メシアンとはどんな人物?鳥の歌を愛した現代音楽の巨匠!エピソードを簡単に解説!

    この記事では、フランスの作曲家オリヴィエ・メシアンについて紹介します。

    世界中の鳥のさえずりを五線譜に書き留め、音を聴くと特定の色が見える「共感覚」を持ち、そして揺るぎないカトリック信仰を生涯のテーマとして音楽で表現し続けた作曲家がいました。

    それが、20世紀フランスを代表する音楽の巨匠、オリヴィエ・メシアンです。

    その音楽は、一聴すると複雑で難解に感じられるかもしれません。

    でも、その奥には、神への祈り、自然への愛、そして鮮やかな色彩に満ちた、神秘的で官能的な音の世界が広がっています。

    この記事では、現代音楽の歴史を塗り替えた巨人メシアンの生涯、その独特な音楽語法、そして彼の宇宙を感じさせる代表曲を分かりやすく紹介します。

    筆者も初めてトゥーランガリラ交響曲を聴いた時は、ほんとに感動したのを覚えています。

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    オリヴィエ・メシアンとは?20世紀音楽の神秘家

    まずは、メシアンがどのような人物だったのか、そのプロフィールをご覧ください。

    項目内容
    フルネームオリヴィエ=ウジェーヌ=プロスペール=シャルル・メシアン
    生没年1908年 – 1992年
    出身フランス・アヴィニョン
    功績独自の音楽語法を確立し、戦後の現代音楽に絶大な影響を与えた
    特徴カトリック信仰、鳥の歌、共感覚(色彩感覚)
    代表作世の終わりのための四重奏曲、トゥーランガリラ交響曲

    メシアン音楽の3つの柱

    彼の複雑な音楽を理解するためには、3つのキーワードが重要になります。
    ちょっと馴染みがない作風なので、ポイントを押さえておくと聴きやすいかもです!

    • ①カトリック信仰: 彼の創作の根源であり、全ての作品は「神の栄光を称える」ために書かれました。聖書や神学的なテーマが、作品の根底に流れています。
    • ②鳥の歌: 彼は鳥を「最高の音楽家」と考え、生涯をかけて世界中の鳥の声を採譜し、自らの音楽の重要な要素としました。
    • ③色彩感覚: 彼は、特定の和音や旋法を聴くと、特定の色やその組み合わせが見える「共感覚(シナスタジア)」の持ち主でした。彼の音楽は、彼自身にとっては「音による色彩画」だったのです。

    オリヴィエ・メシアンの生涯 ― 音と信仰の宇宙を描いた作曲家

    バイオリン

    ここでは、もう少しメシアンの生涯について深掘りします。
    時代ごとの作品も参考にしてみてくださいね!

    幼少期と音楽との出会い(1908〜1927)

    オリヴィエ・メシアンは1908年12月10日、フランス南部のアヴィニョンに生まれました。父は古典文学者、母は詩人という知的な家庭環境のもと、幼少期から芸術に親しんで育ちます。特に母の詩が、後年の作品に詩的イメージを与える源となりました。

    音楽に対して早くから関心を示し、自己流で作曲を始めると、すぐに才能が認められます。

    11歳でパリ音楽院に入学し、ポール・デュカス、モーリス・エマニュエル、マルセル・デュプレといった当時の名教師たちのもとで、作曲、和声、対位法、オルガンなどを学びました。

    若き日のメシアンは、ドビュッシーに大きな影響を受けたと言われています。

    宗教とオルガン、そして色彩感覚(1927〜1939)

    カトリック信仰は、彼の音楽的・思想的基盤となります。1931年、22歳でパリのトリニテ教会の専属オルガニストに就任。以後亡くなるまでの60年以上にわたってその地位を守り続けました。

    この頃からメシアンは、音楽に「色彩」や「神秘体験」を持ち込み始めます。彼は共感覚(音に色を感じる現象)を持っていたとされ、和音や旋律に「視覚的な色のイメージ」を結びつけて作曲する独特のスタイルを築きました。

    また、バードウォッチングを通して鳥のさえずりに魅了され、「鳥の歌」は後の主要モチーフとなります。

    当時のメシアンは宗教音楽を多数作曲しています。

    この時期のおもな作品
    • ヴァイオリンとピアノのための『主題と変奏』
    • 『ミのための詩』
    • 「天と地の歌」
    • 「キリストの昇天」
    • 「主の降臨」

    など

    戦争と《世の終わりのための四重奏曲》(1939〜1945)

    第二次世界大戦中、フランス軍に徴兵されたメシアンは、1940年にドイツ軍の捕虜となります。捕虜収容所で出会った仲間たちとともに作曲・初演されたのが、彼の代表作の一つ《世の終わりのための四重奏曲》です。

    この作品は、限られた楽器(クラリネット、ヴァイオリン、チェロ、ピアノ)で構成され、深い宗教的象徴と超越的な時間感覚を持ち、20世紀音楽史における傑作として評価されています。

    この時期のおもな作品
    • 「世の終わりのための四重奏曲」
    • 「幼児イエスに注ぐ20の眼差し」
    • 「神の現存についての3つの小典礼」

    など

    教育者としての活躍と新しい音楽理論(1945〜1960)

    後は、パリ音楽院で教鞭をとり、多くの後進を育てました。ピエール・ブーレーズ、カールハインツ・シュトックハウゼン、イヴァン・フィッシャーら、現代音楽を牽引する多くの作曲家が彼の教えを受けました。

    この時期に、メシアンは自らの音楽理論を発展させます。とくに「限られた移調の旋法」や「非可逆的リズム」など、時間と音の感覚を根本から問い直す革新的な手法を提案しました。

    この時期のおもな作品
    • 「ハラウィ」
    • 「トゥーランガリラ交響曲」
    • 「5つのルシャン」
    • 「4つのリズム・エチュード」
    • 「オルガンの書」

    など

    鳥の歌と壮大なオーケストラ作品(1960〜1980)

    メシアンの晩年の作風の中心にあったのが、「鳥の歌」の収集と作品への応用です。彼は世界各地で実際に鳥の鳴き声を採譜し、それを音楽の中に取り入れました。

    代表作の一つ《異国の鳥たち》(1956)や、《鳥たちのカタログ》(1956〜58)はその集大成といいえるでしょう。

    これらの作品では、鳥の鳴き声を複雑なピアノ独奏やオーケストラの中で精密に再現しています。

    さらに、彼は大規模なオーケストラ作品にも挑みます。とりわけ《トゥーランガリラ交響曲》(1948)や《彼方の閃光》(1988–91)は、膨大な音響と精神性を融合させた異次元的な作品として知られます。

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    晩年と死(1980〜1992)

    晩年のメシアンは、音楽的な関心を自然、宗教、天体、時間、永遠といった超越的なテーマへと広げていきました。最晩年の大作《イエスの変容》(1981〜84)や、死後初演となった《彼方の閃光》など、彼の音楽はますますスケールと深さを増していきます。

    1992年4月27日、パリで死去。享年83。彼の音楽は、フランス近代から現代への橋渡しを果たし、宗教、自然、哲学と深く結びついた独自の世界観を後世に遺しました。

    孤高の巨匠の人生に迫る!メシアンのエピソード5選

    ① 捕虜収容所で生まれた奇跡の名作『世の終わりのための四重奏曲』

    第二次世界大戦中、ドイツ軍の捕虜となったメシアンは、シレジア地方の捕虜収容所でこの曲を作曲しました。チェロ、ヴァイオリン、クラリネット、ピアノという編成は、収容所にたまたまあった楽器と、音楽家の仲間がいたという偶然から生まれたものです。食料も暖房も不十分な極限状況の中で、彼はヨハネの黙示録をテーマに、この世の終わりと、その先にある永遠の平和を幻視する、崇高な祈りの音楽を書き上げたのです。

    ② 偉大な教師としての一面

    パリ音楽院の教授として、彼は戦後の前衛音楽を牽引することになる多くの才能を育てました。ピエール・ブーレーズ、カールハインツ・シュトックハウゼン、ヤニス・クセナキスといった作曲家たちが彼のクラスから巣立っています。彼の分析的な教えと音楽思想は、20世紀後半の音楽の方向性を決定づけるほどの影響力を持っていました。

    ③ 鳥類学者でもあった「鳥の歌」への情熱

    彼は単に鳥の声を音楽の素材として使っただけでなく、その生態や分類にも詳しい、本格的な鳥類学者でした。ピアニストであった妻のイヴォンヌ・ロリオと共に、双眼鏡とテープレコーダーを手に世界中を旅して鳥の歌を収集し、その成果は『鳥のカタログ』などの膨大なピアノ曲集に結実しています。

    ④ 異国の文化への強い関心

    彼の音楽語法は、西洋音楽の伝統だけから生まれたものではありません。インドの古典音楽に見られる複雑なリズム・パターン「タランガー」や、日本の雅楽、バリ島のガムランなど、ヨーロッパ以外の音楽文化にも深い関心を持ち、その要素を自らの作曲技法に積極的に取り入れました。

    日本旅行からインスピレーションを受けた「七つの俳諧(はいかい)」という曲も作曲しています。

    七つの俳諧より「奈良公園と石灯籠」:出典:Wikipedia

    ⑤ 電子楽器オンド・マルトノの導入

    メシアンは、幽玄で神秘的な響きを持つ初期の電子楽器「オンド・マルトノ」をこよなく愛しました。代表作『トゥーランガリラ交響曲』などでこの楽器を効果的に使用し、オーケストラに未知の響きと、天上的な官能性をもたらしたのです。

    オンド・マルトノ:出典:Wikipedia

    【初心者向け】色彩と神秘に満ちたメシアンの代表曲3選

    最後に「これは聴いておきたい!」という代表作を3つ紹介します。
    いつものように、筆者の独断チョイスですが、聴きやすい作品を選らんでいます!

    難解というイメージを超えて、まずは音のシャワーを浴びてみてください。

    メシアンの代表曲①世の終わりのための四重奏曲

    メシアンの最も有名で、感動的な作品。全8楽章からなり、鳥のさえずりを模したクラリネットのソロや、激しいリズムの応酬など、多彩な楽想が盛り込まれています。特に第5楽章「イエスの永遠性への賛歌」で、チェロが奏でる無限に続くかのような天上的な旋律は、時間の感覚を超越した究極の美しさを持っています。

    出典:YouTube

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    メシアンの代表曲②トゥーランガリラ交響曲

    全10楽章からなる、愛と喜悦をテーマにした大規模な交響曲。「トゥーランガリラ」とはサンスクリット語を基にした造語で、「愛の歌」「喜びの血の星」といった複数の意味を持ちます。官能的で極彩色のオーケストレーションと、オンド・マルトノの神秘的な響きが特徴の、生命力あふれる大傑作です。

    出典:YouTube

    メシアンの代表曲③幼子イエスに注ぐ20のまなざし

    2時間以上にも及ぶピアノのための巨大な作品群。聖母マリアや天使、東方の三博士、そして鳥たちなど、様々な視点から幼子イエスの誕生を見つめるという構成になっています。ピアノ一台から、鐘の音やオーケストラのような壮大な響き、そして宇宙的な静寂まで、ありとあらゆる音響が引き出される、ピアノ音楽の金字塔です。

    めちゃくちゃ長いので、部分的に少しずつ聴くことをおすすめします。

    出典:YouTube

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    メシアンの生涯解説:まとめ

    今回は、20世紀音楽に巨大な足跡を残した神秘家メシアンをご紹介しました。彼の音楽は、私たちに日常の聴覚体験を超えた、新しい音の宇宙を見せてくれます。

    この記事のポイント

    • メシアンは、カトリック信仰、鳥の歌、色彩感覚を柱に独自の音楽を創造した。
    • 捕虜収容所で作曲された**『世の終わりのための四重奏曲』**は、20世紀室内楽の奇跡。
    • ブーレーズらを育てた偉大な教師でもあり、戦後の現代音楽に絶大な影響を与えた。
    • 難解なだけではなく、神秘的で色彩豊かな響きに満ちている。

    まずは『世の終わりのための四重奏曲』から、メシアンが描いた深遠で美しい祈りの世界に触れてみてはいかがでしょうか。

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