この記事ではラフマニノフの「ヴォカリーズ」を解説します。
美しい旋律で、発表以来、人々を魅了し続けている本作。
もともとは声楽曲として作曲されましたが、ピアノ独奏のほか、さまざまな楽器にアレンジされています。
これまで聴いたことがない方は、「こんなに美しい作品があるの?」と驚かれるのではないでしょうか。
本記事では、ヴォカリーズ」の楽曲の解説だけでなく、ピアノの難易度、おすすめの演奏、楽譜情報などを詳しく解説しますので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください!
ラフマニノフ『ヴォカリーズ』とは?
出典:YouTube
まずは聴いてみてください!
切なくも、哀愁が漂うメロディー。
旋律の美しさに思わず涙してしまう人も。
歌曲集の最後を飾る名曲
ラフマニノフの「ヴォカリーズ」は、1915年に作曲された14曲からなる歌曲集「Op.34」の最後を飾る第14曲として作曲されました。
1番から13番までは、ロシアの詩人による詩をもとに歌詞がつけられています。
この曲は当初、声楽とピアノのための作品として書かれましたが、その美しい旋律と深い表現力から、後にラフマニノフ自身によってオーケストラ版にも編曲されました。
「ヴォカリーズ」は発表以来、クラシック音楽の名曲として広く愛され、さまざまな楽器や編成での演奏が行われています。
オーケストラ版、チェロとピアノ版、ヴァイオリンとピアノ版など多くのアレンジが存在し、その普遍的な美しさは時代や国境を超えて多くの人々に感動を与え続けています。
また、本作はソプラノ歌手のアントニーナ・ネジダノワ(ソプラノ)に捧げられました。
ラフマニノフは彼女の美しい声質と表現力を存分に引き出すため、言葉による制約を取り払い、純粋な旋律と声の響きだけで感情を表現できる作品を創作しています。
1916年2月6日、「クーセヴィツキー・コンサート」が開かれ、アントニーナ・ネジダノワによってモスクワにて初演されています。
それぞれのアレンジについては、下記に紹介動画を添付しています。
「ヴォカリーズ」ってどういう意味?
「ヴォカリーズ(Vocalise)」という言葉は実はフランス語に由来し、「声にする」や「声に出して歌う」を意味します。
その期限は、18世紀中頃まで遡るとのこと。
内容としては、歌詞を用いずに母音のみで歌う声楽曲、あるいは発声練習のための楽曲と覚えておくと良いでしょう。
ラモーやリュリの時代にはすでにあったとされています。
なので、現在でもプロの声楽家が声の技術を磨くために行う練習曲としても用いられることも多いです。
しかし、ラフマニノフは「ヴォカリーズ」を単なる練習曲の域を超えた、芸術作品として昇華させました。
「ヴォカリーズ」には歌詞がない
上述の通り、本作には通常の歌曲とは異なり、言葉による表現(つまり歌詞)はありません。
純粋なメロディーとハーモニーの美しさのみで構成されています。
そのため、声楽曲としてだけでなく、ピアノ独奏やさまざまな楽器による演奏も広く親しまれています。
ラフマニノフ『ヴォカリーズ』のピアノ難易度は?
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『ヴォカリーズ』にはピアノ独奏版があり、演奏レベルは中級上~上級者向け とされています。
ちなみに、全音ピアノピースでは「難易度E」(上級)です。
なので、穏やかなテンポではあるものの、技術力、そして何よりも深い表現力が求められます。
演奏のポイントは以下の通りです。
- 表現力:単純な旋律の繰り返しですが、細やかなダイナミクスや音色の変化が求められます。
- アルペジオの動き:左手の伴奏はアルペジオが多く、なめらかに弾く技術が必要。
- 音域の広さ:高音域から低音域まで広く使うため、手の柔軟性も重要です。
ヤマハのぷりんと楽譜なら、初心者向けの簡単な編曲もあるので、ピアノを始めたばかりの人でも楽しめますよ!
出典:YouTube
さまざまな『ヴォカリーズ』
『ヴォカリーズ』は、ピアノや声楽だけでなく、さまざまな楽器で演奏されています。
楽器ごとに個性があるため、表現の違いを楽しむのも良いでしょう。
多くのアレンジから、今回は4つのバージョンをお届けします。
チェロ版
コントラバス版
ヴァイオリン版
オーケストラ版
チェロ版
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本当に人が歌っているかのような、チェロ版も素晴らしいです。
心の奥に響く旋律をお楽しみください。
チェロ版だと、「人間味が増す」ような気がしますね。
演奏は世界最高のチェリストの一人ミーシャ・マイスキーさんです。
コントラバス版
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低音の響きが独特な魅力を持つ編曲で、しっとりとした演奏が特徴です。
コントラバスだと、より男性的なイメージが強くなる感じでしょうか。
木の温もりが伝わるような感覚になりますね。
ポール・エアハルトさんの演奏です。
ヴァイオリン版
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ヴァイオリンならではの繊細な表現が美しく、原曲の持つ抒情性が際立ちますね。
チェロやコントラバスとは反対に、こちらは女性的な印象を受けます。
透き通るような音色です。演奏はヴァイオリニストの高松あいさん。
オーケストラ版
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最後はオーケストラ版です。
オーケストラ版だと、広がりを感じますね。
それぞれの楽器の個性が発揮されていて、聞き応えも十分です。
指揮はユーリ・シモノフさんです。
ラフマニノフ『ヴォカリーズ』の楽譜情報
『ヴォカリーズ』の楽譜はさまざまな編曲がありますが、今回は3つの楽譜を紹介しますね。
全音ピアノピース版(ピアノ用)

この曲だけが欲しい方にはこれ1択かなと思います。
ただ、上述したように難易度は上級のEなので、結構難しいかもしれません。
それでも挑戦したい人はぜひ!
歌曲版ヴォカリーズ 高声用・シャーマー社

ほとんどいないと思いますが、声楽版の楽譜です。
もともと声楽曲なので、チャレンジしてみたい方がおりましたらご覧ください。
チェロ用楽譜

ピアノ伴奏付きチェロ用楽譜です。
チェロでの演奏もとても美しいので、演奏される方はチャレンジしてみてください!
「演奏してみたいけど難しいな・・・」
という方は、ヤマハのぷりんと楽譜がオススメ。
初級から上級まで、レベル別で購入できますので、興味のある方はチェックしてみてくださいね。

ヴォカリーズ解説:まとめ
今回のまとめです。
- 『ヴォカリーズ』はラフマニノフ作曲の《14の歌曲》作品34の最終曲(第14曲)。
- 「ヴォカリーズ」は歌詞がなく、母音のみで歌う独特の歌曲。
- 原曲は声楽曲だが、ピアノ独奏やソロ楽器版など多くの編曲が存在する。
- ピアノ独奏版の難易度は中級~上級で、表現力やアルペジオの技術が求められる。
- 初心者向けの編曲もあり、簡単なアレンジで演奏できる楽譜もある。
- ソロ楽器版も人気で、特にチェロ・コントラバス・ヴァイオリン版が魅力的。
- 楽譜は原曲(声楽+ピアノ)、ピアノ独奏版、ソロ楽器編曲など多彩に出版されている。
- オンラインで楽譜を購入でき、初心者向けのアレンジ版も手に入る。
- シンプルな旋律ながら、深い表現力が求められる魅力的な楽曲。