今回は、ロマン派を代表する作曲家ブルックナーのおすすめ代表曲の紹介です。
クラシックファンの間でも、好き嫌いが分かれる作曲家ですが、
噛めば噛むほど、味わいのある作曲家とも言われています。
まぁ、長大な作品が多いので飽きてしまうのもわからなくはないですが・・・。
そこで本記事では「これは知っておきたい」ブルックナーのおすすめ代表曲をします。
これまで彼の作品を聴いてこなかった方も、
「ちょっとくらいなら聴いてみようかな」という程度にザックリと解説してますので、
教養の一助となれば幸いです。
ブルックナーの生涯についてはこちらに書いてますので、
併せて参考にされてください!
ブルックナーのおすすめ代表曲7選
今でこそ、ロマン派を代表する作曲家として知られるブルックナーですが、
じつはその評価が高まったのは人生の後半からでした。
それまでは作曲の勉強&教師&オルガニストなどで生計を立てた苦労人でもあります。
そんなブルックナーの代表曲にはどんな作品があるのでしょうか。
今回は筆者の独断と偏見による7曲を紹介します。
ブルックナーの代表曲その1、テ・デウム
いきなり『テ・デウム』の紹介という無茶なサイトですが(笑)。
この作品はなんといっても迫力抜群!「聴いていても飽きない」のが特徴です。
本作は1883年から1884年にかけて作曲され、
ブルックナーとしては比較的な短い作品なので、
初めてブルックナーの作品を聴くには良いかと思います。
ブルックナー自身「全ては主の最大の誉れのために作曲した」と明言しており、
後期ロマン派の宗教作品の中でも最高峰と称されています。
1885年、ブルックナー自らが指揮した初演は成功を収め、
存命中に30回程度演奏されました。
全5曲で構成されており、演奏時間はだいたい30分程度です。
ちなみにタイトルの「テ・デウム」とは、
カトリック教会の聖歌の一つで、Te Deum laudamus”(われら神であるあなたを讃えん)から取られています。
代表曲その2、交響曲第3番「ワーグナー」
ということで交響曲の紹介です。
本作は1873年に初稿が完成したブルックナー3番目の交響曲です。
リヒャルト・ワーグナーに献呈されたことから、
「ワーグナー」の副題でも知られています。
ブルックナーのダイナミズムが存分に味わえる作品なので、
最初に聴く交響曲としてはうってつけかもしれません。
作曲から2年後の1875年に初演を迎える予定でしたが、
オーケストラの楽団員により「演奏不可能」と拒否されたというエピソードが残っています。
その後1877年にようやくブルックナー自身の指揮により初演を迎えたものの、
思ったように理解されず、演奏が終わる頃にはほとんどの客が席を立っていたそうです。
全4楽章となっており、演奏時間は1時間程度です。
代表曲その3、交響曲第4番「ロマンティック」
ブルックナーの作品でも、もっとも演奏機会が多い作品です。
「ロマンティック」という副題の通り、
親しみやすく抒情豊かな作品なので、
ブルックナー初心者の方におすすめします。
1874年1月に作曲が始められ、10ヶ月を経て完成を迎えました。
その後、何度かの改訂を経て、1881年にウィーンにてようやく初演が行われています。
名指揮者ハンス・リヒターの初演に感動したブルックナーは、
「これでビールでも飲んでくれ」と1ターラー銀貨を渡したそうです。
ちなみに、1ターラーはビール一杯の何十倍もの価値のある銀貨だったとのこと。
代表曲その4、交響曲第5番
演奏時間80分以上にわたるブルックナーの長編交響曲です。
ブルックナー作品が苦手な方の中には、
「作品が長すぎる」と感じる人も多いようです。
でも、じっくり聴いてみると崇高さとか精神性の高さとかが、
なんとなく伝わってくる(気がします)。
「それでもやっぱり苦手」という方は、
本作が後期ロマン派を代表する交響曲であるということを知っておくだけで大丈夫です(笑)。
作品にはブルックナーの宗教的信仰心や、
神への畏敬(いけい)の念がこめらていると一般的に解釈されています。
1875年に作曲に取り掛かり1877年に改訂が完成しました。
しかし初演の機会が得られず、完成から16年後の1894年にようやく初演を迎えています。
代表曲その5、交響曲第8番
ブルックナーの最高傑作と称される(意見はいろいろですが)交響曲です。
演奏時間はなんとおよそ80分!!
長大な交響曲であり、こちらも後期ロマン派を象徴する代表作と言われています。
1884年に作曲家が始められ、1887年の夏に完成しました。
しかしまたも改訂に改訂を重ね、1890年に一応の完成を見ています(第2稿)。
ブルックナーの作品を聴いていると、
「山登り」を連想するのは筆者だけでしょうか・・・。
少しずつ景色が変化しながら、高みに登っていくような。
そんな幻想を抱かせてくれる作品だと思います。
演奏時間80分と書きましたが、
指揮者によってまちまちで、動画のチェリビダッケの指揮は100分を超えています。
それだけ、解釈の幅が広い作品なのかもしれません。
ブルックナーの代表曲その6、弦楽五重奏曲
ブルックナーの本領は交響曲にありますが、
室内楽にも名作を残しています。
本作『弦楽五重奏曲』は1879年に作曲され、
1885年にウィーンにて初演が行われました。
ブルックナーはその生涯で2曲の室内楽を作曲しており、
本作はそのうちの1曲です。
交響曲と同様、ブルックナーを代表する作品であり、
演奏機会も多い傑作として現在も愛されています。
室内楽としてはかなりの大作で、
全4楽章の構成で演奏時間は約45分です。
ブルックナーらしい緻密(ちみつ)な構成が聴きどころの一つです。
代表曲その7、ヘルゴランド
ウィーン男声合唱協会創立50周年を祝うために作曲されたカンタータです。
カンタータとは伴奏付きの声楽曲のことを言います(ザックリね)。
1893年のブルックナー最晩年の作品であり、最後の作品でもあります。
タイトルの「ヘルゴラン」とは、ドイツの北海にある小さな島の名前です。
ブルックナー最後の作品ではあるものの、
作品の力強さという点においては、円熟期以上の迫力を感じられます。
演奏時間は15分程度とブルックナーにしては短い作品ですが、
1893年に行われた初演は大成功を収め、当時の皇帝からも絶賛されたそうです。
ブルックナーの作品の特徴や魅力は?
ブルックナー作品の特徴や魅力について超絶簡単に解説します。
とっつきにくい感があるブルックナーですが、
ロマン派の集大成とも呼べる作曲家でもありました。
ブルックナーの作品の特徴や魅力その1、壮大なオーケストレーションと対位法の使用
ブルックナーの作品は壮大で複雑なオーケストレーションが特徴。
また、ブルックナー対位法(対位法的なテクスチャ)を多く使用し、和声進行においても独自のアプローチを取ります。
これにより、作品は音楽的に豊かで複雑な響きを持ちます。
今回紹介したおすすめ代表曲をどれか1つでも聴いてみてください。
絶妙に積み重ねられた音楽的構造が、きっと感じられるはずですよ。
例えば、交響曲第8番ハ短調はブルックナーの対位法とオーケストレーションの高度な使用例で、第1楽章の厳粛な序奏やフィナーレの壮大な合唱などが味わえます。
特徴や魅力その2、宗教的な要素と合唱の導入
熱心なカトリック教徒だったブルックナー。
そんなキリスト教的な霊感が彼の音楽に強いインスピレーションをもたらしました。
ブルックナーの作品には、しばしば宗教的なテーマ性や合唱が組み込まれており、
彼の音楽に神秘的で精神的な要素を感じるのもこのためです。
今回の『テ・デウム』なんかを聴くとよくわかります。
また、 『交響曲第9番ニ短調』ではフィナーレに合唱が登場し、宗教的なテーマ性が顕著に表れています。ブルックナーは未完成のまま亡くなったため、この曲のフィナーレは不完全ではるものの、ブルックナーの宗教性が顕著に現れていると言えるでしょう。
特徴や魅力その3、情熱的で感情的な表現
ブルックナーの音楽は情熱的で感情的な表現も際立っており、それにより、作品には美しい旋律や圧倒的な情熱が表れ、聴衆に強烈な感情的な体験をもたらします。
『交響曲第7番ホ長調』の第1楽章は、壮大で感情的な展開を伴う美しい旋律が特徴で、その情熱的な表現がよくわかるのではないでしょうか。
また、ブルックナー特有の表現方法も魅力の1つ。
とくに交響曲の作曲においてさまざまな書法を生み出したことでも知られています。
以下にそのいくつかを紹介します。
ブルックナーの代表曲まとめ
今回はブルックナーの代表曲やその特徴・魅力について解説しました。
この記事を読まれた方が、少しでも「聴いてみようかな」と思っていただければ幸いです。
長大な作品が多いブルックナーですが、
作品の中で起きる変化を楽しむと、少しずつ興味が湧いてくるかもしれません。
ということで、今回はここまで。
・ブルックナー開始
⇨冒頭部分が弦楽器のトレモロで始まる手法
・ブルックナー休止
⇨テーマが変化するときに、全体が一斉に止まる手法
・ブルックナー・リズム
⇨交響曲第4番・6番でみられる、2+3を用いたリズム
・ブルックナー・ゼクエンツ
⇨同一テーマ(音型)を繰り返し、作品にメリハリを持たせる手法