多くのピアノ学習者が一度は憧れる、モーツァルトの「きらきら星変奏曲」。
この名曲を「いつか弾いてみたい!」と夢見る方も多いのではないでしょうか。
とはいえ、
と思う人も多いのではないでしょうか。
記事の前半では「きらきら星の楽曲構成」や「難易度」を解説し、記事の後半では「弾き方のポイント」や「何歳くらいから弾けるのか」などを解説します。
その他、無料楽譜のダウンロード方法も紹介しますので、ぜひ最後まで読んでくださいね!
筆者は3歳からピアノを開始。紆余曲折を経て、かれこれ30年以上ピアノに触れています。音大には行っておらず、なぜか哲学で修士号を取得するという謎の人生です。
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きらきら星変奏曲とは?
出典:YouTube:CANACANA family様よち
難易度解説に入る前に、ちょっとだけ寄り道を。
まずは、「きらきら星変奏曲」がどのような曲なのか、その魅力に迫ってみましょう。
作曲者モーツァルトについて:神童が生み出した珠玉の一曲
「きらきら星変奏曲」の正式な題名は、「フランスの歌『ああ、お母さん、あなたに申しましょう』による12の変奏曲 ハ長調 K.265」です。
作曲したのは、かの有名なヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。
幼い頃から神童としてヨーロッパ各地で演奏旅行を行い、数多くの名曲を残した作曲家です。
モーツァルトは、オペラ、交響曲、協奏曲、室内楽曲、そしてピアノ曲と、あらゆるジャンルで傑作を生み出しました。
なかでもピアノ音楽は、古典派の様式美と、彼ならではの軽やかさ、優雅さ、そして深い感情表現が見事に融合しており、今日でも多くのピアニストに愛されています。
「きらきら星変奏曲」は、そんなモーツァルトのピアノ曲の中でも特に親しみやすく、人気のある作品の一つです。
一説には、1778年頃、モーツァルトがパリに滞在していた時期に作曲されたと言われています。
「きらきら星」だけじゃない?原曲「ああ、お母さん、あなたに申しましょう」とは
一般に「きらきら星」として知っているメロディは、実はフランスの古い恋の歌「ああ、お母さん、あなたに申しましょう(Ah! Vous dirai-je, Maman)」が原曲。
このメロディは、18世紀半ばにはヨーロッパ各地で流行しており、モーツァルト以外にも多くの作曲家がこの主題を用いた変奏曲を作曲しています。
日本では、このメロディに「きらきら光る~」という歌詞がつけられ、「きらきら星」として童謡の定番となりました。
モーツァルトの生涯については、こちらの記事を参考にしてくだい!
楽曲構成:主題と12の変奏が織りなす多彩な世界
「きらきら星変奏曲」は、まず最初にシンプルな「主題(テーマ)」が提示され、主題をさまざまな形で変化させた12の「変奏」が続きます。
- 主題(Thema): おなじみの「きらきら星」のメロディが、素朴かつ優雅に奏でられます。
- 第1変奏~第12変奏: 各変奏は、リズム、音型、和声、テンポなどが変化し、それぞれ異なる性格を持っています
- 右手が華やかに動き回る技巧的な変奏
- 左手が活躍するリズミカルな変奏
- 短調になり、しっとりとした情緒を漂わせる美しい変奏(第8変奏)
- 左手が右手の上を交差するダイナミックな変奏(第9変奏)
- アダージョ(ゆっくりと)の指示があり、内省的で美しい響きを持つ変奏(第11変奏)
- 最後はアレグロ(速く)となり、華やかで喜びに満ちたフィナーレを迎える変奏(第12変奏)
シンプルな主題が、モーツァルトの卓越した作曲技法によって、いかに多彩で魅力的な音楽へと変化していくかを楽しむことができるのが、この曲の大きな魅力の一つです。
参考|ピティナ・ピアノ事典|モーツァルト :フランスの歌 「ああ、お母さん聞いて」による12の変奏曲(きらきら星変奏曲)
「きらきら星変奏曲」の難易度を徹底分析!
出典:YouTube:森本麻衣様より
ということで、本題の難易度解説へ。
「きらきら星変奏曲」。実際に楽譜を開いてみると、その音符の多さや技巧的なパッセージに圧倒されてしまうかもしれません。
ここでは、客観的に難易度を把握し、挑戦への具体的なイメージを持てるよう、さまざまな角度から徹底分析します。
総合的な難易度:どのくらいのレベルに位置づけられる?
一般的に、「きらきら星変奏曲」の難易度は、ピアノ中級レベルと言われています。
ちなみに、全音ピアノピースでは難易度「D」(中級上)に指定されています。
ピアノ教本の進度で言うと、以下のようなレベルが目安となります。
もちろん、これはあくまで目安であり、個人の進度や得意なテクニックによって感じ方は異なります。
しかし、ある程度の指の訓練と読譜力、そして基本的な音楽表現の理解が必要とされるレベルであることは間違いありません。
技術的な難所:ここが難しい!克服すべきポイント
「きらきら星変奏曲」には、いくつかの技術的なハードルがあります。
主なものを以下に挙げますね。
- 右手の速いパッセージ:多くの変奏で、右手が16分音符などの細かい音符でスケール(音階)やアルペジオ(分散和音)を滑らかに、かつ均一な音で演奏する必要があります。特に第1、第2、第5、第10、第12変奏などで顕著です。
- 左手の跳躍や正確な伴奏形:左手は、バスの音から和音へ、あるいは和音から和音へと素早く正確に跳躍する箇所があります。また、アルベルティバスのような古典的な伴奏形を、安定したリズムと音量で弾き続ける持久力も求められます。
- 指の独立性、均一性が求められるトリルや装飾音:モーツァルトの音楽には、トリル、モルデント、ターンといった装飾音が頻繁に現れます。これらを美しく、かつリズムに乗って演奏するには、各指の独立性とコントロールが不可欠です。
- 両手のコンビネーションとポリフォニックな要素:右手と左手がそれぞれ異なるリズムや旋律を同時に演奏する場面(ポリフォニー的な書法)も出てきます。両手のバランスを取りながら、それぞれのパートを明確に弾き分ける能力が求められます。特に第9変奏の左手と右手の交差は、視覚的にも難易度が高いと言えるでしょう。
これらの技術的な課題を一つ一つクリアしていきましょう!
「きらきら星変奏曲」は何歳くらいで弾ける?目標設定のヒント
出典:YouTube
この記事を執筆するにあたって、けっこう見かけた疑問が、
「何歳くらいになったら弾けるの?」
というものでした。
結論から言うと、一概には言えない、が答えです。
でも、目安としては以下のようなことがあげられます。
一般的なピアノ学習過程における目安
一般的に、ピアノ学習を継続している子供たちが「きらきら星変奏曲」に挑戦するのは、小学生高学年(5~6年生)から中学生くらいが多いようです。
筆者も小学5年生くらいで演奏しました!
もちろん、ピアノを始めた年齢や練習時間、個人の才能や熱意によって進度は大きく異なります。
早い子であれば小学校中学年で挑戦することもあるかもしれませんし、じっくりと基礎を固めてから高校生で取り組むケースもありますよ。
練習期間の目安としては、毎日コンスタントに練習時間を確保できる場合で、数ヶ月から半年程度を見込むのが一般的ですが、これも個人差が大きいかなと。
大人のピアノ学習者にとっての「きらきら星変奏曲」
「きらきら星変奏曲」は、大人のピアノ学習者にとっても非常に人気のあるレパートリーですよね。
子供の頃の憧れを叶える目標として: 子供の頃にピアノを習っていて、いつか弾きたいと思っていたけれど機会がなかった、という方が、大人になって再開し、目標の曲として取り組むケースは少なくありません。
ブランクがあっても挑戦可能?再開組へのアドバイス: 長いブランクがある場合でも、まずは指慣らしや基礎練習から再開し、徐々にレベルを上げていくことで、再び「きらきら星変奏曲」に挑戦できる可能性は十分にあります。
大人になってからピアノを始める方や再開する方にとって、この曲は少しハードルが高いかもしれませんが、明確な目標を持つことは上達への大きなモチベーションになります。
「きらきら星変奏曲」はピアノ初心者でも挑戦できる?段階的アプローチ
出典:YouTube
「ピアノを始めたばかりだけど、いつかきらきら星変奏曲を弾きたい!」そんな夢を持つ初心者の方もいるかもしれません。
初心者の方に向けたアプローチ方法を紹介します。
結論:いきなり全曲は難しいが、部分的な挑戦や準備は可能
正直に伝えると、ピアノを始めたばかりの初心者が、いきなり「きらきら星変奏曲」の原曲全曲を弾きこなすのは非常に難しいかなと。
でも、段階的なアプローチを取ることで、将来的にこの曲を演奏するための準備を始めることは可能ですよ!
まずは、基本的な読譜力(音符や記号を読む力)、正しい指の形やタッチ、そして基本的なリズム感を習得しましょう。
基礎がしっかりしているか・してないかで完成度が大きく変わります。
易しくアレンジされた楽譜から始めてみる
「きらきら星変奏曲」の雰囲気を少しでも味わいたいという初心者の方には、以下のような方法があります。
主題(テーマ)部分のみの演奏: まずは、おなじみの「きらきら星」のメロディである主題部分だけを、簡単な伴奏で弾いてみることから始めるのも良いでしょう。
初心者向けの簡易編曲版の活用: 「きらきら星変奏曲」には、ピアノ初心者向けに、技術的な難所を簡略化したり、短い抜粋版としてアレンジされた楽譜も存在します。そのような楽譜を利用すれば、早い段階から曲の楽しさに触れることができます。
ヤマハが運営する「ぷりんと楽譜」などを探すと、難易度別の楽譜がある場合も.
「きらきら星変奏曲」と同じくらいのレベルの曲を紹介!
出典:YouTube:初心者のためのピアノMOO様より
さらに音楽の世界を広げるために、目標設定の参考になる同程度の難易度の曲も紹介します。
今後の参考にしてください。
全音ピアノピースの「D」難易度からいくつか見てみましょう。
などなど。目安としてですが、今後のチャレンジ曲として参考にしてくださいね!
「きらきら星変奏曲」の楽譜紹介【無料楽譜あり!選び方のポイント】
出典:YouTube:araumimusicschool様より
「きらきら星変奏曲」を練習するにあたって、どの楽譜を選べば良いか迷う方もいるでしょう。
ここでは、楽譜選びのポイントと、おすすめの楽譜を紹介します。
楽譜選びで失敗しないための3つのポイント
おもなポイントは以下の3つかなと。これらのことを意識しながら、ご自身に合う楽譜を見つけてみてください!
- 解説の丁寧さ(運指、装飾音の奏法、ペダル指示など)
- 版による解釈の違い(原典版、校訂版など)
- レイアウトの見やすさ、耐久性
無料で入手可能!IMSLP(国際楽譜ライブラリープロジェクト)の活用法と注意点
IMSLPは、著作権が消滅したパブリックドメインの楽譜を無料でダウンロードできるウェブサイトです。モーツァルトの作品も多数収録されており、「きらきら星変奏曲」の楽譜も複数の版を見つけることができます。
「きらきら星変奏曲」の無料ダウンロードはコチラから!
IMSLPを利用する際は、どの版が自分に適しているかを見極める必要があります。原典版に近いものや、信頼できる校訂者による版を選ぶと良いですよ!
定番&おすすめの有料楽譜①:全音ピアノピース
日本のピアノ学習者にとって最も馴染み深い楽譜の一つが、全音楽譜出版社から出ている「全音ピアノピース」でしょう。
>>アマゾン:ピアノピース-024 きらきら星変奏曲/モーツァルト (全音)
定番&おすすめの有料楽譜②:ヘンレ版(原典版)
より本格的にモーツァルトの音楽を追求したい方には、ドイツのヘンレ社から出版されている原典版がおすすめです。
>>アマゾン:モーツァルト: 「ねえ、ママ、聞いて」の主題による変奏曲 KV 265
楽器店で実際に手に取って見比べてみたり、先生に相談したりして、自分に合った一冊を見つけてください。
もっと上手に!「きらきら星変奏曲」効果的な練習方法と演奏のコツ
出典:YouTube:Piano Space様より
楽譜を手に入れたら、いよいよ練習開始!
ここでは、より美しく、音楽的に「きらきら星変奏曲」を演奏するための練習方法やコツをご紹介します。
簡単にまとめたので、参考にしてくださいね!
各変奏の難所を克服する具体的な練習テクニック
- ゆっくりとしたテンポでの正確な練習:これはどんな曲にも言える基本中の基本ですが、特に技巧的なパッセージが多いこの曲では不可欠です。メトロノームを使い、まずは自分が確実に弾けるゆっくりとしたテンポで、一音一音正確に、そして均一な音で弾く練習をしましょう。
- リズム練習や部分練習の重要性:速いパッセージが上手く弾けない場合、リズムを変えて練習する(例:付点リズム、逆付点リズムなど)と効果的です。また、曲全体を通して練習するだけでなく、苦手な箇所や特定の変奏だけを取り出して集中的に練習する「部分練習」も非常に重要です。
- 指のトレーニング方法(スケール、アルペジオ練習の応用):この曲にはスケールやアルペジオが多く出てきます。日頃からハノンなどの指の基礎練習で、スケールやアルペジオを様々な調で練習しておくことが、この曲をスムーズに弾くための土台となります。練習の際には、指の形や手首の柔軟性を意識しましょう。
- 難しいパッセージは片手ずつ練習:両手で合わせるのが難しい箇所は、まず右手だけ、左手だけで完璧に弾けるように練習します。それぞれのパートがしっかり身についてから両手で合わせると、格段に弾きやすくなります。
「ハノンまだ持ってないよ〜」という方は、コチラからどうぞ。
「きらきら星変奏曲」の難易度解説:まとめと挑戦へのステップ
この記事では、モーツァルト作曲の「きらきら星変奏曲」について、その魅力から難易度、目標とすべき年齢の目安、同程度のレベルの曲、おすすめの楽譜、そして効果的な練習方法に至るまで、詳しく解説してきました。
「きらきら星変奏曲」は、その親しみやすいメロディと華やかさから、多くのピアノ学習者にとって憧れの一曲です。確かに中級レベルの技術と表現力が求められる曲ではありますが、正しいステップで練習を積み重ねれば、きっと自分のものにできるはずです!
最後に、この記事のポイントをまとめます
- 「きらきら星変奏曲」はモーツァルト作曲の、主題と12の変奏からなる華やかで人気のピアノ曲。
- 難易度はピアノ中級レベル(ソナチネアルバム修了~ソナタアルバム程度が目安)。
- 技術的には右手の速いパッセージ、左手の跳躍や伴奏、指の独立性が求められる装飾音などが課題。
- 表現面では各変奏のキャラクターの弾き分けや、モーツァルトらしい軽やかさ、優雅さの表現が重要。
- 小学生高学年~中学生で挑戦するケースが多いが、年齢よりも個々の進度と練習への熱意が大切。大人の学習者にも人気の目標曲。
- ピアノ初心者でも、易しいアレンジ譜から始めたり、長期的な目標として設定したりすることで挑戦可能。
- 同レベルの曲には、モーツァルトのピアノソナタ K.545 やクレメンティ、クーラウのソナチネなどがある。
- 自分に合った楽譜を選び、効果的な練習方法(ゆっくり練習、部分練習、リズム練習など)を取り入れ、名演も参考にしながら、憧れの一曲をマスターしよう!