この記事ではショパンの「ワルツ7番」の難易度を解説しています。
美しくもメランコリックな旋律で、世界中の人々を魅了し続けているショパンのワルツ集。
なかでも、「ワルツ第7番 嬰ハ短調 作品64-2」は一度は耳にしたことがある、という方も多いのではないでしょうか。この曲を聴いて「自分でも弾いてみたい!」と感じる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、同時に、
「この曲って難しいのかな?」
「ピアノ初心者だけど、いつか弾けるようになる?」
といった疑問をお持ちかもしれません。
この記事では、ショパンのワルツ第7番に焦点を当て、その正確な難易度、楽曲が持つ独特の特徴、そして「初心者でも挑戦できるのか?」という疑問にお答えします。
また、各見出し下には、素晴らしい演奏動画&解説動画も紹介しています。
本作に取り組む際の、参考演奏としてご視聴ください!
筆者は3歳からピアノを開始。紆余曲折を経て、かれこれ30年ほどピアノに触れています(音大には行ってません)。ワルツ7番は、筆者は8歳か9歳くらいで取り組みました。
ワルツ7番(ショパン)はどんな曲?基本情報と魅力を紹介
出典:YouTube
ショパンのワルツ第7番は、正式には「ワルツ第7番 嬰ハ短調 作品64-2」といいます。
1847年に作曲され、同年に出版されました。ショパンが作曲したワルツの中でも特に有名な作品の一つであり、その憂鬱で叙情的な主題と、対照的な明るく優雅な中間部(変ニ長調)のコントラストが印象的です。
なんだか、故郷ポーランドの大地を懐かしむような、憂いのある中間部ですね。
ワルツのリズムに乗りながらも、全体を通して、舞曲に留まらない深い音楽的な内容を持ち、ピアニストにとっても、技術だけでなく、豊かな表現力が求められる魅力的な楽曲となっています。
本作は、ショパンの生前に出版された最後の作品の1つです。
ワルツ7番(ショパン)の難易度は?
早速、本作の難易度について。
実体験を含めた結論から言うと、本作は中級かなと(あくまでも技術的難易度です)。
ピアノ学習の進度で言うと、ピアノ歴3年〜5年以上で、ソナチネアルバムやモーツァルト、ベートーヴェンの簡単なソナタに挑戦し始めた、あるいはある程度弾けるようになった段階の学習者が挑戦しやすいレベルと言えるでしょう(これくらいできれば、ゆとりを持って弾けるはず)。
ただし、これはあくまで目安。
ピアノ歴が同じでも、どのような教材を使って、どのような練習をしてきたかによって必要な技術レベルは異なります。
例えば、基礎的な指の訓練(ハノンなど)や、様々なアーティキュレーション(スラー、スタッカートなど)の練習をしっかり積んできた方であれば、目安よりも短い期間で挑戦できるかもしれません。
逆に、特定の曲ばかり弾いてきて基礎がおろそかになっている場合は、目安以上の時間が必要になることも考えられます。
単純な「ピアノ歴」というより、基礎的な技術や音楽的な理解力が身についているかどうかが重要だと思います(どんな作品にも言えますが)。
ワルツ7番(ショパン)の難易度を細かく分析!どこが難しい?
エフゲーニ・キーシン:出典:YouTube
具体的にどのような点が難しいのか、細かく見ていきましょう。
ポイントを3つに絞って解説します。
一つずつ解説しますね。
右手の技術的難易度:速いパッセージと装飾音
ワルツ第7番の難しさの一つは、右手に現れる速い音符の連続、いわゆるパッセージです。
特に冒頭やコーダ部分など、細かい音符を速いテンポで、しかも粒立ちを揃えて正確に弾くには、ある程度の指の訓練と独立性が必要です。
これらの装飾音符を、メロディーの流れを妨げずに、滑らかかつクリアに演奏するには、繊細な指のコントロールが不可欠。単に音を並べるだけでなく、メロディーラインを美しく歌わせる表現力も右手の難しさと言えるでしょう。
左手の技術的難易度:大きな跳躍とリズムの安定
基本的に3拍子のリズムですが、ショパンのワルツでは左手がベース音と和音の間を大きく跳躍する部分が多くあります。ワルツ第7番も例外ではなく、特に主部では低音のベース音を弾いた後、素早く移動して和音を弾く動作が繰り返されます。
ワルツ特有の「ブン・チャッ・チャッ」というリズムを、曲の最後まで崩さずに安定して刻み続けることも、左手の重要な役割であり難しさです。低音の響きと和音のバランスも考慮する必要があります。
両手の連携とバランス:独立した動きとポリフォニー
この曲では、右手と左手がそれぞれ異なる動きをすることが多く、両手の独立した動きと協調性が求められます。特に中間部などでは、両手の連携が重要です。
また、メロディーが埋もれてしまわないように、両手の音量バランスを適切に取ることも忘れずに。メロディーラインを際立たせつつ、伴奏がそれを支えるようなバランス感覚は、練習を重ねることで身についていきます。
「音をよく聴く」ことを心がけてみてください!
ワルツ7番(ショパン)は初心者には難しい?段階的なアプローチ
出典:YouTube
本作について「初心者でも弾ける?」という声をしばしば聞きます。
結論からいうと、「まったくの初心者では弾けない」が答えです(厳しいですが)
前述の通り、ワルツ第7番は中級〜中上級レベルの楽曲。
ピアノに触れたばかりの「完全な初心者」がいきなり挑戦するには、残念ながら難しいのが現実です。「必要な基礎力が備わってから挑戦するレベル」だと覚えておいてください!
なぜ完全な初心者には難しいのか?必要な基礎力
とはいえ、基礎力って具体的に何?という方のために。
例えば以下のような技術です。
- 楽譜を読む力: 変化記号(♯や♭など)が多く、複雑なリズムも出てくるため、正確に楽譜を読む能力が必要です。
- 指の独立性と訓練された打鍵: 速いパッセージや装飾音をクリアに弾くには、指一本一本が独立して動き、鍵盤をコントロールできる必要があります。
- ある程度の速度で正確に弾く技術: ゆっくりなら弾けても、曲の指定されたテンポで正確に弾くには練習が必要です。
- 両手の協調性: 右手と左手が異なる動きを同時に行う際に、スムーズに連携させる能力が求められます。
これらのことを意識しながら、練習してみてください!
基礎練にはやっぱりこの教本!(ボロボロになるまで使ってます)

まずは基礎固め!ワルツ7番挑戦に向けたステップアップ曲
ワルツ第7番に将来挑戦したいと考えている初心者の方は、まずは基礎固めにじっくり取り組むことが大切。以下のような教本や練習曲で基礎力を養いましょう。
以下のプロセスがベーシックなんじゃないかと思います。
でも、習う先生にもよりますので、参考までにということで。
- ハノン ピアノ教本: 指の訓練の定番です。指の独立性や均一な打鍵を養います。
- ツェルニー 100番練習曲、30番練習曲: 様々な技術要素を練習できます。指の速さや正確性を高めます。
- ブルグミュラー 25の練習曲: 表現豊かな短い曲集で、基礎的な技術と音楽性を同時に養えます。
- ソナチネアルバム: 古典派の形式を学びながら、両手の協調性や構成力を養えます。
- バッハ インヴェンションとシンフォニア: 対位法的な音楽を通じて、両手の独立性や声部を聴き分ける能力が高まります。
また、ショパンのワルツの中でも、比較的易しいとされる曲から挑戦するのも良いステップアップになりますよ!
例えば、ワルツ第9番(別れのワルツ)やワルツ第10番などは、ワルツ第7番よりも技術的なハードルが低く、ショパンらしい音楽に触れるのに適しています。
ワルツ7番に挑戦するために今すぐできること
これからピアノを始める方や、現在基礎練習に取り組んでいる方が、数年後にワルツ第7番を弾けるようになるために、今から意識しておきたいことがあります。
- 正しい姿勢と脱力: 無理のない姿勢で、体に余計な力が入らないように弾くことは、怪我の予防にもつながり、よりスムーズな演奏を可能にします。
- 指のトレーニングを継続する: ハノンなどの指の練習は地味に感じるかもしれませんが、将来難しい曲を弾くための土台となります。毎日少しずつでも続けましょう。
- 正確な譜読みの習慣をつける: 楽譜に書かれている音符、リズム、強弱記号、アーティキュレーションなどを正確に読み取る習慣をつけましょう。
- 耳を鍛える: 自分が弾いている音をよく聴き、美しい音色やバランスを追求する耳を養いましょう。
- 色々な曲を聴く: ショパンだけでなく、様々な作曲家のピアノ曲を聴くことで、音楽的な引き出しが増え、表現力も豊かになります。
焦らず、一歩ずつ着実に基礎力を積み上げていくことが、ワルツ第7番への一番の近道ですよ!
ワルツ7番(ショパン)の演奏・練習のコツを解説!上達への道
出典:YouTube:森本麻衣様より
「ちょっと今の自分には難しいかな〜」という方のために、以下では、ワルツ第7番を効果的に練習し、上達するためのコツを3つご紹介します。
ワルツ7番(ショパン)難易度克服のコツ1:部分練習とゆっくりなテンポでの反復
曲全体を通して弾く前に、特に難しいと感じる箇所を抜き出して集中的に練習しましょう。速いパッセージや大きな跳躍、複雑なリズムの部分など、課題となる箇所を特定します。最初は非常にゆっくりなテンポで、正確に弾くことから始めてみてください。
ワルツ7番(ショパン)難易度克服のコツ2:左手のリズムと右手のメロディーのバランス
ワルツのリズム感を出すためには、左手の「ブン・チャッ・チャッ」という伴奏形が非常に重要です。特に1拍目のベース音をしっかり響かせ、2拍目と3拍目の和音はそれよりも軽く弾くように意識しましょう。練習する際は、左手だけでメトロノームに合わせて正確なリズムを刻む練習も効果的です。
両手の音量バランスを意識し、メロディーが主役になるように弾くことが大切。
ワルツ7番(ショパン)難易度克服のコツ3:ペダリングの練習と表現力の追求
ショパンのワルツは、ペダリングが非常に重要です。単に音を繋げるだけでなく、音色を変化させたり、響きを豊かにしたりするためにペダルを効果的に使いましょう。
特に、和音が変わるタイミングでペダルを正確に踏み替える練習は必須!
ワルツ7番(ショパン)のおすすめ楽譜・エディション紹介
ワルツ第7番を練習するにあたり、どの楽譜を選ぶかは非常に重要です。様々な出版社から出ていますが、ここではいくつかおすすめの楽譜やエディションをご紹介します。
ヘンレ版

原典版として非常に信頼されています。
校訂が正確で、作曲家の意図をできるだけ忠実に再現してくれています。
パデレフスキ版

ポーランドのエディションで、ショパンの作品を研究したパデレフスキらによって校訂されています。演奏者にとって弾きやすいように、比較的多くの運指が書かれているのが特徴。
全音版

国内の出版社からも様々なエディションが出ています。
学習者向けに運指が丁寧に書かれていたり、解説がついていたりするものが多いです。
どの版を選ぶか迷う場合は、楽器店の楽譜コーナーで実際に手に取って見比べてみるのが一番良いでしょう。譜面のレイアウトや運指の書き込み方など、自分にとって見やすいもの、使いやすいものを選ぶことが大切です。
初心者向け・演奏会用など目的別の選び方
- 練習用: 初めてワルツ第7番に挑戦する場合や、練習段階では、運指が丁寧に書かれていて、必要に応じて解説がついている国内版の学習者向けエディションがおすすめです。
指の動きに迷うことなく練習に集中できます。 - 演奏会用: 演奏会などで披露することを目指す場合は、作曲家の意図をより正確に反映しているとされるヘンレ版やペータース版などの原典版を参照するのが良いでしょう。
複数の版を見比べて、解釈を深めることもあります。 - 電子楽譜・アプリ: 最近では、電子楽譜や楽譜アプリも普及しています。タブレットなどで楽譜を見ることができ、持ち運びにも便利です。書き込み機能やメトロノーム機能などがついているものもあります。
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楽譜以外にあると便利なもの
そのほか、楽譜以外にも、練習にあると便利なものも紹介しますね。
- メトロノーム: 正確なリズム感を養うために必須です。アプリのものでも十分です。
- 筆記用具: 楽譜に運指や注意点を書き込むための鉛筆や消しゴム。
- 演奏解説書・分析書: 曲の背景や構成、演奏上のポイントなどが解説されている書籍は、曲への理解を深めるのに役立ちます。
- 参考音源: プロのピアニストによる演奏を聴くことで、曲のイメージを掴んだり、表現の参考にしたりできます。ただし、真似するだけでなく、自分自身の音楽を追求することが大切です。
ワルツ7番(ショパン)の難易度解説:まとめ
ということで、今回はショパンのワルツ7番の難易度を解説しました。
ショパンのワルツ第7番は、美しい旋律と深い情感を持つ素晴らしい楽曲です。
難易度的には、中級レベルではありますが、適切な基礎練習を積み、段階的にアプローチすることで、多くのピアノ学習者がチャレンジできる作品だと思います!
あらためて、今回のポイントをまとめます。
- ワルツ第7番はショパンが作曲したワルツの中でも特に有名で人気の高い楽曲です。
- 難易度は一般的に中級〜中上級レベルとされており、ピアノ歴3年〜5年以上が目安となります。
- 右手の速いパッセージや装飾音、左手の大きな跳躍やリズムの安定など、技術的な難しさがあります。
- ショパンらしいルバートや音色の変化など、表現力や音楽性もこの曲の重要な難易度要素です。
- 完全にピアノに触れたばかりの初心者には難しく、挑戦するには基礎的な技術力が必要です。
- ハノンやツェルニー、ブルグミュラーなどの基礎練習や、比較的易しいショパンのワルツからのステップアップが推奨されます。
- 部分練習、ゆっくりなテンポでの反復、左手のリズムと右手のバランス、ペダリング練習などが上達のための重要なコツです。
- 焦らず、着実に基礎力を積み上げ、音楽的な表現力を磨くことが、ワルツ第7番を弾きこなすための鍵となります。