【無料楽譜あり】シューマン「夢のもつれ」の 難易度を簡単解説!弾き方のコツ3選!

    シューマンの「夢のもつれ」(原題:Traumes Wirren)は、その名の通り、夢の中を駆け巡るような幻想的で目まぐるしいパッセージが魅力的なピアノ曲。

    発表会やコンクールで演奏すれば、聴衆の心を一瞬で掴むことのできる、非常に華やかで人気の高い一曲です。

    しかし、その華やかさの裏で、こんな風に感じている人が多いかもしれません。

    • 「楽譜の音符の多さに圧倒される…」
    • 「この速さで、指がもつれずに弾き切れる自信がない」
    • 「一体どのくらいのレベルになったら挑戦できるの?」

    記事の前半では、シューマンの傑作「夢のもつれ」の難易度について、具体的な教則本との比較を交えながら、誰にでも分かりやすく解説します。

    さらに、後半では具体的な弾き方のコツから、無料で楽譜を手に入れる方法まで、紹介。

    ぜひ最後まで読んで参考にしてください!

    筆者は3歳からピアノを開始。紆余曲折を経て、かれこれ30年以上ピアノに触れています。音大には行っておらず、なぜか哲学で修士号という謎の人生です。

    ロベルト・シューマンについて

    難易度解説にいく前に、少しシューマンについて解説を。

    「夢のもつれ」の作曲者ロベルト・シューマン(1810-1856)は、ドイツ・ロマン派を代表する作曲家です(ブラームスの先生でもあります)。

    もともとピアニストを目指していましたが、指の故障によりその道を断念し、作曲家として大成しました。

    シューマンのピアノ曲は、文学的な標題を持ち、内面的な感情や物語性を豊かに表現するのが特徴です。シューマンの音楽には、情熱的で衝動的な「フロレスタン」と、内向的で夢見るような「オイゼビウス」という、二つの対照的な性格がしばしば登場します。

    この二面性が、彼の作品に深い奥行きと複雑な魅力を与えています。

    音楽評論家としても活躍し、ショパンの登場を絶賛したことでも有名です。

    シューマンはこちらの記事でくわしく解説しています。

    「夢のもつれ」の楽曲解説

    出典:YouTube

    ということで、「夢のもつれ」の解説に行ってみましょう!

    ポイントだけサクッと解説しますね。

    「幻想小曲集 Op.12」のうちの1曲

    「夢のもつれ」は、独立した曲ではなく、シューマンが1837年に作曲した「幻想小曲集(Fantasiestücke)Op.12」という全8曲からなるピアノ曲集の第7曲目にあたります。

    この曲集には、「飛翔」「なぜ?」といった有名な小品が含まれており、それぞれがシューマンの心象風景や物語性を映し出しています。

    「夢のもつれ」は、その中でも特に技巧的で華やかな一曲として際立っています。
    先にチラッと言うと、結構難易度は高めです

    ちなみに「飛翔」の難易度についても解説してます。

    参考|ピティナ・ピアノ曲事典|シューマン・幻想小曲集 Op.12

    楽曲解説:めまぐるしく交錯する「夢」と「現実」

    なんとも詩的なタイトルですが、「夢のもつれ(Traumes Wirren)」というタイトルが示す通り、本作は夢の中で様々な情景がめまぐるしく、もつれ合うように現れては消えていく様子を描いています。

    曲は、A-B-A’の三部構成です。

    • A部分(Sehr rasch – きわめて速く):
      冒頭から16分音符のパッセージがノンストップで駆け巡ります。軽やかで速い動きの中に、時折アクセントやシンコペーションが顔を出し、落ち着かない夢の様子を巧みに表現しています。
    • B部分(中間部):
      曲の中ほどで、一瞬だけ穏やかで美しいメロディーが現れます。これは、もつれた夢の中でふと見た、心地よい美しい夢の断片のようです。しかし、その静けさは長くは続かず、すぐに冒頭の激しい動きへと引き戻されます。
    • A’部分(再現部):
      再び冒頭のテーマが戻り、熱狂的なコーダ(終結部)へと向かって一気に駆け抜けていきます。

    この急→緩→急という構成と、軽やかでありながらも情熱的な曲想が、聴く人にワクワク感をもたらします。

    作曲された時代背景:クララへの想い

    この曲が作曲された1837年は、シューマンが後の妻となるピアニスト、クララ・ヴィークへの想いを募らせていた時期です。クララの父親に結婚を猛反対され、苦悩しながらも、彼の創作意欲は燃え上がっていました。

    「幻想小曲集」は、そんな彼のクララへの情熱や、揺れ動く心の状態が色濃く反映された作品群と言えるでしょう。

    「夢のもつれ」の熱っぽさや切なさは、若きシューマンの恋愛の苦悩と喜びから生まれているのかもしれませんね。

    「夢のもつれ」の難易度について

    出典:YouTube

    ということで、難易度です。

    「夢のもつれ」は、筆者の経験から判断すると「上級」への入り口、あるいは上級レベルに位置づけられる難曲です。

    • 全音楽譜出版社のピアノピース難易度: E(上級)
    • ショパンの「幻想即興曲」やリストの「愛の夢 第3番」などと同等か、それ以上に技術的な正確性が求められるレベルです。
    • ヤマハピアノ演奏グレード: 4級~3級
    • 専門的な学習課程で取り組むレベルであり、高度なテクニックと音楽表現の両方が要求されます。

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    目安となる教則本との比較からみる難易度

    具体的な教則本でレベル感を見てみましょう。

    ソナチネアルバム:
    ソナチネアルバムを全巻修了し、ベートーヴェンの「悲愴ソナタ」や「月光ソナタ(第3楽章を除く)」などを安定して弾けるくらいの総合力が必要です。ソナチネ終了レベルでは難しいと思います。

    ツェルニー30番・40番:
    ツェルニー30番を余裕をもって修了し、ツェルニー40番「熟練の技」に取り組んでいることが、この曲に挑戦するための最低条件かなと。指の独立性や持久力がなければ、譜読みの段階で挫折してしまう可能性があります。

    難易度克服のための具体的テクニック

    「夢のもつれ」における技術的な課題は以下の通りです(筆者の体験より)

    • 高速での指の独立と均一性:
      終始続く16分音符のパッセージを、一音一音クリアに、かつ均一な音量で弾き続けるための高度なフィンガーテクニック。
    • 左右の手の役割分担:
      右手は軽やかに飛び回る蝶のように、左手はそれを支える安定したリズムと和声。この2つの全く異なる役割を同時にこなす必要があります。
    • 跳躍と素早いポジション移動:
      特に左手は、ベース音と和音の間を素早く正確に跳躍しなければなりません。鍵盤を見ずに弾けるほどの習熟が求められます。
    • 繊細なアーティキュレーション:
      スタッカートやレガート、アクセントなど、楽譜に細かく書き込まれた指示を、速いパッセージの中で的確に表現する能力。

    「夢のもつれ」難易度解説:弾き方のコツ3選

    出典:YouTube

    この難曲を、音楽的に美しく仕上げるための練習のコツを3つに絞って解説します。
    筆者がレッスンで習った情報も含まれていますので、絶対とはいえません。
    ですが、まぁまぁ参考になるはずです。

    1. 指がもつれない!「分解&ブロック」練習法

    冒頭から続く高速パッセージは、多くの学習者がつまずく最大の難所です。これを克服するには、いきなり速く弾こうとせず、徹底的に分解練習することが不可欠です。といっても、👆動画みたいに速くなくても全然OKなので、安心してください。

    • リズム変奏:
      「タッカタッカ(付点リズム)」や「タカータカー(逆付点)」など、様々なリズムで練習します。これにより、指が特定の動きに慣れてしまうのを防ぎ、全ての音を均等に意識できるようになります。ハノンでやるやつですね。
    • ブロック練習:
      16分音符の動きを、和音(ブロック)として捉えて練習します。例えば、4つの16分音符を同時に「ジャーン」と和音で押さえるのです。これにより、正しい指のポジションと和声進行を瞬時に把握する能力が養われます。
    • 超スローテンポ練習:
      メトロノームを使い、自分がコントロールできる限界まで遅いテンポで練習します。一音一音の響きや指の形を確認しながら、完璧に弾けるようになったら、1メモリずつテンポを上げていきましょう。焦りは最大の敵です。

    とにかく、最初はゆっくりと!

    2. 左手は「指揮者」、右手は「踊り子」

    この曲では、左右の手が全く違う役割を担っています。この役割分担を意識することが、演奏に立体感を生む鍵となります。

    • 左手の役割(指揮者):
      左手は、曲全体のテンポとリズムを安定させる土台です。1拍目のバス音は深く、でも重くなりすぎず、2・3拍目は軽く弾き、ワルツのような3拍子の大きな流れを作り出します。まずは左手だけで、安定したテンポで弾けるように練習しましょう。
    • 右手の役割(踊り子):
      右手は、その土台の上で軽やかに舞う踊り子です。指先に意識を集中させすぎず、手首や腕全体をしなやかに使って、鍵盤の上を滑るように演奏します。力みは禁物。常に軽やかさを意識してください。

    左右別々にそれぞれの役割を完璧に練習した後、初めて両手で合わせるようにしましょう。

    3. 「夢」の質感を出すためのペダリングとタッチ

    シューマンらしい幻想的な響きを作るには、ペダルとタッチのコントロールが欠かせません。

    • 濁らせないペダル:
      基本は、和音が変わるタイミングで踏み替えます。しかし、速いパッセージの中では、ペダルを踏みすぎると音が濁ってしまいます。響きを聴きながら、浅く踏んだり、部分的にペダルを上げたり(ハーフペダル)する技術が必要です。特に中間部の美しい和声では、響きが溶け合うような繊細なペダル操作を心がけましょう。
    • 指先のタッチ:
      鍵盤の底までガツンと叩くのではなく、鍵盤の表面を撫でるような軽いタッチを基本とします。特に右手の16分音符は、まるで羽で鍵盤に触れるかのようなイメージを持つと、軽やかさと輝きが生まれます。一方で、メロディーラインやアクセントのある音は、指先に少し重みを乗せて芯のある音を出すなど、音色の変化を意識することが大切です。

    「夢のもつれ」の楽譜紹介【無料楽譜あり】

    出典:YouTube

    最後に楽譜紹介をして終わりにしますね。

    本作は著作権が切れていますので、無料で手に入れられます。

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    シューマンの「夢のもつれ」も、もちろんダウンロード可能です。

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    シューマン「夢のもつれ」の難易度解説:まとめ

    この記事では、シューマンの「夢のもつれ」の難易度から具体的な練習方法までを詳しく解説しました。

    • 楽曲: シューマンの「幻想小曲集 Op.12」の第7曲。夢の中のもつれた情景を描いた、幻想的で技巧的な作品。
    • 難易度: 上級レベル。ソナチネアルバム修了、ツェルニー40番程度の技術力が目安。
    • 技術的課題: 高速パッセージの均一性、左右の手の独立、跳躍の正確さ、繊細なタッチコントロールが要求される。
    • 弾き方のコツ: ①リズム変奏などの分解練習、②左右の手の役割分担の意識、③軽やかさと情熱を両立させるタッチとペダリングが鍵。
    • 楽譜: IMSLPで無料楽譜が入手可能。学習には全音版やヘンレ版などの市販楽譜がおすすめ。
    • 挑戦の価値: この曲をマスターする過程で、指の技術だけでなく、ロマン派音楽を表現するために不可欠な音楽性が飛躍的に向上する。

    「夢のもつれ」は、決して簡単な曲ではありません。

    しかし、その音楽の持つ魅力は、苦労して練習する価値のあるものです。

    ぜひ、この美しくも情熱的なシューマンの世界にチャレンジしてみてください!

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