この記事では、イタリアのオペラ王ジュゼッペ・ヴェルディの代表曲を紹介します。
どの作品も傑作ばかりなので、紹介する作品に迷いますが、
「この曲は知っておいてほしい!」という思いで選曲しました。
もちろん、今回紹介する作品以外にも素晴らしい作品がありますので、
それらを聴いてみるきっかけにしていただければ幸いです。
なお、こちらは「ヴェルディの生涯」についての記事とリンクしていますので、
そちらも併せてお読みいただければ幸いです。
なお、最高傑作については、いつものように独断と偏見によるものが強いです。
そのため「一つの参考」として参考にしていただければと思います。
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ヴェルディの代表曲おすすめ7選
イタリアオペラを最高レベルまで高めたヴェルディ。
彼が作曲した数々の名作オペラは、今もなお世界中の聴衆から愛されています。
今回はそんな彼の傑作オペラ6曲と宗教曲の傑作『レクイエム』を紹介。
その作品も「一度は聴いておきたい」名曲ばかりですので、ぜひ動画も併せてご覧ください!
ヴェルディの代表曲1. ナブッコ(1842年)
ヴェルディの出世作として知られる「ナブッコ」は、旧約聖書を題材にした全4幕のオペラです。バビロニア王ネブカドネザル(ナブッコ)の物語を描いたこの作品は、1842年にミラノ・スカラ座で初演されました。
聴きどころ
- 第3幕の合唱「行け、我が想いよ、黄金の翼に乗って(Va, pensiero)」
- この曲は、イタリアで国歌並みの人気を誇る名曲です
- 『旧約聖書』の『詩篇』137に基づいており、バビロン捕囚のユダヤ人の心情を表現しています
行け、我が想いよ、黄金の翼に乗って
上演時間は約2時間10分です。
この作品は、ヴェルディにとって3作目のオペラでしたが、初めて大成功を収めた出世作となりました。
物語は、バビロニア王ナブッコの権力と狂気、そして神への冒涜と悔い改めを軸に展開します。音楽面では、壮大な合唱曲と劇的なアリアが特徴的で、特に「行け、我が想いよ」は、イタリアの統一運動(リソルジメント)の象徴的な曲となりました。
ヴェルディの愛国心と音楽的才能が見事に融合した作品と言えるでしょう。
個人的には、序曲すぐ後で使われる楽曲がかっこよくて好きです。
ヴェルディの代表曲2. マクベス(1847年)
シェイクスピアの同名戯曲を原作とする『マクベス』は、ヴェルディの野心作と言えるでしょう。1847年にフィレンツェで初演された後、1865年に大幅な改訂が行われました。
「生きるべきか、死ぬべきか。それが問題だ」というセリフはあまりにも有名ですね。
制作秘話
- ヴェルディは舞台装置や衣装にも深く関与し、歴史的考証にこだわりました
- 初演前のリハーサルは非常に厳しく、聴衆が着席してからも続けられたそうです
「マクベス」は約2時間30分の演奏時間で、ヴェルディの ドラマティックな表現力が遺憾なく発揮された作品。
この作品で、ヴェルディは初めてシェイクスピアの戯曲をオペラ化しました。
原作の複雑な心理描写を音楽で表現することに挑戦し、
特にマクベス夫人の狂気の場面は、オペラ史上に残る名場面となっています。
ヴェルディは、単なる美声だけでなく、演技力も重視した歌手を起用し、より劇的な表現を追求しました。
また、魔女の合唱や幻影の場面など、超自然的な要素を音楽で表現する斬新な試みも注目に値します。
ヴェルディの代表曲3. イル・トロヴァトーレ(1853年)
1853年にローマで初演された「イル・トロヴァトーレ」は、
ヴェルディ中期の傑作の一つとされています。複雑な筋書きと情熱的な音楽が特徴です。
聴きどころ
- フェルランドの物語「Abbietta zingara, fosca vegliarda」
- アズチェーナのアリア「炎は燃えて(Stride la vampa)」
- アズチェーナとマンリーコの二重唱「我らの山へ(Ai nostri monti)」
約2時間20分の演奏時間で、ヴェルディの作曲技術が円熟期を迎えたことを感じさせる作品と言えるでしょう。
「イル・トロヴァトーレ」は、複雑な人間関係と復讐劇を軸に展開する物語です。
ジプシーの女アズチェーナの呪いから始まり、兄弟の対立、恋愛、そして悲劇的な結末へと至る展開は、観客を強く引き付けます。
音楽面では、ヴェルディの得意とする劇的な合唱曲や、情熱的なアリア、そして印象的な二重唱が随所に配置されています。
特に、アズチェーナの「炎は燃えて」は、彼女の複雑な心情を巧みに表現した名曲として知られています。
ヴェルディの代表曲4. 椿姫(1853年)
アレクサンドル・デュマ・フィスの小説を原作とする「椿姫」は、ヴェルディの代表作の一つです。悲劇でありながら、音楽的には明るさと華やかさを失わない点が特徴的です。
制作と初演
- ヴェルディは戯曲版「椿姫」の上演を見て感激し、短期間で作曲
- 1853年3月6日の初演は大失敗に終わりましたが、翌年の再演で成功を収めました
「椿姫」は約2時間20分の演奏時間で、今日では世界で最も上演回数の多いオペラの一つとなっています。
この作品は、パリの高級娼婦ヴィオレッタと青年アルフレードの悲恋を描いています。
当時の社会通念に挑戦するような題材でありながら、ヴェルディは主人公たちの純粋な愛と苦悩を美しい音楽で表現しました。
特に、第1幕のヴィオレッタのアリア「乾杯の歌」や「あぁ、そはかの人か」、最終幕の「さようなら、過ぎ去りし日々よ」などは、オペラファンに愛される名曲です。
ヴェルディの繊細な音楽表現が、登場人物の心の機微を巧みに描き出しています。
ゼフィレッリ監督の映画版も秀逸!
ヴェルディの代表曲5. 運命の力(1862年)
1862年にサンクトペテルブルクで初演され、1869年にミラノで改訂版が上演されました。
複雑な人間関係と運命の力を描いた壮大なオペラです。
制作秘話
- 政治活動や農園経営に忙しい中で作曲
- 台本作家のピアーヴェとの信頼関係が作品の質を高めました
改訂版の演奏時間は約2時間50分で、ヴェルディの作曲技術の成熟を感じさせる大作です。
この作品は、スペインを舞台に、ある悲劇的な事件から始まる登場人物たちの運命的な出会いと別れを描いています。
ヴェルディは、この複雑な物語を壮大な音楽で表現し、特に序曲は単独でも頻繁に演奏される名曲となっています。
また、カラカラ神父の「平和、平和、我が神よ」や、レオノーラの「神よ、平和を与えたまえ」など、印象的なアリアも多く含まれています。
ヴェルディの音楽的成熟が感じられる一方で、
劇的な展開と音楽の融合が見事に成功した作品と言えるでしょう。
ヴェルディの代表曲6. アイーダ(1871年)
古代エジプトを舞台にした「アイーダ」は、ヴェルディ晩年の傑作です。
壮大な舞台装置と美しい音楽で、今日でも世界中で人気を誇ります。
制作背景
- スエズ運河開通を記念して作曲されたという誤解がありますが、実際はエジプト総督の依頼によるものです
- ヴェルディはワーグナーへのライバル意識から、この作品に取り組んだと言われています
「アイーダ」は、ヴェルディがグランド・オペラの様式を自身の個性と融合させた、イタリア風グランド・オペラの傑作と言えるでしょう。
この作品は、エジプトの将軍ラダメスとエチオピアの王女アイーダの悲恋を軸に、国家間の対立と個人の愛の葛藤を描いています。
音楽面では、壮大な合唱曲や華麗なバレエ音楽、そして印象的なアリアが随所に配置されています。
特に、第2幕の「凱旋行進曲」は、オペラ音楽の中でも最も有名な曲の一つ。
また、アイーダの「おお、わが故郷」やラダメスの「清きアイーダ」など、美しいアリアも多く含まれています。
ヴェルディの音楽的才能が最大限に発揮された、まさに集大成とも言える作品です。
ヴェルディの代表曲7. レクイエム(1874年)
本作はイタリアの文豪アレッサンドロ・マンゾーニを追悼するために作曲されました。
特徴
- モーツァルト、フォーレと並んで「三大レクイエム」の一つに数えられます
- 「最も華麗なレクイエム」と評される一方で、その劇的な音楽表現は賛否両論を呼びました
ヴェルディの深い敬愛の念が込められたこの作品は、オペラティックな表現と宗教音楽の融合として、音楽史上重要な位置を占めています。
この「レクイエム」は、ヴェルディのオペラ作曲の経験が存分に生かされた作品です。
特に「怒りの日」(Dies irae)の部分は、その劇的な音楽表現でよく知られています。
壮大な合唱と管弦楽の響き、そしてソリストの感情豊かな歌唱が、死者への追悼と最後の審判への恐れを強烈に表現しています。
一方で、「涙の日」(Lacrimosa)や「神の子羊」(Agnus Dei)などの部分では、
ヴェルディの繊細な音楽表現が光ります。
オペラ的要素が強いとの批判もありましたが、その音楽的価値は広く認められ、
今日でも頻繁に演奏されています。
モーツァルトとフォーレのレクイエムと聴き比べてみましょう!👇
ヴェルディ作品の特徴や魅力について
ここまでヴェルディの代表曲7曲を紹介してきました。
どの作品も台本、音楽、舞台、バレエすべてにおいて豪華絢爛で(レクイエムは別ですが)、
まったく飽きのこない名作ばかりです。
実際に足を運ぶ機会はなかなか難しいかもしれませんが、
ぜひ一度ご覧いただければ、その素晴らしさが体験できると思います。
以下では、そんなオペラ王ヴェルディの作品の特徴や魅力を簡単に4つ見てみましょう。
ヴェルディ作品の特徴や魅力その1『自由を求める民の叫びを旋律に』
ヴェルディの初期作品は、当時のイタリアの政治状況を鮮やかに反映していました。
リソルジメント(イタリア統一運動)の時代背景のもと、
『ナブッコ』や『十字軍のロンバルディア人』などで権力者と民衆の対立を描いた作品は、
まさに当時の聴衆の心にグッと刺さったようです。
特に『ナブッコ』の合唱曲「行け、我が想いよ、金色の翼に乗って」は、
事実上のイタリア第二の国歌となり、民衆の憧れと希望を象徴しました。
その2『音符が語る人間の葛藤と情念』
『マクベス』以降、ヴェルディは登場人物の内面に深く踏み込むようになりました。
レチタティーヴォ(叙唱)を重視し、細やかな心理描写を音楽で表現することで、作品の完成度を高めていくようになります。
例えば『リゴレット』では、道化師の複雑な感情を巧みに音楽化し、観客を作品世界に引き込みます。
この手法は後の『椿姫』や『オテロ』でさらに洗練され、
オペラ界に新たな表現の可能性をもたらしました。
その3『エキゾチックとクラシックの絶妙なハーモニー』
『アイーダ』において、イタリア・オペラの伝統的な旋律美を保ちつつ、管弦楽とのバランスを追求したヴェルディ。
さらに、フランスのグランド・オペラの要素も取り入れ、独自の異国的音楽を創造することに挑戦します。
エジプトを舞台としながらも、安易な異国趣味に走らず、
ヴェルディ独自の音楽語法で「異国」を表現しました。
この手法は、後のオペラ作曲家たちに大きな影響を与え、
オペラにおける「異国」表現の新たな基準となったと言えるでしょう。
その4『ベルカントからドラマへ、変革の旗手』
ヴェルディの活躍した時代は「ヴェルディの時代」と呼ばれ、
イタリア・オペラの転換期となりました。
技巧的な歌唱を重視するベルカントから、
ドラマ性を重視する作風へと変化させ、オペラ芸術の新たな地平を切り開いたわけですね。
特に晩年の『オテロ』と『ファルスタッフ』では、
従来のアリアとレチタティーヴォの区別を曖昧にし、より自然な音楽の流れを実現しました。
この革新的なアプローチは、20世紀のオペラ作曲家たちにも大きな影響を与え続けています。
ヴェルディの最高傑作について
あまりにも傑作揃いなため、ヴェルディの最高傑作を決めるの不可能です。
しかし、参考までに作品紹介も兼ねて紹介します。
賛否両論あるかと思いますが、それこそがクラシック音楽の醍醐味です。
ということで、今回はヴェルディ最後のオペラ『ファルスタッフ』を紹介します。
承知しました。より簡潔にまとめ直します。
ヴェルディ最後の傑作『ファルスタッフ』
ジュゼッペ・ヴェルディの最後のオペラ『ファルスタッフ』は、
80歳を目前にした作曲家が遺した珠玉の喜劇作品です。
26作に及ぶヴェルディのオペラの中で、喜劇はわずか2作のみ。
その最後を飾る本作は、音楽史に燦然と輝く傑作として知られています。
作品の背景
シェイクスピアの『ウィンザーの陽気な女房たち』を主な題材とし、
『ヘンリー4世』も参照しながら主人公の人物像を綿密に作り上げました。
ヴェルディは「自分の楽しみのために作った」と語り、
1日2時間ずつ、ゆったりとしたペースで作曲を進めたそうでうよ。
物語と登場人物
中心は老騎士ファルスタッフ(バリトン)。
彼を取り巻く人物には、
・アリーチェ(ソプラノ)
・フォード(バリトン)、
・ナンネッタ(ソプラノ)、
・フェントン(テノール)、
・メグ(メゾソプラノ)
などがいます。
また、ファルスタッフには、ヴェルディ自身の姿が投影されています。
音楽的特徴
豊かな楽器編成で、フルート、オーボエ、クラリネットなど多様な楽器が用いられています。
全体の演奏時間は約2時間で、6つの場面から構成されています。
初演と評価
1893年2月9日、ミラノのスカラ座で初演され大成功を収めました。
その高尚さと音楽的創造性により、当時の批評家たちからも絶賛しています。
ヴェルディの遺産
悲劇の名手として知られたヴェルディが、最後に残した喜劇作品として大きな意義を持ちます。その意味において、人生の達観と喜びが融合した、円熟の極みとも言える作品です。
そして『ファルスタッフ』を通じて、ヴェルディは単なる喜劇を超えた人生の叡智を表現しました。
老いを受け入れつつも、なお人生を楽しむファルスタッフの姿は、
まさにヴェルディ自身の人生哲学を体現していると言えるでしょう。
オペラ史上の傑作であるだけでなく、一人の芸術家の人生の集大成としても、
今なお多くの人々を魅了し続けています。
ヴェルディの代表曲まとめ
ということで、だいぶ長くなりましたが・・・。
ヴェルディの代表曲や作品の特徴について解説しました。
もちろん、ヴェルディの作品はオペラだけではないので、
この記事をきっかけに他の作品にも触れていただければ幸いです。
いつか第2弾を書くつもりですので、気長にお待ちください。
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