今回は、ラモー作曲「ガヴォットと6つのドゥーブル」の難易度について、詳しく解説します。
優雅なテーマと、徐々に華やかになっていく変奏(ドゥーブル)がとても魅力的なこの曲。
「いつか弾いてみたい!」と憧れている方も多いのではないでしょうか?
そう感じた方もいるかもしれません。
この記事を読めば、憧れの曲への具体的な道のりが分かり、挑戦する勇気が湧いてきますよ!
この記事では、この曲を「発表会などで素敵に演奏する」ことを目標とした場合の『学習上の難易度』について解説していきます。 これを知れば、きっと「自分にも挑戦できそうだ!」と思っていただけるはずです。
記事の後半では、無料楽譜も紹介していますので、ぜひ参考にしてください!
ラモーとは?クラヴサンと音楽理論の巨匠
ラモーの肖像:出典:Wikipedia
難易度解説の前に、いつものように少しだけ寄り道を。ラモーについてざっくりと解説しますね。
ジャン=フィリップ・ラモー(Jean-Philippe Rameau, 1683–1764)は、フランス・バロックを代表する作曲家、音楽理論家です。彼の名は特にクラヴサン曲(チェンバロ曲)やオペラで知られており、優雅さと精緻な構造を兼ね備えた音楽で高く評価されています。
クープランと並ぶ、バロック時代の2大巨頭の作曲家です。
ラモーの簡単な経歴
超ざっくりですが、こんな人生でした。
ラモーの音楽の特徴
- 装飾音や舞曲リズムが豊かで、クラヴサンの美しさを引き出す作風
- バッハやスカルラッティと並ぶバロック鍵盤音楽の巨匠
- 同時代では珍しい、理論家×作曲家のハイブリッドタイプ
このように、ラモーは演奏家にも理論家にもリスペクトされる存在であり、今回取り上げる「ガヴォットと6つのドゥーブル」も、そんな彼の魅力が凝縮された名曲のひとつです。
ラモーについては、こちらの記事でくわしく解説しています。
結論:学習上の難易度は「ソナチネアルバム中盤~後半」レベル
出典:YouTube
ということで・・・。
上記の点を踏まえた上で、学習上の難易度を見ていきましょう。
とっても演奏効果の高い作品なので、ぜひチャレンジしてみてください!
結論!この曲に挑戦するための目安は、「ソナチネアルバムの中盤~後半レベル」かなと。
実体験からの判断をふまえて、教則本との比較では、以下のようになります。
- ソナチネアルバム: クーラウやクレメンティのソナチネを弾きこなせるレベルであれば、必要な基礎テクニックが身についており、挑戦に最適です。
- バッハ インヴェンション: インヴェンションと並行、あるいは少し前に取り組むと、多声部を弾き分ける良い練習になります。様式を理解する上でも相乗効果が期待できます。
なお、全音ピアノピースでは、難易度「C」(中級)に設定されています。
バッハ作品をしっかりと取り組んでいれば、聴くほど難易度は高くないかなというのが、筆者の実感です(あくまでも技術面ですよ!)
>>アマゾン:ピアノピース-417 ガボットと変奏曲/ラモー
そもそも「ドゥーブル」って何?曲の構成を知ろう
この曲を理解する上で欠かせないのが「ドゥーブル」という言葉。これはフランス語で「二重」を意味しますが、音楽の世界では「変奏(ヴァリエーション)」として使われます。
つまり、この曲は「ガヴォット」というテーマ(主題)が、6回にわたって様々なスタイルに変奏されていく「変奏曲」というわけです。
- ガヴォット(主題): 優雅で特徴的なリズムのテーマ
- 第1ドゥーブル: 左手に流れるような音階が登場
- 第2ドゥーブル: 右手が細かく動き、華やかに
- 第3ドゥーブル: 装飾音(トリル)が特徴的
- 第4ドゥーブル: 左手が鍵盤を駆け巡る
- 第5ドゥーブル: 両手で細かいパッセージの掛け合い
- 第6ドゥーブル: 最も技術的に高度で華やかなフィナーレ
変奏ごとに求められるテクニックが違うのが、この曲の面白さであり、難しさでもあります。
そういう意味では、技術面のレベルアップにもなるんじゃないかなと。
参考|ピティナ・ピアノ曲事典|新クラヴサン組曲集 第1番(第4組曲) ガヴォットと6つの変奏
【パート別】ドゥーブルごとの難易度と練習ポイント
出典:YouTube
全曲を通して弾くのも素敵ですが、いくつかのドゥーブルを抜粋して演奏することも多いです。ここでは、各部分の具体的な難易度と練習のポイントを見ていきましょう。
ガヴォット(主題)
- 難易度: ★☆☆☆☆ (ブルグミュラー前半レベル)
- ポイント: 付点リズムを正確に、かつ軽やかに弾くことが大切です。右手のメロディーを美しく響かせましょう。
第1・第2ドゥーブル
- 難易度: ★★☆☆☆ (ブルグミュラー後半レベル)
- ポイント: 左右どちらかの手が主役になります。メロディーラインであるテーマを意識しながら、伴奏の粒を揃える練習をしましょう。ハノンのスケールやアルペジオが良い練習になります。
第3・第4ドゥーブル
- 難易度: ★★★☆☆ (ソナチネアルバム前半レベル)
- ポイント: 第3は装飾音の処理、第4は左手の跳躍と俊敏性が課題です。特にバロック時代の装飾音の奏法(トリルを上の音から始めるなど)を学ぶ良い機会になります。
第5・第6ドゥーブル
- 難易度: ★★★★☆ (ソナチネアルバム中盤~後半レベル)
- ポイント: ここが最難関。指の独立性、速いパッセージを均一に弾く力、そして音楽的な勢いが求められます。片手ずつゆっくりから始め、確実にテンポアップしていく練習が不可欠です。
この曲を弾きこなすために必要なテクニックまとめ
- スケールとアルペジオの基礎力: 全てのドゥーブルの基本となります。
- 指の独立性と俊敏性: 特に後半のドゥーブルで求められます。
- バロック特有の装飾音の知識: 曲を様式通りに弾くために必要。
- 多声的な音楽の理解: 複数の声部(メロディーや伴奏)を同時に聴き分ける力。
- リズム感: ガヴォットの優雅なリズムを保ち続ける力。
追加で、バッハの「フランス組曲」も取り組んでおくと、なお良しです。
>>アマゾン:J.S.バッハ: フランス組曲全曲 BWV 812-817/原典版/Scheideler編/Schneidt運指/ヘンレ社/ピアノ・ソロ
「ガヴォットと6つのドゥーブル」:発表会での選曲ポイントは?
出典:YouTube
本作は発表会でもともて人気。その理由は次のとおりかなと。
- 華やかで聴き映えがする。
- 変奏曲なので、聴衆を飽きさせない。
- 自分のレベルに合わせてドゥーブルを抜粋して演奏できる。(例:ガヴォット+第1, 2, 5, 6ドゥーブルなど)
一方で、注意点も少しだけあります。
- 全曲通すと少し長め(約7〜8分)になるので、持ち時間を確認しましょう。
- 優雅な雰囲気を出すには、ペダルの使い方よりも指先のコントロール(タッチ)が重要になります。
はっきりとした指の力が必須だと思います。あと、個人的な感想として、ミスが目立つ作品だなと。ある種の「完璧さ」を求められるような、そんなプレッシャーのある作品です。
「ガヴォットと6つのドゥーブル」の楽譜紹介【IMSLPの無料楽譜あり】
出典:YouTube
最後に本作の楽譜紹介をして終わりにします。挑戦したくなったら、まずは楽譜を手に入れましょう。楽譜を買う前に、無料楽譜で全体の雰囲気をつかんでおくのもOKです!
「ガヴォットと6つのドゥーブル」を無料で入手!
IMSLPは、著作権が切れた(パブリックドメイン)クラシック音楽の楽譜を、無料でダウンロードできるウェブサイトです。「ガヴォットと6つのドゥーブル」も初版の楽譜などが公開されています。
IMSLPからのダウンロードはこちら!
注意点: 版が古いため、最新の校訂が反映されていなかったり、運指(指使い)が書かれていなかったりすることがあります。あくまで参考として利用するのが良いでしょう。
学習におすすめの有料楽譜
本格的に学習するなら、信頼できる出版社から出ている楽譜をおすすめします。プロの演奏家も使用する定番は、正確な校訂や、研究に基づいた運指が記されており、学習の助けになるでしょう。ただ、本作は「クラヴサン組曲集」の1つのため、単体ではなかなか売っていません。
そのため、全編だとちょっとお値段高めです。
>>アマゾン:ラモー: クラヴサン曲集 第1巻/ベーレンライター社/ピアノ・ソロ
ラモー「ガヴォットと6つのドゥーブル」の難易度解説:まとめ
いかがでしたか?
プロの超絶技巧な演奏を聴くと圧倒されてしまいますが、それはあくまで磨き上げられた最終形。ラモーの「ガヴォットと6つのドゥーブル」は、ソナチネレベルのテクニックがあれば、十分に挑戦を始められる、教育的で素晴らしい名曲です。
一見難しそうに見えるパッセージも、一つ一つのドゥーブルを丁寧に練習していくことで、着実にあなたのものになります。
この記事のポイントまとめ
- ラモーの「ガヴォットと6つのドゥーブル」は変奏形式のバロック作品
- 難易度の目安は「ソナチネアルバム中盤~後半」
- 各ドゥーブルごとに異なるテクニックが求められる
- 特に第5・第6ドゥーブルは高難度で弾きごたえあり
- ガヴォット本体だけならブルグミュラーレベルでも可
- バッハ作品に向けた練習曲としても効果的
- 発表会にもぴったり!抜粋演奏もおすすめ
- IMSLPなどで無料楽譜も入手可能