今回はは、モーツァルトのピアノソナタ第16番(旧15番) ハ長調 K.545を解説します。
ピアノを習ったことのある方なら、「一度は弾いてみたい」「レッスンで習った」作品ではないでしょうか。
本作はシンプルな旋律でありながら、モーツァルトの洗練された美しさがギュッと詰まっており、演奏するほどに奥深さを感じられる作品です。
とはいえ。
・難易度はどのくらいかな
・自分でも演奏できるかな
と気になる方も多いと思います;
そこで本記事では、曲の構成や演奏のポイント、難易度について解説します。
おすすめの演奏や楽譜も紹介していますので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください!
画像出典:アマゾン:モーツァルト:ピアノ・ソナタ集 第4巻 (第11番「トルコ行進曲付き」・第15番・第16番)/グレン・グールド
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モーツァルトのピアノソナタ第16番について

モーツァルトが1788年に作曲したピアノソナタ第16番(K.545)は、ピアノ初心者向けの作品として親しまれています。筆者も昔演奏しました。
一説によると「弟子のために作曲された」あるいは「練習用に作曲された」とも言われていますが、詳細については現在もわかっていません。
とはいえ、モーツァルト自身が「初心者のための小ソナタ」と記したことから、レッスン用と考えるのが妥当かもしれません。
また、CDによっては15番だったり16番だったりとまちまちですが、これは旧モーツァルト全集(15番)と新モーツァルト全集(16番)による違いです。
全3楽章構成で、演奏時間は10分程度です。
本作は、明るく親しみやすい旋律とシンプルな構成が特徴。
でも、モーツァルト特有の軽やかさと優雅さが随所にちりばめられています。
そのため、単に弾くだけでなく、美しく演奏するには高度な表現力が求められます。
この曲が「やさしいけど、難しい」と言われる理由がそこにあります。
モーツァルトの「ピアノソナタ16番」が初心者向けとされる理由
本作が初心者向けとされる理由を見てみましょう。
今回は以下の3点にまとめました。
- シンプルな構成:全3楽章で構成され、明快なメロディーと伴奏の形が理解しやすい。
- 技術的に比較的易しい:指の動きがなめらかで、極端に難しいパッセージが少ない。
- ピアノ学習者のステップアップに最適:ソナチネを学んだ後の生徒が取り組みやすいレベル。
しかし、単純なメロディーだからこそ、音楽的な表現力やフレージングの工夫が重要です。とくに、各音をクリアに響かせることや、軽やかで流れるような演奏ができるかがポイント。
「初心者のためのソナタ」ではありますが、「脱初心者のためのソナタ」でもあります。
有名な理由(シンプルで親しみやすい旋律)
モーツァルトの「ピアノソナタ16番」は、その明るく分かりやすいメロディーで多くの人々に愛されてきました。
- 冒頭のテーマが印象的:第1楽章の出だしは、クラシック音楽に詳しくない人でも一度は耳にしたことがあるほど有名です。さまざまな場面で使用されています。
- モーツァルトらしい軽快なリズム:音楽の流れがスムーズで、聴いていて心地よい。
- 教育的な側面:多くのピアノ教本で取り上げられ、基礎的な技術を学ぶのに適している。
シンプルながらも美しい旋律と、ピアノ初心者でもチャレンジしやすい点が、この曲の人気の理由となっています。
モーツァルト「ピアノソナタ16番」の構成と特徴
上述したように、本作は3楽章構成です。それぞれの特徴をざっくりと紹介します。
第1楽章:軽快なソナタ形式
「ピアノソナタ16番」第1楽章冒頭部分。出典:wikipedia
明るく快活なハ長調のソナタ形式で書かれています。ハ長調、4分の4拍子。
- 主題の明快さ:シンプルなメロディーが印象的。
- 左手の伴奏が忙しい:右手のメロディーに対し、左手が刻む伴奏の動きが多い。
- 表現の幅が広い:初心者向けの曲とはいえ、スタッカートの軽やかさやフレーズの流れを意識すると表現の深みが増す。
第2楽章:穏やかで歌うようなアンダンテ
第2楽章冒頭部分。出典:wikipedia
優雅で落ち着いた雰囲気のアンダンテです。
- メロディアスな旋律:歌うようなラインが特徴的。子守唄のような雰囲気です。
- 細かい音のコントロールが必要:音のつながりや、ペダルの使い方が演奏の質を左右する。
- 感情表現が大切:単調にならないよう、細かいダイナミクスを意識したい。
アンダンテ・・・歩くような速さで
第3楽章:明るく華やかなロンド

軽快なロンド形式で書かれています。
- テンポが速く、指さばきが重要
- 跳ねるようなリズムが魅力
- 最後までエネルギッシュに弾ききることがポイント
ロンド形式は、同じメロディが繰り返される特徴を持つ音楽の形式のこと。
最初に「A」というメロディが登場し、その後に異なるメロディ(B、Cなど)が挟まれます。そして、再び「A」が戻ってきて、また繰り返されるという構造です。
この繰り返しにより、曲に安定感と親しみやすさが生まれます。
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モーツァルト「ピアノソナタ16番」の難易度やポイント
難易度は全体で中級程度
この曲は一見シンプルに見えますが、全楽章をきちんと弾くには中級レベルの技術が求められます。
具体的には、以下のレベルであれば挑戦できるハズです。
- ツェルニー30番を終えた程度が目安
- 初心者でも第1楽章は取り組みやすい
- 左手の動きが忙しいため、独立した指の動きが必要
- テンポを安定させることが重要で、特に第3楽章では一定のリズムを保つことが求められる
初心者でも弾きやすいけど奥が深い
- シンプルな音形だからこそ、表現力が求められる
- フレーズの歌わせ方やペダルの工夫で演奏の質が変わる
- 強弱の付け方で、単調にならないように意識することが大切
右手と左手のバランス
- メロディーを際立たせ、伴奏を控えめにする意識が重要
- 左手が強すぎるとバランスが崩れるため注意
- 特に第2楽章では、左手の和音を柔らかく弾くことがポイント
レガートとスタッカートの対比を意識
- モーツァルト特有の軽やかさを出すには、音のつなぎ方がポイント
- スタッカートを軽快に弾くことで、全体の流れが良くなる
- レガート部分では音を滑らかにつなぎ、フレーズを大切にすることで表情豊かに演奏できる
「スタッカートを軽快に弾く」という感覚がなかなか難しいかもしれません。
でも、少しずつしていくと、自然とできるようになるので大丈夫です。
「美しいフレーズを、いかに美しく響かせるか」
当たり前のことですが、これがなかなか難しいです。
今はスマホで簡単に録音できます。
なので気になるフレーズを自分で録音して聴いてみるのもOKです。
モーツァルト「ピアノソナタ16番」:おすすめの演奏と楽譜
これまで多くの演奏家の名盤が残されてきましたが、今回は筆者の独断と偏見により3人の演奏家の演奏を紹介します。
それぞれ「まったく違った演奏」なので、新しい発見があると思いますよ!
1.フリードリヒ・グルダ
グルダの演奏は、透明感のある音色と精密なタッチが特徴。
無駄のない洗練されたフレージングで、モーツァルトの純粋な美しさを際立たせています。
特に第2楽章の表現が素晴らしい!
シンプルなメロディーが深みのある音楽に変わるのが魅力です。
シューベルトのピアノソナタの演奏もピカイチです。
ちなみに、現代最高のピアニストの一人マルタ・アルゲリッチの先生でもあります。
グルダ流のアレンジ満載なので、参考にはならないかも・・・。
いや、絶対ならないな。
出典:YouTube
2. 内田光子
内田光子の演奏は、繊細でありながらも豊かな表現力が完璧!
軽やかで流れるようなタッチで、モーツァルトの音楽に生命を吹き込んでいます。
特に第1楽章の明るさと、第2楽章の内面的な表現のコントラストが見事です。
出典:YouTube
3. グレン・グールド
グールドの演奏は、他のピアニストとは異なる独自の解釈が特徴。
テンポやアーティキュレーションの工夫によって、新しい視点でモーツァルトを楽しめます。
とくに、第3楽章の独特なリズム感と鋭いタッチが印象的。
ほとんどペダルを使っていないのも注目です。
出典:YouTube
それぞれ違った魅力があるから、ぜひ聴き比べてみてください!
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モーツァルトのピアノソナタ16番解説:まとめ
- モーツァルトのソナタ16番(K.545)とは?
- 初心者向けとされる理由
- 有名な理由(シンプルで親しみやすい旋律)
- 第1楽章の特徴(ソナタ形式)
- 第2楽章の特徴(アンダンテ)
- 第3楽章の特徴(ロンド形式)
- 演奏の難易度とポイント
- 初心者でも弾きやすいが奥が深い点
- おすすめの演奏と解釈
- まとめと聴き比べのすすめ
ソナタ形式は、クラシック音楽の曲でよく使われる構造のひとつです。
基本的には以下の3つの部分に分かれています。
時代が進むにつれて、より複雑に、厚みのある構造に変化します。