サン=サーンス「アレグロ・アパッショナート」の難易度を徹底解説!【楽譜紹介あり】

画像出典:アマゾン:サン=サーンス:交響曲第3番《オルガン付き》、交響詩《死の舞踏》、組曲《動物の謝肉祭》

    サン=サーンスの名曲「アレグロ・アパッショナート」。
    情熱的で美しいこの曲に憧れ「いつか弾いてみたい!」と思う方も多いのではないでしょうか。

    しかし、挑戦するとなると・・・かなりの難曲。

    • 「難易度はどれくらい?」
    • 「自分にも弾けるだろうか?」

    こうしたことを思う方も多いと思います。

    そこでこの記事では、サン=サーンス「アレグロ・アパッショナート」の難易度や技術的なポイントを、他の曲との比較を交え、徹底解説します。

    さらに、効果的な練習方法もご紹介。記事の後半では、楽譜情報もまとめました。

    この記事を読めば、この曲への挑戦がより具体的になりますので、ぜひ最後までご一読ください!

    筆者は3歳からピアノを開始。紆余曲折を経て、かれこれ30年以上ピアノに触れています。音大には行っておらず、なぜか哲学で修士号という謎の人生です。

    カミーユ・サン=サーンスについて

    出典:YouTube

    本題に入る前に、少しだけ補足を。サン=サーンスについて紹介しますね。
    詳しい解説は別記事で書いていますので、そちらもぜひ参考にしてください!

    ロマン派を代表するフランスの作曲家 ~フォーレの師、同時代の巨匠たち~

    カミーユ・サン=サーンス(1835-1921)は、フランス・ロマン派音楽を代表する作曲家の一人です。ピアニスト、オルガニスト、音楽評論家としても活躍しました。

    幼い頃から卓越した(常人離れした)音楽の才能を発揮し、神童として早くから知られるようになります。その後、パリ音楽院で学び、作曲家として多くの作品を作曲。

    その作風は、古典的な形式美とロマンティックな旋律が特徴で、現在でもその明快で洗練された音楽は、多くの人に愛されています。

    同時代には、フランクやビゼードビュッシーなどが活躍。サン=サーンスとも交流を深めました。

    また、弟子のガブリエル・フォーレの才能を見出し、指導したことでも知られています。
    そういう意味で、サン=サーンスは近代フランス音楽の礎を築いた人物といもいえるでしょう。

    「モーツァルトの再来」と言われるほどの天才っぷり。一方で、辛辣(しんらつ)な批評により、かなり煙たがられていたなんて話も残っています。

    さらに詳しい解説は、こちらの記事で書いています。

    サン=サーンスの代表的な作品と「アレグロ・アパッショナート」

    サン=サーンスは多作な作曲家で、交響曲からピアノ曲、協奏曲やオペラまで、なんでもありの天才。なかでも有名な作品に、「動物の謝肉祭」があり、誰でも一度は聴いたことのある名曲も生み出しています。

    そのほか、荘厳な「交響曲第3番《オルガン付き》」やオペラ「サムソンとデリラ」も彼の代表作の一つ。今回取り上げるピアノ独奏版「アレグロ・アパッショナート.Op70」は1884年に作曲された小品です。

    もともと「パリ音楽院入学のための課題曲」だけあって、かなりの難曲ですが、「映える作品」として、現在でも演奏家のレパートリーになることが多い1曲です。

    参考までに組曲「動物の謝肉祭」より「水族館」を紹介しますね。

    出典:YouTube

    参考|ピティナ・ピアノ事典|サン=サーンス :アレグロ・アパッショナート 嬰ハ短調 Op.70

    アレグロ・アパッショナート Op70とはどんな曲?

    出典:YouTube

    情熱的かつ技巧的な名曲

    「アレグロ・アパッショナート」とは、「情熱的なアレグロ」という意味。その名の通り、情熱的でエネルギッシュな楽曲。

    同時に、サン=サーンスらしい優雅さも兼ね備えています
    華やかな技巧とダイナミックな表現を楽しめるのも本作の魅力。

    アレグロ・アパッショナートの楽曲構成と聴きどころ

    この曲は比較的短いながらも、ドラマティックな構成を持っています。

    大きく分けて、提示部、展開部、再現部、コーダから成ります。

    • 提示部:力強い第一主題で始まります。情熱的な雰囲気が印象的です。続いて、歌うような美しい第二主題が現れます。対照的な魅力があります。
    • 展開部:主題が様々に変化し、技巧的なパッセージが展開されます。緊張感が高まり、ドラマティックな盛り上がりを見せます。
    • 再現部:第一主題と第二主題が再び現れます。提示部とは異なる雰囲気で、より情熱的に演奏されることもあります。
    • コーダ:華々しく、力強く曲を締めくくります。演奏効果も高く、聴きごたえのある終結部です。

    アレグロ・アパッショナートが演奏される場面

    この曲は、その魅力と適度な長さから様々な場面で演奏されます。

    コンクールの課題曲になるだけでなく、プロの演奏家のリサイタルでは、アンコールピースとしても人気です。
    これだけの作品を演奏できたら、かなり気持ちいいいでしょうね!(ちょい激ムズ要素入ってますが・・・。)

    アレグロ・アパッショナートの難易度を徹底分析

    出典:YouTube

    総合的な難易度評価

    実体験からすると、「アレグロ・アパッショナート」の難易度は、上級〜上級上かなと。

    全音ピアノピースでは出版されていませんが、「E」〜「F」難易度だと思います。

    教則本だと、モーツァルトやベートーヴェンのソナタに達しているレベル。
    そのほか、ツェルニー30番を終え、40番に取り組んでいるかた向けくらいです。

    なので、決して易しい曲ではありません

    とはいえ、この曲にチャレンジするレベルの人は、きっと基礎がしっかりしるレベルだと思いますので、「映える一曲」として挑戦するのもアリです。

    かなり素早い指の動きが求められますが、「複雑さ」からみると、それほど複雑な構造はしていないというのが正直な印象です。

    技術的な難易度ポイント【詳細解説】

    もう少しこの曲を演奏する上での技術的なポイントを解説しますね。
    個人的に気がついたポイントは以下の3つです。

    • 速いパッセージと正確な音階・アルペジオ
    • 広範囲な音域と跳躍の正確性
    • 豊かな表現力とダイナミクスのコントロール

    速いパッセージと正確な音階・アルペジオ

    曲全体を通して、速いパッセージが多く登場します。
    そのため、特に音階(スケール)やアルペジオ(分散和音)を滑らかに、かつ正確に弾く技術が求められます。指の独立性や素早い動きが必須!

    一音一音をクリアに発音することを意識しましょう。

    広範囲な音域と跳躍の正確性

    この曲では、音域が結構広く使われます。楽譜をみると、低い音から高い音まで、素早く移動するパッセージが多いです。

    なので、特に大きな跳躍(音が大きく飛ぶこと)を正確な音程で捉えることが難しいポイントです。

    豊かな表現力とダイナミクスのコントロール

    「アパッショナート(情熱的に)」という指示通り、豊かな感情表現が不可欠。
    情熱的な部分と、歌い上げる美しい旋律との対比を明確にすることが大切かなと。
    クレッシェンドやデクレッシェンドなどのダイナミクスの幅も広いです。

    大胆な一方で、細やかなコントロールが求められます。

    他の有名曲との難易度比較

    単純に他の作品と難易度を比較するのは難しいですが・・・。
    でも、あえて言うのであれば、以下のような感じがします(※個人の技量や得意なテクニックによって感じ方は異なります。)

    • ベートーヴェンのピアノソナタ「悲愴」よりは取り組みやすいかもしれません。
    • シューマンの「飛翔」なんかと比べると同じくらいかな〜という印象。
    • シューベルトの「即興曲90-2」より、ちょい難易度高め

    こんな感じでしょうか。

    関連記事もありますので、そちらもチェックしてみてください!

    挑戦するために必要な基礎スキルと練習期間の目安

    全体的なスキル・技術としては、以下が習得されていることが望ましいです。

    • 正確なスケールとアルペジオの演奏技術。
    • 基本的な和音の知識と演奏技術。
    • ある程度の読譜力とリズム感。
    • 豊かな表現力と音楽性。

    練習期間の目安については、個人のレベルや練習時間によって大きく異なります(どの曲でもそうですが)。

    個人的には、毎日1時間程度の練習で、数ヶ月から半年程度が一つの目安となるでしょう。
    焦らずじっくりと取り組むことが大切かなと。

    1時間以上取れる人であれば、完成までの期間は短くなりますよ!

    アレグロ・アパッショナートを攻略!効果的な練習方法と弾き方のコツ

    出典:YouTube

    ゆっくりとしたテンポでの正確な練習の重要性

    新しい曲に取り組む際、最も重要なのはゆっくりとしたテンポでの練習です。

    というのも、最初から速いテンポで弾こうとすると、間違いや悪いクセがつきやすくなるので(後からクセを直そうとすると結構大変です)

    なので、まずは一音一音を丁寧に、正確なリズムと音程で弾けるようにしましょう。

    難しいパッセージは、特にゆっくりと反復練習することが効果的です。

    難所克服のための具体的な練習方法

    • 指番号の工夫: 弾きやすい指番号を見つけること。楽譜に書かれている指番号がすべてではないので。先生と相談しながら、自分の手に合った指使いを研究しましょう。
    • 部分練習: 曲全体を通して練習するだけでなく、難しい箇所や特定のフレーズを抜き出して集中的に練習!
    • リズム練習: 速いパッセージは、様々なリズムに変えて練習する(例:付点リズム、逆付点リズムなど)と、指の動きが整理され、均一な演奏に繋がります。
    • メトロノームを使った練習: 正確なテンポ感を養うために、メトロノームは必須。ゆっくりとしたテンポから始め、徐々に指定のテンポに近づけていきましょう。

    音楽表現を豊かにするためのアプローチ

    技術的な練習と並行して、音楽表現を豊かにするためのアプローチも大切です。

    • 楽曲の背景を理解する: 作曲家サン=サーンスや、この曲が作られた時代背景について調べてみましょう。曲への理解が深まりますよ!
    • 様々な演奏家の録音を聴く: プロの演奏家の録音を聴くことは、表現のヒントを得る上で非常に有効です。様々な解釈に触れてみましょう。
    • 自分の演奏を録音して客観的に聴く: 自分の演奏を録音し、客観的に聴き返すことで、課題点や改善点が見えてきます。

    アレグロ・アパッショナートの楽譜情報

    出典:YouTube

    おすすめの有料楽譜とその特徴

    質の高い楽譜を選ぶことは、練習の効率を上げる上で重要です。

    ご自身にあった楽譜を選びましょう。

    これらの楽譜は、運指(指使い)や演奏解釈に関する情報が少ない場合もあります。

    その場合は、先生に確認しんがら取り組んでみてください!

    楽譜選びで失敗しないためのポイント

    楽譜を選ぶ際は、以下のポイントを考慮しましょう。

    • 信頼できる版か: 原典版や評価の高い校訂版を選びましょう。
    • 見やすさ: 音符の大きさやレイアウトが自分にとって見やすいか確認しましょう。
    • 運指の有無: 初心者~中級者の方は、運指が記載されている楽譜の方が練習しやすい場合があります。
    • 解説の有無: 曲の背景や演奏解釈に関する解説が付いていると参考になります。

    可能であれば、実際に楽器店で手に取って見比べてみるのがおすすめです。

    アレグロ・アパッショナートの難易度解説:まとめ

    サン=サーンス「アレグロ・アパッショナート」。演奏には、かなりの技術的な挑戦が必要な曲です。
    しかし、その情熱的で美しい旋律は多くの人々を魅了し続けています。

    何よりも、まずはゆっくりと、着実に練習を重ねることが大切。
    努力の先には、きっと大きな達成感と音楽の喜びが待っているはずです。

    少しでも気になった方は、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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