきましょう。
筆者がこの作品を演奏したのは、高校生(17か18歳)の頃でした。
ちなみに、全音ピアノピースでは難易度F(上級上)に分類されています。
英雄ポロネーズを弾きこなすために必要なピアノレベルとは?
一般的に、英雄ポロネーズに挑戦するためのピアノレベルの目安としては、以下のような教則本や曲集を修了していることが前提かなと思います。筆者もそうでした。
- ソナチネアルバム全曲修了:基本的な読譜力、指の訓練、音楽形式の理解が身についているレベル(「基礎が終わっているよ」というレベルです)
- ツェルニー30番・40番修了:より高度な指の訓練、スケールやアルペジオなどの基礎技術が安定しているレベル。特にツェルニー40番は、英雄ポロネーズのような技巧的な曲に取り組む上での一つの指標になるはず。
- バッハ インヴェンション・シンフォニア修了:複数の声部を同時に弾き分ける対位法的な書法に慣れ、各声部の独立性を保ちながら音楽を構築する能力が養われているレベル(バッハは苦手でしたが、必須かな)
- ショパンのワルツやノクターンの中級以上の曲:ショパン特有の美しい旋律の歌わせ方、ルバートの感覚、ペダリングの技術などをある程度習得していることが望ましいです。例えば、「華麗なる大円舞曲」やノクターンOp.9-2などがスムーズに弾けるレベルであれば、次のステップとして視野に入ってくるかもです。
ただ、前述のとおり、これらはあくまで目安です。個人の進度や得意なテクニックによっても変わってきますので、あらためてご留意ください。
英雄ポロネーズで特に難しいとされるテクニック3選
これを踏まえた上で、特に代表的なものを3つご紹介します。ざっとのポイントは以下の3つかなと。
- 左手のオクターブ連続(特に中間部):
中間部で現れる左手のオクターブによる下降音型は、この曲の象徴的なパッセージの一つですが、同時に最大の難所の一つでもあります。安定して弾きこなすためには、徹底的な部分練習と、手首や腕の使い方を工夫することが求められます(キツイかもですが、ハノンで体力つけましょう!) - 力強い和音の連続と跳躍:
曲全体を通して、力強い和音が連続して登場。特に冒頭や再現部では、両手で重厚な和音を正確に、かつ迫力を持って演奏する必要アリ。また、広い音域での跳躍も多く、正確な打鍵とスムーズな手の移動が不可欠です。 - 華やかで技巧的なパッセージと装飾音:
英雄ポロネーズには、指がもつれるような速いパッセージや、華やかな装飾音が随所に散りばめられています。そのため、一つ一つの音をクリアに、かつ音楽的な流れを損なわずに演奏するために、ゆっくりとしたテンポからの取り組んでください。
参考|ピティナ・ピアノ曲事典|ショパン :ポロネーズ第6番 「英雄」 変イ長調 Op.53
英雄ポロネーズは何年で弾けるようになる?目標期間と練習の目安
出典:YouTube:CANACANA family様より
リサーチした結果、けっこう見かける疑問として、以下のものがありました。
「憧れの英雄ポロネーズ、一体どれくらい練習すれば弾けるようになるの?」
結論から言うと、「何年で必ず弾ける」という明確な答えはありません。
というのも、ピアノの進度は個人の才能、練習時間、練習の質、指導者の有無など、様々な要因によって大きく左右されるので。
とはいえ、それでは参考にならないので・・・。
あくまで一般的な目安(筆者の視点含む)として、3つの視点から紹介しますね。
一つずつ解説します。
ピアノ経験年数別!英雄ポロネーズ習得までの一般的な期間
- ピアノ歴5年程度の方:
基礎がある程度できていれば、英雄ポロネーズに挑戦し始めることは可能です。
でも、譜読みから始まり、技術的な課題を一つ一つクリアしていくには、毎日集中的に練習したとしても、1年以上、あるいは数年かかることも珍しくないです。焦らずじっくり取り組む姿勢が大切です。 - ピアノ歴10年程度の方:
ツェルニー40番程度を終え、ある程度のレパートリーを持っている方であれば、より現実的な目標として見えてくるはず。それでも、譜読みから仕上げまでには数ヶ月から1年程度は見ておきたいところです。ツェルニー好きじゃなかったな・・・。 - ピアノ歴10年以上の方:
高度なテクニックと音楽性を既に身につけている方であれば、比較的短期間で譜読みを終え、数週間から数ヶ月で演奏可能なレベルに到達することも可能かもしれません。完成度を高められるレベルだと思います。
重要な注意点: 上記はあくまで大まかな目安です。また、質の高い指導を受けることで、習得期間を短縮できる可能性もありますよ!
音楽教室をお探しの方のために、こちらの記事を書きました。
毎日どれくらい練習すれば英雄ポロネーズが弾ける?練習時間と内容のポイント
出典:YouTube
当たり前ですが、英雄ポロネーズのような大曲をマスターするためには、継続的な練習が欠かせません。以下では、練習時間の目安などを解説します。
- 練習時間の目安:理想を言えば、毎日1時間以上の練習時間を確保したいところ。可能であれば、2時間、3時間と練習時間を増やせれば、それだけ早く進む可能性は高まります。しかし、大切なのは練習の質かなと。短時間でも集中して質の高い練習をすることが重要です。
- 部分練習の徹底: 通し練習ばかりでなく、難しい箇所、苦手な箇所を特定し、そこだけを繰り返し練習する「部分練習」を徹底しましょう。
- ゆっくりとしたテンポでの練習: 速いパッセージも、まずはゆっくりとした正確なテンポで練習し、徐々にテンポを上げていくことが大切です。指の動きや音の繋がりを意識しながら練習しましょう。
- 片手練習: 両手で弾くのが難しい箇所は、まず右手だけ、左手だけで練習し、それぞれのパートを確実にマスターしてから両手で合わせるようにしましょう。
- 譜読みの正確性: 音符だけでなく、リズム、強弱記号、アーティキュレーションなど、楽譜に書かれている情報を正確に読み取る練習をしましょう。
- 暗譜への挑戦: 楽譜を見ながら弾けるようになったら、少しずつ暗譜にも挑戦してみましょう。暗譜することで、より音楽に集中し、表現豊かに演奏できるようになります。
- 録音して客観的に聴く: 自分の演奏を録音して聴き返すことで、客観的に課題点を発見できます。
手が小さくても英雄ポロネーズは弾ける?悩みを克服する3つの方法
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「英雄ポロネーズを弾きたいけれど、手が小さくてオクターブが届きにくい…」
そんな悩みを抱えている方も少なくないようです。
確かに、手の大きさはピアノ演奏において一つの要素ではありますが、諦める必要は全くありません。
ここでは、手の小ささをカバーし、英雄ポロネーズに挑戦するための具体的な方法を3つご紹介します。
手が小さいピアニストが英雄ポロネーズを弾くための指使いの工夫
手の大きさにハンデがある場合、標準的な指使いに固執せず、自分に合った指使いを見つけることがとても重要です。
- 和音の分散(アルペジオ)
広い音域にまたがる和音で、同時に全ての音を押さえるのが難しい場合は、和音を分散させてアルペジオのように弾くことで対応できます。ペダルを効果的に使うことで、響きを繋げることができます。 - 指のストレッチとトレーニング
無理のない範囲で、指の間の筋肉を柔軟にするストレッチや、指の独立性を高めるトレーニングを日頃から行うことも有効です。ただし、痛みを感じるような無理なストレッチは禁物です。 - 手のフォームの見直し
手首や肘の位置、肩の力みなど、演奏時のフォーム全体を見直すことで、より効率的に指を使えるようになることがあります。先生に相談して、適切なフォームを身につけましょう。
全体的に「力まないこと」が本当に大切!力が入りすぎると、ラストまでたどりつけません。
英雄ポロネーズの難所をクリア!手が小さくても弾きやすい練習用アレンジ楽譜の活用
原曲のままではどうしても演奏が困難な箇所がある場合、手が小さい方向けにアレンジされた楽譜を活用するのも一つの有効な手段です。
などさまざまありますよ!
なので、まずはアレンジ譜で曲全体の流れや音楽性をつかみ、少しずつ原曲に近い楽譜にステップアップしていくという方法でもOKです。。
アレンジ楽譜を選ぶ際は、原曲の雰囲気をできるだけ損なわず、かつ自分のレベルに合ったものを選びましょう。
ヤマハのぷりんと楽譜だと、レベル別の楽譜が見つけやすいです。
【レベル別】英雄ポロネーズのおすすめ楽譜3選
出典:YouTube
最後に楽譜紹介をして終わりにします。
英雄ポロネーズに挑戦するにあたって、どの楽譜を選ぶかも大切。
ここでは、レベルや目的に合わせたおすすめの楽譜を3つのタイプに分けて紹介します。
ご自身の状況に合わせて、最適な一冊を見つけてください!
楽譜1:原曲に忠実!本格的に学びたい人向け
>>アマゾン:全音楽譜出版社 ショパン:3大ポロネーズ《軍隊》《英雄》《幻想》
>>アマゾン:ショパン: ポロネーズ 変イ長調 Op.53 「英雄」/ヘンレ社/原典版
特徴: 原典版や信頼性の高い校訂版に基づいており、ショパンの意図をできる限り忠実に再現しようとしています。運指やペダリングの指示は最小限か、あるいは複数の校訂者の意見が併記されている場合もあります。
向いている人: 既に高い演奏技術と読譜力があり、ショパンの音楽を深く研究したい上級者の方。指導者について本格的に学びたい方。
楽譜2:解説付きで安心!初挑戦の学習者向けサポート充実楽譜
>>アマゾン:すぐ弾ける! ピアノ初心者のための 名曲セレクション 2018秋冬号
特徴: 演奏上のポイントや難しい箇所の練習方法、詳細な運指、ペダリングの指示などが丁寧に解説されています。模範演奏CDが付属しているものもあります。初心者向けです。
向いている人: 英雄ポロネーズに初めて挑戦する方。独学である程度進めたい方。具体的な練習方法のヒントが欲しい方。
解説や運指が絶対的なものではなく、自分に合わない場合がありますが、情報が豊富で、取り組みやすく、運指に迷うことが少ない。
楽譜3:無料楽譜(IMSLPによる)
「とりあえずお金をかけずに楽譜をみたい!」という方は、著作権の切れた無料楽譜をダウンロードしてみるのも良いと思います。
いろいろな版も探せるので、結構便利です。ただし、楽譜のダウンロードのみなので、解説などはないのでご注意を。
IMSLPからのダウンロードはコチラから!
欲を言えば、実際に楽器店で楽譜を手に取り、中身を見てみることが大切です。先生に相談できる場合は、アドバイスをもらうのも良いでしょう。
英雄ポロネーズは何年くらいで弾ける?:まとめ
ということで、ショパンの「英雄ポロネーズ」について、その魅力から難易度、習得期間、そして手の大きさに悩む方へのアドバイスまで、幅広く解説してきました。
最後に、英雄ポロネーズ習得に向けたポイントを改めてまとめますね。
- 英雄ポロネーズはショパンの魂が込められた、勇壮で華麗な傑作である。
- 難易度は非常に高く、ピアノ中級~上級レベル(ツェルニー40番修了以上など)の技術と音楽性が求められる。
- 特に左手のオクターブ連続、力強い和音、技巧的なパッセージが技術的な難所となる。
- 習得にかかる期間は個人差が非常に大きく、ピアノ経験、練習時間、練習の質によって数ヶ月~数年単位と幅がある。
- 毎日コツコツと、質の高い練習(部分練習、ゆっくり練習、片手練習など)を継続することが最も重要。
- 手が小さい場合でも、指使いの工夫、練習方法の見直し、弾きやすいアレンジ楽譜の活用などで演奏は十分に可能である。
- ペダリングの工夫や音楽的表現力を磨くことで、手のハンディキャップをカバーすることもできる。
- 自分のレベルや目的に合った楽譜を選ぶことが、効率的な上達への近道となる。